日本の労働分配率はこの30年で2割減、アメリカの3倍も激減=日本企業の内部留保は過去最高で貧困は過去最悪

OECD東京センターでデータ収集の仕事をしていて気がついたデータを紹介しておきます。(このシリーズってどこまでも続きそうですが(^▽^;)

上のグラフは、主要国の労働分配率のグラフです。日本の労働分配率がいちばん高かったのが1977年で直近で出されているデータは2011年です。主要国の労働分配率の数字は以下になります。

フランス 1977年80.0%→2011年68.6% 【マイナス14.3%】
日本 1977年76.1%→2011年60.6% 【マイナス20.4%】
ドイツ 1977年75.3%→2011年67.6% 【マイナス10.3%】
イギリス 1977年68.9%→2011年69.6% 【プラス1.01%】
アメリカ 1977年68.2%→2011年63.7% 【マイナス6.6%】
(※プラスマイナスの数字は下がったポイントでなくパーセンテージです)

イギリス以外はどの国も労働分配率が下がってしまっているわけですが、日本の下がり方は尋常ではありません。1977年にはフランスに次いで日本は2番目に労働分配率が高かったのに2011年には最下位に転落し、しかもその下げ幅は、ドイツの2倍、アメリカの3倍以上にもなっているのです。

実際、OECDも「雇用アウトルック2012 日本に関する分析」の中で次のように指摘しています。

 

日本の労働分配率は大きく低下している

日本の労働分配率は過去20年間で大きく低下しており、これは大半のOECD加盟国よりも大幅な低下であった。1990年から2009年までの間、OECD加盟国全体では労働分配率が3.8%低下したのに対し、日本では5.3%低下した。さらに、この傾向は所得格差の大幅な上昇とともに生じた。労働分配率全体が急速に低下した一方で、上位1%の高所得者が占める所得割合は増加した。結果として、労働分配率の低下は、上位1%の高所得者の所得を除けば、より一層大きなものとなるであろう。

OECD「雇用アウトルック2012 日本に関する分析」

ここでOECDが指摘している「労働分配率の低下は、上位1%の高所得者の所得を除けば、より一層大きなものとなるであろう」というのは、実際に具体的な数字を出せるとおもしろいのになぁと思いました。

当たり前ですが労働分配率が低下すると企業の儲けだけがどんどん増えることになります。さすがの安倍政権もこう言っています。

安倍政権発足後、円安の進行などで輸出型企業を中心に企業収益は大幅にアップした。これに伴い企業のもうけの累積である内部留保も、13年度は前年度比7.7%増の327.9兆円、14年度は同8.1%増の354.3兆円と増加した。一方、設備投資も13年度は6.6%増の36.9兆円、14年度は7.8%増の39.8兆円と増えたものの内部留保の伸び率のほうが大きかった。このため政府は「企業の内部留保は過去最高水準に達している。企業は収益に見合った設備投資を」(甘利明・経済再生担当相)と再三にわたり、企業に投資の積極化を呼びかけてきた。
毎日新聞 2015年10月13日 設備投資:政府「介入」効果は未知数 「官民対話」設置

 

麻生副総理は「2%の物価目標の方向は間違っておらず、目標を今変える必要はない」と述べたうえで、「企業の内部留保が賞与や給与に回ることによって消費が増え、物価の上昇につながることを期待する部分もある」と述べて、企業の賃上げや投資の増加が必要だという認識を示し、政府としても働きかけていく考えを示しました。
NHKニュース 10月23日 麻生氏 物価目標達成には賃上げや投資増必要

安部政権は「内部留保を賃上げに回せ」と口では言うけれど、実際にやっていることは連合に対し大企業のごく一部の正社員の賃上げをお願いしているだけですから、まったく実効性がともなっていません。その証拠に実質賃金はずっと下がりっぱなしですし雇用は悪化し続けています。(→「アベノミクスの2年で報酬1億円以上の役員は1.4倍増えワーキングプアは49.2万人増加、2014年民間給与の増加は消費税増税分にも遙か及ばず」「安倍首相「雇用100万人増、2年連続賃上げ」→政府統計で「正規雇用74万人減、実質賃金2年2カ月連続マイナス、GDP2年連続マイナス(年率換算)、貧困激増させ戦後最大の大企業・富裕層だけ豊かさ享受」)

さらに問題があるのは、安倍首相がずっと繰り返している「アベノミクスの「三本の矢」によって、日本を覆っていた暗い重い空気は一変しました。賃上げ率は過去15年間で最高です」という点です。実質賃金が下がり続け雇用悪化と消費支出低下が続いているだけで大ウソであることは明らかなのですが、少し詳細に見ておくとこういうことです。

安部首相が自慢している2015年春闘で「賃上げ率は過去15年間で最高」となったのは厚生労働省が集計した314社(資本金10億円以上で従業員1,000人以上の大企業かつ労働組合が妥結)です。

国税庁の最新の2014年度「民間給与実態調査」によると以下のデータが得られます。

▼企業数
大企業 1.2万社(0.3%) (うち東証一部上場企業 1,867社(0.04%)
中小企業 419.8万社(99.7%)

▼従業員数
大企業 1,229万人(31%) (うち東証一部上場企業 約300万人(7.5%)
中小企業 2,784万人(69%)

上の数字から、企業数は合計421万社ですから、安部首相が自慢している314社はわずか0.00745%にすぎません。314社の従業員数は正確には分かりませんが、東証一部上場企業が1,867社で約300万人で、それでも中小企業の従業員数の半分にすぎません。そもそも4割近くになっている非正規労働者にはまったく関係のない賃上げです。安部政権はごく一部の大企業正社員の賃上げ(それも消費税増税分にも及ばない賃上げ)を労働者全体に及んでいるかのように世界で吹聴する詐欺師にほかならないと思います。安部政権が本気で賃上げを行うというのなら、何よりもまず全国一律最低賃金制度をつくって時給1,500円以上にする必要があります。

 

 

 

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、国家公務員一般労働組合(国公一般)執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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