日本の大企業・富裕層はタックスヘイブンで世界第2位の巨額な税逃れ、庶民には消費税増税と社会保障削減

安倍政権は、新成長戦略と骨太方針で法人税減税を打ち出していますが、タックスヘイブンを活用することによって世界第2位となる莫大な税逃れをしている日本の大企業からまともな税金をきちんと払ってもらうことの方を何よりも優先すべきだと思います。東証に上場している上位50社のうち45社がタックスヘイブンを活用し、ケイマン諸島だけの活用に限っても、日本の大企業は55兆円で、アメリカに次いで世界第2位の規模です。つづく、イギリス23兆円、フランス20兆円、ドイツ17兆円で、後に続く各国を合わせた額に相当するぐらい日本の大企業はタックスヘイブンを活用し税逃れをしているのです。私たち庶民は、消費税増税はじめ各種税金から逃れようもないのに、どうして大企業だけが平然と税逃れを行うことができるのでしょうか? 私、このタックスヘイブンの問題について、政治経済研究所理事の合田寛さんにインタビューしました。3時間に及ぶインタビューでしたので前半部分をまず紹介します。

大企業・富裕層はタックスヘイブンで税逃れ
庶民には消費税増税・公共サービス削減
合田 寛 政治経済研究所理事インタビュー

世界各地で莫大な利益を上げている多国籍企業と富裕層が巨額の「税逃れ」をしています。スターバックスやアップル社など名だたる大企業の「税逃れ」が明らかになり、「私はスタバよりたくさん納税した!」とイギリスでは市民が怒りを爆発させています。そして典型的なタックスヘイブンとして知られるケイマン諸島に日本はイギリスよりも巨額の、アメリカに次ぐ世界で2番目の規模の投資を行っています。もっとも担税力のある多国籍企業と富裕層には「税逃れ」を許しておいて、その結果でもある税収不足と財政難などを理由に、庶民には消費税増税と社会保障削減を押しつけたり、国家公務員労働者には違法な大幅賃下げを押しつけるなど、著しく公平性を欠く事態が進行しています。この「税逃れ」の舞台となっているタックスヘイブンの問題について研究している合田寛政治経済研究所理事にお話をうかがいました。

各国のマスコミも注目するタックスヘイブン問題

――タックスヘイブンの問題が、日本のマスコミでも取り上げられるようになってきましたが、この背景には何があるのでしょうか。

いま世界的にタックスヘイブンの問題に注目が集まっています。たとえば、アップル社やグーグル社、アマゾン社、マイクロソフト社など、そうそうたる一流の多国籍企業がタックスヘイブンを利用して「税逃れ」を行っていることが、各国のマスコミでも大きく取り上げられています。

日本でも、タックスヘイブンの問題が最近になってようやく新聞やテレビでも報道され始めましたが、イギリスやアメリカでは早くから市民運動がタックスヘイブンの問題を告発していて、最近ではそれをイギリスの「ガーディアン」や「フィナンシャルタイムス」、アメリカの「ニューヨークタイムス」などの新聞が取り上げるようになっていました。

無税だったスターバックス

特に問題になったのがイギリスのスターバックスです。スターバックスは、本社はアメリカのシアトルにありますが、世界30カ国に事業展開している大手のコーヒー専門店で、イギリスにも700店舗以上あります。このスターバックスが昨年末、イギリスの上院決算委員会に呼ばれ、アマゾンなど3社の代表と共に聴聞を受け、そこでいろいろな問題点が明らかになりました。

たとえば、過去15年間のうち14年間、スターバックスは損失を出していたというのです。どうやって損失を出していたかというと、たとえばコーヒー豆をスイスの子会社から帳簿上、高値で買い取った形をとって、イギリスにおける利益を減らしたという事実が判明しています。また、オランダにある欧州本社にブランドなどの知的財産権を移し、そこに巨額のロイヤリティを支払うことによってイギリスでの利益を減らすなど、いろいろな形で、イギリスでは納税義務を免れるようにしていたことが明らかになりました。

