朝型勤務「ゆう活」による睡眠障害と二重生活苦が過労死労働下の霞が関の国家公務員を襲う

  • 2015/8/26
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(※2015年6月26日に書いた記事です)

政府がきょう(6月26日)7~8月に勤務時間を1時間から2時間前倒しする朝型勤務「ゆう活」について、国家公務員の4割、約22万人に実施すると発表しました。霞が関の中央官庁の国家公務員は8割弱が実施し、地方では、ハローワークや税務署など窓口業務があり前倒しができない職場は実施を見送るため、全体の4割程度にとどまります。

政府(加藤勝信官房副長官)は、「『ゆう活』は働き方改革であり、今年だけの取り組みというものではありません」などと言っていて、勤務終了の前倒しを確実に行うため、7月以降、各省庁の幹部が夕方に見回りを行うことも決まり、総務省や文科省、厚生労働省などでは大臣自らが見回りをする方針とのこと。しかし、この「ゆう活」で「霞が関不夜城」の長時間労働が抜本的に改善することはないと思います。なぜなら勤務時間を前倒しにすることが長時間労働の発生源に対処する方策ではないからです。

まず、「霞が関不夜城」の実態です。

私たちの仲間である全厚生本省支部が「霞が関不夜城の調査」を実施したことがあります。私たち国公一般が取り組んだ「霞が関は『不夜城』だった!」から学んだものでもあります。

午前1時半消えない灯り

下の写真は、終電後の午前1時半の各省を撮影したものです。下表にまとめたものを見て分かるように厚生労働省の突出ぶりが際立っています。結局、厚生労働省は他の多くの省庁とともに朝まで灯りが消えることはなく、私たちの職場がまさに不夜城の汚名を付けざるを得ない実態であることがあらためて明らかになっています。

そして、私たちの仲間である霞が関国家公務員労働組合共闘会議(霞国公)が毎年実施している直近の「残業実態アンケート結果」にある「残業になる要因」が以下です。(2014年に発表したアンケート結果で、2013年の残業実態を調査したもの)

過労死ラインとなる「月平均80時間以上の残業者」は8.5%(前年7.9%)で、霞が関の国家公務員約2,907人(全体3万4,200人の8.5%)が過労死労働を強いられています。この過労死ラインとなる残業の原因は、上のグラフにあるように、「業務量が多いため(職員数の不足)」が78.9%、続いて「国会対応のため」が36.2%となっているのです。こうした実態があるのに、政府が強引に推進する勤務時間を1時間から2時間前倒しする朝型勤務「ゆう活」によって、いったいどうやってこの過労死残業をなくせるというのでしょうか? 本来なら国会は6月24日に会期末を迎えてもう終わっていたはずなのに、政府与党が9月27日までの95日間という戦後最長の会期延長を強行しました。霞が関の国家公務員の多くが「国会対応のため」に過労死労働を強いられているのに、その過労死労働が戦後最悪へとつながりかねない戦後最長の国会会期延長を政府与党みずからやっておいて、この7~8月にいったい何が「ゆう活」なんだという感じです。ホントに「ゆう活」して欲しいなら、まず国会会期延長をただちにやめるべきです。

職場の仲間からは、「早く帰れなければさらなる労働強化になる」、「職場実態からは、むしろ職員への負担として逆効果になる」、「オールドスタイルの男性の発想だ。朝の時間に炊事や洗濯、子どもの弁当づくりなどしたことがない人の発想ではないか」、「1時間早く来ても早く帰れるわけがない」、「朝に子どもと会話できない」、「7時半に出勤することでなぜ行政サービスが向上すると言えるのか?」、「窓口時間・官庁執務時間も変えなければ効果がないし整合性が取れず混乱するだけではないか」、「夜に残業して労働時間がさらに増えたり、無理に帰っても持ち帰り仕事が増えるだけではないか」などの意見が寄せられています。実際に試験運用した内閣人事局では、「早朝出勤したのに国会対応で午後9時まで帰れなかったこともあった。「早く家を出ると、家族は早く帰ってくると期待する。『きょうは早く帰ってこなかったね』と言われました」」という現実が起こっているわけです。

この問題について私たち国公労連が取材を受けた朝日新聞に記事が出ましたので、その部分を紹介しておきます。

窓口業務ある職場「長時間労働に」

7月からの「ゆう活」は、地方の出先機関も含めて全府省が対象だ。国家公務員の労働組合でつくる国公労連の鎌田一・書記長は「聞いた時は耳を疑った。誰も賛成していないのに」という。

特に懸念が広がっているのは地方だ。法務省なら法務局、厚生労働省ならハローワークや労働基準監督署といったように、各省には窓口業務をしている出先がある。「ゆう活」になっても窓口時間は変わらない。受付は午前8時30分から午後5時ごろということが多いが、朝早く出勤しても窓口業務はなく、逆に窓口が開いている時間に早く帰ることになる。

人事局の方針では、(1)交代制の人、(2)育児・介護などの事情がある人、(3)行政サービスが下がる場合、(4)確実に長時間労働になる人、などは対象から外してもいいことになっている。全員が参加する必要はない、という建前だ。

でも、「どの職場もギリギリの人員で、非正規職員が増えている。1人でも早く帰れば、ひずみがでる。それに早朝出勤しても早く帰れなければ長時間労働になるだけ」と鎌田書記長。

労組には「電車の本数が少なく、早出はできない」「生活リズムが崩れる」といった声や、「発想が男性目線。朝に炊事や洗濯、子供の弁当作りをやったことがない人の発想」といった批判も届いているという。

