安倍首相「雇用100万人増、2年連続賃上げ」→政府統計で「正規雇用74万人減、実質賃金2年2カ月連続マイナス、GDP2年連続マイナス(年率換算)、貧困激増させ戦後最大の大企業・富裕層だけ豊かさ享受」

昨日の安倍首相の会見です。

安倍首相会見「経済最優先で政権運営」

安倍総理大臣は、自民党総裁への再選が正式に決まったのを受けて、24日夜、党本部で記者会見し、誰もが活躍できる『1億総活躍社会』の実現に向けて、『新しい3本の矢』とする政策を掲げ、GDP=国内総生産を600兆円にする目標に取り組むなど、引き続き経済最優先で政権運営に当たる決意を示しました。

この中で安倍総理大臣は、自民党総裁への再選について「政権奪還から2年9か月、『日本を取り戻す』という約束を実現するために全力を尽くしてきた。アベノミクスで雇用が100万人以上増えるなどして、デフレ脱却は目の前だ。3年間の実績に対し、『さらに次の任期を務めよ』との支持をいただき、この3年間を超える結果を出すことを私は求められている」と述べました。

そのうえで安倍総理大臣は、「アベノミクスは第2ステージへと移る。目指すは『1億総活躍社会』だ。そのために、新しい3本の矢を放つ。第1の矢は、希望を生み出す強い経済。第2の矢は、夢を紡ぐ子育て支援。第3の矢は、安心につながる社会保障だ。希望と夢と安心のための『新3本の矢』だ」と述べました。

そして、安倍総理大臣は、「アベノミクスの成長のエンジンをさらにふかし、その果実を一人一人の安心、将来の夢や希望に、大胆に投資していきたい。これからも経済最優先で取り組み、そのターゲットは戦後最大の経済、そこから得られる戦後最大の国民生活の豊かさだ。GDP600兆円の達成を明確な目標として掲げ、投資や人材を日本に呼び込む政策を果断に進めていきたい」と述べました。

NHKニュース 9月24日 安倍首相会見「経済最優先で政権運営」

 

毎日新聞の報道によると、安倍首相は「雇用は100万人以上増え、2年連続で給料も上がり、この春は17年ぶりの高い伸びだった」とも昨日の会見で語ったとのことですが、本当でしょうか。

総務省の「労働力調査」の年平均で雇用者数を見ると以下になります。(※いまの安倍政権発足は2012年12月26日です)

2012年 雇用者数5,163万人 正規3,352万人 非正規1,811万人 非正規率36.7%
2014年 雇用者数5,240万人 正規3,278万人 非正規1,962万人 非正規率37.4%

上記にあるように、雇用者数全体は77万人増えていますが、正規雇用は74万人も減り、非正規雇用だけ151万人も増えているのです。その結果、非正規率は37.4%と過去最大になっています。

念のため「労働力調査」の四半期の雇用者数も見ておくと以下になります。

2012年4-6月期 雇用者数5,146万人 正規3,370万人 非正規1,775万人
2012年10-12月期 雇用者数5,173万人 正規3,330万人 非正規1,843万人
2015年4-6月期 雇用者数5,267万人 正規3,314万人 非正規1,953万人

経済指標は同時期と比較するのが普通なので、直近データの2015年4-6月期と2012年4-6月期を比較すれば、雇用者数全体は121万人増えていますから、これをもって安倍首相は「雇用は100万人以上増えた」と言っているのかもしれませんが、ここでも正規雇用は56万人も減って、非正規雇用が178万人も増えているのです。

ですので、安倍首相は「正規雇用は56万~74万人減り、非正規雇用が151万~178万人増えた」と言わなければ正確ではないのです。

次に、「2年連続で給料も上がり、この春は17年ぶりの高い伸びだった」というのは本当でしょうか。

実質賃金が2年2カ月連続で下がり続けて、雇用者報酬全体も下がっていることは、先日の記事「政府統計で見てもアベノミクスは貧困激増政策=実質賃金2年2カ月連続マイナス、先進諸国で日本だけ下がり続ける賃金、非正規率過去最大、役員賞与・配当・内部留保は急増し過去最高額」で紹介していますので、ぜひグラフだけも見てください。政府統計グラフで安倍首相の言っていることが真っ赤な大ウソであることが一目瞭然ですので。

結局、正規雇用が減らされ、非正規雇用が激増しているわけですから、下記(国民春闘共闘の宣伝ビラ)にあるように先進主要国でも最低の「最低賃金」にはりつく形で働かざるを得ない労働者が増え、労働者全体の賃金は下がり続け、大企業は過去最高の大儲け状態にあります。

そして、これまで紹介してきた「アベノミクスの1年で日本の富裕層増加率22.3%は世界一、ワーキングプアは30万人増加」「時給60万円、最低賃金の773倍になる役員報酬、アベノミクスが過去最多にした報酬1億円以上の役員とワーキングプア」などで分かるように、安倍首相の言う「戦後最大の国民生活の豊かさ」というのは、客観的事実として「戦後最大の大企業・富裕層の豊かさ」にほかなりません。「1億総活躍社会」は、じつは「大企業・富裕層活躍社会」ですし、「政権奪還から2年9か月で『日本を大企業・富裕層が取り戻す』」ことには成功したのでしょうし、冒頭で紹介したNHK報道の安倍首相発言の本当の意味は、「アベノミクスの成長のエンジンをさらにふかし、その果実を大企業と一人一人の富裕層の安心、将来の夢や希望に、大胆に投資していきたい。これからも大企業・富裕層最優先で取り組み、そのターゲットは戦後最大の大企業・富裕層のための経済、そこから得られる戦後最大の大企業・富裕層の豊かさだ」ということです。

それから、安倍首相は「GDP=国内総生産を600兆円にする目標に取り組む」などとも言っていますが、毎日新聞も指摘しているように「政府が8日に発表した4~6月期の実質GDP改定値は年率換算で1.2%減とマイナス成長だった」わけで、先日紹介した「アベノミクスで史上最低に落ち込んだ家計支出=リーマンショックの1.6倍のマイナス、20歳代の半数が貯蓄ゼロ、2014年度GDPマイナス、一方オリックス宮内氏の役員報酬は52億円アップ」にもあるように、客観的事実として2年連続のGDPマイナスの危険性が高く(内閣府「2015年4-6月期・2次速報」)、「強い経済」でもなければ「経済最優先」でもない、ただただ「大企業・富裕層最優先」を強めて、「アベノミクスで景気回復したのは自民党のふところだった=企業献金43%増、自民党へトリクルダウン」していくだけのものです。

 

そして、藤田孝典さんの指摘に同感です。

https://twitter.com/fujitatakanori/status/647084883899117568

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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