「私はスタバよりたくさん納税した!」とイギリス市民の怒りが爆発

こうした事実を知った市民は、スターバックスの店舗の前に座り込んで「私はスタバよりたくさん納税した!」と、無税だったスターバックスへの怒りを爆発させました。結局、スターバックスは今後2年間2,000万ポンド支払うことをしぶしぶ認めて事態を収拾しましたが、根本的な「税逃れ」の構造はまったくあらたまっていません。

アップル社は「税逃れ」で2%以下の税率だった

また、今年になってアップル社がアメリカ議会で問題になっています。アップル社はタックスヘイブンを利用した悪質な「税逃れ」のモデルとして上院小委員会が今年5月にヒアリングをしています。その中で、アメリカの法人税率は35%であるのに、アップル社は、実質2%以下の税率だったことなど、驚くべき事実が明らかになりました。

アップル社の本社はカリフォルニア州にありますが、アイルランドに3つの子会社を持っています。アメリカとアイルランドでは課税に対する考え方が異なっており、アメリカでは会社の設立地がどこにあるかによって課税しますが、アイルランドでは会社をコントロールする拠点がどこにあるかによって課税しています。この課税原則の違いを巧妙に利用してアイルランドからもアメリカからも課税されないという「税逃れ」を行っていました。また、利益の6割を占める海外での販売による利益はすべてアイルランド子会社に集中し、その利益はロイヤリティ支払いによってオランダを通り抜け、タックスヘイブンであるバミューダに流していました。この「税逃れ」の構造を「ダッチサンドウィッチ」というのですが、オランダは単に経由するだけという意味です。こうしてスターバックスやアップルなど有名な企業の「税逃れ」のあまりにもひどい実態が明らかになり、タックスヘイブンがクローズアップされるようになってきたわけです。

5年間納税ゼロの巨大企業

問題は、これが単にスターバックスやアップルだけに限らないということです。アメリカを例にとれば、タックスヘイブンを使っていない多国籍企業はほとんどないというほど、どっぷりその中に浸かっています。

アメリカの消費者団体(pirg)が2013年7月に発表した調査(「Offshore Shell Game」)によると、米巨大企業トップ100社のうち82社が、タックスヘイブンに2,686社の子会社を持っています。そして、トップ15社だけで859の子会社を持っていて、全体の3分の1を占めています。そのトップはバンク・オブ・アメリカで、タックスヘイブンに316社の子会社、2位のモルガンスタンレーは299社、3位の製薬会社のファイザーは174の子会社を持っています。これらすべては5年間納税ゼロという状況です。

トップ100社がタックスヘイブンに保有しているお金は、1.2兆ドルに達しています。これもトップ3をあげると、ジェネラルエレクトリックが約1,080億ドルでトップ。アップルは2位で826億ドル。ファイザーは金額の面でも730億ドルで3位に入っています。つまり、巨大企業は、巨額のお金をタックスヘイブンに隠しているのです。

その国の経済規模の10倍もの利益上げる多国籍企業 利益上げるタックスヘイブンで労働者は働いていない

また同じ調査によると、アメリカの多国籍企業が1999年にタックスヘイブンのバミューダであげた利益は、同国の経済規模の2.6倍に相当していました。それから9年後の2008年には、バミューダの経済規模の10倍へと急速に増えています。

2008年にアメリカの多国籍企業は海外利益の43%をバミューダなど5つのタックスヘイブンであげていることになっているのですが、これらの地域には海外労働者の4%しか働いていませんし、海外投資も7%しか占めていません。これがタックスヘイブンの最大の特徴です。帳簿上は事業利益の大半をタックスヘイブンで上げた形になっているのに、実際そこではわずか4%の労働者しか働いていないのです。

これとは逆に同じ多国籍企業が、オーストラリアやカナダ、イギリス、ドイツ、メキシコなど実際に事業を行っているところでは、帳簿上は海外利益の14%しか上げていないのに、それらの場所には40%の労働者が実際にそこで生産していて、34%も海外投資がされています。これらの事実は多国籍企業によるタックスヘイブン悪用の一端を示すものです。

日本はアメリカに次ぐ55兆円をケイマン諸島へ投資

――日本におけるタックスヘイブン問題の実態はどうなっているのでしょうか?

