パート労働者の5倍以上多い派遣労働者の「心の病」労災件数、「生涯」にわたって労働者をモノ扱いする派遣法改悪が「ワーキングプア大国日本」を一層深刻化させる

  • 2015/8/28
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日本は「ワーキングプア大国」

OECD33カ国平均の2倍近く貧困率が高い

日本は「ワーキングプア大国」です。▼下のグラフにあるように、1年間、働いたとしても12.9%が貧困状態に置かれています。OECD33カ国平均の2倍近く高いのです。

その主な原因は、相対的に安定した雇用のもとにある正規労働者が減少し、全体の4割にのぼる非正規労働者や失業・半失業が増加したことにあります。

非正規労働者と失業・半失業の増加は正規労働者の働き方をも困難にしています。正規労働者の過労死・過労自殺するほどの働き過ぎの加速と、非正規労働者の差別待遇・雇用不安は、同じメダルの表と裏の関係にあって、それぞれ互いに促進しあっています。熊沢誠甲南大学名誉教授が指摘されているように、非正規労働者の惨状が「ブラック企業化」と正社員の「働きすぎへのムチ」として利用されているのです(※参照→「非正規労働者の惨状が「ブラック企業化」と正社員の「働きすぎへのムチ」として利用される、「相互補強の地続きの関係」にある正社員の過労死労働と非正規のワーキングプア」)。

とりわけ、雇用関係と指揮命令関係の分離という派遣法が創出した虚構――脇田滋龍谷大学教授が指摘している「フィクション」が労働の世界をゆがめる役割を果たしてきました(※参照→「今でも世界最悪の日本の派遣労働 – 安倍政権が狙うさらなる改悪で生涯不安定・低賃金・正社員雇用は不要に」)。

労働者派遣法による雇用関係と指揮命令関係の分離は、使用者責任を空洞化させ「フィクション」にして、派遣先に使用者責任が及ばない仕組み=「弾よけサービス」を作り出しています。派遣法制定前は、偽装請負の事件に関して労働行政が労働者供給事業(職安法違反)に該当するとして供給元および供給先に対し是正措置をとる事例が多数存在していたのに、派遣法はこうした事態を転換し、供給先(派遣先)の責任を問わない仕組みを創り出したのです。

派遣元と派遣先の派遣契約=中間搾取(ピンハネ)は、派遣労働者に、雇用不安・低賃金・細切れ雇用による貧困・隠蔽される労働災害をもたらしています。

パート・アルバイトの5倍以上多い派遣労働者の「心の病」労災件数

▼下のグラフは、厚労省の「精神障害の労災補償状況」から、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の労災支給決定件数について、非正規労働者に限って見てみたものです。

▲上のグラフを見て分かるように、2013年度は59件で、2009年度は25件ですから、この4年で2.3倍に増加しています。分母となる同時期の非正規労働者総数は1.1倍増加とあまり増えていないので、非正規労働者の心の病は2倍に急増するという表に出ているだけでもこれだけの惨状にあるのです。しかも派遣労働者数はパート・アルバイト数の11分の1なので発生率で見ると派遣労働者は5倍以上にもなります。加えて“労災隠しが横行”しているわけですからこの数字は実際よりはるかに少ないものと考えるべきでしょう(※参照→「派遣労働者の労災発生率は正規の2.5倍、加えて「労災つかえば仕事なくなるぞ」と脅す労災隠し横行、派遣事業所数で世界の7割占める日本、「生涯派遣奴隷」の派遣法改悪やめよ」)。

こうした問題となる派遣労働者の「モノ扱い」を東海林智毎日新聞記者が告発しています。

北関東の製造業派遣で働いていた20代の女性は、腰椎捻挫で1週間休んだために寮も追い出されて「ネットカフェ難民」となった。求人広告には「月収32万円」とあるが、その後に小さく「も可能」と記されていた。月60時間ぐらい残業すれば「可能」だが、残業がなければ月収は18万円程度でしかない。そこから寮費、光熱水費に加え、クーラー、テレビ、冷蔵庫、布団、毛布、枕のレンタル代まで引かれていく。彼女は寮を出た時、30万円しか貯金がなかった。そこからアパートの敷金、礼金を払い、新たに働き始めても1カ月後にしか手にできない給料を待つ余裕はない。交通費は自腹の日雇い派遣の仕事が、携帯電話に入るのを待つしかないのだ。仕事を得る命綱の携帯の電話代を確保するため、人によっては消費者金融の借金地獄に陥っていく。彼女は仕事が週に1日しかなければファストフード店で1杯100円のコーヒーを買って仮眠する。長居すると店員が追加注文を要請するので、次はコンビニを1時間ごとに移動しながら日の出を待つ。仕事がなければ山手線の一番安い切符を買うか、百貨店や図書館の椅子で寝る。
レイバーネット 派遣法「改悪」、労働者をモノ扱いするな~東海林智記者が熱く

人材ビジネスは「正規労働者ひとりの賃金で数名の派遣労働者を使えます」などと売り込んで派遣労働者を拡大するため、適切な規制がなければ、世界で当たり前の働くルール=「直接雇用と無期雇用原則」を掘り崩し、非正規労働者の雇用不安と、正規労働者の過労死・過労自殺との相互促進を加速させることになります。

「生涯派遣・正社員ゼロ」をもたらす今回の派遣法改悪は、ワーキングプアと過労死・過労自殺を増大させるもので、すべての労働者の働き方を壊すことにつながります。派遣法改悪法案は廃案にすべきです。

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井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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