派遣労働者の生き血吸う竹中平蔵氏の「朝まで生テレビ!」発言に垣間見る本音=トリクルダウン(一種の所得再分配効果)は「人のもの強奪する」「集団的たかり」だからあり得ない、格差社会で「貧しさエンジョイしたらいい」

日刊ゲンダイによる、1月1日放送のテレビ朝日「朝まで生テレビ!」についての指摘です。

 

「トリクルダウンあり得ない」竹中氏が手のひら返しのア然
日刊ゲンダイ 2016年1月4日

冒頭、「アベノミクスは理論的には百%正しい」と太鼓判を押した竹中平蔵氏。アベノミクスの“キモ”であるトリクルダウンの効果が出ていない状況に対して、「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と平然と言い放ったのである。

トリクルダウンは、富裕層が富めば経済活動が活発になり、その富が貧しい者にも浸透するという経済論だ。2006年9月14日の朝日新聞は〈竹中平蔵・経済財政担当相(当時)が意識したのは(略)80年代の米国の税制改革だった。その背景には、企業や富裕層が豊かになれば、それが雨の滴が落ちるように社会全体に行きわたるとする『トリクルダウン政策』の考え方があった〉と報じているし、13年に出版された「ちょっと待って!竹中先生、アベノミクスは本当に間違ってませんね?」(ワニブックス)でも、竹中氏は〈企業が収益を上げ、日本の経済が上向きになったら、必ず、庶民にも恩恵が来ますよ〉と言い切っている。

竹中平蔵氏がトリクルダウンの旗振り役を担ってきたのは、誰の目から見ても明らかだ。その張本人が今さら、手のひら返しで「あり得ない」とは二枚舌にもホドがある。

竹中平蔵氏のいい加減な発言は今に始まったことではないとはいえ、これは酷いですね。それで、該当する「朝まで生テレビ!」での竹中氏の発言をメモってみると以下でした。

格差は日本でも拡大しています。90年代から25年来、世界で拡大している。私はトリクルダウンという言葉は一度も使ったことはなくて、滴り落ちて来るなんてないんですよ。ありえないですよ。だって、自分がポカンと口を開けていてね、何かが良くなってくるということはなくて、一人ひとりが頑張っていかないと、この厳しい世界ではやっていけない。

それから、「日刊ゲンダイ」が紹介している2013年に出版された『ちょっと待って!竹中先生、アベノミクスは本当に間違ってませんね?』(ワニブックス)というのは、これです。↓

そう、皮肉にも「朝まで生テレビ!」司会者・田原総一朗氏との対談本だったのです。加えて、北海道新聞2014年8月1日付によると、

「法人税を下げ…企業が収益を上げて、日本の経済が上向きになったら、必ず、庶民にも恩恵が来ますよ」と述べ、法人減税で経済を活性化すれば、その効果は庶民にまでトリクルダウン(滴り落ちる)と言い切る。

――と、アベノミクスによる法人税の減税もトリクルダウン効果の重要なファクターだと、竹中氏は田原氏の前で豪語していたわけです。そして3年後の「朝まで生テレビ!」で、竹中氏は田原氏の前で明白な手のひら返しをし、さらにそれが手のひら返しであるにもかかわらず、田原氏は一切そのことを指摘すらしなかったわけです。「自民党区議のサクラ疑惑」とともに、面前での許し難い手のひら返しすらもスルーしてしまう司会者・田原氏をすえる「朝まで生テレビ!」は即刻メディアから退場すべきだと思います。

竹中氏の発言をメモしてみて、もうひとつ大きな問題があることに気づきました。それは、前段で、「格差は日本でも拡大しています。90年代から25年来、世界で拡大している」と竹中氏が明言している点です。以前、竹中氏は日本では格差は拡大していないと繰り返していたのです。当時、私はブログで「構造改革で格差と貧困は拡大していない? – 竹中平蔵パソナ会長の主張を検証する」というエントリーを書いているのですが、その中から紹介すると、『中央公論』2009年9月号では、竹中氏は、「小泉内閣の5年間で、ジニ係数から見える格差の拡大は止まるんですよ。つまり、『構造改革のせいで格差が拡大した』ではなくて、『構造改革のおかげで格差の拡大が止まった』んです。にもかかわらず、ワイドショーによる間違った刷り込みで、真実が捻じ曲げられてしまいました」と述べていたのです。