日本のデータはあまり新聞報道されませんが、最近、『しんぶん赤旗』(2013年8月25日付)が報道したところによると、日本の大企業も例外ではなく、東証に上場している時価総額の上位50社のうち45社――つまり上位50社のほとんどが子会社をタックスヘイブンに持っており、子会社数は354にのぼり、その資本金の総額は8.7兆円にもなるということです。これは具体的に有価証券報告書を調べた結果の数字で、そのベスト5を見ると、みずほフィイナンシャルグループのタックスヘイブン子会社が45社でトップ。続いてソニーが34社、三井住友フィナンシャルグループが27社、三井物産27社、三菱商事24社となっていて、銀行や商社が多くなっています。特に三井住友フィナンシャルグループはケイマン諸島だけで18の子会社を持っていて、その資本金は3兆円にものぼっています。国が出資しているNTTやJTも多額の資産をタックスヘイブンに投じているという事実が明らかになっています。

ケイマン諸島だけに限っても、日本の投資残高は55兆円に達していて、アメリカに次いで2位になっています。続いて、イギリス23兆円、フランス20兆円、ドイツ17兆円で、後に続く各国を合わせた額に相当するぐらい日本はタックスヘイブンを利用しているということがこの調査で明らかになっています。

タックスヘイブンとは何か?

――そうした実態があるわけですが、そもそもタックスヘイブンとはどういうものなのでしょうか?

「タックスヘイブン」という言葉を翻訳すると「租税回避地」となります。しかし、じつはタックスヘイブン=租税回避地の明確な定義は国際的にまだ確定したものはありません。

タックスヘイブンについて一番早い段階で判断基準を示したのがOECD(経済協力開発機構)です。1998年にOECDは、「有害な税の競争」という報告書を出し、タックスヘイブンの次の4つの指標を示しました。

(1)まったく税を課さないか、名目的な税しか課さない。――これがタックスヘイブンの最大の特徴です。
(2)情報公開を妨害する法制がある。――たとえばスイスや他のタックスヘイブンの国は秘密保護法を持っています。法律によって情報を制限しているわけです。
(3)透明性が欠如している。――要するに情報がないということですが、たとえば持ち主がはっきりしない会社や、匿名の預金や基金などがそれに当たります。
(4)企業などの実質的な活動が行われていることを要求しない。――つまり何もやっていないペーパーカンパニーであっても設立が認められるということです。

OECDは以上の4つの指標を出していたのですが、その後、徐々に基準が緩められ、現在は(2)と(3)だけに絞られています。つまり、情報公開と透明性だけをタックスヘイブンの基準にしたのです。

タックスヘイブンの3つの指標

私は、タックスヘイブンの指標として次の3つが大事だと考えています。

1つは無税、あるいは極めて低い税率であること。これはタックスヘイブンのもともとの基準ですね。

2つめは、法的な規制がまったくないか、極めて緩いということです。これは税だけでなく、金融規制や法人設立規制など、簡単に法人が設立できるような法制度になっている国も指します。また、オフショアといいますが、1つの国の中にありながらその国の法律とは別の緩い法律体系が適用されているところもあります。これはケイマン島のような小さな島だけでなく、法律上の地域なので、ニューヨークやロンドンなど先進国の中においてもどこにでもタックスヘイブンができることを示すものです。

秘密保護法などで情報が隠されている

そして3つめは、透明性の欠如です。たとえば法人や個人の真の所有者が隠されている、名義上の名前になっていて誰のものか分からない、誰の会社か分からない、というように秘密が守られてしまっているということから、守秘法域と呼ばれます。秘密保護法などによって情報が隠されていることがタックスヘイブンの大きな特徴です。

世界中に存在するタックスヘイブン

――実際にタックスヘイブンはどこにあるのでしょうか?

