#立憲民主党の基本政策 「公務員人件費削減」は官製ワーキングプア増大で #国のかたち を更に貧困・自己責任化する、すでに日本の公務員人件費は11年連続OECD最低

  • 2018/1/10
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立憲民主党が「基本政策」を発表しました。その「基本政策」の最初に「国のかたち」の項目があり、8番目に「■公務員の労働基本権を回復し、労働条件を交渉で決める仕組みを構築するとともに、職員団体などとの協議・合意を前提として、人件費削減を目指します。」とあります。

「公務員の労働基本権」の問題については、私が熊沢誠甲南大学名誉教授にインタビューした記事で詳しく展開していますので、ぜひ下記リンク先を読んでください。

★タックスペイヤーたる中産階級とワーキングプアの絶望的な怨嗟が合流する公務員バッシング、政財界スローガンは「官民横断のユニオニズムは許さない」、公務員の労働基本権剥奪こそ欧米にない日本の強み、予防としての行政改革

ここでは「公務員の人件費削減を目指す」とする立憲民主党の「基本政策」について考えてみたいと思います。

公務員の人件費を削減するには、賃下げと公務員数の削減が必要です。実際にこの間、公務員削減と同時に正規の賃金抑制、非正規化(官製ワーキングプア化)による大幅な人件費削減が行われてきました。

まず、公務員数の削減です。下のグラフは人事院による公務員数です。2000年度(平成12年度)には約435万人いた公務員が2017年度(平成29年度)には約 332.3万人とこの17年間で102万人も減っています。

下のグラフにあるように自治体ではこの11年間で正規公務員が30万人減り、非正規(官製ワーキングプア)が23万人増えています。(総務省のデータから作成したものです)

国家公務員(行政職のみ)は自治体より規模は小さいですが同様の傾向で、下のグラフにあるように5年間で非正規率が1.9ポイント上がっています。

また、省庁別に見ると下のグラフにあるように、厚生労働省は民間企業より多い非正規率になっています。

以上のように、公務員の人件費削減は、非正規化を進め官製ワーキングプアを増やし日本社会を貧困化させてきた一因となっています。

立憲民主党の「基本政策」の「暮らしの安心」の項目には、「■ワーキングプアをなくし、安心して働き暮らすことのできる賃金を確保します。全国どこでも誰でも時給1,000円以上になるように最低賃金を引き上げます。」「■望めば正社員になることのできる社会を目指します。」とあります。公務員の人件費削減は、非正規化を進めワーキングプアを増やすのですから矛盾する「基本政策」です。

それと、「公務員の人件費削減を目指す」という「基本政策」を作る背景には、「公務員が多過ぎる」という現状認識があるということになります。日本の公務員は本当に多過ぎるのでしょうか?

下のグラフは、OECDが毎年発行している「Govermment at a Glance」の最近版(2017年版)のデータをグラフにしたものです。各国2015年の被雇用者数に占める公務員数の割合で日本はOECDで最低です。しかもノルウェーの5分の1以下、OECD平均の3分の1以下と日本の公務員は異常に少ないのです。

下のグラフは内閣人事局による「人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較」です。上記のOECDのデータと違って「公的部門」と範囲が広くなっても日本はフランスの半分以下です。中央政府職員にいたってはフランスの9分の1以下です。

全体の公務員が異常に少ないのですから、個別分野ごとに見ても当然、公務員は少なくなります。

下のグラフは国家公務員である労働基準監督官の雇用者1万人辺りの人数です。日本はドイツの3分の1以下です(実質は4分の1以下)。立憲民主党は「基本政策」で「■長時間労働を規制し、過労死ゼロを目指します。誰もが「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」が可能な社会を実現します。」としていますが、公務員である労働基準監督官を削減してはそのような社会を実現することはできません。

次に、公務員の人件費そのものです。立憲民主党は公務員の人件費が高過ぎると認識しているから人件費削減を目指すとしているのでしょうが、日本の公務員の人件費は本当に高過ぎるのでしょうか?

