「限定正社員」は賃下げとクビ切り自由と「無限定正社員」の過労死自己責任化を加速、正社員の解雇規制緩和など「既得権」奪えば労働者全体の権利が切り下げられ非正規の無権利状態はさらに悪化する

  • 2015/10/26
  • 「限定正社員」は賃下げとクビ切り自由と「無限定正社員」の過労死自己責任化を加速、正社員の解雇規制緩和など「既得権」奪えば労働者全体の権利が切り下げられ非正規の無権利状態はさらに悪化する はコメントを受け付けていません。

10月24日に放送されたNHKスペシャル私たちのこれから「#雇用激変~あなたの暮らしを守るには~」を観ました。いちばん気になった点は番組サイトの「雇用激変を知るキーワード」にある以下の論調です。

一般参加者以外のゲストで番組内において唯一この限定正社員の危険性を指摘した佐々木亮弁護士のコメントはほんの数秒間だけで切られてしまっていました。なので、佐々木亮弁護士に出席いただいて私が企画した座談会を紹介しておきます。また、番組についてのツイートを見ると、またぞろ「正社員を解雇しやすくすれば雇用問題は解決する」などというものも散見されます。その点についても佐々木亮弁護士が言及していますので以下の座談会、長文ですが是非お読みください。(※このNHKスペシャルは10月30日(金)午前1時30分~午前2時30分に再放送されるようです。また、番組の冒頭に取り上げられた山中教授の指摘については→「相次ぐノーベル賞、しかし研究現場は疲弊=「夫婦でポスドク、生活苦しく子ども育てる余裕ない」「うつ病一歩手前でいい研究できない」、山中伸弥氏「iPS細胞研究所の9割は非正規雇用で不安定」)

座談会
労働「規制改革」の正体
――限定正社員の狙いは解雇自由と無限定な過労死労働
(※2013年6月15日収録)

根本到大阪市立大学教授
佐々木亮日本労働弁護団事務局長(当時)/弁護士
森崎巌全労働省労働組合委員長(コーディネーター兼任)

安倍政権の経済政策であるアベノミクスの「第3の矢」は、労働「規制改革」が大きな柱となっています。この問題をどうみればよいのでしょうか? 森崎巌全労働委員長に座談会のコーディネーターも兼ねてもらい、根本到大阪市立大学教授と佐々木亮日本労働弁護団事務局長にご協力いただき、労働「規制改革」の正体に迫りました。(※以下敬称略)

労働者側の委員が入っていない規制改革会議

森崎 お忙しいなか、ご参加いただきありがとうございます。今日は労働規制改革をテーマに、様々な角度から問題点を分析したいと思います。

すでに6月5日に規制改革会議が答申を出していますし、昨日(6月14日)、「日本再興戦略」(成長戦略)及び「規制改革実施計画」が閣議決定されています。その中にも労働分野に関わる様々な事項が盛りこまれています。また、その前段で産業競争力会議では、労働分野も岩盤規制の一つと位置づけ、集中的な議論が行われている状況です。この時期に、労働規制改革が政府の重要な課題になって議論が促進されているわけですが、その動きを総論的にどう見るか?というところから、お聞かせいただきたいと思います。

根本 規制改革会議の大きな特徴は、委員の中に労働者側の代表が入っていないということです。従来、労働関係の問題については、公益委員が入ったとしても労使の代表を加えて検討するのが常でしたが、今回はそういう動きがまったくありませんでした。そして「正社員改革」など、企業側の要望に重点を置いて取り上げている。日本経団連が出している政策提言を例にあげると、今年の4月16日に「労働者の活躍と企業の成長を促す労働法制」を出していますが、その中では「労働者保護の政策を講じるだけでなく、『雇用の源泉である企業の事業活動の柔軟性確保』や『多様な就業機会の創出』の観点を重視し、バランスのとれた政策としていくことが不可欠である」と言っています。経団連としては、新自由主義的な改革を進めたいのに、この数年間は、ある程度は労働者保護へと規制を強化されてしまった。ですから、今後は規制強化を少しでも緩和したいという狙いがある。そのために労働者側の委員を排除して規制改革会議が答申を出してきたわけですが、その主張の正当性については大きな疑問を感じています。

雇用の規制緩和や流動化が成長につながったケースない

森崎 私もその問題は非常に気になるところです。『東京新聞』5月22日付で、ILOのガイ・ライダー氏が今回の労働規制改革に対して発言していることともつながります。少し紹介しますと、「労働者側の代表が会議に入っていないことが問題だ。改革はフェアであることが求められる。使用者だけに有利であるといった一方的な政策であってはならない」「ILOでは、政府・労働者・使用者の3者による議論を前提としている。これは建前ではなく、事実として言っている。労使が対話し、合意しなければ政策も成長も実現しない」と言っているわけです。全くその通りだと思います。あわせてガイ・ライダー氏は、規制改革の内容に関わって「強調しておきたい」とした上で、「雇用の規制緩和が、成長をもたらす魔法のような解決策として捉えるのは間違っている」と述べています。「日本の成長鈍化は、労働市場の硬直性が原因ではない。逆にいえば、雇用の規制緩和や流動化が成長に繋がったケースもない」とはっきり言い切っている。この指摘にしっかり耳を傾ける必要があります。しかし、根本先生が言われた日本経団連の動きのほか、経済同友会も、この間、政策フォーラムなどを通じて積極的に政策提言をしていく動きを強めていますが、その内容を見ると、使用者の願望をそのまま政策として実現していくことを求めている。そのプロセスの中に規制改革会議があり、非常に大きな問題だと思います。

「限定正社員」は長時間労働問題の最大の“目くらまし”

佐々木 今回、政府の産業競争力会議と規制改革会議という2つの会議で主に議論されてきたと思いますが、産業競争力会議の中身はあまりにも酷いものだったので、それは置くとして、本気で政策にしようとしているのは規制改革会議の特に雇用ワーキンググループで議論された中身ではないかと見ています。その報告書の中では「正社員改革」が第一にあげられているわけですが、そもそもその中身が矛盾しています。

本来であれば正社員が長時間労働を強いられているとか、生活を犠牲にするような配置転換があるとか、追い出し部屋のような不当なやり方があるとか、そういう問題をこそ規制していくことが正社員改革のはずなのですね。ところが規制改革会議は、それを「限定正社員」というものをつくって「限定」していこうと言うわけです。「限定正社員」というのは“目くらまし”と言っていいかもしれません。なぜなら、「限定正社員」の反対側には「無限定正社員」ができることになってしまって、その「無限定正社員」ならば長時間労働でいいのか? 生活を犠牲にしていいのか? という問題が何の議論もされないまま進められているわけです。この最大の問題に対する“目くらまし”に「限定正社員」がなっていると思います。

また、報告書の中身を見ると、派遣労働も大きく規制緩和しようという動きがあります。報告書には「二極化是正」と書かれていて、正規と非正規の二極化を是正すると言っていながら非正規労働者の中で最も雇用が不安定である派遣労働者が増えるような施策をとろうとしているので、報告書の内容自体が矛盾しています。
そういう矛盾がありますから本当のところ何をやろうとしているかは、全体的な動きを見て分析する必要があります。とりわけ、労働契約法16条の解雇権濫用法理の適用が直接当たらないような類型にしようという経団連の動きや、産業競争力会議で当初出てきた、あからさまな解雇規制撤廃を求める主張などを全体的に見れば、今回の規制改革の大本の狙いは解雇規制緩和にあります。