▼図表1は、私が作成したものです。たくさんあるのでグループごとに見てみましょう。

まずヨーロッパのタックスヘイブンは、1つはロンドンのシティが最も重要な役割を果たしていますが、その他スイスやルクセンブルグ、オーストリアなどOECD加盟国がかなり入っていることが特徴です。

またアメリカを中心とするタックスヘイブンは、ニューヨークのウォールストリートを中心にデラウエアやネバダなどタックスヘイブンの州がいくつかあります。それに加えてカリブ海の周辺ですね。ここはイギリス系統のタックスヘイブンが多いのですが、アメリカの裏庭なのでアメリカ系統のものも多くあります。またアメリカ系統のものは太平洋やマーシャル諸島、アジアにもあります。その他にも、バーレーンなど中東にもありますし、アフリカやモロッコ、モーリシャスなどにもいくつかあるということで、つまりタックスヘイブンは世界中にあるということですね。

3つのグループに大別

世界のタックスヘイブンは大きく3つのグループに分けられ、重層的なネットワークを構築しています。1つはイギリス系統のタックスヘイブンです。このグループは、シティを中心としたクモの巣構造になっています。クモの巣構造の中心部分に王室属領という、国の領土というより王室の属領があり、それがマン島とジャージーとガーンジーです。地理的にはマン島はアイルランドとイギリスの間くらいにあり、ジャージーとガーンジーはフランスとの間のチャンネル諸島にあります。この3つが王室属領です。それから大英帝国時代からの海外領土があります。それはケイマン諸島やバミューダ、英領ヴァージン諸島など14の海外領土からなっています。これに加えて、独立国ではあるけれどイギリスとの深いつながりがある国――たとえば香港、シンガポール、バハマ、ドバイ、アイルランドなどの国々がシティを中心としたタックスヘイブンのクモの巣構造の外周を形成しています。タックスヘイブンはこうした重層的な構造になっているのです。

2つめのグループはアメリカ系統のタックスヘイブンです。ニューヨークを中心としたタックスヘイブンで、これも大きく見ると3重構造になっています。まず真ん中にニューヨークがあり、次に、デラウエア、フロリダ、ワイオミング、ネバダなどの州のタックスヘイブンがあります。そして海外サテライトとして米領ヴァージンやマーシャル諸島、リベリア、パナマがあるという3重構造になっています。

3つめはヨーロッパのグループで、スイス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ベルギーなどです。

タックスヘイブンの実態
――佐渡島の3分の1の小さなケイマン諸島に法人6万社が登記

――実際のタックスヘイブンはどのようになっているのでしょうか?

それではケイマン諸島の実態を見てみましょう。ケイマン諸島はキューバの南にあるイギリス領の小さな島で、1503年、コロンブスが4度目の航海のときに発見した島です。ケイマン諸島がなぜイギリス領かについては少し歴史をさかのぼらなければなりません。コロンブスはイタリアのジェノバ生まれですが、最初ポルトガルに遠征の資金援助を申し入れたところ、ポルトガルの国王は無理だろうということで断った。それでスペインの国王に申し出たところ、スペイン国王も最初は断ったのですが最終的には許可したため、そこで資金を得てコロンブスは世界航海を始めて、4度目の航海でケイマン諸島を発見しました。コロンブスが発見したので最初はスペイン領だったのですが、1655年にクロムウェル率いるイギリス海軍がそれを打ち破り、ケイマン諸島をスペインから奪って以降、イギリス領土になったわけです。3つの島からなる諸島ですが、すべて合わせても面積259平方キロメートルで佐渡島の3分の1くらいです。議会もあり民主政体を表面上は取っているのですが、イギリス女王によって任命される総督が最大の権力を持ち内閣を統括しています。公務員も、高位の公務員はその総督が任命し、最終審裁判所もロンドンにある。ですから法制定も含め、事実上ロンドンのコントロールの下にあるわけです。

税の面では、所得や利益、財産、キャピタルゲイン、売り上げ、遺産、相続、すべて非課税です。主な財源は、会社設立の場合などの免許料や、輸入に課される物品税です。小さな島であるケイマン諸島になんと法人6万社が登記されていて、銀行は600行以上、1万にものぼるファンドが登記されているのです。

