人口を分母にすればアベノミクスで正規雇用は増えた?→そもそも「人口」は「正規・非正規」に区別できません、国際基準でアベノミクスは史上最悪の「正規雇用減・非正規雇用増」の雇用破壊政策です

以前、「労働力人口に占める正規雇用の割合はアベノミクスで増えている?→労働力人口に占める正規雇用の割合もアベノミクスの3年間が過去最低です(非正規雇用は過去最大)」という記事を書きましたが、今度は、「人口を分母にすれば正規雇用の割合はアベノミクスで増えている」のだから、「アベノミクスで増えたのは非正規雇用者ばかり」という的外れなプロパガンダ」はやめろとの指摘がありました。

この主張の発信源である竹中正治氏のフェイスブックを見ると、安倍政権と自公与党がこの主張を使って参議院選挙をたたかえば、野党の「的外れなプロパガンダ」をはねかえせるなどというやりとりがされていますが、そんなことは、さすがの安倍政権でも不可能だと思います。なぜなら、政府・総務省自身が以下のように国民に向けて説明しているからです。(※以下は総務省のホームページにある「労働力調査に関するQ&A(回答)」をそのままキャプチャしたものです)

上記にあるように、政府・総務省自身が、その国の「就業状態」を考えるにあたっては、「就業者」や「労働力人口」などをベースに考えるのが国際基準としているわけです。竹中正治氏が主張する人口を分母に「就業状態」を考えるというのは、国際基準から逸脱してしまっているのです。

国際基準から逸脱してしまうと、たとえば、「完全失業率」の国際比較なども不可能になりますし、以下にある日本の女性労働力率のM字カーブの問題などの国際比較も不可能になります。(※ほかにも、JILPTの「データブック国際労働比較2015」にあるように国際基準を踏まえるからこそ様々な国際比較をして各国での「就業状態」を考えることが可能になるのです)

 

また、「労働力率」(人口に対する労働力人口)は、以下の世界の労働力率ランキングにあるように、その国のそれぞれの「就業状態」によって大きく違うのです。

そして、人口と労働力人口との関連そのものが、その国の「就業状態」を考える指標になっているので、政府・総務省「労働力調査」においても、以下のように労働力人口を常に問題にするのです。

それから、前回の記事「労働力人口に占める正規雇用の割合はアベノミクスで増えている?→労働力人口に占める正規雇用の割合もアベノミクスの3年間が過去最低です(非正規雇用は過去最大)」で以下のグラフをつくりました。(※ついでに年齢階層別の表も紹介しておきます)

しかし、上記のグラフと表も「国際基準」を踏まえたものとは言えません。なぜなら、以下のように「労働力人口」に含まれる「就業者数」の中には「雇用者数」のほかに「自営業主・家族従業者数」も入っているからです。

同様に、竹中正治氏の正規雇用者数を「人口」を分母に比較するというのは、「正規・非正規」の区別にまったく関係のない「自営業主・家族従業者数」も分母に含むことになり、比較できないものを比較しているというデタラメにすぎないのです。(そもそも「人口」が「正規・非正規」に区別されると考える方がどうかしていますが)

以上、見てきたように、アベノミクスは史上最悪の「正規雇用減・非正規雇用増」(下の表。「同一労働・差別賃金」の非正規雇用増)の雇用破壊政策だというのが国際基準に沿った国際的な評価になるのです。

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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