高齢者が貯蓄を独り占め?→事実はアベノミクスで高齢者も若い世代も同じように貯蓄ゼロが激増、社会保障など老後の備えが欧米と比べて極めて劣悪な日本

  • 2016/6/19
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昨日のエントリー「「消費落ちた高齢者死ね!」と言わんばかりの麻生財務大臣→事実はアベノミクスで生活苦の高齢者165万世帯急増、可処分所得減らしエンゲル係数急上昇で消費激減させたのはアベノミクス」に対して、「若い世代の暮らしは厳しいのに高齢者が貯蓄を独り占めしていい暮らしをすることが日本をダメにしているという麻生財務大臣の趣旨は正しい」との指摘が寄せられましたので、もう少しデータを紹介しておきます。

まず、「若い世代の暮らしは厳しいのに高齢者はいい暮らし」というのは本当でしょうか? 下のグラフは、貯蓄ゼロの2人以上世帯を年齢階層別にグラフにしたものです。どの年齢もアベノミクスで貯蓄ゼロが広がっています。60歳代と70歳以上の高齢世帯の貯蓄ゼロの割合は、30歳代より高くなっています。そして昨日のエントリーで紹介したように、高齢無職世帯の家計収支は平均で月5万9千円も不足していますから、貯蓄ゼロ世帯が3割にものぼっていることがいかに深刻な問題であるかが分かります。ですので、「高齢者が貯蓄を独り占めしている」などというのは事実を踏まえない妄想だということが分かるでしょう。

下のグラフを見ると、アベノミクスによって、高齢者世帯で貯蓄ゼロが増加していることが分かります。とりわけ、高齢者の単身世帯はアベノミクスで貯蓄ゼロが8.2ポイント(2015年-2012年)も増加しているのです。高齢者は早く死んだ方がいいかのように繰り返し主張している麻生財務大臣が進めるアベノミクスは、まさに高齢者の命を削るものとも言えるでしょう。

下のグラフは、内閣府の国際比較調査で、社会保障と個人の貯蓄・資産で老後の備えは十分だと思うかを各国の60歳以上の高齢者に聞いたものです。ここでも2015年の数字が落ち込んで、日本は欧米の半分以下になっています。

そして、下のグラフは、内閣府「高齢社会白書」2016年版からです。65歳以上の生活保護受給者が増えています。

以上、見たきたように、日本の高齢者の暮らしは、諸外国と比べても深刻のものがあります。まさに「下流老人」と呼ばれる状況がアベノミクスによって広がっているのです。それなのに、なぜ「若い世代の暮らしは厳しいのに高齢者が貯蓄を独り占めしていい暮らしをすることが日本をダメにしているという麻生財務大臣の趣旨は正しい」などという意見が寄せられるのでしょうか? それは、すべての年齢階層に広がっている貧困と格差の拡大=貧困層と富裕層の拡大を、若年層と高齢層の世代間格差の拡大であるかのようにすりかえているからです。後藤道夫都留文科大学名誉教授が指摘するところの「上層社会統合」=「富裕層の利益供与システム」を維持するための「世代間対立」への問題のすりかえです。若年層の怒りが富裕層に向かわず、高齢者一般に向かうならば、たとえば、公的年金改悪を政府は実施しやすくなるなど、高齢者向けの社会保障の削減が可能となるというわけです。

日本の場合、こうした「世代間対立」へのすりかえが成立しやすい側面もあることが、メリルリンチとキャップジェミニ社の「ワールド・ウェルス・レポート2011」(※2012年以降のレポートには年齢別内訳は登場しません)で以下のように指摘されています。

世界で最も高齢化が進んでいる日本では、富裕層(金融資産1億円以上)の80%が55歳以上ということですが、問題の本質はアベノミクスがトリクルダウン政策で一部の富裕層をさらに富ませて(たとえば「富裕層40人の資産は日本全世帯の半数の資産合計と同じ」)、すべての年齢階層に貧困が広がって、家計消費が冷え込み日本経済を落ち込ませていることです。高齢者から若い世代へ富を再分配するのではなく、ごく一部の富裕層からすべての年齢階層の国民へ再分配することが必要なのです。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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