大学など高等教育への日本の公的支出は6年連続でOECD最下位、33カ国平均の半分以下と突出して低い大学への公的支出は日本の「競争力」低下と連動している

  • 2016/9/16
  • 大学など高等教育への日本の公的支出は6年連続でOECD最下位、33カ国平均の半分以下と突出して低い大学への公的支出は日本の「競争力」低下と連動している はコメントを受け付けていません

時事通信の報道です。

日本、33カ国中32位=教育への公的支出割合-OECD
時事通信 2016/09/15-18:39

経済協力開発機構(OECD)は15日、2013年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合の調査結果を公表した。日本は3.2%と7年ぶりに最下位を免れたものの、比較できる33カ国中ハンガリー(3.1%)に次ぐ32位にとどまり、OECD平均の4.5%も下回った。

33カ国の中で最も高かったのはノルウェーの6.2%。次いでデンマークの6.1%、ベルギー、フィンランド、アイスランドが各5.6%で、欧州の国々が上位を占めた。

大学など高等教育への支出を公費で負担している割合は、日本は35%で、韓国(32%)に次いで2番目に低く、大部分を私費で負担している実態が明らかになった。OECDは、日本では高等教育への需要が高いにもかかわらず、公的支出が少ないと指摘した。

 

つづいて、日本経済新聞の報道です。

教育への公的支出、日本なお低水準 13年OECD調べ
日本経済新聞 2016/9/15 20:54

経済協力開発機構(OECD)は15日、2013年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合を公表した。日本は3.2%で、比較可能な33カ国中、最下位のハンガリー(3.1%)に次ぐ32位。12年の最下位からは脱したが、依然低い日本の公的支出を示す結果となった。OECD平均は4.5%。

一方で、公的支出に私費負担を合わせた児童生徒1人当たりの教育機関への支出を見ると、日本はOECD平均を上回っており、OECDは「日本では幼稚園や大学などで私費負担の割合が高く、家計に重い負担となっている」と指摘している。

公的支出の割合が最も高かったのは12年と同じノルウェーで6.2%。6.1%のデンマーク、5.6%のベルギー、フィンランド、アイスランドが続いた。

日本の国公立の幼稚園から高校までの教員の14年の年間勤務時間は1891時間で、OECD平均を約300時間上回った。ただ、勤務時間のうち授業時間の割合は中学校で32%にとどまり、平均の45%と比べ、課外活動や事務作業、会議などに多くの時間を割いている実態が改めて浮き彫りとなった。

また勤続15年の小中高校教員の給与は、OECD平均が増加傾向なのに、日本は05年から14年の間に7%減った。OECD担当者は「日本では伝統的に教育を重視してきたが、最近は教員の待遇が悪化している。地位を上げていく努力が必要ではないか」としている。

 

上記の報道の元データ(OECDデータ)からグラフをつくってみたのが以下です。

上のグラフは、すべての教育機関への公的支出ですが、これを大学など高等教育への公的支出でグラフをつくってみたのが以下です。

そして、OECDデータをさかのぼって見てみると、以下のグラフになります。

2007年にチリが急減して最下位になっていますが、2008年から今回の発表された2013年まで日本は6年連続で最下位です。それも一貫して、OECD平均の半分以下という異常な低さを続けているのです。

この異常な高等教育への公的支出の低さは、以下のグラフに見られるように、日本の「競争力」の低下と連動しています。(※以下の4点のグラフは、鈴鹿医療科学大学の豊田長康学長「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究~国際学術論文データベースによる論文数分析を中心として~」より)

競争力01 競争力04 競争力03 競争力02

それから、朝日新聞の報道です。

日本の教員給与、9年間で7%減 OECD調査
朝日新聞 2016年9月15日23時12分

日本の教員の給与が2005年から14年の9年間に7%下がったとする調査結果を経済協力開発機構(OECD)が15日、発表した。この期間、国家公務員にならって、地方公務員全体の給与減額が続いたことが背景にある。

OECDによると、勤続15年の教員の年間給与は、05年は小中学校が623万6千円、高校が623万7千円、14年はいずれも545万6千円。物価の下落を調整するといずれも7%減だった。加盟国平均では、同期間に小学校で4%、中学校で3%、高校で1%、いずれも上がっていた。

一方、授業時間は高校で年間513時間(加盟国平均644時間)など各学校段階で加盟国平均より短かったが、法定勤務時間(小中高とも1891時間)は加盟国平均より長かった。

文部科学省によると、04年以降の7回の人事院勧告のうち4回は減額の勧告で、公立校教員の給与もほぼこれに沿って減額され、都道府県によっては、独自に給料をカットする動きもあったという。OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は「日本の教育の強みを損なわないためには教員の地位や質を下げない努力が必要だ」と話す。

 

この点についてもOECDの元データからグラフにしてみたのが以下です。(※下のグラフは小学校の教員ですが、中学校と高校の教員も同様です)

突出した世界一の長時間労働でうつ病休職者10年で3倍増の日本の教員、教員の「うつ傾向」は一般企業の2.5倍の上に、世界でもまれな賃下げも行われている日本の教員。「日本の強みを損なう」ことを、日本政府はずっと続けているわけです。日本は沈むべくして沈んでいると言うほかないと思います。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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