その他にも、柔軟な働き方を拡大するとか、生活に配慮して多様な働き方ができるようにすると言っていますが、その一方で、労働時間に関しては「企画業務型裁量労働制」――つまり労働者の定額使い放題制を推し進めようとしていることなども大きな矛盾の一つです。こうした今回の規制改革会議の報告書は、その内容自体が矛盾しているのです。

従来と同様の手法

森崎 それぞれの主張が矛盾した形で混在しているということですね。私は、こうした労働規制改革の動きは初めてではなく、繰り返されている点にも注目しています。2001年の省庁再編の時に内閣府ができましたが、その時に総合調整機能を内閣府に持たせるように設計しました。内閣府設置法に書いてあります。その機能に着目して、内閣府に審議会を置いて、各府省の政策分野に関しても議論を進めていくという枠組みをつくったわけです。十数年前の総合規制改革会議なども同じ手法でした。

ただ今回は、いろいろな新しさがあって、たとえば国際比較を多用していますね。「国際先端テスト」と呼んでいます。6月5日の国際先端テストのとりまとめを見ると、何のために国際比較をするのか? ということについて、「投資先としての日本の魅力を最高水準に引き上げることを目指す」と書かれています。国際先端という言葉がくせ者ですが、労働者にとって国際先端の環境をつくるのではなく、投資先として先端の環境をつくるというテストをしているわけです。それこそ世界を股にかけてビジネスを展開して、どこに投資するかを考える多国籍企業の願望に即した形のテストになっている。

そこで根本先生に国際比較の観点で、日本はそんなに労働者保護の進んだ国なのだろうか?ということをお聞きしたいと思います。日本は投資先として魅力がないと言われますが、裏を返せば労働者保護が行き過ぎていているということにもなろうかと思います。この点はどのように日本の労働法制や労働社会を見ていますか?

国際的に劣っている日本の労働者保護

根本 国際先端テストは労働者保護を基準にしたものではないですね。労働法制の国際比較は、なかなかはっきりとは出てこないのですが、たとえば解雇規制の比較についてはOECDの調査があります。1990年代は日本の解雇規制はむしろ強いとデータが出ていました。しかし、2008年に出た統計結果を見ますと、日本の解雇規制は必ずしも強くないというデータが出ているのです。

また労働者保護の全般にかかわっては、ILO条約の批准数が、ヨーロッパ諸国においてそれぞれ差はありますが100前後くらいは各国が批准しているのに対して、日本は半分の48しか批准していません。ILO条約の批准数を見ても、労働者保護という意味ではむしろ随分劣っています。日本の労働者保護は、国際比較からもむしろ引き上げなければいけないのです。

森崎 日本は、労働時間規制という最も古い沿革を持つILO1号条約も未だに批准できていません。それなのに、国際先端テストなどと言ってさらに規制緩和を進めるというのは信じ難い状況だと思います。

それぞれから総論的にお話しいただきましたが、問題を一つひとつ深めていきたいと思います。

今回の規制改革会議では、多くての論点が取り上げられていて、今後、さらに議論を進めていくことになっています。ある意味では第1次答申という位置づけになっている。先ほど佐々木先生からもご指摘いただきましたが、今回の答申の中で第一に掲げられているのが「正社員改革」です。厚生労働省も、かつて研究会報告の形で「多様な正社員」構想を提起していました。これは非正規労働者と正規労働者の格差を解消していくという考え方が強く出ていたのですが、今回はむしろ無限定な働き方をする一方、厳しい解雇規制のある正社員がいて、これを「限定正社員」の方向に持っていくんだという議論になっています。この「限定正社員」が、どういう狙いで出てきたのか? ここを押さえておく必要があると思います。その点の分析をいただきたいと思います。

「限定正社員」の狙いは解雇規制緩和と賃下げ
一方で“無限定正社員”の過労死は自己責任とされる

佐々木 「限定正社員」の狙いは、やはり解雇規制緩和にあると思います。労働契約法第16条の適用除外の正社員をつくるということまでは明文化されていませんが、職がなくなったとか、企業が地域から撤退したとか、そうした時の労働者の解雇をよりやりやすくしようという狙いがあると思います。

この解雇規制緩和の狙いとともに、「多様な働き方」という観点には2つの懸念があります。1つは正社員の賃金・労働条件の切り下げです。確かに非正規労働者から正規に近づけるために限定正社員を設けるという考え方もあるのかもしれませんが、今回の「限定正社員」の狙いは間違いなく、現在の一般的な正社員を「限定正社員」にすることで賃金全体を下げようという狙いがあるのではないか。つまり、一方には無限定な正社員というのがいて、彼らは長時間の残業もするし、広域配転もあるのだから、当然、賃金は高く設定されている。一方、そうではない「限定正社員」は、賃金も低くていいという流れが出るのではないかと思っています。ですから解雇規制緩和と同時に賃金の切り下げというのが大きな狙いではないかと見ています。

もう1つ懸念するのは、「限定正社員」をつくることによって一方に無限定正社員というものも出てきてしまう弊害です。たとえば、無限定正社員が過労死した場合、「この人は無限定正社員だったのだから過労死するのは自己責任でしょ」みたいな議論になりかねません。限定に対する無限定というのは、会社に命を捧げるというところまで話が進んでしまう可能性があります。そこまで露骨に報告書は書いてありませんが、当然予想される弊害だと思っています。

森崎 かつて「過労死は自己責任だ」と発言した経営者もいましたが、そういうことが懸念されるのは当然ですね。そもそも無限定正社員や限定正社員は、理念としては分からないではないけれども、実態として無限定正社員というのは存在するのでしょうか? たとえば職務が限定されていないと言いますが、いわゆるジェネラリストで採用された者も何でもかんでもやるわけではなく、育成の過程で必要とされる業務を行っているわけで、無限定に、無節操にやっているわけではないのです。

また、労働時間の限定がないというけれども、36協定制度があるので限定は必ずあるのです。また、管理監督者であっても過重労働防止の観点から、労働時間は自ずから限定されなければなりません。ですから実際にはあり得ないようなものを持ち出して、それとの対比の中で解雇規制の緩い正社員を描き出そうという、まやかしめいたものを私も感じます。

答申の定義によれば、「限定正社員」は職務、勤務地、労働時間が限定されている正社員です。そういう人達は解雇規制が緩くて当然で、判例や厚労省の通達もそう言っているというのが日本経団連の主張ですけれども、それは事実なのか。この点についてご意見をお聞かせください。

勤務地限定正社員を仮につくったとしても
整理解雇の基準がなくなってしまうわけではない

根本 本当の意味で正社員の働き方を変えていくことは大事な課題です。しかし、経団連などが出している文書では、勤務地、職種限定契約における使用者の雇用保障責任ルールの透明化と、真っ先に解雇規制の話が出てきてしまう。本来なら労働条件を向上させていく施策の中で正社員の多様化が論じられるということがあってもいいはずなのに、解雇規制を限定するという話として出されてしまっている。そこに彼らの狙いが率直に表れていると思います。

