所得格差が過去最大、平均所得93万円減(2002-2014)、中間層が細り低所得層が増え貧困に陥る恐れのある人が増大、「世代間格差」が問題ではなく世代と関係なく所得格差を解消する所得再分配が必要

  • 2016/9/17
  • 所得格差が過去最大、平均所得93万円減(2002-2014)、中間層が細り低所得層が増え貧困に陥る恐れのある人が増大、「世代間格差」が問題ではなく世代と関係なく所得格差を解消する所得再分配が必要 はコメントを受け付けていません。

時事通信の報道です。

14年の所得格差、過去最大=再分配後はやや改善-厚労省
時事通信 2016/09/15-16:36

厚生労働省は15日、所得格差を表す代表的な指数である「ジニ係数」の2014年調査結果を公表した。現役世代に比べて所得が少ない高齢者世帯などが増えたため、年金などを含まない当初所得(世帯単位)は、前回11年調査に比べ0.0168ポイント上昇し、0.5704と過去最高を更新した。ただ、年金などを加えた再分配後の所得格差はやや改善した。
ジニ係数は0~1の間の数値で示され、1に近いほど格差が大きいことを表す。1962年からおおむね3年ごとに調査しており、今回は14年7~8月に8904世帯を対象に実施した。回収率は54.2%。

 

毎日新聞の報道の一部です。

ジニ係数
ジワジワ「格差社会」 所得格差、過去最大に
毎日新聞 2016年9月15日 19時24分

貧困に陥る恐れのある人が増えている

小塩隆士・一橋大経済研究所教授(公共経済学)の話 所得再分配後のジニ係数は、世帯単位では0.38前後と、前回の調査とほとんど変化していない。だが平均所得額は約482万円で、前回より約4万円減っている。平均額が減ったのにジニ係数がほぼ安定しているのは、中間的な所得層から低所得層にシフトする人が増え、低所得の層が厚くなったためとみられる。これは貧困に陥る恐れのある人が増えていることを意味しており、国はその危険を重視すべきだ。対策としては、低所得層の税や社会保障の負担を軽減する仕組みが必要だ。非正規雇用についても、正社員との格差を縮小する「同一労働同一賃金」や、厚生年金の適用範囲の拡大による待遇改善が求められる。教育への公的支出を増やして自己負担を軽減し、所得が低い人にも充実した教育を保障する長期的な支援も必要になる。

 

これらの報道にある「所得格差、過去最大」というのは、下のグラフ(厚生労働省の2014年「所得再分配調査報告書」に掲載されているグラフ)にある「当初所得の格差」=所得再分配前のジニ係数のことです。

それで、上記の毎日新聞での小塩隆士・一橋大経済研究所教授の指摘にある「平均所得額は約482万円で、前回より約4万円減っている。平均額が減ったのにジニ係数がほぼ安定しているのは、中間的な所得層から低所得層にシフトする人が増え、低所得の層が厚くなったためとみられる。これは貧困に陥る恐れのある人が増えていることを意味しており、国はその危険を重視すべきだ」という点について、元データの厚生労働省「所得再分配調査」からいくつかグラフにしてみました。

まず、平均所得は下のグラフにあるように、この12年(2002~2014年)で93万3千円も下がっています。

上のグラフを所得階級別の世帯分布の推移で見たものが以下です。

上のグラフをより分かりやすくするために、2002年と2014年の折れ線ブラフにしてみたものが以下です。

上のグラフにあるように、2002年から2014年の推移で、600万円以上の所得階級は軒並み減少し、350万円未満の所得階級は軒並み増加していますから、小塩隆士・一橋大経済研究所教授の「中間的な所得層から低所得層にシフトする人が増え、低所得の層が厚くなった」という指摘が客観的事実であることが分かります。

それから少し気になったのが「The Huffington Post」の以下の記事。

The Huffington Post日本版 2016年09月16日

最も再配分の恩恵を受けられない層が20~24歳

「改善度」が最高ということは、つまり年金など所得の低い世帯が受け取る社会保障費が増加しているという意味だ。世帯間の格差を縮めている代わりに、「世代間」の再配分には不均衡が生じているとも言える。(中略)20~24歳の最も若い世代が、最も再配分の恩恵を受けられない層となっている。

 

たしかに、年齢階級別にグラフをつくってみると以下のように、若い世代、とりわけ20~24歳は再分配の恩恵を受けられていません。

しかし、この「世代間の再分配の不均衡」の問題は、冷静な議論が必要だと思います。

下のグラフは、阿部彩さんが作成した「性別、年齢層別、相対的貧困率(2012)」です。

相対的貧困率は、税・社会保障の再分配後のものです。20~24歳の男性の貧困率が高くなっていますが、70歳以上の年齢層の方が貧困率は高いのです。問題なのは、「世代間の再分配の不均衡」ではなく、日本の税・社会保障による再分配が貧困をなくす方向で機能していないことなのです。そのことは、小塩隆士教授が、以下のように、日本の「再分配政策の大部分が年齢階層間の所得移転」になってしまっていて、文字通りの所得階層間の所得再分配になっていないため、子どもの貧困も、若年層など非正規労働者の貧困も、高齢層の貧困も「十分に解消され」ないと指摘しています。

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井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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