相次ぐノーベル賞、しかし研究できない研究現場が広がっている=ポスドクをレンタル品扱い、派遣登録する若手研究者、支援部門は入札で年々安価な派遣会社になり雇用と仕事劣化し研究者の事務負担増え研究できない

  • 2015/10/8
  • 相次ぐノーベル賞、しかし研究できない研究現場が広がっている=ポスドクをレンタル品扱い、派遣登録する若手研究者、支援部門は入札で年々安価な派遣会社になり雇用と仕事劣化し研究者の事務負担増え研究できない はコメントを受け付けていません。

東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長、北里大学の大村智特別栄誉教授と、理系の研究者へのノーベル賞受賞が相次いでいますが、私は国立研究機関の担当として、この間の研究現場におけるポスドク若手研究者の不安定雇用、研究支援部門の派遣労働者をはじめとする非正規化、アウトソーシングなどによって、研究現場が疲弊し地盤沈下していることを憂慮しています。過去に書いた記事を紹介します。

▼2015年6月に書いた記事です。

国立研究機関の科学技術研究を劣化させる派遣法改悪、ポスドク・若手研究者が派遣労働者に

私が事務局を担当している「第33回 国立試験研究機関全国交流集会」の実行委員会がつくばの産総研でありました。この集会に向けて、国立研究機関で働く職員に個人アンケートを取り組んでいるところなのですが、その中で、国立研究機関での「派遣労働者」「非正規労働者」の増加で問題になっていることを聞いた設問への回答の一部を紹介します。(やはり、国立研究機関でも派遣労働者の増加はいろいろな点で問題となっていて、研究業務に支障を来していることが分かります。この上さらに、派遣法改悪によって派遣労働者が増えることになると、国立研究機関の研究業務もますます大変な事態に陥ることが予想されます。アンケートへの回答を読むと、劣悪な労働条件に置かれる派遣労働者をはじめ非正規労働者ばかりを研究職場に増大させることで研究を進めることが困難になっています。これのいったいどこが「科学技術立国」なのか理解不能だし、よくも安倍首相は、「科学技術イノベーション」が成長戦略の柱だなどと言えたものだと思います)

派遣労働者に仕事を丸投げせざるをえない状況が増え
実験時の事故の増加と、ヒヤリハットが多発

◆運営費交付金の削減により、正規の研究者を雇用することができないため、正規の研究者の手が回らなくなり、派遣労働者に仕事を丸投げせざるをえないところが増えていて、研究状況の把握もできなくなり、実験時の事故の増加と、ヒヤリハットが多発しています。

◆派遣労働者がよく変わり、変わるたびに繰り返し周りが最初から仕事を教えなければいけないので、全体の仕事が遅れる状況になっています。

◆派遣労働者が入れ替わる度に、業務の滞りが生じています。それを何とか取り返そうと、正規職員が遅くまで残業している状況があります。

◆派遣労働者など非正規職員が増えて、研究支援部門等の一貫性が失われています。

派遣会社に登録せざるをえないポスドク、若手研究者が増加

◆研究機関で雇い止めされ、次の就職口が見つからず派遣会社に登録、待機せざるをえないポスドク、若手研究者が増えて来ています。

◆年度ごとに派遣労働者が入れ替わり、年度の引き継ぎができていないため、書類が通っていないことや、手続きが行われていない等あり、研究がストップしてしまいます。

◆派遣労働者などで人数は確保できていても、それぞれ経験の蓄積等がないので、仕事のレベルは下がっています。

◆派遣労働者や契約職員は何年仕事をしても給与が増えないのでそれぞれ仕事のやりがいがなくなっていっています。そして、人が変わるたびに指導する正規職員にも負担がかかっています。

派遣労働者にサービス残業押しつけやパワハラが横行
「天下り」特権官僚の恣意的で不透明な採用選考

◆派遣労働者や非正規職員にサービス残業の公然とした押しつけやパワハラが横行しています。「天下り」の一部本省ポストの特権官僚による恣意的で不透明な採用選考なども行われています。

◆派遣労働者は仕事を覚えた頃に更新が切れ、次はまた一から教え直しという繰り返しです。

派遣労働者の福利厚生が劣悪で事務量は増えているのに待遇は下がっている

◆直接雇用の非常勤職員から派遣労働者に変更されたのですが、派遣労働者の福利厚生が劣悪で、事務量は増えているのに待遇は下がる実態にあります。

◆派遣労働者が研究補助業務を行っていますが、事務の引き継ぎが全くされずに退職することになるため、そこで仕事が止まってしまいます。

◆事務等を派遣労働者の置き換えているため、事務のベテランがいなくなり、研究者の事務負担が激増していて、研究が滞る事態となっています。

◆派遣労働者など非正規職員が増えることによって業務の継続性がなくなり、引き継ぎもできていないので、人が変わるごとに正規の研究職が指示をしなければらないため研究に支障が出ています。また、全体の作業を把握している人が少なくなったため、一人のミスをフォローできない状況になっています。