下のグラフは、OECDが2年に1度程度の頻度で発表している各国の公務員人件費(対GDP比)です。日本は2004年から直近の2014年まで11年連続の最下位です。逆に財政赤字は最悪です。

下のグラフは、国家公務員の人件費と国の財政赤字(長期債務残高)の推移を見たものです。人件費は半減し財政赤字は倍増しています。上の国際比較のグラフを見てもわかるように、デンマークなど北欧諸国は公務員人件費が他国より高いのに財政赤字は少なく、日本は公務員人件費が11年連続最低なのに財政赤字は最悪です。加えて、日本の国家公務員人件費は半減しているのに国の財政赤字は倍増しているのを見ても、公務員人件費が財政赤字の原因でないことは明白です。

それから、公務員の個別の賃金が高過ぎるというデマもありますが、これについては以前、「世界最高年収で日本は公務員天国?→日本の公務員の個別賃金はアメリカの6割、総人件費はずっと世界最低です」で、一般の公務員も上級管理職公務員も中間管理職公務員も個別賃金は世界最高ではないことを紹介しています。

また、公務員の人件費削減は消費支出減少をもたらし景気を悪化させ結局、税収の減少をもたらします。2012年2月に当時の野田政権が人事院勧告を大幅に超える国家公務員の賃下げを強行しましたが、その際、「国家公務員の賃下げは財源確保どころ財源を減少させる」ことを指摘しました。

上の表にあるように、国家公務員の賃金は、地方公務員や、公務員に準拠する民間労働者625.8万人に直接影響します。この625.8万人は日本のすべての労働者4,898万人の1割を超えて12.7%になります。

上の表は、労働運動総合研究所(労働総研)が、「国家公務員賃金7.8%削減の経済に対する影響」を試算したものです。野田政権が狙う7.8%の賃下げで、家計収入は2兆7千億円も減少し、家計消費は2兆円減少。国内生産とGDPも大幅に減少し、税収が4,213億円も減少してしまいます。

民間企業の中には自社の賃金決定に国家公務員の賃金水準を活用する例も見られるため、上記で指摘した直接影響する労働者の賃下げだけでなく、民間全体の賃下げに連動していきます。そうすると、民間の賃金水準を毎年調査し、役職や年齢、学歴など同種同等の比較をして出される人事院勧告に基づいて決められる国家公務員の賃金もさらに下がることになります。「国家公務員の賃下げ」→「民間労働者の賃下げ」→「国家公務員の賃下げ」という公務員と民間労働者の賃下げが互いに連動する「賃下げの悪循環」は、労働者の生活悪化をもたらすとともに、内需を冷え込ませ、景気をますます悪化させてしまいます。こうして、実際に以下のグラフにあるように主要国で日本だけ賃下げになっているのです。

私は国立研究機関も担当していますが、立憲民主党の「基本政策」の中に「■基礎研究を強化し、イノベーション(技術革新)につながる環境を整備します。」という項目もあります。国立研究機関の多くは「公務員人件費削減」によって民間型の独立行政法人化されました。加えて基礎研究を進めるための運営費交付金も「公務員人件費削減」と同じ流れの中で削減され続けています。そして、研究者を非正規で使い捨て荒む研究現場、職業として崩壊しつつある研究職、ポスドク若手研究者は育休も産休もなく家族形成すら困難、というのが国立研究機関の現場の実態です。基礎研究を強化するためにも公務員人件費削減の流れを反転させる必要があるのです。

最後に以前紹介した斎藤貴男さんと田端博邦東京大学名誉教授の指摘を、立憲民主党に贈りたいと思います。

▼斎藤貴男さんの指摘

公務員バッシングすればするほど政府・財界の“思うツボ”、政府・財界・特権官僚による悪政から目をそらす“うっぷん晴らし”の代償は“自分で自分の首を絞める”民間・公務労働者共倒れ貧困社会の到来

国家公務員の給与削減は、政府・財界にとって「一石二鳥」をもたらします。なぜなら、公務員給与削減は、結果として公務員と民間労働者を共倒れさせることができるからです。