いまや構造改革によって貧困と格差が拡大したことは常識の範疇にもなってきていますが、「格差は拡大していない」と豪語していた竹中氏本人が、様々な経済データを持ち出すまでもなく、これまた手のひら返しで「格差は日本でも拡大しています。90年代から25年来、世界で拡大している」と明言したわけです。このことは、その場その場で自分の都合のいいようにウソを平気でつきまくるペテン師経済学者であることを竹中氏本人が証明したことにもなります。

また、「私はトリクルダウンという言葉は一度も使ったことはなくて、滴り落ちて来るなんてないんですよ。ありえないですよ。だって、自分がポカンと口を開けていてね、何かが良くなってくるということはなくて、一人ひとりが頑張っていかないと、この厳しい世界ではやっていけない」というトリクルダウン否定の開き直り方にも竹中氏の本性があらわれているようにも思います。

たとえば、竹中氏は小泉内閣の経済財政政策担当大臣をやっているときの国会答弁でこんな発言をしています。

貧しく楽しく生きるチョイスできる格差社会

▼151国会 衆議院 内閣委員会 竹中平蔵氏の発言(国会議事録より)
2001年05月23日

貧富の格差云々でありますけれども、これはもう先ほどの時代認識だということに尽きているのですけれども、私は、例えば貧しく楽しく生きるチョイスというのはあるのだと思います。貧しいといったって、日本はフリーターをしたって恋人と海外旅行ができるぐらいの生活はできるわけですから、実は、貧しくというよりは気楽にというか、しかし楽しく生きる、そんなに豊かじゃないけれども楽しく生きるというチョイスは私たちにはあるわけですね。

でも、私は本当に豊かになりたいのだと思っている人に対してはそういったチョイスがあるべきで、結果的に私はまさにこれが自由なんだと思います。どのように生きるかという自由を保障する。楽に生きるという自由もあれば、豊かに生きるという自由もある。楽に生きたいと思う人たちが頑張っている人と同じだけの所得をよこせというのは、これはむちゃくちゃな話であるというふうに思いますから、私は、まさにそこは個性で、個性的に自由に生きるようなシステムを保障するというのが私たちの目指すべき社会であるというふうに考えています。

それから有名なこの発言。

若い人には「貧しくなる自由がある」「貧しさをエンジョイしたらいい」

私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。(中略)「貧しさをエンジョイしたらいい。」
竹中平蔵(下)「リーダーは若者から生まれる」(東洋経済ONLINE)

集団的なたかりみたいなものが所得再分配
竹中平蔵著『経済ってそういうことだったのか会議』

 

所得再分配、社会保障は、人のものを強奪することを正当化するシステム

竹中平蔵著『ITパワー 日本経済・主役の交代』

これらの竹中氏の発言と今回の朝生発言で垣間見えるのは、アベノミクスはまたぞろ「自己責任論」の強化が必要だと竹中氏が思っていることをはじめ、富裕層と大企業を優遇する経済政策を進めるときは、便宜上トリクルダウンを全面に立てて来たけれど、本音のところでは、トリクルダウンなど一種の所得再分配効果的なものを求めるのは、「人のものを強奪することを正当化する」「集団的なたかり」で「むちゃくちゃな話」に過ぎないのだから、格差が拡大しても「貧しさをエンジョイしたらいい」「貧しく楽しく」「個性的に自由に生きる」べきだと竹中氏は心底思っているということでしょう。だから、今回の「朝まで生テレビ!」での発言は、派遣労働者の生き血を吸う竹中氏の本音が出たものだと私は思います。

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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