派遣労働者から強奪し「改革利権」「究極の天下り」「学商の独り勝ち」の竹中平蔵パソナ会長言説=辛い思いする人、痛みこうむる人がいる格差社会こそ経済にプラス、社会保障は集団的なたかり

  • 2015/8/20
  • 派遣労働者から強奪し「改革利権」「究極の天下り」「学商の独り勝ち」の竹中平蔵パソナ会長言説=辛い思いする人、痛みこうむる人がいる格差社会こそ経済にプラス、社会保障は集団的なたかり はコメントを受け付けていません

(※2009年9月に書いた記事なので古いですが、いま国会で労働者派遣法改悪を強行しようとする安倍政権の政策指南役である竹中平蔵氏の言説を知っておくのは現時点でも重要ですので紹介します)

派遣労働者から強奪する竹中平蔵氏が「改革利権」でパソナ会長就任

先日発表された2009年版厚生労働白書によると、今年9月までの1年間に「派遣切り」などで職を失う非正規労働者は全国で22万9千人にのぼり、そのうち約6割、約13万人は、2004年に解禁された製造現場への派遣労働者です。その失職者約22万9千人のうち居住状況が判明した12万5千人を対象にした調査では、少なくとも約3,400人が住まいも同時に失い、生活基盤を損なわれる苦境に立たされていると指摘しています。

こうした住まいも仕事も同時に失う派遣労働者の惨状が広がるなか、唖然としたのが、竹中平蔵氏が人材派遣大手のパソナグループの取締役会長に就任したとのニュースです。

竹中平蔵氏「パソナ会長」就任は「究極の天下り」「学商の独り勝ち」

「週刊ポスト」(9/18)の「『自民壊滅』『死屍累々』のA級戦犯が…竹中平蔵『パソナ会長』就任、『年俸1億円』の独り勝ち」という記事は次のように指摘しています。

総選挙投開票日の夜、竹中平蔵氏は饒舌だった。民放の選挙特番に出演し、かつての“元同僚”たちが次々と討ち死にしていく様を、「これが政治、小選挙区は怖い」、「自民党のオウンゴール」などと分析して見せた。(中略)

「われわれへの逆風の理由は、小泉構造改革で生じた地方の衰退、貧富の格差に対する国民の反発です。その選挙戦の真っ只中に、こんな再就職を決めるなんて…。竹中氏は今は民間人だから、『やめろ』とはいえないが、開いた口がふさがりません」(自民党の江藤拓・代議士)(中略)

181議席を減らし、一敗地にまみれた自民党。有権者が「NO」を突きつけた理由の一つは、「小泉構造改革」への反発だった。しかし、この政策の中心にいた人物は、古巣の壊滅的な大敗などどこ吹く風。あろうことか、自民党候補者たちが平身低頭の選挙戦を戦う真っ只中に、自身が政治家時代に推進した政策で成長した企業にちゃっかり再就職し、大金を手にしようとしている。(※引用はここまで)

それから、「中日新聞」(9/8)は、「規制緩和旗振り役・竹中元総務相 派遣大手パソナG会長に 究極の天下り/ワーキングプア『原因作ったのに…』」という記事で次のように指摘しています。

人材派遣最大手のパソナグループ会長に竹中平蔵元総務相が就任し、波紋を広げている。格差社会を生んだ元凶ともいわれる改正労働者派遣法。この法改正に深くかかわり、規制緩和の旗振り役として、派遣業界を急成長させた“功労者”が、ほかならぬ竹中氏であったからだ。「これぞ究極の天下りか」と首をかしげる向きは少なくない。(中略)

この就任を「どう考えてもおかしい。出来レースというか、自己取引みたいなもの」と批判するのは、経済評論家でもある明治大の高木勝教授(経済政策)だ。

竹中氏は、小渕内閣の経済戦略会議委員を務め、「労働者派遣の原則自由化を一刻も早く打ち出すべきだ」と提唱。小泉内閣の経済財政担当相だった2003年には、製造業にまで派遣対象業種を拡大した改正派遣法が成立した。

「多様な働き方という美名のもとに、労働者を好景気では雇い、悪くなれば解雇する調整弁にしたのが改正派遣法。これで人材派遣業界は拡大したが、国民には雇用破壊というツケが回された」と高木氏はいう。

規制緩和で、2000年に33万人だった派遣社員は2008年には140万人に。非正規労働者は労働者全体の3分の1を占めるまでになった。

その結果、年収200万円以下のワーキングプアは1,000万人を超えた。昨秋からの世界金融危機では派遣労働者が真っ先にクビにされた。09年版厚生労働白書によると、失業した非正規労働者は昨年10月から今月までの間に、約22万9000人に達する見通しだ。(中略)