加えて問題なのは、もしも勤務地限定正社員をつくったとしても本当に解雇規制が緩和されるのだろうかという問題です。規制改革会議の雇用ワーキンググループが公表した整理解雇の要件では、いわゆる人員削減の必要性や手続きの相当性は特に削減されないかもしれないが、解雇回避努力等、人選の合理性については一般の無限定正社員と比べると多少緩くなるという報告をしています。彼らは当初、勤務地が限定されている人であれば、勤務地がなくなれば即解雇できるというようなことを言っていたにも関わらず、裁判例を調べたら必ずしもそうはなっていないということが分かったのだと思うのですね。もちろん、無限定と限定正社員を比べたら、解雇回避措置のあり方という意味では多少の差が出てくることは私も否定しません。しかし、ともかくゼロにはならないし、整理解雇に4つの基準がありますが、それらが必ずしも全部削減されたりはしないということが彼らの報告書の中にも出てきてしまっているのです。ですので勤務地限定正社員を仮につくったとしても、整理解雇の基準がまったくなくなってしまうわけではないということははっきり言えますし、実は彼らの文書によっても、それははっきりしてしまっているということです。

森崎 佐々木先生は多くの解雇裁判にも関わっておられると思いますが、たとえば中小企業では全国展開していない企業もたくさんあるので、勤務地を限定していることになりますが、そうした労働者について、判例上、解雇法理の適用で特段緩和されたという事例はありますか? またそうした事例をどう評価していますか?

裁判所に影響与え、解雇しやすい事例重ねる狙い

佐々木 勤務地が限定されている企業というのは各地に展開しているような企業ですが、たとえば、ある県内に勤務地が限定されている労働者が、その県内のすべての店舗がなくなって解雇されたという事案において、その時に他県に配置転換の打診をしなくていいのかというと、それはしなくてはいけないというのがこれまでの裁判例です。もちろん労働者の意思によるわけで、それでも労働者の意思で他県には行かないということになれば、天秤にかけると解雇有効の方に傾くことになります。そういう意味では、勤務地を限定している場合は解雇のしやすさが若干異なっていることは間違いないと思います。

ただ、だからといって、地域からすべて撤退したり職務がなくなったら即解雇かというと、そういうことにはなっていません。今回、規制改革会議の雇用ワーキンググループの議論も、最初の議論から少しずつ判例などを調べていくことで整理解雇の4要件などをまったく適用せずにすむ問題ではないということは分かってきた議論になっていると思います。しかし、いくつかの裁判例をあげていろいろなことを言っているのですが、そのピックアップ自体が正しくないという問題や裁判例自体を正確に理解していない問題もあり、こうした点についても、日本労働弁護団として、しっかり批判していかなければいけないと考えています。いずれにせよ、規制改革会議がピックアップしてきた事案においても、職場がなくなったとか、勤務地がなくなったからといって、即解雇有効になっているケースはありません。

それで彼らの狙いである解雇規制緩和をどう進めればいいのか少し難しいところになってきていると思います。けれど一つの方向として、規制改革会議の雇用ワーキンググループ座長の鶴光太郎慶応大教授が「今後の積み重ねによって、事例が蓄積されればそれを法律化できるかもしれないじゃないか」というようなことをシンポジウムなどで発言しています。これは「限定正社員」という何らかの新しいルールをつくり上げることで、裁判所に影響を与えようとしているのだと思います。裁判所はその影響を受けて、解雇しやすい事例の裁判を重ね、それを今度また何らかの形でルール化しようとしてるのではないかと思っています。そういう意味では法律を変えるだけですぐにできることでないのは確かなのですが、裁判所に影響を与えるという場合、行政が何かいえば司法もまったく無視するわけにはいかないでしょうから、労働事件、裁判でたたかう運動の側がその辺をきちんと把握しながら運動を進め、裁判で勝ち取っていく必要があると思っています。

「正社員改革」のご都合主義

森崎 私はこの議論が出た時に不思議に思ったのです。限定された地域や職種で働く人をつくることは、今、何も規制がなく自由なのに、それを「正社員改革」だと称して行政を関わらせて広げることの意味が分かりにくいということです。私もお二人の意見に同感で、解雇規制の一角を崩していく狙いがあるのだと思います。その時に、規制改革会議でも言っていますが、行政がモデル的なものを示して、お墨付きといいますか、解雇の正当性に関して一つの基準を周知せよと言っているのです。しかし、一方で正反対のことも言っています。第3回規制改革会議で、ある委員は「法律に基づかず通達や行政指導による規制を原則禁止すべき」と指摘しています。労働行政の場合ですと、今までの指針やガイドラインなど、三者構成の労働政策審議会などで確認したものを行政指導という形で周知してきた例があるのですが、それが批判されたわけです。それが「正社員改革」の議論になったら、今度は法律に基づかない形で周知せよと言うわけです。ご都合主義の議論になっていると感じます。

私は、もし「限定正社員」の解雇がしやすい方向に進んでいくと、派遣労働者はどうなってしまうのかと考えます。派遣労働者の場合、派遣先を限定勤務地だと契約した上で雇用される場合があります。登録型はその典型ですが、勤務地がなくなる、つまり派遣契約が解除されたら自動的に解雇となりかねないし、自動的といわないまでも、解雇の正当性が強まるということになっていきます。これは派遣会社にとっては大変都合のいいルールです。こうした問題を非常に懸念しますし、根本先生にお聞きしたいのですが、限定された労働時間、つまり短時間労働で無期の労働者は、パート労働法の関係も出てくると思います。こういう人達がパート労働法の適用上、8条の対象に入ってくると思われますが、差別的取扱いの禁止をどう実現していくか検討されているのでしょうか。また、勤務地を限定したり、残業規制を少し厳しくしたからといって、解雇規制が緩和されたり、労働条件が低く位置づけられるというのは、ILO156号条約の趣旨からも、家族的責任を負う労働者に対する差別禁止という意味で問題があると思います。こうした論点について、どう考えたらよいのでしょうか。

ワークライフバランスを放棄する代わりに
雇用保障が与えられるとするおかしな発想

根本 ワークライフバランスと雇用保障が相互にバーターの関係であるかのように扱うこと自体が非常に大きな問題です。勤務地限定・無限定というものとはまったく別に均等待遇はきちんと進められるべきであるにも関わらず、無限定と限定というところを分けて施策が進められようとしている点に、そもそも大きな矛盾があります。
今の整理解雇法理では、勤務地限定の正社員をつくったとしても、整理解雇法理の内容は一定程度保たれているわけです。そうした中で、規制改革会議が進めようとしたのは、いわば法律で解雇規制をなくしてしまおうというものだったと思うのです。ですから、まずはそういう法制化に対してしっかり反対していかなければいけません。今の整理解雇法理と裁判でしっかり守られている解雇規制の水準を、一気に法律で変えようとする動きを許さないとりくみが必要です。

指針もプレッシャーかけるためのもの

それから、法律化しないまでも指針をつくろうという動きに対しても反対していく必要があります。指針づくりも法律をつくって解雇規制を緩和しようとすることと随分近い話で、いわば司法が行っていることに対して、指針をつくることでプレッシャーをかけるものになるからです。それに加えて、均等待遇や解雇保障との兼ね合いが問題です。たとえば無限定正社員は、ワークライフバランスを放棄する代わりに雇用保障が与えられているという発想は明らかにおかしいと思います。

