消費税は大企業の「打ち出の小づち」=消費税率8%で輸出還付金1.8倍増、トヨタ本社のある税務署は1,441億円の巨額赤字、庶民の納めた税金が大企業の懐へ

(※2014年2月に書いたものです)

『アメリカは日本の消費税を許さない』(文春新書)を執筆されている岩本沙弓さん(金融コンサルタント、大阪経済大学客員教授)が、ラジオで話していた要旨を私のメモですが紹介しておきます。(※文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」2014年2月17日放送分から。文責=井上伸)

消費税導入が財政赤字拡大の起点で
消費税増税がさらなる財政悪化まねいた
――消費税導入から25年間の事実が証明している

消費税は社会保障費を捻出するとか、財政再建の財源を確保するためと政府は言っていますが、そもそも財政赤字が拡大してしまう歳出と歳入が大きく開いてしまった起点は消費税が導入された1989年です。さらにもう一段、歳出と歳入が大きく開いてしまったのは1997年の3%から5%への消費税増税という事実があります。(※▲上のグラフ参照)

この事実から何が言えるかというと、消費税増税で財政再建や社会保障費の捻出をするのは無理があるということです。このことを消費税導入の25年間が証明しているということです。やはり、所得税や法人税でカバーする必要があるのです。

アメリカが消費税を導入しない理由は消費税が不公平税制だから
――輸出企業だけを優遇する消費税は税金としておかしい

この点について、アメリカも指摘していて、消費税はもともと社会保障費を捻出するようなタイプの税でも、財政再建に向いている税でもないということを40年前に結論を出しています。アメリカが消費税を導入しないのは、消費税が不公平税制であるという観点からです。いつもそう言うと、アメリカには州税があるじゃないかという人がいるのですが、アメリカの州税は「小売り売上税」というタイプの税金で消費税とはまったく違うタイプの税金なのです。

アメリカがなぜ消費税を不公平税制だと言うのかというと、消費税は輸出企業に対して――アメリカではリベートと言いますけど、日本では「輸出戻し税」「輸出還付金」と言っている補助金を与えるタイプの税金だからです。アメリカは自由貿易を促進するというのが根本的なアイデアなので、やはり輸出企業という特定企業だけを優遇する消費税は税金としておかしいというわけです。だからアメリカでは消費税を40年前に採用しないと決めて今でも採用していないのです。

日本の国内の大企業が、輸出製品を作るために、国内の子会社、孫会社から部品を調達するときには、商品代プラス消費税を払うのだけれど、いざその商品を海外に輸出した場合に、たとえばアメリカの国民から日本の消費税は徴収できませんから、海外からは消費税を受け取れないので、そうすると輸出大企業は、一方的に国内の子会社に対して税金を払っているのは払い損ではないかということで、その払い損の部分を日本政府が還付している。これが「輸出戻し税」「輸出還付金」と言われているものです。

日本の輸出大企業を優遇する「輸出戻し税」「輸出還付金」

しかし、アメリカからすると、日本の輸出大企業は子会社や孫会社に消費税を払っていると言うけれども、本当に払っているんですか?というところが問題にされているわけです。実際は大企業は子会社に対して買い叩きですとか、値切りとかで、消費税を払っていないのに「輸出戻し税」「輸出還付金」だけもらっているのではないかと思われているわけですね。

それからもう一つは、たとえば1本5,000円のアメリカのカリフォルニアワインは消費税を採用してなければ、そのまま5,000円で日本では売れるわけですね。ところが消費税が10%になったら、5,500円になってしまう。この500円分は、アメリカの意向とは全然関係なくて、日本が勝手に500円分値段を上げていることになるわけです。

ですから、「輸出戻し税」「輸出還付金」の不公平税制であるというところと、製品の実際価格が上がってしまうという2つの点で、日本の消費税はアメリカ製品としては非常に良くないということでアメリカは批判しているわけです。実質関税のような大きな壁を消費税で作った上に、「輸出戻し税」「輸出還付金」で日本の大企業が優位ではないかということを批判しているのです。