「郵政民営化に影響力を行使した後、かんぽの宿の一括譲渡を実現させようとしたオリックスの宮内義彦会長と同じ。自分が関わったところで自分が利益を得るという構図は、まるで政商ならぬ学商だ」--前出の高木教授は言う。「自分が政治で関わった分野の企業に招かれても、普通は受けない。しかも特別顧問ならまだしも、会長という企業経営のトップになるというのは大いに疑問。法律違反ではないとしても、道義的責任があるはずだ」(※引用はここまで)

また、「週刊ポスト」では、パソナの売り上げが、竹中氏の“功労”により、2003年5月期の1,356億円から、2008年5月期の2,369億円へと1.7倍以上になったことや、安倍政権下の2007年に公務員の天下りスキーム「総務省人材バンク」の斡旋事業をパソナが受注したことも“竹中効果”ではないかと指摘しています。

「自らが旗振りした規制緩和政策で拡大した派遣業界に、政治家を辞めた後とはいえ、経営者として就任し、大金を受け取るというのは、まさにマッチポンプ。(中略)これは竹中氏の規制改革路線が正しかったか否かの問題ではありません。パソナへの再就職そのものが道義的に批判されてしかるべきです」(※明治大・高木勝教授談、「週刊ポスト」(9/18)からの引用はここまで)

規制緩和、構造改革の同じ“旗振り役”だった中谷巌氏が“懺悔”したのとは大違いで、竹中氏はいまだに様々なメディアに顔を出して、「経済が悪くなったのは構造改革を止めたから」などと言って回っています。

それから、竹中氏は、『ニッポン経済の「ここ」が危ない!』(文藝春秋、2008年2月刊)という作家の幸田真音氏との対談本の中で、次のような会話をしています。

辛い思いをする人、痛みをこうむる人がいて経済全体プラスになる
格差を問題視すると日本経済は危なくなる

竹中 僕はニューヨークの5番街がすごく好きなんです。ミッドタウンから北のほうに向かって行くと、そこには人生と社会の縮図があります。このストリートに住むこともできるし、あちらのストリートに住むこともできる。それはあなた次第ですと。そこには生活の違いがあります。でも日本人は…。

幸田 格差って言いますものね。そんな違いがあったら格差だって(笑)。

竹中 住むストリートが違うどころじゃなくて、それこそ1メートル離れているだけでも格差だって言うでしょう(笑)。

確かに競争が厳しくなると、辛い思いをする人が出てくる。しかし、結果的に社会全体としての雇用は増えている。

幸田 新たに職を得られる人が出てくるわけですからね。

竹中 痛みをこうむる人もいれば、必ずメリットを受ける人がいて、経済全体としてはプラスの効果を間違いなく受けている。そういう社会を考えないといけない。(※引用はここまで)

竹中氏は、小泉内閣の閣僚として経済政策の司令塔をつとめました。労働分野では、小渕内閣時の経済戦略会議の委員となり、「日本経済再生への戦略」(経済戦略会議答申)を1999年2月にまとめ、そこに「労働者派遣の原則自由化を一刻も早く打ち出すべきである」と明記しました。労働者派遣の原則自由化こそが、日本経済を再生し、「個人の転職能力を高め、雇用の安心を確保する政策」と打ち出したのです。これを受け、1999年12月、労働者派遣法「改正」で派遣労働は一部の業種を除いて自由化され、そして、2004年、竹中氏が経済財政政策担当大臣をつとめる中で、製造業への派遣労働が解禁されたのです。

総務省の「労働力調査」によると、2000年に33万人だった派遣社員は2008年には145万人と4倍以上に増加。2000年に26%だった非正規社員は2008年には34%、労働者全体の3分の1以上を占めるようになってしまいました。

貧困と格差が広がる日本社会の現状は、麻生首相のように「64年前の焼け野原」とくらべるのでなく、竹中氏がうっとりと思い浮かべ、あこがれる「ニューヨーク5番街」とくらべるものなのでしょう。竹中氏が当然視する「人生と社会の縮図」、億万長者の住む華やかなストリートと、貧困と犯罪のハーレムが隣り合わせで、一方に富が集中し、もう一方には貧困が蓄積する格差社会。どちらに住むかは、「あなた次第」とされる弱肉強食、優勝劣敗の「自己責任社会」です。その言葉どおり、竹中氏は、自分の手で派遣労働を拡大して、派遣切りで「痛みをこうむる人」が約13万人出たけれども、「必ずメリットを受ける人がいて、経済全体としてはプラスの効果を間違いなく受けている。そういう社会を」つくったのです。

