アイドルになりたい少女や「関係性の貧困」で孤立する女子高生につけ込むJKビジネス=売春目的の人身売買|仁藤夢乃さん

(※2014年10月13日に書いた記事です。上の写真は反貧困全国集会で報告する女子高生サポートセンターColabo代表・仁藤夢乃さん)

昨日(10/12)、「反貧困全国集会2014 ~生きぬくために つながろう!~」が開催されました。その中で行われたシンポジウムでの女子高生サポートセンターColabo代表・仁藤夢乃さんの指摘にはとりわけいろいろ考えさせられました。

JKリフレやJKお散歩、最近ではJKカフェやJK占い、JKカウンセリング、JK撮影会など、さまざまな形態のJKビジネスが展開され、少女たちが性暴力にさらされるなか、少女たちへの支援に取り組んでいる仁藤夢乃さんの活動は先月放送されたNHKクローズアップ現代「広がる少女売春~“JKビジネス”の闇~」などで知ってはいたのですが、あらためて衝撃を受けました。

性被害者の半数近くが10代の少女

日本における子どもの貧困は6人に1人。10代の自殺者数は587人で1日1.6人が自殺。10代の望まない妊娠・中絶は1日57件。親の虐待やネグレクト、アルコール中毒などによる被害によって傷つけられる子どもたち。昨年強制わいせつの被害にあった女性7,463件のうち20歳未満の女性は3,789件と半数近くが10代の少女。そして、性犯罪の認知件数は実際の1%に満たない現実(国連報告)の中で誰にも言えない少女に対する性被害の多発。知れば知るほど頭を抱えたくなる現実に私などはすぐ打ちのめされてしまうだけなのですが、そうした深刻な問題に対して、仁藤夢乃さんは立ち向かっているのです。そして、仁藤さんは「難民高校生」「孤立している高校生はどれくらいいるのか?」と問うていきます。

「子どもの貧困」「関係性の貧困」の広がりで孤立する女子高校生、
そこにつけ込むJKビジネスの罠

高校中退者数は年間5万5千人。不登校者数も中学生9万5千人、高校生5万6千人。ほかにも不登校者にカウントされない保健室登校者などが10万人。こうした問題の背景にある、「子どもの貧困」や「関係性の貧困」が広がるなかで、孤立する少女たちにつけ込み、利用しようとする大人たちがJKビジネスを展開しているのです。JKリフレ、JKお散歩などJKビジネスに絡め取られる少女たちからは、「学費のため」「進学時に奨学金を借りなくてすむようにするため」「修学旅行費のため」などがJKビジネスを行う理由として多く語られるとのことです。

JKビジネスで少女の性を搾取する「裏社会の大人たちがセーフティーネットになってしまっている」「裏社会が少女たちの居場所になってしまっている」

とりわけ仁藤さんの指摘で考えさせられたのは、少女の性を搾取する「裏社会の大人たちとJKビジネスがセーフティーネットになってしまっている」という現実の問題でした。JKビジネスは「ニセのセーフティーネット」に違いないのだけれど、誰にも承認されない、居場所のない少女たちに巧妙な「スカウト力」でアプローチして、ニセモノだけれど現実に衣食住と居場所と承認を少女に提供しているわけです。そもそも居場所のない孤立した少女に対して、声をかけてくるのは、援助交際をもちかけてくる大人か、JKビジネスへとスカウトする大人だけという現実があり、教育・行政・まともな大人は声かけどころか発信すらほぼないという問題があります。こんな倒錯したような現実が存在してしまっているのは、貧困や生きづらさを抱え孤立した少女たちに対するまっとうなセーフティーネットが不在であることや、じつはむしろ「表社会」の側が少女たちをJKビジネスという「ニセのセーフティーネット」へと追い込んでいる側面もあったり、まっとうなアプローチを行う大人が皆無に近い現実があるとして、仁藤さんは次のように訴えていました。

10畳の部屋に少女8人

10年前、私が高校生だった頃は、ネットカフェ難民でしたが、今はネットカフェもカラオケも18歳未満は午後10時以降は補導されてしまうこともあってずっといることはできないので、JKビジネスはうちだったらいられるよという形でそういうところも突いてきています。脱法ハウスの問題ともつながりますが、寮があるよと言われて、10畳の部屋に少女8人が住んでいたりします。