日本の大企業の優位策がこの消費税だというのがアメリカのアイデアにあるのです。ただアメリカの公文書を見ると消費税率5%ぐらいであれば、相対的に低い税率なので許容範囲だというような文言があります。しかし、逆に今後8%や10%になったときにアメリカは放っておいてはくれないのではないかと思っています。

消費税を上げて法人税を下げる
日本の財源はプラスマイナスゼロ

実際にリタリエイション(報復措置)という言葉が、アメリカの財務省が発表している公文書などにも出てきます。そこでは日本は表向きの消費税増税の理由を「社会保障費が足りない」とか「財源が不足している」とか言っているが、実際は消費税を引き上げて、法人税を引き下げしているではないかと指摘していて、アメリカは非常に合理的な国なので、一つの税金を上げておいて、一つの税金を下げたならば、結局プラスマイナスゼロで、一体どこから財源が出てくるのだと日本政府を見透かしているわけですね。

事実、日本の消費税の歴史というのは、消費税を上げておいて法人税を下げているというのが事実ですから、そういう国に対しては報復をしますよと、これも40年ぐらい前の資料なんですけど、公文書に書いてあるわけです。ですので、消費税導入後の日本は20数年間、アメリカからしてみれば報復対象だったということで、それが今回のTPPでもあると思うわけですね。

 

※以下はきょう(2015年10月16日)追記したものです。

『全国商工新聞』2015年10月12日付の「輸出大企業10社に消費税7,837億円『還付』――税率8%で1.8倍に/中小業者が納めた税金 大企業の懐へ/元静岡大学教授・税理士の湖東京至さん」という記事で次のような指摘がされていますので、関連情報として紹介しておきます。

輸出大企業10社に消費税7,837億円『還付』

――税率8%で1.8倍に

中小業者が納めた税金 大企業の懐へ

元静岡大学教授・税理士の湖東京至さん

『全国商工新聞』2015年10月12日付】

下請け業者の単価をたたく一方で、消費税を税務署から還付されている輸出大企業。その還付金が7,837億円(輸出大企業10社)となり、税率が8%になって1.8倍に激増していることが湖東京至税理士(元静岡大学教授)の推算で明らかになりました。突如、出された個人番号(マイナンバー)を使って増税分の一部である酒類を除く飲食料品のみを還付するという財務省案。湖東税理士は「還付制度や軽減税率は悪税の延命措置にすぎない」と批判し、還付金の実態と軽減税率の本質を解説します。

表1を見てください。わが国を代表する製造業10社は税率が8%に上がったため、還付金(頂く税金)が大幅に増えています。還付金が一番多いのはトヨタ自動車で、前年の年間還付額は1,402億円に対し、今年は2,594億円、1,192億円も増えています。(中略)許せないのは、トヨタなどの輸出大企業は自分で消費税を税務署に納めたことは一度もないということです。仕入先や下請けが苦労して納めた税金をトヨタなど最終輸出業者だけが頂く仕組みになっています。(中略)

7税務署が「赤字」に
10%への増税やめよ

表2は消費税の税収が赤字になっている税務署を、マイナスの大きい順に並べたものです。なんとここでもトヨタの本社がある愛知・豊田税務署が1位、日産の本社がある神奈川税務署が2位、マツダの本社がある広島・海田税務署が3位となています。(中略)政府・財務省の説明によれば、平成25年度の還付金は3兆2,237億円(消費税率5%)、平成26年度の還付金は3兆2,920億円(消費税率5%、一部8%)、平成27年度は4兆4,736億円(消費税率8%)に増えています。つまり8%に上がったことにより還付金額が大幅に増えることを政府自身が承知しているのです。重要なのは、税務署から輸出大企業にリベート(還付金)が振り込まれていること、そして税率が上がれば上がるほど還付金額が増えることです。

 

▼参考
消費税は大企業の「打ち出の小づち」 -「濡れ手で粟」の輸出還付金

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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