そりゃあんまりだ! ハローワーク職員は官製ワーキングプア

  • 2015/8/24
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(※2009年10月に書いた記事です)

NHKテレビの「そりゃあんまりだ! どうにかして!働く場」(10/23)という番組の中で、ハローワークにおける「官製ワーキングプア問題」が取り上げられましたので要旨を紹介します。(文責=井上伸)

冒頭、ハローワークの非常勤職員の以下の声が紹介されました。

「私は非正規の公務員としてハローワークで相談員をしています。マンツーマンで就職のお世話をしていますが、私たちの処遇は、1年ごとの契約でいつも雇い止めの不安を抱えながら働いています。レベルアップのための研修もなく、求職者に万全のサポートができるか危惧しています」

「経験を積んで幅広い相談ができたり、より良い対応ができても、労働条件通知書には、昇給も退職手当も賞与も無しという文字が並んでいます。契約更新の有無という欄には、『契約を更新する場合が有り得る。なお、雇用期間終了後の自動更新は行わない』とあり、わかりにくい表現ですが、これは、いつでも雇い止めができるという意味です。2日間の研修がありますが、それは公務員としての心構え的なことだけで、具体的な業務の研修はありません。年々相談業務も複雑化し難しくなっていますが、スキルアップは自己責任というわけです。相談に訪れる人の人生を左右する仕事ですから、こんなことがあっていいのか、不安や恐れを感じます」

「同じ仕事をしていても正規と非正規では報酬が大きく異なります。条件のいい求人票を見つけて自ら応募して辞めていった者もいます」

「昇給も賞与もありません。社会保険もありません。評価もなく、将来の展望もなく、非常勤職員はないものだらけです」

「非正規の問題の第一は低賃金です。昇給、昇格はなく通勤手当もないこともあります。職場全体が不況の影響で業務が増え休む間のない過酷な状況です」

次に、ハローワークの正規公務員の声です。

「私どもの仕事は法律や専門的な知識も必要ですから、非常勤の方たちがいきなり数日の研修を経て窓口に出されるというのは、非常に酷な状態だろうと思っています。非常勤の方たちにとっては、とまどいと不安、私ども正規職員にとっては、それをフォローするのに追われるという大変まずい状況になっていますから、十分な行政サービスができない、といった場面も残念ながら出てきます」

「不十分な体制で仕事をするということは、結局、利用者にしわ寄せがいくということになります。私どもの仕事というのは、安定した雇用の場を確保するというのが仕事です。それなのに、足元のハローワークの職場自体でこれだけの不安定雇用を生み出しています。このことは、職員としてはとてもつらく残念なことだと思っています」

こうした声を紹介したあと、NHKの解説委員は、「雇用情勢が悪化して、ハローワークの業務はどんどん増え続けていますが、その一方で、行政改革により、正規の公務員数は毎年減らされているのです。業務は増えていく一方で人手は減っていく、という中で、非正規の方たちがたくさん使われるということになっています」と解説。

ゲストの反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さんは、「雇用がどんどん壊れていく中で、本来なら公共サービスは踏みとどまらなければいけなかったのですが、民間企業がこんなに厳しく働いているのに公務員はなんだという公務員バッシングがこの十数年ずっと起こって、公務員の労働条件や、公務員人数もどんどん削られ続けて、今は地方公務員の3分の2は非正規になっているという調査結果もあります。高級官僚の天下り問題などは無くさなければいけません。しかし、いまの公務員バッシングは、本来の現場の公共サービスまで削ることになってしまっています。高級官僚の天下り問題などと現場の公共サービスは、同一に論じてはいけないと思います。ハローワークなどは、いちばん住民に身近な公共サービスですから、ここが壊れていくということは、結局、私たちが十分な住民サービスを受けられなくなるということになり、結局、私たちに跳ね返ってくる問題になります。そのことをきちんと踏まえないといけないと思います」と指摘しました。

NHK解説委員は、「いちばんの問題は、業務の量が増えて仕事の内容も複雑になってきているのに、非常勤職員である相談員の待遇は低いままで、十分な研修も受けられない状況が続いているということです。今後、緊急の雇用対策として、ハローワークで就職の相談だけではなくて、生活保護の申請とか、いろいろな手続きがワンストップサービスで可能になるよう検討されていますが、そうするとますます現場が混乱していくかもしれない。この問題について厚生労働省がどう考えているのか聞いてきました」と述べ、これに対して、厚労省・山井和則政務官は、「人の人生にアドバイスをする大切な仕事である以上、それに見合う待遇、そして雇用の安定というものを考えていかないといけません。すぐにとはいきませんが、そういう方向性で考えていかないとダメだと思います。『官製ワーキングプア』と言われているように、ハローワークの職員だけの問題だけではありません。様々な現場の職員の方々が『官製ワーキングプア』ということで苦しんでおられます。『官製ワーキングプア』の待遇改善と民間の非正規雇用の待遇改善をセットでやっていく必要があると思います」と回答しました。

最後にNHK解説委員は、「この問題は、『官製ワーキングプア』だという批判が高まってきたことを受けて、ようやく目が向けられるようになってきました。公務員の処遇を決める人事院は、非常勤の処遇を見直す方向で検討し始めていまして、来年の3月までに報告を出すということになっています。何とかして欲しいという現場の声は切実です、対策を急いで欲しいと思います」と締めくくりました。

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新雑誌『KOKKO(こっこう)』(堀之内出版)9月創刊!★〈特集〉官製ワーキングプア

 

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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