5階建てのビルに1万8,000社が登記

ケイマン諸島の中心にあるジョージタウンという首都にウグランド・ハウスという名の5階建てのビルがあります。ここはよく新聞にも写真が掲載されますが、このビルになんと1万8,000社が登記されているのです。このビルの中で実際に事務が行われているということではなく、単にポストオフィスボックスになっていて、多くの企業は別の住所を持っているのです。そして郵便は別の住所に届くようになっている。つまりウグランド・ハウスにある1万8,000社は、ほとんどがペーパーカンパニーであるということです。

国家元首が英国女王で法律もロンドンで承認される国

ジャージー島というイギリスとフランスの間にある小さな島は、イギリス系のタックスヘイブンです。ジャージー島の国家元首はイギリス女王。王室属領ですから、イギリス女王に任命された副総督が女王の任務を代行し、軍隊の総司令官としての役割も担っています。そして代官および副代官がイギリス女王によって任命され、代官は政府を代表するので、代官が普通の国の総理大臣に当たります。そして、なんとこの代官が議会の議長と王立裁判所の裁判長を兼ねているのです。加えて、法律はすべてロンドンの枢密院で承認を受けなければならないことになっています。島内には70の銀行があり、GDPの6割は金融業によるものです。所得税の税率は一律20%ですが、ジャージー島以外での収益には税金はかかりません。

法に従わなくていいとされるシティ
住民よりも企業の方が投票数が多いという選挙制度

イギリス系のタックスヘイブンの中心部がシティです。シティ・オブ・ロンドン・コーポレーションというのが正式な名前でロンドン中心部にある1区域です。

先日、タックスヘイブンに反対する市民グループがシティウォークを計画しました。タックスヘイブンに反対するために、シティの重要なところを回ることによって、タックスヘイブンの中心であるシティがどういうものであるかを学ぼうという行動を起こしたのです。

シティは、テムズ川の北、ロンドン塔の西にある半円形の形をした約2キロ平方メートルの狭い地域にあります。市長はロード・メイヤーといい、いわゆるロンドンの市長とは別に、シティの市長として選ばれています。市長の公邸はマンションハウスといい、イングランド銀行の真向かいにあります。市庁舎はギルドホールと言うのですが、これは歴史を表しています。シティのもともとの歴史を調べてみると、1000年以上前に同業者(ギルド)が集まって同業者組合をつくり、自治都市として発展してきたという歴史があります。自治都市ですから国王の指示には従わないという自立性を持っていたわけです。国王も戦費調達源としてシティには頭が上がりませんでした。国債を発行した時には買ってもらわなければいけなかったのですね。今でも王室債権徴収官というのがいて、シティの代表として議会にも自由に出入りできる特別の権限を持っているのです。そしてシティは議会より前から存在しているので、法には従わないという伝統があるというのです。イギリスの議会はだいたい18世紀頃から存在していますが、それより前にあるシティは議会が作った法律には従わないという暗黙の伝統がある。だからシティは「国家の中の国家」であるとも言われています。大ロンドン(ロンドン市)には、このシティを含む特別区が全体で31ありますが、その中でもシティは特別な地位にあるのです。それは大ロンドンの中にシティのロード・メイヤーがいるということからも明らかですね。ちなみに、シティの統治機関である市民議会の投票権は、9,000人の居住者一人ひとりに加え、企業にも3万2,000票が割り当てられています。住民よりも企業の方が投票数が多いという選挙制度です。そうした特殊なところがタックスヘイブンの中心になっているということです。

タックスヘイブンに隠されている資産額は?

――タックスヘイブンにどれくらいの資産が隠されているのでしょうか?

昨年、タックス・ジャスティス・ネットワークというイギリスの代表的な市民運動団体が試算したものによると、タックスヘイブン全体で最低21兆ドル、最高32兆ドルの試算が隠されているということです。これをイギリスの新聞「ガーディアン」が報道し、タックスヘイブンに隠された資産としてこの数字が一般的によく使われています。

では、これだけの資産でどれだけの税収が失われているかというと、たとえば最低ラインの21兆ドルの場合、金利を少なめに見積もって3%だとし、それに課税される場合の30%税率を仮にかけた場合でも、1,890億ドルの税収が本来得られたはず、ということになります。日本円にすれば約19兆円ですね。これをマックスの32兆ドルで計算すると2,880億ドル、30兆円近くになります。これは日本の税収の半分以上です。それくらい失われているということです。しかし、これは個人資産だけの数字ですから、企業資産も含めれば実際にはもっと多くなります。