それと、今はSNSで、ツイッターやフェイスブックで「家出したい」と少女が書いていたらそこにまでJKビジネスはアプローチしてきて、巧妙にからめとるのです。いまサポートしているケースで、家出して地方から東京に来た少女が、「うちに泊めてあげるよ」って言ってきた男がJKビジネスのブローカーで、同じ年頃の少女がたくさん住んでるシェアハウスに住まわされて、そこには売春させられている少女もいます。

私たちの社会が少女たちをJKビジネスへ追い込んでいる

少女たちは、「さみしい」とか「自分を必要とされたい」とか「誰でもいいから名前を覚えてくれたらいい」などと言ったりします。一面で、少女たちは、自分でなんとかしなくてはいけないという自立心が強いところもあってそこにもJKビジネスはつけ込み自分でやっていけるよなどと言う。

背景には貧困があって、親はずっと働きに出ていて、「おはよう」も「お帰り」も誰も言ってくれないし、一日一食、コンビニのおにぎりを食べられるかどうかの生活をしていたりするなど、自分がここに生きている意味とか、自分が存在する意味すらわからない生活を強いられているケースが多い。だから、こんな家にいてもしょうがないし、むしろJKビジネスでも商品として自分に価値が生まれればいいとさえ思っている。もちろん、JKビジネスなどを行う裏社会の大人の責任も問題にすべきですけど、私たちの社会の側の問題として、表社会の大人たちが少女たちをJKビジネスへ追い込んでしまっているところがあるので、そこで支援、伴走したいと私は思っています。

アイドルになりたい少女に迫るJKビジネス

最近はアイドルになりたい少女の問題がとても多くて、JKビジネスも大手芸能事務所がやっていますなどと言っていたり、巧妙な児童ポルノまがいのものに利用されたりするので、アイドルになりたい少女にも危険がたくさんあることを知らせていく必要があります。危ないと思っても誰に相談していいのか少女たちはわからないので、あらゆる大人たちが「いつでも相談していいよ」「何かあったら伝えてよ」と何度でも繰り返し少女たちに伝える必要があります。もともと少女たちは親や学校の先生に傷つけられている子が多く、スクールカウンセラーや行政の窓口に相談したら親や学校に全部バレてしまって誰を信じていいのかわからなくなっている子が多いのです。

「何かあったら相談していいよ」といろいろな大人たちが一緒に知恵を出し合って少女たちに繰り返し発信する必要がある

とにかく「何かあったら相談していいよ」といろいろな大人が少女たちにメッセージを発信する必要があります。少女たちは、自分にまともに向き合ってくれる大人は一人もいないと思っているのです。そういう少女たちにとっては、相談するということ自体がハードルが高いので、いろいろな大人が知恵を出し合って少女たちにかかわり、声をかけることが必要です。JKビジネスの「スカウト力」に負けない工夫が必要です。みなさん、一緒に知恵を出し合いましょう。

【女子高生サポートセンターColabo代表・仁藤夢乃さんの反貧困全国集会2014での発言の一部、文責=井上伸】

「JKお散歩」は新たな児童売春目的の人身売買

こうした仁藤さんの指摘を聞いていて、「子どもの貧困」「関係性の貧困」「女性の貧困」を放置する日本社会というのは、個々の子ども、個々の少女たちにとっては本当の意味で信頼できる大人がまったく周りに存在しない日常となって立ち現れるのだなと思いました。「誰も認めてくれない」「どこにも居場所がない」という状態に置かれた少女たちに「居場所」を提供し「承認」を与えるJKビジネスの手口が巧妙であることは仁藤さんが著書『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)の中で詳細にルポしているのでぜひ読んでください。そうした「居場所」も「承認」も裏社会によって偽装されたまったくのニセモノなのだけれど、まっとうなセーフティーネットやまっとうに信頼にたる大人の方は少女たちにまったく手が届いていないことも仁藤さんは著書で指摘しています。

それから、このJKビジネスを根底で支え動力源となっている男性優位の性暴力日本社会というのもおそろしく根が深い問題なのだとあらためて思い知らされます。このことは、売春や強制労働などを目的とする世界各国の人身売買に関する2014年版の米国務省報告書にも指摘されていて、日本の「JKお散歩」は新たな児童売春目的の人身売買であるし、「援助交際」も人身売買と指摘され、「日本に来る外国人の女性や子どもの中には、到着後すぐに売春を強要される者もいる」、「日本人男性は、東南アジアやモンゴルでの児童買春ツアーの大きな需要源」と批判されているのです。

