【派遣労働者の声4】派遣法改悪は3年ごとに必ずクビ切る人権侵害法案、派遣途中での「派遣切り」が横行しているのに派遣期間満了で次の仕事が安定的にあるなど幻想にすぎない
- 2015/8/21
- 雇用・労働法制
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(※2015年6月19日に書いた記事です)
労働者派遣法を大改悪する「3年ごとにクビ切り法案」が6月19日、衆院厚生労働委員会での採択強行につづき、またしても委員長職権により一方的に緊急上程され、衆院本会議も通過し、参議院に送られました。
国会前では抗議行動が取り組まれ、国会内では衆議院採決に抗議する記者会見が行われています。この記者会見に参加した7名の派遣労働者の声から、その一部を要旨で紹介します。
当事者である派遣労働者の声を聴かず
雇い止め通告が出ている実態を無視しての衆院通過は許せない
憤りを覚えます。いま派遣労働者として働いている当事者の声がまったく生かされないままです。今回の法案が国会に提出されたことで、現場で働く派遣労働者に対し、雇い止め通告が出ている実態を無視しての衆院通過は許せません。
こんな政治家たちに「生涯派遣」を強いられるのかと悔しい気持ちでいっぱい
議場で自民党、公明党の議員が法案賛成で立ち上がったとき、すごくショックを受けました。安倍総理は感情のない感じで進めていて、こんな人たちに「生涯派遣」を強いられるのかと悔しい気持ちでいっぱいです。
派遣労働者の現状を知っていれば賛成できない法案
26業務に従事しています。年齢が高い派遣社員ほど今回の改正で悲しい思いをすることになります。40歳、50歳になっていったとき、年齢が若い方が会社も使いやすいし、職歴に派遣社員と書いても再就職につながりません。どれほどの国会議員がどれほど私たちの現状を知っているのか? おそらく知らないのではないかと思います。派遣労働者の現状を知っていたらこんな法案を通せるはずがないからです。
仕事を失い希望を失う多くの派遣労働者のこれからをどう考えているのか?
派遣労働者として10年以上に渡って同じ仕事を続けてきましたが、今回の法改正を前に3年後には今の職場にはいられないと言われました。今の年齢で次の仕事はないということははっきりわかっています。仕事がなくなるということは希望を失うことです。自民党と公明党の国会議員がこぞって賛成しましたが、私のように仕事を失うことになる多くの派遣労働者のこれからや、実際に不安に思っている人のことをどう考えているのでしょうか?
派遣がキャリアアップにつながるというのは事実と違う
20年ほど派遣労働者として働いています。どこか正社員が見つかるものだと思っていましたが、何社に履歴書を送っても選考を通りません。職歴書に派遣社員と書くと、その時点でダメなのです。今回の国会審議で、派遣就労を通じてのキャリアアップと言っていますが、派遣を通じてキャリアアップが可能なら今私はこの席に座っていません。実際資格があっても、派遣でありながら管理職ポストにもなりましたが、キャリアアップにはつながりませんでした。これから自分の人生がどうなっていくのか不安です。
派遣労働者のクビがかかっているのに
自民党は、ケガをした厚労委員長の心配をするような発言をしていましたが、派遣労働者のクビがかかっていることについては何も思わないのでしょうか? ショックを受けました。派遣法が参議院で通らないよう祈るばかりです。
――以上が、きょう国会内で行われた衆議院採決に抗議する記者会見での派遣労働者の発言の一部です。それから、これまで紹介してきている【派遣労働者の声】を読んで、派遣労働者から緊急アンケートが続々寄せられていますのでその一部を紹介します。
派遣は自己責任とよく言われるが、派遣しか選択肢のない業務もある
40代 男性 研究開発 現在の職場での派遣期間半年
研究開発業務は企業でなければ転々とする事になる業務のため、派遣で3年縛りだったとしても消耗品扱いでも不満は無い。ただ安い給料がまともになる修正案が出たと思ったら結局骨抜きになり、消費税は上がって給料が安いままで段々と生活が圧迫されていく。貯金もできず次の仕事の保証もない。諦め状態で続けた派遣の仕事が長くて何を求めて良いかもわからない状態。守るものがなくなれば速やかに世から消えても良いと思える。
Q:なぜ回答してくれましたか?
派遣は自己責任とよく言われるが、派遣しか選択肢のない業務もあり、その実態を訴えたい。直接国会議員などに訴えるチャンスがあるならとわずかな希望を持ってアンケートに答えました。
失われていく貴重なスキル
この状況でどんな技術が受け継がれるのでしょう?