タックスヘイブンへの資産隠しに
大きな役割を果たしているメガバンク

同じくタックス・ジャスティス・ネットワークが発表した資料のひとつに、タックスヘイブンに資産を隠すに当たって、メガバンクがどれだけ中心的な役割を果たしているかを調べたものがあります。これによると、メガバンクのトップ50の合計で12兆ドルをタックスヘイブンに隠している。先ほどの21兆ドルの半分くらいはメガバンクが関わっているということです。たとえばその中でも最も残高の大きいUBSはスイスのプライベートバンクです。その他クレディスイス、イギリス大手のHSBC、ドイツ銀行などそうそうたるメガバンクがタックスヘイブンに資産を隠すことに関わっていることが分かっています。

なぜいまタックスヘイブンが注目されるのか

――いまタックスヘイブンが注目されているのはなぜでしょうか?

それは、各国とも財政が厳しくなっているからです。歳出がどんどん増え、削減しても増えていくのに対し、歳入が追いついていかない。▼図表2は先進主要国の歳出・歳入の対GDP比の推移です。たとえばOECDの平均の統計で一番新しい2013年の数字を見ると、GDPに対する歳出が41%を超えているのに対して歳入の方は37%、つまり歳入がかなり不足している状況です。これはどこの国でも同じです。日本は相当な赤字ですが、他の国も皆そういう状況になっていて、財政が悪くなっている。特にリーマンショック以降、どんどん財政支出が膨らみ、財政状況はどの国も深刻です。

しかも、税収の内訳を見ると、所得税の総税収に占める割合は70~80年代には30%台であったのが、その後20%台となり、しだいに減る傾向にあります。法人税は各国とも税率引き下げ競争によって税率は引き下げられる傾向にありますが、税収は一定比率を保っているということも特徴のひとつです。そこで問題なのは、不足した部分を補うために、ヨーロッパでいえば付加価値税、日本でいえば消費税に当たるものですが、これがずっと増え続け、税収の20%以上を占めるに至っているということです。それは今や法人税の税収の2倍以上という状況です。

間接税の増税も限界があり、各国でも反対が強まる状況のもとで、各国とも大企業や大金持の課税の抜け穴を封じよという国民の声に背を向けることはできなくなっているのでしょう。

▼このインタビューのつづきは以下です。

富裕層・大企業の税逃れの手口=タックスヘイブンで貧困層から富奪い深刻な財政赤字のツケは庶民へ、ドラッグ・人身売買・臓器販売・マネーロンダリングなど犯罪の温床となるタックスヘイブン

★国公労連の月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)

▼『KOKKO』2015年9月号 創刊号
〈特集〉官製ワーキングプア
非正規国家公務員をめぐる問題――歴史、現状と課題
早川 征一郎 法政大学名誉教授
座談会 官製ワーキングプア 国が生む貧困と行政劣化
山﨑 正人 国土交通労働組合書記長
竹信 三恵子 和光大学教授/NPO法人「官製ワーキングプア研究会」理事
鎌田 一 国公労連書記長
ハローワークで働く非常勤職員
〈創刊記念インタビュー〉
根深い自己責任論と無責任な安倍政権の「安保法制」
――他の国に代えられない憲法9条による国際貢献を
平野 啓一郎 作家
〈連載〉国公職場ルポ 第1回
[日本年金機構の有期雇用職員]
8,000人雇い止めと外部委託で年金個人情報はダダ漏れ
藤田 和恵 ジャーナリスト
〈連載〉ナベテル弁護士のコラムロード 第1走
「ゆう活」に見える安倍政権のブラック企業的体質
渡辺 輝人 弁護士
〈リレー連載〉運動のヌーヴェルヴァーグ 藤田孝典⑤
労働組合はもう役割を終えたのか ―労働組合活動の復権に向けて―
藤田 孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事
〈連載〉スクリーンに息づく愛しき人びと その1
階級連帯の内と外──『パレードへようこそ』ほか
熊沢 誠 甲南大学名誉教授 ほか