森崎 私も当初の議論は、半世紀にわたり様々な事例の利益衡量を通じて確立されてきた、労働者を守るべき法理を、立法で一気に崩していこうという流れだったと思います。しかしそんなことはできるわけもなく、就業規則や個別契約で解雇事由をどう定めるかを含めて、行政機関に緩和された解雇基準を周知せよという、乱暴な議論だと思うのです。そしてその反対側で、無限定正社員というカテゴリーを想定し、ワークライフバランスをすべて放棄したが故に雇用が保障されるものであるかのように描いていく。しかし、実際は従来の雇用保障が適用されるということにすぎない。企業にとっては本当に都合のよい中身です。

正社員改革だけではすまない

そして、この動きは「正社員改革」だけではすまないと私は見ています。今回の規制改革会議の答申の中には、解雇の金銭解決のルール化が盛り込まれており、「丁寧に」という言葉が付いていますが、検討すると言っています。また当初の規制改革会議の論点整理の中にも、労使納得の上での解雇ルールの見直しという項目が出ています。

従って、金銭解決制度の導入について、この場でも議論しておきたと思います。日本労働弁護団は、5月15日に「解雇規制の緩和に反対する集会」を開いて、この金銭解決制度導入に反対する立場を鮮明にされてますが、その考え方のポイントはどこにあるのでしょうか?

どんなにひどい不当解雇も正当化できる
解雇の金銭解決制度

佐々木 今、解雇の金銭解決制度と言われているものの中で、事前型および事後型と言われているものがあります、要するにお金を払えば労働契約を問答無用で終了できるというのが事前型で、事後型というのは、解雇無効になった場合に本来は職場に戻るところを、お金を払うことによって職場に戻らなくてもいいことにするというものです。

こうした解雇の金銭解決制度のどちらにも日本労働弁護団は反対しています。事前型はそもそも論外です。たとえば、どんなにひどい不当な解雇をやっても、お金を払いさえすれば解雇を正当化できるというのですから、とんでもない制度です。事後型は、判決が出て解雇無効だと言われているのに、使用者がお金を払うことによって労働契約はこれで続かないようにできるということです。これも絶対にダメですね。こんなことをすれば、使用者は余裕で「どんなに判決で負けたって後でお金を払えば大したことないよ」ということになる。そうなれば職場の労務管理も一層ひどくなりますし、裁判に対する争い方も簡単になります。使用者側のある弁護士は、もし事後型の金銭解決制度ができれば、「解雇されるのはおかしい」と労働者に裁判を起こされた場合、使用者が「これはなかなか難しいな」と思ったら敢えて認めてお金を払って解決するだろうと言っています。

労働者がお金をもらえていいのではないかという人がいますが、そもそも解雇の金銭解決を制度として導入する意味がないのです。なぜなら、今でも裁判の中では和解が多く行われているので、何もそれを制度にする必要はないのです。制度にしてしまうと、それを少しでもいじれば使用者側に有利にはたらく新たな選択肢が与えられる呼び水になる可能性もあります。そうした観点から日本労働弁護団は金銭解決制度については反対という立場をとっています。

森崎 根本先生にも金銭解決制度についてお聞きしたいのですが、金銭解決制度を議論する時に必ず引き合いに出されるのはドイツです。ドイツではすでに金銭解決が広く行われているというのが一つの論拠になっているわけですが、実際はどうなのでしょうか?
それともう一点、竹中平蔵氏が言っているように、そもそも「日本の正社員は世界一守られている」というのは事実なのでしょうか? その2点についてお話しいただきたいと思います。

解雇自由と言われるデンマークよりも
日本の解雇規制は弱い

根本 ドイツの金銭解決制度は、労働者側が金銭解決を望んでいなくても事後的に解雇を金銭で解決するというものです。ドイツでは1951年に解雇制限法が制定されました。その時分から、例外的に解雇を金銭解決できるという制度を定めていました。しかし、その制度をできるだけ使わないという形で運営しており、判例通説などは、存続保護法であって、補償法いわゆる金銭解決法ではないということをずっと言ってきました。金銭解決する場合は、労働者から申し立てる場合と使用者側から申し立てる場合があり得ますが、使用者側から申し立てる場合は、労働者側が申し立てる場合とは違います。判例では、使用者側が申し立てた場合、労働関係の解消が認められるのは例外的な場合で、解消自由は厳格に審査されなければならないと言っています。制度上、念のため定めてはいるけれど、それほど使えないようにしているということです。最初に述べた存続保護法だということを、ずっと守ってきているということです。

ちなみに、支払う金銭額は法律上は定められていないので、各裁判所によって多少違います。しかしおおよその基準になっているのは、月給×勤続年数÷2というものです。そうすると、10年間働いた人であれば5カ月分の賃金額しか渡さないという形での金銭解決をすることになります。額が限定されているからこそ、金銭解決をできる限り使わないということにしていると言えます。

しかし、解雇の金銭解決は日本では反対すべきです。一般の裁判や労働審判だけでなく、労働局等で斡旋が行われていて、特に斡旋ではお金によって解決しています。その額の基準はあってないようなものですから、それを変えるためにも金銭解決した方がいい、そうした制度をつくった方がいいということが言われることがあります。しかし、解雇の金銭解決制度をつくるということと、そういうものとは区別した方がいい。やはり、労働者が望んでいないにも関わらず金銭で解決する制度はあるべきではありません。労働者が望んだ場合に限って一定の計算額を示すということであれば、まだ検討の余地がありますが、そのような大前提のない解雇の金銭解決制度は反対すべきです。

もう一つの、解雇の厳しさに関しては、2008年に出たOECDのデータがあります。このデータによると、正規雇用、非正規雇用、大量解雇あるいは集団解雇を分けているんですが、まず全部をひっくるめた解雇規制でいえば、日本は強い方から24番目、弱い方から7番目ということになっています。よく「解雇が自由にできる国」と言われているデンマークよりも日本は解雇規制が弱いのです。実際にデータで見ても、むしろ日本の解雇規制は足りないのです。

このOECDのデータが3つに分かれているということで、正規雇用だけをとってみても、日本は解雇規制が強い方から18番目です。正規雇用の解雇規制が日本はすごく厳しいと指摘されることがありますが、世界で使われている統計データで見れば、解雇規制は弱いといえるのです。

森崎 そのOECDの調査は、基本的には判例や法制の水準を比較するというもので、現実にどう運用されているかということとは少し違うということですね?

