「物品」扱いされる派遣労働者を襲う派遣法改悪と消費税増税、二重に大儲けする大企業

【派遣労働者の声2】「派遣法改悪で仕事・生活・命を奪わないでください」 ? 派遣労働者の声聞かず政治は「派遣切り」進めるのか」というエントリーで紹介した派遣労働者の声です。

「物品購入」とモノ扱いされる派遣労働者
人間の働き方ではないような派遣労働を考え直すべき

派遣会社はただピンハネをするだけで派遣労働者には何もしてくれません。研究助手をしていたとき、派遣元に渡す書類を見ると「物品購入」と書かれていました。私はモノ扱いされていたのです。派遣は人間の働き方ではないと思います。何か問題が起こっても「派遣だから」ですまされてしまう。そもそも派遣労働という働き方を考え直さなければいけないと思います。

労働者派遣法を担当する厚生労働省課長が、「派遣労働者はモノ扱いだった」と発言していたことが判明し今国会で問題になり、塩崎厚労相が謝罪しましたが、上記の派遣労働者の声にあるように現実の問題として「物品購入」される「モノ扱い」されているわけです。

その上に、派遣労働者には消費税増税の負担増が襲いかかっています。安倍政権が昨年4月にアップした消費税率8%の年収400万円未満の負担は、高所得の1.85倍も重いことは以前紹介しています。派遣労働者の平均年収は400万円未満なので消費税増税は、派遣労働者の暮らしをひときわ厳しいものにしているのです。

さらに安倍政権は2017年4月には必ず消費税率を10%にするとしています。これでは派遣労働者の生活が苦しくなるのは明らかですが、加えて消費税増税には税制上の大きな問題があります。

企業が国に消費税を納める際には「仕入税額控除」が使われます。商品やサービスで得た売上高に消費税を単純に課税すると、仕入れや事務作業の過程で支払った消費税との「二重課税」になるケースを防ぐために設けられているのです。機械や事務用品の購入といった「物品費」など多くの経費は控除対象ですが、直接雇用している労働者への賃金の支払い分は経費の控除対象になりません。なぜなら消費税の課税対象は「事業者の事業取引」ですので、労働者の手元に入る賃金は当てはまらないのです。何としても経費を削りたい企業にとって、直接雇用している労働者への賃金は消費税の仕組みの上でもできるだけ低くしたい存在なのです。

そこで、大企業が編み出した方法が労働力の外注化、直接雇用の労働者を派遣労働者化するというものです(▼下図参照)。派遣労働者の賃金はパソナなど人材派遣会社を経由して渡るので税制上は「事業取引」とみなされ、晴れて「仕入税額控除」の対象に入ることになるのです。

派遣労働者の人件費を「物品費」扱いにしたうえで、派遣労働者を使えば使うほどコストを削減できるという仕組みになっているのです。

大企業は、直接雇用の労働者を減らして派遣労働者や請負会社に置き換えることによって、消費税負担を大きく軽減しているのです。部門を丸ごと外注化・子会社化したり、派遣・請負に置き換えるまでになっています。消費税は、企業のリストラをますます激しくさせる税制なのです。

この上さらに、今、国会に提出されている派遣法改正案が成立すると派遣労働者が激増することになり、ますます「物品費」扱いが増大し、大企業は莫大な消費税負担をまぬがれ、一方、激増する低賃金の派遣労働者には一層の消費税増税が襲いかかるという二重の悪循環が加速することになります。それを許さないために、派遣法改悪法案は廃案にしなければなりません。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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