▼『KOKKO』2015年11月号 第2号
〈特集〉2015年人事院勧告
国家公務員賃金の社会的な意味
森岡孝二 関西大学名誉教授
[連載]国公職場ルポ 第2回
[社会保険庁職員525人の不当解雇]
年金スキャンダルの報復とクビ切りの実験台
藤田和恵 ジャーナリスト ほか

▼『KOKKO』2015年11月号 第3号
〈特集〉疲弊する研究現場のリアル
〈座談会〉悪化する研究環境とポスドク若手研究者の無権利
国立研究機関で働くポスドク当事者
榎木英介 科学・技術政策ウォッチャー
早稲田問題のその後
松村比奈子 首都圏大学非常勤講師組合委員長
国立大学の運営問題と人文系学部廃止騒動について
「戦争法」と急進展する軍事研究
――国立研究機関アンケートから研究者の社会的責任を考える
池内 了 名古屋大学名誉教授
[連載]国公職場ルポ 第3回
[年金機構の正規職員とブラックな外部委託]
メンタル疾患の悪循環と社員110人に賃金未払い
藤田和恵 ジャーナリスト ほか

▼『KOKKO』2015年12月号 第4号
〈特集〉戦争法と国家公務員
インタビュー
戦争法廃止の展望と安倍政権の野望
渡辺 治 一橋大学名誉教授
SEALDs KANSAI塩田潤さんに国公青年が訊く
戦争法と各行政
無権利な自衛隊員と戦争法
安全配慮義務違反の戦争法発動
菅 俊治 日本労働弁護団事務局長/弁護士
[連載]国公職場ルポ 第4回
[ハローワークの非常勤とダンダリン(監督官)]
―非常勤をパワハラ雇い止めするハローワーク
ブラック企業に説教するブラック労働行政
藤田和恵 ジャーナリスト ほか

▼『KOKKO』2016年1月号 第5号
〈特集〉国家公務員の働き方改革を問う
〈霞が関で働く国家公務員座談会〉
霞が関不夜城で3千人が過労死の危機
「ゆう活」実態アンケートの結果について
個人番号制度と国家公務員
[連載]国公職場ルポ 第5回
[国土交通省東北地方整備局]
―人と予算足らず「官から民へ」のPPPで震災復興
旭化成建材の杭打ちデータ偽装と同様の危険性も
藤田和恵 ジャーナリスト ほか

▼『KOKKO』2016年2月号 第6号
〈特集〉公務員のお給料
日本の公務員賃金
「決め方」「水準」「支払い方」と労働基本権
早川征一郎 法政大学名誉教授
国家公務員のキャリア組ってなに?

▼『KOKKO』2016年3月号 第7号
〈特集〉被災地の公務員
インタビュー
憲法9条を守るだけでなく「戦争とテロを止める国」へ
高遠菜穂子 イラク支援ボランティア
〈特集〉被災地の公務員
福島原発の廃炉・除染作業に従事する労働者を守るため奔走
富岡労働基準監督署の仲間たち
東日本大震災から5年、国土交通省の職場は ほか

▼『KOKKO』2016年4月号 第8号
〈特集〉国家公務員の職場って?
各行政の現場から
労働/厚生/医療/情報通信/法務/税関/
経済産業/司法/気象/公共事業/運輸/航空
〈VOICE〉国公職場で働く青年から
〈座談会〉民間から見た公務の働き方 ほか

▼『KOKKO』2016年5月号 第9号
〈特集〉再検証「官から民へ」
誰が「橋下徹」をつくったか
松本 創 フリーライター インタビュー
「ハローワークの民営化」問題
官製ワーキングプア化する委託労働者
対談「最低賃金1500円」の新しい波
藤田孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事
小林俊一郎 AEQUITASメンバー ほか

▼『KOKKO』2016年6月号 第10号
〈特集〉国立大学クライシス
学生を苦しめる高学費・奨学金ローン地獄
国立大学法人化で論文数減
経済界主導の「大学改革」
止まらぬ教職員の非正規化 ほか

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、国家公務員一般労働組合(国公一般)執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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