根本 そうですね。

ロックアウト解雇や追い出し部屋などが
野放しになっている現状の規制こそ必要

森崎 そう考えると、私は労働行政の中で解雇の実態も随分見てきましたが、いとも簡単にクビを切られるというのが現実です。そうすると、法制度でさえ解雇しやすい方から7番目ですから、現実の日本の社会はもっとひどい解雇自由の国と言えないでしょうか。労働者が少し口答えしたら即日解雇とか、あるいは一度遅刻したら解雇とか、年休を請求したら解雇とか、そうしたことは私もよく見てきました。

それから、大企業の多くは、解雇という手続きを取らないで辞めさせます。私はバブル崩壊の時に第一線の職場にいましたが、嫌がらせも含めて、労働者に退職願いを書かせてしまうのです。そうやってあれだけのリストラをやってのけた。解雇は一つもなく、みんなそういう形で辞めさせてきた。そういうことも含めて考えると、日本には乱暴な「解雇」が蔓延しているのです。むしろそうした乱暴な「解雇」をどう規制するのかということを真剣に考えるべきです。今でも、新手のリストラ、ロックアウト解雇や追い出し部屋など、一部の人材ビジネスの指南のもと乱暴なことが行われていて、それが野放しになっている現状があります。解雇ルールの見直しの方向性そのものがやはり逆を向いていると思います。

さて、規制改革会議が打ち出している労働法制の見直しはこれだけではなく、労働者派遣制度も俎上にのっています。これは私も驚きましたが、常用代替の防止の原則を見直すということが打ち出されています。これは派遣法の仕組みや考え方を全面的に見直すことですし、一方で均等待遇などについても指摘してはいるのですが、均等待遇を実際にどう図るかという議論を煮詰めた形跡がありません。こうした中で常用代替防止を見直すことだけが大きく打ち出されていく。いろいろな面で危険性があると思うのですが、この点を佐々木先生から分析してもらえますか?

非正規雇用を4割にも増やしておいて
さらに常用代替防止なくし派遣拡大ねらう

佐々木 まず、規制改革会議の雇用ワーキンググループの報告書を見て驚くのが、非正規雇用がもう4割になってしまって、もう常用代替防止といってもすでに常用代替されているのだから今さら常用代替防止を目的に掲げたって仕方ないじゃないかという言い方を、端的にいえばしていることです。

政府の施策で非正規雇用を広げてきておいて、それがまた非正規雇用を増やすことに利用されるのかと思うと、これはもう腹が立って仕方がありません。よくもこんなことを報告書に書くなと思うくらい、ひどい論理です。

もう一つ、常用代替防止に関しても、実際には直接雇用であっても一定期間働いた後にまた派遣に戻すというやり方をしているから、あまり意味がないじゃないかなどと言っています。しかし、意味がないのは規制の仕方が悪いのであって、常用代替防止の目的が悪いわけではありません。それにも関わらず、うまく規制できないことを理由にして、本来の目的である常用代替防止を外そうとしている。この派遣制度のところで目立つのは、いかにも頭の中だけで考えた論理をひねくり回していることです。

常用代替防止というのは、言葉通り、労務を受け取る側が、本来は常用するなら直接雇用で使用者としての責任をもって労働者に働いてもらう。そして、その労務を受け取り、賃金を払うというのを原則にする必要があるということです。常用なのに直接雇用ではない労働者が普通になってしまったら、使用者の責任が曖昧になるからということで、原則的な理念としてあるわけです。その原則を捨ててしまって、派遣の濫用をやめると言っても、これは言葉遊びで、どういうことになるのか全然分からない。とにかく常用代替防止をやめるということだけしか分からない。ではそれに代わる何か、派遣労働者の保護を具体的な施策として持っているのかどうかというと唯一あるのは均衡待遇だと言っていますが、今ある均衡待遇制度を見ても、実効性のあるものはほとんどありません。唯一、労働契約法20条はこれから未来がある条文だと思いますけれど、それ以外のパート法だって非常に使いづらかったですし、今回の派遣法改正で努力義務のような形で入っているものもありますが、あれはただ努力すればいいというだけですからね。そういったものを入れる代わりに常用代替防止をやめようというのだったら、逆にそんなものはいらないから常用代替防止をきちんと堅持しなさいと言いたいですね。

森崎 私も、労働者を常用したいのであれば直接雇用すべきで、なぜそうならないのかをまず問われなければいけないと思います。根本先生にもお聞きしたいのですが、派遣制度の見直しについて、かなり抜本的なものが提起されていますが、これは労働法全体の大きな原則に照らして、どう考えればよいでしょうか?

根本的な常用代替防止の原則を守らずに
日本の現状をきちんと変えることはできない

根本 佐々木先生が言われたように、常用代替防止の原則であるとか、26業務に規制することなどは、派遣法はもちろんのこと、間接雇用を認める際のかなり柱になっていった原則だと思います。ところが、非正規雇用が4割に増えてしまったから常用代替防止を変えたらどうかというまったく逆向きの提案をしています。非正規が増えていて問題になっているのですから、まずは常用代替防止の原則を守ってさらに規制を強化するのが普通の発想でしょう。

また、諸外国といろいろ比べる際にも、日本において派遣労働者や非正規労働者がこれだけ増えてしまったという状況を見ないで、諸外国と同様の規制をすればいいというのはおかしな話で、それは日本の現状をきちんと変えようという姿勢が問われる問題でもあります。

ともかく常用代替防止の原則というのは絶対に必要ですし、26業務の規制をしっかり守った上で均等待遇をしっかり図ることが必要です。いちばん根本的な原則をなくしておいて、均衡待遇の在り方を検討するというのは、明らかに筋違いなやり方です。

森崎 労働者派遣の問題は、これから労働政策審議会の場で法案化をめぐって大きな議論になっていくと思いますので、注視していきたいと思います。

それから、労働時間規制の緩和もこれからの議論として課題に上がっています。特にこれまでの経過からすると、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入や企画業務型裁量制の要件の見直しなどが俎上にのぼってくるのではないかと思います。

答申の中にも「多様で柔軟な働き方の実現」という位置づけの中でこれらの課題が出ています。私は思うのですが、今の労働法でも労働者が多様で柔軟な働き方をしてはいけないわけではない。使用者が認めるならいいわけです。答申が求めているのは「多様で柔軟な働き方」ではなくて「多様で柔軟な働かせ方」と読み替える必要があります。ところが、労働時間規制を緩和すれば、自由で裁量が豊かにあって、自分の好きなときに休みも取れてというような幻想が振りまかれているのではないか。むしろ逆で、労働時間規制の緩和というのは、それこそ無限定正社員のように、ワークライフバランスも否定し、無制限に働かせることを可能にすることにならないか。そういったところを見ていかなければいけないと思います。今の労働時間規制の評価とともに、こうした方向性での緩和をどう見るか、お聞かせください。

労働者の使い放題求める「柔軟な働き方」

佐々木 「柔軟な働き方」と言っていますが、では現在は労働時間が硬直していることが問題なのでしょうか。立法事実があれば柔軟な働き方に向けた施策をとる必要があるわけですが、現在、労働時間の問題として一体何が起きているかというと、過労死や過労自殺、働き過ぎによる精神疾患が増えているということが大きな問題で、これこそが立法事実だと思うのです。より長時間労働を生むような施策をとることはまったく立法事実に反した政策ということになります。労働者がまず求めているのは、もっと休みたい、有給休暇を全部取得したい、長時間労働はしたくない、健康的で人間らしい働き方がしたい、ということだと思います。