非正規労働者が増え、貧困が広がるなかで、相対的には少しだけめぐまれている公務員に対して意図的に攻撃を加えるのは、民間でひどい目にあっている人たちの感情を公務員バッシングにもっていくことで、事態の本質から目をそむけさせるためです。今は一般の人たちも悲しいかなそれにまんまとだまされてしまっています。

多くの民間労働者、非正規労働者が苦しい生活を強いられている事態の本質は、企業の収益がどんどん株主に回り、経営者たちが何億円、何十億円の報酬を手に入れる一方で、民間労働者の賃金をカットし続けていることにあります。民間労働者が怒りをぶつける本来の相手は、そういう理不尽な報酬を手に入れている経営トップたちです。また、今の格差社会をつくった政治や特権官僚に対して怒りを向けるべきです。そうしてこそ、労働者にまともな賃金と権利が保障されていく、まともな社会、公平な社会に変えることができます。

ところが、今の事態は、すべて公務員が悪いからだと問題をすりかえ、問題の本質を見えなくさせられてしまっているわけです。これはかつての国労バッシングと同じで、問題の本質をすりかえるために、つねにスケープゴートを作り出す手法で、今は公務員そのものがバッシングにさらされていて、それが橋下徹大阪市長のようにさらにエスカレートする傾向になっています。

しかし、民間労働者と一般市民が、公務員バッシングをやればやるほど、政府・財界の“思うツボ”にはまってしまうことになります。公務員の給与が下がったら民間労働者には何が起こるでしょうか? そのときは一時的に“うっぷん晴らし”ができたということでうれしいかもしれない。ところが大変な事態に気づくことになります。多くの経営者は当然のように「公務員の給与が下がったんだから君らの賃金はもっと下げますよ」と言います。結果的に、“自分で自分の首を絞める”ことになってしまうのです。

消費税増税が強行されれば、多くの中小零細業者はつぶされます。政府・財界は中小零細業者をつぶすために消費税増税をやろうとしているとも言えるのです。国鉄の分割民営化を見ても分かるように、政府・財界にとって労使一体ではない労働組合は許せないので、つぶしたいのです。公務員の労働組合が労働者の権利と労働条件の向上のために声をあげ運動していることを、政府・財界は許せないのです。だから、公務員バッシングによって、公務員と民間労働者を敵対させて、公務員の労働組合を解体したいのです。

公務員の労働組合は、自らの労働条件を守るためには、民間労働者に理解してもらう方向の運動をする必要があります。民間労働者、一般市民に理解を広げて、公務員給与削減や公務員バッシングを跳ね返す必要があるのです。

▼田端博邦東京大学名誉教授の指摘

「幸せになる資本主義」には「小さな政府」=「自己責任社会」でなく「大きな政府」による福祉国家と「大きな労働組合の力」が必要

雇用や教育、社会保障、住宅などの公共的な支えが弱くなればなるほど、人々は「自己責任」で暮らさざるをえません。公共性の欠如は人々の利己心を増殖し、公共支出の増加は、利己心から人々を解放するといえるでしょう。

そして、雇用や教育、社会保障、住宅などの公共支出は、先進主要国の中で北欧がもっとも高く、日本がもっとも低い水準にあります。ところが、新自由主義の台頭や「大きな政府」批判は、先進国でもっとも「小さな政府」である日本において猛威をふるっています。

世界でもっとも「大きな政府」を持つ国のグループに入るスウェーデンで、2006年9月に保守政党が政権をとるという政権交代がありましたが、そのとき選挙で勝利した保守政党が掲げた政策は、「大きな政府」「福祉国家」を維持するというものでした。北欧では保守政党にまで「大きな政府」が国民の利益になると考えられているのです。

日本のようなもっとも「小さな政府」の国で、「大きな政府」への批判が起きるのは、政府に対する不信がベースにあるからだと考えられます。それは、日本における民主主義の欠如などから、政府支出をコントロールできないので、高い税金を払っても、国民のためには使われないだろうとする考え方が支配的になっているということでしょう。そうだとすると、日本において「大きな政府」「福祉国家」をつくっていくためには、政治的な民主主義をきちんと確立していくことと、自己責任ではなくて、お互いがつながっていく共同・連帯を、国民の間で発展させていく必要があるということになります。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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