派遣労働者に過剰な業務や責任を負わせるケースが増加

◆派遣労働者など非正規雇用の職員が過剰な業務やそれにともなう責任を負っているケースが増えてきています。

◆経理等にも派遣労働者が多く入っており、研究経理等の専門的・経験的知識が必要な分野において、熟練職員が不足しています。

◆運営費交付金が削減されているため、正規職員を採用する予算がないため、派遣労働者を雇っているのですが、やっと仕事を覚えた人を変えざるを得ないため、仕事は混乱しています。

◆派遣労働者など非正規職員の増加で、専門性を高める職員も指導性を発揮する職員もその双方が欠けてきており、研究所組織としての総合力が低下しています。

◆派遣労働者など非正規職員は、どうせ数年で辞めるのだからということで帰属意識が低くなっていますし、引き継ぎも上手くいかないので、必然的に研究者への事務仕事の負担が増えて来ていて、本来の研究が滞ってしまっています。

派遣労働者へのいじめ増加

◆派遣労働者など非正規職員は立場が弱いため、いじめなどでやめるケースが増えています。

◆そもそも事務部門のマンパワーが足りない上に、派遣労働者など不安定雇用の非正規職員を増やしているため、業務が回らなくなってきています。

◆派遣労働者など非正規職員がせっかく仕事に慣れて来たところで雇い止めになり、業務が回らなくなる事務部門が増加しています。安定的雇用がなければ仕事は回りません。

派遣労働者など非正規職員が増え、施設管理上も危険な状態に

◆どこの部署にも派遣労働者など非正規職員が増え、業務全体が不安定になっています。そして工務課などの専門技術職員も減り、施設などの全容を把握する人が居なくなり施設管理上危険な状態になっています。

◆派遣労働者など非正規職員が増えていて、業務の継続性が途切れる状況になっています。新任の人に教育が必要で、その期間と手間が馬鹿になりません。すでに人員が減少しどこでも手一杯の現状において、その手間が非常に問題化していて、結局、非正規職員の増加は研究業務を非効率にしています。

◆派遣労働者には決裁権限がありません。結果的に決裁権限のある正規職員が極端に忙しくなり悲惨なことになっています。

◆派遣労働者など非正規職員の増加で事務処理の継続性が確保できなくなり、それが研究業務へのしわ寄せとなって研究活動を阻害しています。

◆派遣労働者など非正規職員の増加は、少なくなる正規職員への負担増をもたらしています。

ポスドクは「レンタル品」、事務は派遣など人間の“モノ扱い”だらけに

◆理事長は「中古品」、ポスドクは「レンタル品」、研究の実働は「出向・招へい」、事務の実働は「有期・派遣」と人間の【借り物】だらけ、人間の“モノ扱い”だらけになっています。正規職員は「予算消化」と「多重兼務」で手一杯。業務環境うんぬんでは無く、国民目線で真に必要な「研究業務(部署)」のみを厳選し再構築すべきです。このままだと「金の切れ目が縁の切れ目」、【借り物】はすべて居なくなり、補正予算で購入した資産の維持だけで予算が枯渇し、研究どころではなくなり、10年後には現有の存続は不可能です。

◆派遣労働者など非正規職員が増加することが、継続的な人材の育成が進まなくなっています。

◆派遣労働者など非正規職員が増え、正規職員の人数が明らかに不足し、残業や休日出勤が常態化しています。

◆継続的に働くことができない派遣労働者など非正規職員が増えて、業務効率が低下しています。

◆派遣労働者など非正規職員に時間内で終わらない量の仕事を与え超過勤務させるような状況がありますし、年休をとりづらい雰囲気を作るという問題などがあります。

◆派遣労働者など非正規職員の増加で事務部門への経験が蓄積されておらず、未経験者で運用している現状です。

毎年の入札で年々安価な派遣会社になり
派遣労働者の雇用が劣化し続けている

◆派遣労働者と業務を分担していますが、1年契約で業務に慣れた頃に交代となり、毎年、業務説明を一から行うため、非常に効率が悪くなっています。また、入札により派遣会社が決まるため、毎年契約額が安価になって行くと同時に派遣労働者の雇用が劣化するとともにスキル低下が進んでいて、業務遂行に支障が出て来ています。

◆人件費削減で正規職員が足りないため、非常勤、派遣等の人手を確保するために書類書きが増え、本来の業務である研究の時間が減り、悪循環に陥っています。そうして得た人たちには、目先の仕事しかやってもらえないため、いわゆる研究所の雑用は、少ない正規職員が行うことになり、研究は滞るという悪循環になっています。

【お知らせ】
月刊誌『KOKKO』11月号では「特集 疲弊する研究現場のリアル」として、ポスドク当事者と産総研、通総研の研究者、榎木英介さんによる「〈座談会〉悪化する研究環境とポスドク若手研究者の無権利」などを掲載予定です。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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