柔軟な働き方、働かせ方を求めているのは逆に使用者側です。使用者側が求めているのは、要するに無料で長く使える労働者です。昨今のブラック企業の若者の使い捨てなどを見ていれば、長時間働かせて使い倒せるよう求めていると見られても仕方ないと思います。それをまるで後押しするようなやり方をしている。現在の労働時間規制は、基本的には青天井で、36協定でもほとんど上限なく長時間労働が蔓延している現状です。マスコミでも報道されているように、労働組合自体が長時間労働に協力している問題がありますから、本来はそうしたことを改善するために、きちんと意識を変えて、長時間労働をすれば一定の割合で人間は死ぬのだという事実を踏まえた上で長時間労働を規制していく必要があります。

長時間労働をすれば過労死するという事実から出発して、終業から次の始業までのインターバルを必ず何時間以上は取らなければいけないとか、年間の最大労働時間もきちんと決めてしまうとか、そうした実効性のある長時間労働の規制こそが求められているのです。それにも関わらず、労働者の使い放題を求めているという、まったく方向が逆だと言いたいですね。

森崎 私もこの労働時間規制の問題は、これこそ国際比較をしてみたらどうかと言いたいですね。そうした点も含めて根本先生いかがでしょうか。

問われるべきは8時間労働制

根本 規制改革会議が出している文書を見ますと、企画業務型裁量制の適用労働者の割合は、調査対象企業の労働者の割合の0.3%で、フレックスタイム制適用の労働者の割合は7.8%に留まっているなど、活用が進んでいるとは言い難い。しかし、佐々木先生も指摘されているように、労働者が自由に働くための規制として問題にしているのではなく、やはり使用者側の「働かせ方」を自由にしようとしています。

企画業務型裁量制についていうと、経団連の文書では、導入していない企業の4割が「法制上の要件が厳しく、制度を導入するメリットが見いだせない」と回答しています。ですから、法律における要件を満たさなければ導入できないのは当然だと思うのですが、より使えるようにしたいという発想で考えているからこそ、こういう提案が出てくるのだと思います。フレックスタイム制は、始終業時間を自由にすることで労働者にも一定程度有効な点がありますが、むしろその点だけが過大評価されて、良い制度なんじゃないかと誤解されることがあります。しかし、始終業時間を自由にすることで、たとえば1カ月の残業時間が何時間かということは、トータルの時間を出して初めて残業時間が出てくるという制度になってしまっている。過労死の規制という意味では矛盾している部分もあります。私は、利用している企業が必ずしも多くないと聞いて、むしろホッとしたと感じるところもありました。しかし、まさに働かせ方に重点を置いているので、フレックスタイム制についてもっと緩めたらいいと考えているのは、1カ月の総労働時間を計る基準をなくすなどの狙いもあってのことだと思います。

労働時間のところでは、過労死が起きないような働き方を考えないといけないにも関わらず、労働時間規制を弾力化する方向でしか考えていない。この間の規制改革会議などが労働者側の委員をまったく入れていないということから、まさに企業側がいかに労働者を自由に働かせるかという観点での提案しかなされていないという点が出ていると思います。

森崎 私も今の労働時間規制そのものが問題であって、そこをしっかりと規制していくことが重要だと思います。たとえば8時間労働制の原則をどう見るかですが、その例外として、36協定の範囲内で時間外労働がある。そこには限度基準がありますが、その特例に特別条項というのがある。その特別条項のもとで年に6カ月もやっていていいとされるわけですから、8時間労働制というのは本当に原則になっているのだろうか、ということが問われなければいけないと思うのです。こういう状況だからILO1号条約も批准できないという問題をもう一度よく考えなければいけないと思います。

また、割増賃金制度も労働時間規制のための制度だと位置づけられていますが、実際、一部の手当は除外されているし、賞与も除外されています。実際の年収を所定の労働時間で割り戻して考えてみると、割増賃金じゃなくて割引賃金なんです。こういう実態だから、時間外労働をやらせた方が安上がりということが実際に起きてしまっている。また、実務上は企画業務型裁量制にしても、管理監督者にしても、規制の仕方(文言)が非常に曖昧なので、かなりいい加減に使われているところがあります。名ばかり管理職にしても、そうした規制の仕方をしっかり整えていくことが求められていると思います。

正社員の解雇自由が非正規労働者を救う?

森崎 ところで、正社員改革を考えるとき、正社員と非正規社員を対立して捉えて、正社員の既得権益があるから非正規社員が報われないんだという考え方があります。この間の議論に即して言えば、正社員を解雇しやすくすることによって非正規社員の人達が救われるのではないかというものです。そうしたトレードオフのような考え方についてはどのように見たらよいでしょうか?

佐々木 まず、正社員の持っている既得権を破壊すれば非正規社員に正社員が得てきた既得権が回ってくるかというと、回ってくるはずはありません。それは正社員が持っていた権利がなくなるだけで、労働者全体の底上げにはまったくつながらないと思います。

たとえば正社員の雇用が不安定になったとして、非正規社員の雇用が安定するのかといったら、関係ないですよね。皆が不安定になるだけです。労働者の誰も幸せにならない。使用者側は雇用調整がしやすくなりますので幸せになるのかもしれませんが、少なくとも労働者側に幸せは来ない。さらに、正社員ばかりが高い賃金をもらっていて、非正規社員の賃金は安いから、じゃあ正社員の賃金を下げれば非正規社員に回ってくるかというと、そんなに甘いものではないですね。要するに企業としては利益を最大限に確保したいという企業活動の第一の欲求がありますから、企業自らは正社員に払っていた賃金を下げたからといって、その下げた分を非正規社員に回すわけがありません。ですから、正社員の賃金を下げても非正規社員は幸せにならない。そういう意味では、正社員のパイを奪って、そのパイが非正規社員に回ってくるという考え方自体が、夢のようなことを言っているだけで何の実態もない話なのです。

正社員の権利を守る重要性

佐々木 さらに解雇規制に関して、有期雇用労働者の雇い止め法理というのがありますね。本来なら期間が満了すればその雇用は終わりであるはずなのを、なぜ雇い止め法理といって正社員と同じように解雇権の濫用法理を当てはめたのかという問題があります。

これは今、法律にもなりましたが、もともと正社員の人達の雇用は守られていますが、非正規社員の人達は「自分は正社員と同じように働いていたのに、おかしいじゃないか」という矛盾がある。そこで、非正規社員の人でも正社員と同じように働いていたり、次の期待権がある場合は解雇権の濫用法理を適用しようということになっているわけです。正社員に権利があるから非正規社員の権利も生まれているという関係にあるわけです。ところが正社員の権利の方を破壊してしまったら、こうした矛盾そのものがなくなってしまい、非正規社員が上っていくところもなくなってしまうわけで、非正規社員の問題は何ひとつ解決しないと思います。

また、よくある話では、解雇規制が強いために退職強要が起こると言われます。だから退職強要をなくすためには解雇規制をなくす必要があるという論理です。これは、たとえば泥棒がたくさんいて困っている、どうしたらいいんだろう?と皆で考えて、「そうか、泥棒が犯罪だからいけないんだ」、「泥棒は犯罪じゃないことにしよう」ということで解決しようとしているようなものです。要するに、なぜ退職強要が起きるかというと、労働者が退職したくないからです。退職したくない労働者の退職強要を解決するのに、解雇を自由にしたら結局その人達は強制的に会社から放逐されるだけですね。それはまったく何の解決にもなっていません。だから、解雇規制と退職強要を巡る議論は一見正しいかのように見えてまるで間違っている考え方なのです。

