AERA大特集「上流化する公務員」「官民格差320万円」が正しいなら朝日新聞社の平均年収1,299万円との格差は884万円にもなる→事実は霞が関で働く正規公務員も時給500円で過労死労働させられている

  • 2015/11/9
  • AERA大特集「上流化する公務員」「官民格差320万円」が正しいなら朝日新聞社の平均年収1,299万円との格差は884万円にもなる→事実は霞が関で働く正規公務員も時給500円で過労死労働させられている はコメントを受け付けていません。

きょう(11月9日)発売のAERA「大特集 上流化する公務員」を読みました。

「大特集」の中には、「“滅私奉公”に非正規増加 ホワイトだけじゃない現実」で、私が編集している月刊誌『KOKKO』で「国公職場ルポ」を連載してもらっているジャーナリストの藤田和恵さんも登場し、公務員の3分の1が「官製ワーキングプア」に置かれ劣悪な労働条件と無権利状態にあることも指摘され、ジャーナリストの小林美希さんが「壊れる教師 真夜中に親対応/授業は片手間/教えることに集中できない教師の実態」では「公務員の中でも激務とされる教師たち」のリアルに迫るなど、公務職場の実態をきちんと伝えようとする記事もあります。

しかし、いちばん目立つ表紙と、本文の中でもいちばん目立つ冒頭のフルカラー面の記事、そして今回の「大特集」のウリにしている「独自調査 年収『官民格差』320万円」は、明らかに従来の「公務員バッシング」を煽る延長線上にあるものだと言わざるをえません。

まず、表紙には、「大特集 上流化する公務員」に続いて、「官民格差320万円」が大きく目立つデザインになっています。

そして、冒頭のフルカラー面の記事には、「上流化する公務員」「安定性、働きやすさで民間企業を凌駕する」の大見出しに続いて、本文の中見出しは、「有休消化でハワイへ」「仕事着1着7万円以上」「ロレックスに高級車」「官舎で家賃半額以下」「有給で2年間海外留学」という文字が踊り、「公務員貴族」「公務員天国」が日本で広がっているかのような印象を強く与える記事になっています。

メインの記事がこれですから、実態をきちんと告発する上記で紹介した2つの記事の印象は薄いものになっています。

何より、「独自調査 年収『官民格差』320万円」という大ウソについては、AERA編集部に訂正を求めたいと思います。

AERA編集部はこう書いています。

民間企業の平均年収は約415万円(14年、国税庁調べ)で、最上位の東京都と比べると約320万円の「官民格差」があった。

【AERA大特集「上流化する公務員」31ページより】

これをもって、AERA編集部は、表紙のいちばん目立つところに、「官民格差320万円」と大きく打ち出しているのです。

この問題について、労働行政で働く私たちの仲間の全労働省労働組合は、以下のように指摘しています。

国家公務員は民間労働者より賃金が1.5倍も高い?

理不尽な「公務員バッシング」に反論します

▼人事院が公表している国家公務員(行政職)の平均年収は637万円。それに対して国税庁「民間給与実態統計調査」によると、民間サラリーマンの平均年収は412万円。単純比較で1.5倍もの給与を得ている国家公務員は「優遇」されている。

 公的な調査統計は多種・多様に存在していますが、それぞれの行政目的に即して設計(調査対象、調査時期等)されていることから、それを無視して利用することは適当ではありません。

 前出の国税庁調査は、租税収入等の税務行政の基本資料を得ることを目的としていますから、給与所得者のすべて、すなわち労働者1人以上を使用する事業所で勤務するパート・アルバイト等の非正規雇用を含むすべての給与所得者全員を対象としています。

 つまり、この統計の中には「半日勤務」の方や「隔日勤務」の方の給与まで含まれており、平均年収が低く出るのは必然です。

 また、国家公務員の場合、この間の定員削減、採用抑制の影響で若年層が極端に少なく、年齢構成はいびつになっています。こうした中で双方の単純平均をとれば民間給与の方が低くなる可能性が高いのです。

