菅官房長官の「子ども産んで国家に貢献を」は人権侵害発言です―結婚するかどうか、子どもを持つか持たないかは女性の基本的権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)で女性の人権の国際的大原則

  • 2015/10/3
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(※上の写真は、change.org「菅官房長官、福山結婚に対して「たくさん産んで国家に貢献」発言を撤回してください!」から)

先日、「菅官房長官の「子ども産んで国家に貢献を」→日本で子ども産めば世界最悪の女性賃金差別=男性のわずか39%、OECD30カ国平均の半分」という記事で、すでに菅官房長官の発言を批判していますが、この問題を人権の面から考えると、どういうことなのか、以前、Yahoo!ニュースを書いていたときに鈴木章浩都議のセクハラ発言問題でアップしていますので、紹介しておきます。

▼Yahoo!ニュースに2014年6月24日に書いたものです。

鈴木章浩都議の謝罪も人権侵害のセクハラ-結婚するかどうか、子どもを持つか持たないかは女性の基本的権利

セクハラやじを認めた自民党の鈴木章浩都議が昨日、記者会見を行っています。毎日新聞の「鈴木章浩議員の謝罪会見・一問一答」によると、鈴木章浩都議は、「少子化、晩婚化の中で早く結婚をしていただきたい、という思いがある中であのような発言になった」「(ヤジは)塩村さんを誹謗するためではなかった。単に「早く結婚してほしい」という思いで発言した」と語っています。要するに、鈴木章浩都議は、少子化対策は女性が早く結婚して子どもを産めばいいんだと心底思っているから「早く結婚したほうがいいんじゃないか」と口をついて出てしまったと言っているのだと思います。

この発言を聞いてすぐ思い出すのが、厚生労働大臣だった柳沢伯夫氏の発言です。2007年1月27日、柳沢伯夫厚生労働大臣(当時)は、松江市で開かれた自民県議の決起集会で、「産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と女性を機械に例えて少子化問題を解説したという、女性は「産む機械、装置」発言です。奇しくも第1次安倍内閣の厚生労働大臣のときでした。

そして今、第2次安倍内閣はマスコミ報道によると骨太方針に人口政策と女性活用政策を掲げようとしているとのことです。少子化だから女性は早く結婚して子どもを産めといわんばかりのセクハラ発言をした鈴木章浩都議と、女性は「産む機械、装置」発言、そして第2次安倍内閣の人口政策と女性活用政策は符号しているように思います。

「少子化だから女性は早く結婚して子どもを産め」、女性は「産む機械、装置」発言というのは、女性の人権を侵害するものです。これが人権侵害であることは、憲法24条はもちろん、政府が2010年12月17日に閣議決定した「第3次男女共同参画基本計画」にも次のように明記されていることからも分かります。

憲法第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 

「第3次男女共同参画基本計画」
<基本的考え方>
男女が互いの身体的性差を十分に理解し合い、人権を尊重しつつ、相手に対する思いやりを持って生きていくことは、男女共同参画社会の形成に当たっての前提と言える。心身及びその健康について正確な知識・情報を入手することは、主体的に行動し、健康を享受できるようにしていくために必要である。特に、女性は妊娠や出産をする可能性もあるなど、生涯を通じて男女は異なる健康上の問題に直面することに男女とも留意する必要があり、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)の視点が殊に重要である。こうした観点から、子どもを産む・産まないに関わらず、また、年齢に関わらず、全ての女性の生涯を通じた健康のための総合的な政策展開を推進するとともに、男女の性差に応じた健康を支援するための総合的な取組を推進する。

政府が2010年12月17日に閣議決定した「第3次男女共同参画基本計画」より】

この「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)というのは、以下のように説明されています。

リプロダクティブ・ヘルスは、人間の生殖システムおよびその機能と活動過程のすべての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指します。したがって、リプロダクティブ・ヘルスは、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを決める自由をもつことを意味します。 リプロダクティブ・ライツとは、国内法・国際法および国連での合意に基づいた人権の一つで、すべてのカップルと個人が、自分たちの子どもの数、出産間隔、出産する時期を自由にかつ責任をもって決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利、ならびに最高水準の性に関する健康およびリプロダクティブヘルスを享受する権利です。

以上のように、「子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを決める自由」というのは、男女共同参画社会の前提となる女性の基本的な権利なのです。

差別や強制を受けずに子どもを産むかどうかを自由に決めることが女性の基本的な権利であるという国際的な合意は、“産む性”として女性たちが苦しんできた長い歴史と権利獲得までの女性のたたかいがありました。とりわけ日本では、“子どもを産まない女には価値がない”という時代が長く続き、1941年には政府が「産めよ増やせよ」という人口政策まで決定していたのです。これも集団的自衛権の行使を狙う今の安倍政権に通底するものがあるように思います。

このように、女性が国家の人口政策の対象となり、肌の色も言葉も違う女性たちが産む性として同じ苦しみを味わってきたから、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)が国内法・国際法および国連での合意に基づいた人権の一つとなったのです。

鈴木章浩都議の「少子化、晩婚化の中で早く結婚をしていただきたい、という思いがある中であのような発言になった」という発言自体がまたセクハラ発言であり、女性の基本的な人権を侵害するものです。日本政府も確認した、国際的な大原則に反する発言を重ねてしておいて、そのことにすら気がついていない鈴木章浩都議に政治家を続ける資格はありません。

ですので、渡辺輝人弁護士の「会派を離脱したからといって、有権者や国民との関係で何らかの責任を取ったことにならないことは明らかだろう」という指摘に私も同感です。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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