解雇規制の緩和を雇用の増大と結びつける大きな間違い

森崎 非正規という働き方が非常に増えています。あまりにも不合理な格差がある中で、ご指摘のような様々な思いが非正規の人の中にも生じているのだろうと思います。そういう意味では、非正規の働き方を最優先で改善していくことが、労働者全体の課題だと思うのです。正社員もそこに目を向けないと、対立だけが際立って何の解決にもならないと思います。

根本 佐々木先生が言われた通りだと思いますが、国際的には1990年代から2000年代にかけて、いくつかの国がその発想で「解雇規制が厳しいから雇用が増えない」という議論を随分しました。そして実際に解雇規制を緩めることを検討した国々があります。まず、そうした国々で、雇用を増やす方向では何も働かなかったということがひとつ言えると思います。解雇規制は解雇の禁止とは違いますので、その上で解雇規制を緩和したら新たに雇用していくかというと、それは各企業の利潤動向で決まることですので、解雇規制を緩めれば雇用が促進されるということが証明された実例はありません。また数字的にそうしたことが生み出されるかというと、そういうデータも今までに出たことがないと思います。労働者側は、そういうものだと言われて影響を受けてしまうわけですが、やはり現実の雇用に関しては企業のいろいろな動向が考慮されるわけで、解雇規制が強いか弱いかだけで決められるものではないということです。

私はこの2~3年、デンマークの状況を調査してきました。デンマークは非常に解雇規制が緩く、解雇自由だとまで言われる国で、かつ非常に失業が少ないのです。それで解雇規制が緩いから雇用動向がいいのだという宣伝がされました。

けれど実際に調査してみると、解雇が自由どころかむしろしっかりした解雇規制があったのです。先ほどのOECDのデータでも、日本より厳しいと言われる解雇規制があります。それで人が動くということが達成できているのは、解雇規制が緩いからというよりは、しっかりした雇用保険に基づく保障があるからです。それで、仮に退職を選んだとしてもしっかりした生活保障があり、その中で次の職を選べるという状況があるのです。雇用を増やすためには、まず解雇規制を緩めればいいというところに着目するのは大きな間違いで、失業時の生活保障などをしっかり整えることの方がよほど重要なのです。佐々木先生が言われたように、違法なものを合法にして対処するなどということは本当にナンセンスな話ですね。ともかく解雇規制の緩和を雇用の増大と結びつけるのは大きな間違いだと思います。

解雇規制を緩和しても雇用は増えない

森崎 私も実感として、企業は解雇しやすくすれば新たな人を雇うかというと、そうはならないと思います。企業が人を雇うのは、任せたい仕事があるからなんです。そこがポイントなので、奨励金もらえるから雇うとか、助成金がもらえるから雇うということも、実はそんなにない。奨励金や助成金がミスマッチ解消に役立つことはたしかにあるのですが、雇用自体を増やすことにはならない。ましてや解雇規制を緩和させるからといって雇用が増えるわけではないと思います。むしろ雇用を増やすのは、実体経済の改善です。株価を上げるということではなく、実体経済を良くすることで雇用を増やすというのが基本だと思います。そのためにも、良質な雇用を広げることが必要なのです。

また、根本先生が言われた失業時の支援や保障はとても大事で、ここも国際比較をしていく必要があると思います。日本は非常に脆弱ですから、解雇できないどころか労働者が辞めたくても辞められないという事態が起きている。だから「ブラック企業」の問題もそうですが、やはりひどい働かせ方の企業は安心して辞めることができるという労働者の実質的な自由、企業を辞めても支援が受けられる、保障が受けられるということをしっかりしていくことも、あるべき改革の方向のひとつだと思います。

それから、36協定制度の問題点が指摘されています。労働者代表の選び方の問題、また例外である特別条項の問題などがあります。そうした点についてもご意見をいただけますか。

佐々木 労使協定というのは、要するに労働者の代表や過半数の労働組合があるなら、労働組合が同意しているわけですよね。そこが過労死するような長時間労働を受入れているという現実が、なんとも暗い気分にさせますね。日本の労使関係では、そうした自治に任せていると時間規制が上手くいかないのかなと思います。もちろん労働組合の組織率が2割を切っていますから、そうした問題もあるのかもしれませんが、大企業ではまだ50%近い組織率を持っています。それで大企業の協定があれほどの長時間労働になっていることを考えると、すでに労使自治が機能していないのかなと思います。であれば、あとは法や行政に頼らざるを得ないのかなと思います。

世界的にも珍しい36協定制度

森崎 36協定制度というのは世界でも珍しい制度ですが、どのように見ていますか?

根本 まず具体的に考えますと、過半数の労働組合だとしても、仮に反対の意向を持ったとしてそれを押し通せるかということですね。もちろん中には頼りない組合もあるでしょうが、制度的に考えて、過半数組合、過半数代表が仮に反対の意志を持っていたとしても、それを押し通せるか否か。形の上でいえば単に合意しなければ済むじゃないかということですが、職場の唯一の代表者で、たとえば数は少なくても「自分は残業したいんだ」という意見を出されたら、本当に反対の意志を押し通せるかという問題です。残業の問題を、とにかく長い残業時間であっても過半数組合・過半数代表に委ねてしまっている。その点にすごく問題があるのではないかと思います。

経団連などは、集団的労使自治というのをより過大に押し進めようとしていますが、むしろ法的に規制すべきことはやはりある。特に労働時間の問題では過労死にも関係するわけなので、場合によっては、ある時間からはしっかりと法的規制をすることが必要なのではないかと思います。

月60時間を超える時間外労働を5割増賃金にするということも、特別条項を交わした上でのことですが非常に矛盾を感じます。最初に提案された時には80時間という話がありました。それを60時間に一応短くしましたが、それでも特別条項は交わした上で許されるという時間になっていて、法的な部分の規制が本当にある意味ないと思います。ともかく、労使協定の主体に残業規制を委ねるかというところを再検討してもいいですし、合わせて、ある部分までは労働者の集団的代表の同意で残業できるということになったとしても、ある時点からは残業は許さないという規制も考えられるべきじゃないかと思います。

人間らしく働ける社会のルールづくりを

森崎 最後の課題に移りたいのですが、本当の改革とは、やはり人間らしく働くことができる社会のルールをつくることだと思います。そこで、いろいろな論点があると思いますが、まず手をつけるべき課題をいくつか提起いただきたいと思います。

佐々木 最近の労働現場では、いじめの問題やハラスメントの問題がすごく増えていますね。その中で、それを救済できるかといわれても、なかなかできないことが多い。裁判をしたとしても、慰謝料という形になるので認められても大した金額にはならないし、立証の問題で誰かがビデオにでも撮っていれば別ですが、なかなかそういうことに遭っている人が証拠を残すことができない。そして労働者はどんどん病んでいく。最初は自分がいじめる側だったのに、いつの間にかいじめられる側になってしまったという話もあります。そうしたことが非常に深刻な病理としてあると思っています。一応、厚労省はガイドラインをつくって啓蒙しようとしていますが、啓蒙だけでは足りないのではないかと思います。こういうのは事前に防止しない限り、起きてしまうと不幸しか残らないので、いじめやハラスメントを事前に防ぐための法政策や啓蒙の方法を、それこそ真剣に予算を割いて議論してもらいたいと思っています。

それから、長時間労働の問題は、過労死の遺族の話を聞くと本当に胸が痛くなるようなことばかりですので、今、遺族の方達が進めている過労死防止基本法の制定などきちんと長時間労働を規制する方向の施策をこそやってもらいたいと思います。とにかく人間らしく働くというのは、家族と一緒に過ごしたり自分の時間を持てることこそが大事だと思いますからね。

森崎 過労死防止基本法は、今、議員立法を目指しているところなので注目していきたいと思っています。根本先生はどうお考えでしょうか?

