ブラック公務大賞は文部科学省=20代の公立教員20人が過労自殺、「やりがいの搾取」で労働者を過労死・過労自殺へ追い込む松浦勝人エイベックス社長の主張

きょう「ブラック企業大賞2016」の発表がありました。大賞には電通が選ばれ、受賞理由は「ブラック企業大賞」のサイトで読むことができます。

NHKは午後7時からのニュースでこの「ブラック企業大賞」の授賞式の様子を報道し、電通社員に対する取材を以下のように伝えました。

 

ブラック企業大賞 電通に
NHKニュース 12月23日

社員「体質は変わっていない」

電通の現役の社員がNHKの取材に応じ、長時間労働の対策で一定の効果が出ているとする一方、家に持ち帰って仕事をする人が少なくないなど企業の体質は変わっていないと証言しました。

電通では新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が去年、過労のため自殺した問題などを受けて夜10時以降の深夜勤務を原則、行わないなどの労働環境の改善に向けた取り組みを進めています。

これについて今月、NHKの取材に応じた社員の1人は、「夜10時までという明確な残業規制が入ったため『あすまでにこれをやれ』と言って徹夜などを強いる理不尽な長時間労働は減っている」として対策で一定の効果が出ていると話します。

一方で「企業の体質は全く変わっていない。人によってはどんどん持ち帰って仕事をしている現状がある。ファミリーレストランや自宅、喫茶店など外に仕事を持ち出して作業をやっていると聞いている」と話しました。

さらに「体育会系という名目で正当化される理不尽なパワハラや人権を無視したひぼう中傷、暴言をはかれるといった企業文化は残っている。『俺はこれを乗り切ったんだからお前も乗り切れないと電通マンになれないんだぞ』といった企業風土は根深い」と話します。

特に新入社員に対しては、まつりさんの過労自殺が明らかになる前はパワハラともとれる厳しい指導が行われていたということで、「仕事がきつい部署では新入社員は3か月全く休みがなく、土日も出勤し続けるのが当たり前で、指導という名のもとで個室に詰め込んで個人的なことまでひぼう中傷する言葉を浴びせ続けるということが起こっていた」と証言しました。

そのうえで、「今回の件は電通の企業風土やパワハラが引き起こしたことで、犠牲者が出てしまったということを深く反省して社員一人一人が自分の言動をしっかりと見直してほしい」と話していました。

これに続けて、NHKは教員の惨状も報道。昨年度(2015年度)の20代の公立教員の精神疾患は564人にのぼりこの10年間で2倍近く増加した上に(下のグラフ)、NHKの調査によると少なくとも20人が自殺していることが分かったとのこと。しかも、この20代の公立教員が20人も自殺していることを文部科学省は把握していないと報道していました。

以前、書いた「突出した世界一の長時間労働でうつ病休職者10年で3倍増の日本の教員、教員の「うつ傾向」は一般企業の2.5倍←5年連続で世界一低い日本の教育への公的支出に加え財務省が教職員3万7千人削減ねらう倒錯の日本」という記事でも教員の惨状を指摘していますが、「ブラック企業大賞」にならってもし「ブラック公務大賞」があれば、文部科学省に決まりです。そして、「ブラック公務大賞」の次点は非常勤職員=官製ワーキングプアの比率が今年5割を超え(下表参照、※私が作成したものです)、ハローワークの非常勤職員を何千人とパワハラ公募を実施し雇い止めしている厚生労働省です。(※参照→そりゃあんまりだ! 厚生労働省はブラック官庁=勝手に労働時間延長・非正規切り・民間企業以上の非正規率46%・ハローワーク職員の6割が官製ワーキングプア・ブラック企業なくす労働Gメン数はドイツの3分の1

それから、エイベックス・グループ・ホールディングス代表取締役社長の松浦勝人氏がブログで、「労働基準監督署から是正勧告を受けた」ことに逆ギレして、「労働基準監督署は昔の法律のまま、今の働き方を無視する様な取り締まりを行っていると言わざるを得ない。」から「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」と主張。あわせて、次のように書いています。

僕らの仕事は自己実現や社会貢献みたいな目標を持って好きで働いている人が多い。(中略)それぞれの業界にはそれぞれ特殊な事情がある。労働時間だけに縛られていたら為替のディーラーの人達は仕事にならなくなる。病院で働いている人は労働時間と治療とどちらを優先するべきか。美容師の人達、学校の先生、、、自分の夢を持ってその業界に好きで入った人たちは好きで働いているのに仕事を切り上げて帰らなければならないようなことになる。
松浦勝人氏のブログ「労働基準法 是正勧告とは」より

先に紹介した20代の教員が20人自殺している問題で、一つのケースとして、NHKは、一昨年、自殺した福井県の中学校の教員の場合は時間外労働が月に最大161時間を超え、部活動や保護者の対応に追われていて、本人は日記に「子どものために」教員として頑張って働くというようなことを書いていたと報道していました。松浦勝人氏が言うところのまさに「社会貢献」という目標を持って「労働時間に縛られずに」「子どものために」を「優先して」「仕事を切り上げずに帰らず」に働いた結果、福井県の20代の教員は過労自殺へと追い込まれたのです。松浦勝人氏の主張は、ブラック企業経営者の典型ですが、労働者を過労死・過労自殺へと追い込む「やりがいの搾取」(本田由紀東京大学教授の指摘)にほかなりません。

▼関連
ワタミ問題から考える日本の雇用 – 合法的に過労死・過労自殺を認めている日本社会の異常|河添誠氏×本田由紀氏

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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