 他方、現在、国家公務員給与の官民比較で利用されている、人事院の「職種別民間給与実態調査」を見ると、公務と民間の同種・同等(役職段階、勤務地域、学歴、年齢)の者を対比させて比較する方式(ラスパイレス方式)を採用しています(約1.1万事業所、回収率約90%)。

 この方法は、国公法及び給与法が「職務給を原則」を定めていることからも妥当と言えるでしょう。もとより、非正規雇用労働者も官民比較対象に含めるべきとの意見もあるでしょう。この点では「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会報告書(座長:神代和欣横浜国大名誉教授、平成18年7月)が「非正規雇用及び派遣労働者は短期雇用が前提で、時給制が多く、賃金形態が常勤職員と明確に異なっており、官民比較の対象とすることは困難」と述べています。

 実際「常勤・非常勤(民間)」と「常勤のみ(公務)」と比較するのは、如何にも不合理です。「常勤・非常勤(民間)」と比較するなら、「常勤・非常勤(公務)」をもってこなければスジが通らず、この点でも適当な意見とは言えません。

2012年1月 全労働省労働組合 理不尽な「公務員バッシング」に対して反論します

 

AERA編集部が大きく打ち出した「独自調査 年収『官民格差』320万円」の計算式は以下になるのです。

公務は正規(常勤)のみ-民間は正規と非正規(「半日勤務」「隔日勤務」含む)=320万円

AERA編集部は、一方で、公務員の3分の1が年収200万円以下の「官製ワーキングプア」となり公務職場がブラック化していると言っておきながら、メインのいちばんのウリの記事で、この「官製ワーキングプア」の問題を無視しているのです。

このAERA編集部に習って、朝日新聞社の平均年収(もちろん正規の平均)と比較してみましょう。

朝日新聞社の平均年収1,299万円-民間は正規と非正規(「半日勤務」「隔日勤務」含む)415万円=884万円

AERA編集部の言説からいけば、まさに「マスコミ貴族」「マスコミ天国」ということになってしまうわけです。

 

じつは月刊誌『KOKKO』の企画で先週の土曜日の夜、霞が関の各省庁で働く国家公務員の仲間に集まってもらって、「霞が関不夜城、ブラック省庁を告発する覆面座談会」を私、開催しました。

その中で、年間200時間を超える残業や、1年間で50日泊まって仕事した上に50日は終電後タクシーで帰宅して仕事していたり、普段の土日はもちろん、ゴールデンウィークも全員働いてる部署(それも相当な人数の部署)とか、国会対応で財務省から午前3時に呼び出されたとか、不払い残業代含めて時給を計算したら、時給500円になって、家族から国家公務員やめてその辺のコンビニでバイトした方がいいと言われたとか、ノンキャリを次々とメンタル疾患に追い込む「クラッシャー」という異名を持つキャリア官僚がいるとか、ブラックな国家公務員の実態が語られました。

霞が関で働く正規の国家公務員でさえ時給500円で働かされている実態が存在しているのです。

すでに、「世界最高年収で日本は公務員天国?→日本の公務員の個別賃金はアメリカの6割、総人件費はずっと世界最低です」で紹介していますが、「官製ワーキングプア」の状態に置かれている非正規公務員の存在を意図的に隠した公務員バッシングは結局、「公務員人件費削減→正規公務員の非正規化やアウトソーシングなどによる官製ワーキングプアの増加」につながっていくのです。

▼新雑誌『KOKKO(こっこう)』9月号(堀之内出版)★〈特集〉官製ワーキングプア
〈特集〉官製ワーキングプア
非正規国家公務員をめぐる問題――歴史、現状と課題
早川 征一郎 法政大学名誉教授
座談会 官製ワーキングプア  国が生む貧困と行政劣化
山﨑 正人 国土交通労働組合書記長
竹信 三恵子 和光大学教授/NPO法人「官製ワーキングプア研究会」理事
鎌田 一 国公労連書記長
ハローワークで働く非常勤職員
etc.

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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