30代 男性 販売派遣 現在の職場での派遣期間7年
皆さんの声からも分かるかとは思いますが、派遣社員を入れる事で提供されるサービスや仕事の質が下がっています。著しい所では品物の販売が出来ない小売担当者、お客様とコミュニケーションの取れない接客担当者などが現れ始めているのです。私は接客販売の派遣社員として勤めていますが、この業種には引継不可能なスキルが多数存在します。最初の頃私の周りにいた同じ派遣の方は正にプロフェッショナルと呼べるスキルを持っていましたが、そのような方は既に数える程しかおらず、今私の周りには商品のスペックを完璧に説明出来る者すら疎らになっています。26業種の方には大変な事態かと思いますが、他の業種では既に声もあげないまま、届かないままに、静かな市場崩壊が始まっています。一時期盛んに技術立国という言葉が出ていましたが、私共はそれを鼻で笑いながら聞いていたものです。この状況でどんな技術が受け継がれるのでしょう? 国が把握している技術以外の貴重なスキルは既に幾つも失われています。5年後には定年を迎える沢山の社員の方々には悪いのですが、支える地盤の崩壊が始まっている中、先には大変な未来しか見えないと思っています。
労働者をたらい回しする派遣会社
20代 男性 製造業 現在の職場での派遣期間2年
派遣会社はM&Aを行い、労働者を3年ごとにたらい回しにしている。しわ寄せはいつも労働者側。派遣受け入れ企業に派遣社員や契約社員の受け入れは生涯で何人までと制限をかけるべき。
Q:なぜアンケートに答えてくださいましたか?
いてもたってもいられず。
今年に入って何人も雇い止めに
どう生きていけばいいのか
40代 女性 販売派遣 2年7カ月
1月に前任者と合わせて3年で切られました。求職活動してますが、40代という年齢だけで、書類も受け付けてくれない会社も多々です。どう生きていけばいいのかわかりません。
Q:なぜアンケートに答えてくださいましたか?
今年に入って何人も雇い止めになっています。同じ思いをする人が増えてほしくないから。
――以上が緊急アンケートに寄せられた派遣労働者からの切実な声です。最後に、首都圏青年ユニオン青年非正規労働センター事務局長の河添誠さんのツイートを紹介します。河添さんのツイートを読めば、今回の派遣法改悪法案の成立を狙っている自民党や公明党の国会議員の本質がいかに人権侵害的なものであるかがよく分かります。
派遣法改悪案。「派遣社員を入れ替えればずっと派遣を受け入れることが可能となる」と報道・説明される。「派遣社員を3年ごとに必ずクビ切りすることになる」と報道・説明すべきだ。こんな法律、世間常識として許されないでしょ?人権侵害的だと思いませんか?
— 河添 誠 (@kawazoemakoto) June 19, 2015
派遣労働者の実態。派遣先の企業が長期休業があると派遣社員は干上がる。働く時間が減れば、時給で働く彼らは収入が減るからだ。ゴールデンウィークなどはサイアクだ。その間に別のバイトをしてなんとか生活する人も少なくない。こうした実態も十分に知られないままに派遣法改悪は進む。深く憤る。
— 河添 誠 (@kawazoemakoto) June 19, 2015
派遣労働者の実態。契約期間の途中でも派遣先の都合で契約解除はしばしば。派遣会社も別の派遣先を用意することなどほとんどない。そのまま派遣会社から解雇もザラ。残った期間の賃金保障を求めても払う派遣会社は少ない。ユニオンが交渉してようやく満額を払う。こんなことも知られていない。
— 河添 誠 (@kawazoemakoto) June 19, 2015
派遣労働者は、なんだかスマートな働き方のように宣伝されているが、そんなもんじゃない。さんざん職場で使われた挙句、いらなくなったら「サヨウナラ」ができる「都合のいい」労働者として存在しているにすぎない。「職場の仲間」だった人たちが冷酷に「サヨウナラ」を告げる。
— 河添 誠 (@kawazoemakoto) June 19, 2015
派遣法改悪案。派遣途中で派遣先の都合で切られることはたくさんある。「派遣切り」だ。こういう実態があるのに、派遣期間満了で次の仕事を派遣先が安定的に紹介するなどということは幻想にすぎないことはすぐわかる。まったく空理空論だけが、まさしく空々しく語られて成立しようとしている(怒)。
— 河添 誠 (@kawazoemakoto) June 19, 2015