「軽減税率」による貧困層への「負担軽減」額は高所得層の半分以下、貧困層の消費税10%負担率は高所得層の1.65倍も高い、消費税10%は貧困と格差をいっそう拡大し東日本大震災の被災者をさらに襲う人災となる

  • 2016/1/7
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日本経済新聞の報道です。

軽減税率の負担減、世帯年収で9000円の差 財務省試算
2016/1/6 0:29日本経済新聞 電子版

2017年4月の消費増税時に導入する軽減税率で、1世帯当たりの負担軽減額が多くの世帯で年間1万2千円前後に上ることが分かった。財務省が民主党に示した試算によるもので、世帯の収入額が多いほど負担軽減額は大きくなる傾向にあり、最大で約9千円の格差が生じる。民主党は国会論戦で「低所得者ほど税負担が重くなる逆進性の緩和につながらない」と追及する構えだ。

軽減税率は17年4月に消費税率を10%に引き上げる際、酒類と外食を除く食料品全般の税率を8%に据え置く。自民、公明両党の協議で低所得者の負担を和らげる観点から導入が決まった。

財務省が民主党に提示した試算は、総務省が13年に実施した家計調査のうち、2人以上の世帯の消費支出額などを基に、年収ごとの消費税負担の軽減額をはじき出した。

たとえば、世帯年収が450万円以上500万円未満の場合、消費税の年間負担額は23万6千円。軽減税率を導入せず一律10%の税率だった場合に比べると1万2685円の負担軽減になる。

年収が200万円から750万円にかけての幅広い世帯で、1万1千~1万3千円程度の負担軽減となっている。

負担軽減額は世帯の年収額が多いほど大きくなる。年収1千万円以上の世帯の軽減額は1万5千円を超える。年収1500万円以上は1万7762円に上る。一方、年収200万円未満の世帯だと軽減額は8372円にとどまる。軽減額に2倍以上の格差が生じる。

試算は1人当たりの年間負担軽減額も示している。たとえば年収200万円未満なら3563円。1千万円以上になると4千円を超え、1500万円以上では5104円に達する。1人当たりの軽減額にも、年収が多いほど増える傾向がある。

高所得者ほど恩恵が大きくなることが浮き彫りになったとして、民主党は軽減税率の低所得者対策の政策効果を疑問視。財源1兆円が定まっていない問題とあわせ国会で追及したいとしている。

ただ年収200万円未満の世帯の消費税負担額は年間10万7089円。年収1千万円以上の世帯では年間37万円超。政府・与党は年収が多い世帯は軽減税率の恩恵以上に消費税を多く支払っていると反論する方針だ。

 

この日経の報道から消費税10%負担率も出して分かりやすくグラフをつくってみたのが以下です。

ようは、「軽減税率」による「負担軽減」額は、年収200万円未満世帯より年収1,500万円世帯が2倍以上の「恩恵」を受け、「軽減税率」を導入したとしても消費税10%の負担率は年収200万円未満世帯より年収1,500万円世帯が1.65倍も多くなるということです。結局、「軽減税率」によっても消費税10%は、貧困と格差をいっそう拡大するだけだということです。

それから、上の表は、私が所属する労働総研の労働者状態分析部会でお世話になっている財政問題研究者の垣内亮さんが作成した「東北6県の税目別税収の全国の税収に占める割合」です。

東北地方は、住民も企業も東京など大都市にくらべ所得が低いために、消費税の税収割合が断トツで高くなっています。ここでもどの地方よりも東北地方に消費税増税が重くのしかかることになります。加えて東日本大震災後は、被災者が所得を失い所得税はかからない人が多くなっていて、この点からも消費税増税は一層重い負担となるのです。

また、東北地方は関東などにある大企業の工場に部品を供給する下請企業の集積地でもあります。上のグラフにあるように、日本商工会議所など中小企業4団体による調査によれば、「消費税が引き上げられた場合、販売価格に転嫁できるか」という問いにたいして5~7割の中小業者が「転嫁できない」と答えています。多くの中小業者は、自らの利益を削って消費税を納入しているのです。消費税増税は東北地方の下請中小業者に壊滅的な打撃を与えることになります。

同じく垣内亮さんが計算したところによると、消費税が10%になると、宮城・岩手・福島の被災3県の消費税負担額が5,637億円となり、住民税負担額3,741億円を大きく上回り被災地住民に重くのしかかることになります。(※2010年度決算による計算で、内訳は、宮城県→消費税10%負担額2,413億円・住民税負担額1,698億円。岩手県→消費税10%負担額1,273億円・住民税負担額786億円。福島県→消費税10%負担額1,951億円・住民税負担額1,277億円)

それから、上の表は、唐鎌直義立命館大学教授が作成した「地域別に見た貧困率・保護率・捕捉率」です。東北は全国平均より貧困率が高く捕捉率が低くなっています。

東日本大震災から今年は5年を迎えるわけですが、いまだ避難生活を送る人は約18万2千人にのぼっているなか、消費税増税は被災者をさらに襲う人災になるということは明白だと思います。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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