アベノミクスの雇用破壊で深刻化する貧困=正規雇用減・非正規雇用激増→生活苦で「食事の回数減らした」144万人、「医者にかかれなかった」89万人に

「東京新聞」の報道です。

首相、国会でも「地方にアベノミクス」強調 でも実情は…高知ルポ
「東京新聞」2016年1月14日付 朝刊

安倍晋三首相は13日の衆院予算委員会で、地方の有効求人倍率の上昇について「働いている人の絶対数が増えた結果だ」と述べ、自身の経済政策アベノミクスが景気回復に結びついていると強調した。

これに対し、維新の党の水戸将史氏は「表面的には地方の雇用が改善しているように見えるが、倍率の上昇は労働力人口の減少が原因だ」と反論。地方から大都市圏への人口流出が続いている事実を示し、「むしろ地方経済が縮小している表れで、改善したとは到底言えない」と訴えた。(中略)

安倍晋三首相は最近、政権の経済政策アベノミクスが地方に波及しつつある根拠として、高知県の有効求人倍率が初めて1倍を超えたことを繰り返し取り上げている。大都市圏から遠く離れた高知で本当に景気は上向き、雇用も増えているのか。南国・土佐を歩いた。

高知労働局によると、高知県の求人倍率は昨年9月、1963年の統計開始以来初めて、仕事を探す人と仕事の件数が同じ1.00倍に達した。最新の11月は1.05倍だった。

首相は11月に都内で開いた自民党立党六十年記念式典で「高知県は初めて有効求人倍率が1倍に到達した。おめでとうございます。県庁で祝杯を挙げたそうだ」と紹介した。今月8日の衆院予算委員会でも、政権の実績として高知の有効求人倍率に言及した。

だが、高知県の雇用担当者は「祝杯なんて聞いたことがない。都市伝説ではないか」と首をかしげる。(中略)

高知県では、高齢者福祉や建設関係を中心に求人が増えると同時に、職を求める人が減っているのが実態だ。昨年11月の求職者数は1万3,286人で、2006年度の1カ月間の平均1万8,375人から約3割減った。高知労働局の原幸司地方労働市場情報官は「求職者は前年同月比で33カ月連続の減少。年度ごとに如実に減っている」と説明する。この間、有効求人倍率は上昇を続けている。

求職者が減った原因は、条件のいい仕事のある大都市圏への若者の流出だ。高知県では14年まで14年連続で県外への転出が転入を上回る。県内の仕事は非正規の割合が高く、正社員のみの求人倍率は昨年11月で0.56倍。全国で沖縄県に次いで低い。

若者の就職を支援するジョブカフェこうち所長の小松忠実さん(62)は「正社員の仕事を増やし、若者が県外へ出て行く状況を変えなければ、有効求人倍率が1倍を超えても手放しで喜べない」と話した。

<有効求人倍率=求人数/求職者数> 分母に当たる仕事を探す人が減れば、仕事の件数が変わらなくても倍率は上がる。全国の有効求人倍率は、最新の昨年11月時点で1.25倍。第2次安倍政権が発足した2012年12月は0.83倍だった。

 

高知県のホームページに掲載されている「高知県の就業者数の推移」をグラフにしてみたものが以下です。わかりやすくするために安倍政権下を赤の棒グラフで、民主党政権下の3年を青の棒グラフで示しています。下のグラフを見ると一目瞭然ですが、安倍首相の「働いている人の絶対数が増えた結果だ」というのはまたしても大ウソであることが分かります。

それから、就業者数というのは企業経営者や自営業者等も入るため、雇用されている労働者数で見てみると、総務省「労働力調査」で地方ブロックごとに分かるので四国4県の雇用者数をグラフにしてみたものが以下です。四国4県で見ても安倍首相の「働いている人の絶対数が増えた結果だ」というのがウソであることが分かります。

安倍首相はことあるごとに「アベノミクスで雇用が増えた」と吹聴していますので、この際、いくつか総務省「労働力調査」から確認しておきましょう。

上のグラフは非正規・正規の雇用者数の長期推移と、直近の安倍政権と民主党政権3年間の非正規・正規の雇用者数を見たものです。グラフを見てわかるように、非正規雇用は増え続け、アベノミクスで初めて2千万人を超えてしまいました。一方、正規雇用は、安倍政権下で最も多いのが2015年7~9月平均の3,329万人ですが、民主党政権下で最も多い2011年4~6月平均の3,416万人から87万人も減ってしまっているのです。

上のグラフは男性雇用者数を見たものです。民主党政権下より安倍政権下において、正規が減り、非正規雇用が増え続けています。

上のグラフは女性雇用者数を見たものです。非正規雇用は増え続け、正規を見ても民主党政権下で最も多かった1,073万人を安倍政権下では一度も上回ったことはないのです。結局、アベノミクスが増やしているのは非正規雇用だけです。そして、非正規労働者の厳しい状況が次のように報道されています。

非正規労働者が家計支える世帯 厳しい経済状況に
NHKニュース 1月15日 5時25分

パートや派遣社員などの非正規労働者が家計を支える世帯では、5世帯に1世帯が食事の回数を減らすなど経済的に苦しい状況にあることが労働組合の連合の調査で分かりました。

連合と連合総研は去年10月、3大都市圏で非正規雇用で働く20代から40代の男女およそ2000人を対象に経済的な状況などについてインターネットを通して質問しました。

家計を主に支えている人は全体の3割以上に上り、このうち世帯の年収が、200万円未満と答えた人は32%、200万円以上・400万円未満は48%でした。

生活が苦しいためにせざるを得なかったことを複数回答で尋ねたところ、「食事の回数を減らした」が21%と5世帯に1世帯に上ったほか、「医者にかかれなかった」と「税金や社会保険料を支払えなかった」が、それぞれ13%でした。また、13%が消費者金融からの借金を抱えていると回答し、経済的に苦しい状況にあることがうかがえます。

調査を担当した連合総研の小島茂副所長は「非正規労働者が家計を支えている世帯の生活実態は特に厳しく、改めて課題が浮き彫りになった」と話しています。

 

この調査結果をアベノミクスの雇用の現状に単純にあてはめてみると、以下になります。

◆非正規雇用の男性633万人(2015年7~9月平均)×49.0%(非正規労働者が主稼得者の割合)=310.17万人
◆非正規雇用の女性1,339万人(2015年7~9月平均)×28.1%(非正規労働者が主稼得者の割合)=376.259万人
◆非正規労働者が主稼得者の男女合計686.429万人
◆生活苦で「食事の回数減らした」21% → 686.429万人×21%=144.15万人
◆生活苦で「医者にかかれなかった」13% → 686.429万人×13%=89.23万人
(※厳密にいうと調査結果は世帯割合ですし調査対象の年齢層も限られていますのでそう単純ではありませんが)

上記で紹介した「非正規・正規の雇用者数の推移(民主党政権と安倍政権)」にあるように、民主党政権の最後の2012年10~12月平均が1,843万人で直近の2015年7~9月平均が1,971万人ですから128万人も非正規雇用を増やしています。結局、アベノミクスが正規雇用を減らし、非正規雇用を激増させているということは、生活苦で食事の回数を減らさざるを得なかったり、医者にかかれなかったりする労働者を激増させているわけですから、アベノミクスが景気回復に結びつく道理がないのです。

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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