根本 非正規の問題はこの間ずっと課題になっているのに、昨年、政権交代した途端、こうした規制改革会議などの動きが強まってきました。しかし、むしろ非正規雇用をしっかりとなくす方向で法規制をやっていくべきです。たとえば、この間、派遣法の改正や労働契約法の改正がなされましたが、非正規をなくす方向での規制としてはむしろ不十分だったと思うのです。具体的にいうと、一般的には「入り口規制」と言われますが、有期契約を結べる自由を限定していくというようなことをしたり、派遣については製造業の派遣や登録型派遣をなくす方向で検討されていたにも関わらず、そうした規制には随分消極的な形が示されています。

しかし、働き方を見れば、そうしたものへの規制は絶対に避けられないはずです。非正規雇用をまず少なくする取り組みをしっかりしていく必要がある。そして均等待遇がしっかり保障されないといけません。ところが日本では均等待遇がきわめて不十分ですから、均等待遇の規制をしっかり導入すべきだと思います。

合わせて、正規雇用自体も当然規制されなければならなくて、その中心になるのは、労働時間規制です。日本の労働時間規制は国際的にみても非常に長い労働時間を強要する形になっていて、例外的な規制が無制限に使えるようになってしまっています。そうした規制の状況なので、やはりしっかりと明確な時間で規制する方法に変えていくことを検討すべきだと思います。そうでなければ、過労死をなくすということには本当に近づけないと思うのです。

森崎 私も非正規労働者の雇用の不安定さや、差別的な処遇を改善することは非常に大事だと思います。特に雇用面で気になるのが、近年、失業ということの過酷さが増していると思うのです。かつては、地域に様々な個人商店があったり、農業・漁業なども各地にしっかり根ざしていたので、職を失っても、誰か知り合いを辿ればどこかに就職先があるとか、あるいは地方に帰って家業を継ぐということもできました。今は何もないところに放り出されてしまうような状況だと思います。年越し派遣村で明らかになった状況がさらに広がっていると思います。人が動くというキーワードで今の改革は行われていますが、止むなく動かざるを得なくなった人を支援するのは当然としても、やはり雇用の安定をもう一度考えるべきだと思います。
それと行政の中で思うのは、行政が手がけることができない分野、どうしても司法の作用で権利義務関係を確定しなければならない分野が労働分野に多くあります。そこのアクセスが、労働審判制度ができて以前よりはよいのですが、それでもまだまだだと思います。ヨーロッパ諸国にあるような使いやすい司法制度、そこもさらに検討していく必要があると思います。

労働行政体制の一貫した後退傾向に歯止めを

森崎 また、私の立場から一言指摘しておきたいのは、労働行政体制の一貫した後退傾向の問題です。これはやはり歯止めをかけないと大変なことになります。たとえば、労働基準行政でいうと、労働基準監督官の数は、管理者を除くと監督業務に就いている者は全国で1,500人程度です。この人数で5千数百万人という労働者の権利を守るのは本当に困難なことですし、国際的にも大きく立ち後れています。こういう問題こそ国際先端テストの俎上にのせて、これでよいのかということを議論すべきだと思います。

それと、労働組合の役割も大事になってくると思いますが、労働組合がこの規制改革問題に敏感に反応して、何が行われようとしているかを学び、声を上げていくことが非常に大事だと思います。
佐々木 若者の雇用については、もう少し改善していかなければいけないと思っています。非正規の導入は若者からですからね。新たな契約を締結する人達から非正規は増えていきますので、そうなってくるとどうしても若者にしわ寄せがくるのは間違いありません。ここをどうにかしないといけないということになれば、やはり非正規を規制していくしかないのかなと考えているので、派遣を増やそうとか、そういう方向で何かを解決しようとしているのであれば間違いですよと言いたいですね。

また、世代間対立のようなことを煽られていますが、世代間対立というのもまた一つの幻想のようなもので、高年齢者の雇用を縮小したって若者に雇用が回ってくるわけではないということは外国の例で明らかです。そうしたところもきちんと見ていって、労働者全体で一致団結していろんな問題に当たっていくのが大事だと思います。

規制を強化する法定化は必要

根本 今日お話した規制改革会議が、もし解雇規制を立法化するということであれば、いわゆる法定化で参議院で話したことと全く逆ですよね。参議院では法定化は何もすべきではないということで提案しましたが、日本の労働現場の状況をみると、むしろ積極的に規制強化の方向で法定化をしなければいけない。ですので、中身を見ずに法定化すべきだとか法定化すべきじゃないというどちらかの方向で定めるのは難しい。しかし、日本の規制状況は国際的には明らかに規制が遅れていますから、規制を強化する方向であれば、むしろ積極的に法定化は必要になると思っています。

でも、たとえば解雇規制をどうするのかということになれば、規制改革会議は勤務地限定の正社員については整理解雇の基準を緩くするための明記を狙っていると思います。しかしそれは明らかに今の司法で行われているものを緩める方向なので、賛成すべきではないと言えますが、では解雇規制を何も法定化しなくていいのかというとそうではなく、そもそも整理解雇の4つの基準自体がまず法定化されていない。そういうものが法定化されるということは必要ですが、勤務地限定正社員の基準をどうするかということはそのまま司法に委ねればいいということになるのではないかと思います。その法定化の中身をよく考える必要があります。

合わせて言いますと、日本は法的なルールを労働の現場で確立することが遅れていると思いますので、それを確立することが大事ですが、法律が仮にできたら、それだけで現場が良くなるかというと、そういうものでもないと思うのです。その点もしっかりと見る行政の方々の人数をきちんと増やしていくことも重要になると思います。日本では労働組合が実質そういうものを請け負って、紛争に携わるということが増えていると思います。もちろん労働組合の力ももっと強くなって欲しいですが、行政が関わって法律的な基準を遵守させるということが、もっと徹底されてもいいと思います。そういう点が諸外国と比べてもかなり遅れていると思います。

森崎 私も、人間らしい労働環境をつくるというのは、法制度だけではとてもできないと思います。労働組合の役割はもとより重要ですし、その前提として、労働者一人ひとりの考え方が大事です。同僚との関係性の構築、または地域や労働者全体を考える視点、そうしたいろんなものが今求められている。働く者同士が同じ困難を抱える者として信頼し合い連帯していく、そうした労働の文化をつくっていく努力が必要だと思います。その中で、労働者に対する権利侵害があったり、過重労働や労働災害などが起こった時に労働者がまとまってどうすべきかを議論する、またそこで問題を解決していく力を持てるような労使関係や労働社会をつくっていくことが大事だと思っています。本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。

▼座談会の一部を視聴できます。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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