私たち「表社会」の教育・行政・「関係性」等のセーフティーネットは、「少女を人身売買する裏社会」の「缶ジュース1本」に負けている

シンポジウムの司会をしていた雨宮処凛さんが、仁藤さんの著書『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)を読んでいてとても悲しかったのはJKビジネスで働かされている少女が、仕事中に店のスタッフから缶コーヒーを1本差し入れてもらっただけで、その店のスタッフを信頼し切ってしまう事実があることだと言っていました。じつは正確には、「缶コーヒー」でなくて「缶ジュース」と書かれているのですが、仁藤さんの著書に次のように描写されています。

「お店の人は全然怖くない。見た目はかっこよくはないけど、普通にいい人。ちゃんと心配してくれるし、女の子のことを考えてくれている。寒いときに心配して声をかけてくれたり、『お客さん入りそう?』とか、『少し休憩したら』とか話しかけてくれたりするし、たまにジュースもくれて親戚のおじさんみたいな感じ。頻繁に会うから、いつも間にか隣のおじさんみたいな感覚になっているかな」 ほんとうに彼女を心配していたら、不特定多数の男性とお散歩なんてさせないだろう。店は彼女たちを「商品」として気にかけているだけだ。しかし、レナは「大丈夫?」の一言で自分は心配されているのだと安心し、缶ジュースを一つもらったくらいで喜んでいる。それどころか、「親戚のおじさんみたい」に思うほど、信頼できると思っているようだ。お散歩やリフレで働く少女たちはみな、大人が意図してやろうと思えば、簡単に心をつかむことができる純粋な少女ばかり。「寒いでしょ? これ飲んで温まってね」と缶ジュースでも渡せば、誰でも「いい人」になれる。
出典:仁藤夢乃著『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)

私たち「表社会」の教育・行政・「関係性」等のセーフティーネットは、「少女を人身売買する裏社会」の「缶ジュース1本」に、この少女の中で負けてしまっている現実があるのです。ここで負け続けている限り、「子どもの貧困」は「貧困連鎖」となり「女性の貧困」にもつながり、貧困と人身売買・性暴力のスパイラル、そして裏社会の拡大と表社会の腐敗――それは、職場や政治など表世界におけるセクハラの横行とセクハラの受容などにもすでに現れている表社会への地続きの問題でもあると思うのです。「自己責任社会」と「男性優位の性暴力社会」が互いに補完し合うという日本社会の最も醜悪な部分がJKビジネスとして現れているように思います。女性の貧困問題も女性の売春などの問題も果ては女性に対する性暴力そのものまでももっぱら女性の側の自己責任としかとらえず、同時に男性の性暴力の方は容認する傾向が強いという日本社会の現状を変えていく必要があると思います。

表社会のスカウト、子どもと社会をつなぐかけ橋に

そして、仁藤さんは著書『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)の最後の章「表社会によるスカウト」のところで、裏社会はJKビジネスを「卒業後」の女性も系列の風俗店で働かせるために、お金や生活に困っている少女を毎日駅前に立ってスカウトしているのに、表社会の側はほぼ何も行っていない現状などを問題視し最後に次のように書いています。

たとえば、国が雇用労働政策として行っている若年者の就労支援事業には、困窮状態にあって生活が荒れているような若い女性はほぼ来ないといわれる。(中略)誰にも頼れず自分一人でどうにかしようとした結果、「JK産業」に取り込まれていくような少女は、行政や若者支援者が窓口を開いているだけでは自分からは来ないのだ。こうした少女たちに目を向けた支援は不足している。それを承知で、少女をグレーな世界に引きずりこもうとする大人たちは、お金や生活に困っていそうな少女を見つけて、日々声をかけ、出会って仕事を紹介している。(中略)一方、表社会は彼女たちへの声かけをほぼまったく行っていない。社会保障や支援に繋がれない少女たちに必要なのは、「そこに繋いでくれる大人との出会いや関係性」である。関係性の貧困が大きな背景にある中、つながりや判断基準を持っていない10代の少女たちには特にこれが重要だ。(中略)私は、表社会のスカウトに、子どもと社会をつなぐかけ橋になりたい。声を上げることのできないすべての子どもたちが「衣食住」と「関係性」を持ち、社会的に孤立しない社会が到来することを目指したい。
出典:仁藤夢乃著『女子高生の裏社会――「関係性の貧困」に生きる少女たち』(光文社新書)

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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