
【日本のここがスゴイ!】①世界第2位の重税国家②世界最高の公務員年収③世界最低水準の社会扶助④先進国最悪の家計貯蓄率⑤でも文句は言わない。――という言説を、「リベラル左派」系とされる著名な方までネットで拡散しているので、きちんとした客観的なデータを紹介しておきます。(※ただし、この5つの指摘のうち、客観的なデータから明らかに間違っているのは①と②ですが、ここでは②についてのデータ紹介に限っています)
基本的な公務員賃金の考え方については、先日、「民主・維新共通公約の公務員賃金2割削減=「政財官癒着」温存し官製ワーキングプア増やす「労働者の身を切る改革」でGDP4兆5千億円マイナス」で指摘しているように、公務員賃金を切り下げることは民間労働者の賃下げと日本経済の悪化、官製ワーキングプアを増大させるだけです。
いま問題のサイトと、同様の「日本の公務員の給料がヤバい!月収がアメリカの2倍以上!世界トップクラスの超高給!アメリカ月収30万、日本月収60万!」というブログ。本当でしょうか? まず個別賃金の国際比較です。
下のグラフは、人事院が2012年10月1日、「公務員給与決定における議会の役割~米国・ドイツにおける考え方を踏まえて」と題したパネルディスカッションを開催したのですが、アメリカからティモシー・カリー氏(アメリカ人事管理庁労使関係担当副長官補)、ドイツからダニエル・クリスティアンス氏(ドイツ連邦内務省給与担当課長)がパネリストとして報告した際に示された正規国家公務員賃金の国際比較です。
上のグラフにあるように、日本の国家公務員の賃金は、25歳でアメリカの70%、ドイツの71%、35歳でアメリカの66%、ドイツの78%、50歳でアメリカの61%、ドイツの67%しかありません。
それから、先日、『国民春闘白書データブック』(学習の友社)という書籍の作成で公務員関連の国際比較のデータを収集するために、私、OECD東京センターに出向いてデータを収集してきたのでいくつか紹介しておきます。
上のグラフは、OECDによる「上級管理職公務員」の年収の国際比較です。左の棒グラフが政府閣僚の賃金で、右の棒グラフが事務方の上級管理職の年収です。上級管理職の年収を見ても、日本より高い国は、7カ国ありますから、このグラフだけでも「世界最高の公務員年収」という言説が間違っていることが分かります。
同様に上のグラフは、OECDによる「中間管理職の公務員」の年収の国際比較です。左と右の棒グラフは中間管理職の中の上位と下位の年収です。ここでも日本より高い国は、9カ国あります。
そして、上のグラフは、OECDによる「公務員・公的部門職員の人件費」と「財政赤字」について、私がグラフにしてみたものです。(※財政赤字を折れ線にしたのはただただ目立つようにしたいというだけの意図です)一目瞭然、日本は世界最低です。しかも日本は2013年になって初めて6%を割ってしまっています。安倍政権はここでも世界史上最低記録を更新しているのです。加えて、日本の巨額な財政赤字が公務員賃金が高いせいだなどという言説がまかり通っていますが、ずっと日本の公務員賃金は世界最低で、2000年以降、ずっと日本の財政赤字は世界最悪ですから、この点についてもまったくのウソであることが分かります。しかも逆に公務員賃金がずっと高い北欧の方が比較的財政赤字が少ないことからもこうした言説がデタラメだと分かるでしょう。
それから公務員バッシングを煽る「世界最高の公務員年収」という言説には、もうひとつ大きなウソが隠されています。それは民間労働者の平均年収には非正規労働者が含まれての平均年収であるのに、公務員の方は意図的に非正規公務員が除外されて正規公務員だけの平均年収になっていることです。「官製ワーキングプア」の状態に置かれている非正規公務員の存在を意図的に隠した公務員バッシングは結局、「公務員人件費削減→正規公務員の非正規化やアウトソーシングなどによる官製ワーキングプアの増加」にもつながっていくのです。
▼新雑誌『KOKKO(こっこう)』9月号(堀之内出版)★〈特集〉官製ワーキングプア
〈特集〉官製ワーキングプア
非正規国家公務員をめぐる問題――歴史、現状と課題
早川 征一郎 法政大学名誉教授
座談会 官製ワーキングプア 国が生む貧困と行政劣化
山﨑 正人 国土交通労働組合書記長
竹信 三恵子 和光大学教授/NPO法人「官製ワーキングプア研究会」理事
鎌田 一 国公労連書記長
ハローワークで働く非常勤職員
etc.