竹中氏は、自分の思い通りの社会をつくりあげて、自分自身が「必ずメリットを受ける人」に仕立てあげたわけです。労働者の「既得権益」を打破して、竹中氏自身が「改革利権」を得たのです。

また、上記で紹介した『ニッポン経済の「ここ」が危ない!』の中で、こんなことも語っています。(※はっきり言って『竹中平蔵の「ここ」が危ない!』にタイトルを変えた方がいいと思うような中身ですが)

弱者の政治が政策を間違ったものにする

竹中 ハーシュライファーという人が唱えた「パワーパラドックス」という法則があるんです。簡単に言うと、こんな法則です。経済的な弱者は政治的に保護される→保護されることで競争から解放され自由時間ができる→自由時間を政治活動に使う→経済的弱者は政治的強者になる。ビジネスで忙しい人間は、時間のかかる政治活動なんかやっている暇はありません。その結果、経済的弱者は政治的に大きな声を持つようになる、というパラドックスです。思い出してみてください。霞が関や永田町で陳情を行っている人たちは誰でしょう。競争で忙しい為替のディーラーがデモをしているのは見たことがありません。日本ではこのパラドックスの影響が社会全体に大きく出ているように思います。言うまでもありませんけれど、一部の政治的な強者の存在感が大きくなりすぎると、決定される政策は間違ったものになりやすい。(※引用はここまで)

さらに極めつけは、『経済ってそういうことだったのか会議』(竹中氏と佐藤雅彦氏の対談本、日本経済新聞社、2000年4月刊)と、『ITパワー 日本経済・主役の交代』(竹中氏と中谷巌氏の共著、PHP研究所、2000年2月刊)の中で、竹中氏が語っている内容です。こんな人物に、2001年から2006年までもの間、日本経済の舵取りをやられていたかと思うと目眩がしそうですが、いま現在の貧困の惨状が当然の結果であったのだとも言えるでしょう。

所得再分配、社会保障は、人のものを強奪することを正当化するシステム
集団的なたかりみたいなもの

竹中 やはり多くの人は税による所得の「再分配効果」というのを期待するわけです。再分配効果というのは、たとえばこういうことです。佐藤さんはすごく所得が多いとする。こちらのAさんは所得が少ない。そうすると、Aさんは佐藤さんからお金を分けてもらいたいわけです。佐藤さんが儲けたお金の一部を自分ももらいたいんですよ。もらいたいときに、政府を通してもらうんですよ。

佐藤 でも、それ、もらいたいって、ずるいじゃないですか。

竹中 ずるいですよ、すごく。『フェアプレーの経済学』という本にもはっきりと書かれているんです。著者はランズバーグという数学者なんですけど、すごくシンプルに見ていくと、今の税はおかしいと言うのです。彼はそれをこんなふうに表現しています。

子供たちが砂場で遊んでいるんです。ある子はオモチャをたくさんもっている。その子はお金持ちの家の子なんですよ。もう一人の子は家が貧しいからオモチャを一個しかもってないんです。しかし、だからといって、自分の子に向かって「○○ちゃん、あの子はオモチャたくさんもっているからとってきなさい…」などと言う親がいるかというわけです。

ところがそんなことが、国の中では税というかたちで実際に行われているという言い方をしているんですね。これは、みんなのやる気をなくさせる原因になります。

一方に対しては、いくら働いても税金をとられるということでやる気をなくさせる。もう一方に対しては、そんなに働かなくても食べていけるということで、まじめにやる気をなくさせると。だから、政府がお金を税金としてとって、その所得を再分配するような社会の機能が大きくなりすぎると、その国はダメになると。それはまったくその通りですよね。

集団的なたかりみたいなものが所得再分配という名のもとに、税にまとわりついて生まれてくるわけです。(※『経済ってそういうことだったのか会議』からの引用はここまで)

所得再分配、社会保障は、人のものを強奪することを正当化するシステム。(『ITパワー 日本経済・主役の交代』より)

さらにさらに驚くのが、『週刊エコノミスト』(09.5/19)の「インタビュー・構造改革の旗振り役 竹中平蔵氏に聞く」で「経済が悪くなったのは構造改革を止めたから」と、平然と答えたあげく、「不況への処方箋」を聞かれて、「まず法人税率を下げ」、「羽田空港のキャパシティーを2倍、3倍にして24時間空港に」作り変えると、「日本は蘇る」と断言しています。(※もうつきあってられないので、このへんで終わります)

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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