朝日新聞6月23日付 朝型勤務「ゆう活」って? 7月から国家公務員で実施

結局、この7~8月に勤務時間を1時間から2時間前倒しする朝型勤務「ゆう活」というのは、国家公務員にだけ「サマータイム」を適用するということだと思いますので、最後にいくつかサマータイムの問題点を指摘するマスコミ報道を紹介しておきます。

戦後の一時期に行われたサマータイムを廃止した理由は「労働強化」

戦後の一時期に行われたサマータイムを廃止する際、理由とされたのが「労働強化」だった
産経新聞2013年8月16日付【金曜討論】「サマータイム」住環境計画研究所・中上英俊会長

サマータイムは生体リズムを崩し、睡眠不足、肥満、心筋梗塞などの心疾患、脳血管疾患、糖尿病など生活習慣病のリスクを高め、心の問題にまで悪影響を及ぼす

「生体リズム、眠りの質、そして眠りの量だ。航空機で海外へ行くときに時差ぼけを体験することから分かるように、脳に備わっている体内時計は、急激な時刻変動に耐えるようには設計されていない。制度を導入しているドイツで2007年、5万5千人を対象に行われた調査によると、春に時刻が1時間進んだ際、人間の体は4週間たっても完全には慣れなかった。秋に1時間戻す際も平均3週間かかった。影響は朝型人間より夜型人間で顕著だった。さらに、春の時刻変更後、睡眠時間が短くなったことも分かった。つまり、サマータイムは生体リズムを崩し、睡眠不足をもたらす可能性がある。睡眠不足は肥満の原因となるほか、心筋梗塞などの心疾患や脳血管疾患、糖尿病など生活習慣病のリスクを高め、心の問題にまで悪影響を及ぼす可能性のあることが知られている」
産経新聞2013年8月16日付【金曜討論】「サマータイム」北海道大学・本間研一名誉教授

ロシアでは救急車の出動や心筋梗塞による死者が増加し「省エネ効果がほとんどない」との理由からサマータイムが廃止された
北海道で平成16~18年、大規模な1時間の「繰り上げ出勤」が実験された際の調査で、参加企業の従業員の4割が「体調が悪くなった」

「ロシアでは、春と秋の時刻変更期に救急車の出動や心筋梗塞による死者が増加し、『生体リズムに反する』『省エネ効果がほとんどない』との理由から、11年に制度が廃止された。また、厳密にはサマータイムではないが、北海道で平成16~18年、大規模な1時間の『繰り上げ出勤』が実験された際の調査で、参加企業の従業員の4割が『体調が悪くなった』と答えた」
産経新聞2013年8月16日付【金曜討論】「サマータイム」北海道大学・本間研一名誉教授

森岡孝二関西大教授(企業社会論)は「公共交通機関の運行や商店の営業時間が変わらない中で、一企業が特別な勤務体制を導入する意味は乏しい。家族の生活リズムも崩れる」と手厳しい。朝型を良しとする風潮についても「夏場に時計の針を進めるサマータイムが立ち消えになったことからも分かるように、朝型にしても生産性や労働者の意欲向上には必ずしも結び付かない」と疑問を呈した。
東京新聞2013年8月6日付 広がるか伊藤忠の「朝残業」 「朝型」社長が提唱 気になる 家族の生活リズム 労働時間長くなる?

職場と家庭で「二重生活」、生活のリズムが狂って睡眠不足に

夏場に企業や自治体が始業と終業の時間を繰り上げるサマータイム(夏時間)。節電をねらい今夏、実施したところが多かった。ただ、欧米のように国内のすべての時計が一斉に進んだわけでなく、職場と家庭で「二重生活」を送る人がほとんどだ。生活のリズムが狂って睡眠不足になる人も出ており、専門家が注意を呼びかけている。「体が限界を超えて、朝がつらくなりました」。東京都内の睡眠障害専門外来に通う50代の男性会社員が打ち明ける。勤務先がサマータイムを導入したため、男性は起床時間を午前5時半から午前4時半に早めた。しかし、就寝時間は以前と同じ。仕事を終えて帰宅すると、それまでと変わりなくテレビ番組を楽しむ家族がいる。サマータイムと関係のない時間が流れているからだ。男性は規則正しい生活を心がけ、休日も平日と同じ時間に起きていた。しかしサマータイムが始まり、最近の休日は眠って過ごすことも多々。生活のリズムが崩れて月曜の朝に起きられなくなり、欠勤する日もあるという。男性は「イライラして仕事でミスが増えた」と話す。現在は気分障害の治療を受け、精神安定剤を処方されている。
毎日新聞2011年9月5日付 サマータイム:不眠に注意 出勤早まり就寝変わらず…寝不足から自律神経失調へ

職場単位の取り組みと周囲に別の時間の流れがあり、ダブルスタンダードを強いられた人が「かくれ不眠」、自律神経失調に

サマータイムが生活リズムに与える影響は小さくなさそうだ。インターネット調査会社のマクロミルが6月、300人の会社員、公務員に行ったアンケートによると、サマータイム導入の前後で、午前5~6時に起きる人が36%から56%に増加。午前0時よりも遅く眠る人が32%から22%に減った。マクロミルは「起床時間に比べると、就寝時間の変化が少ない」と分析する。睡眠の重要性を訴える精神科医らでつくる「睡眠改善委員会」はサマータイムについて、「睡眠に悪影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らす。委員の杏林大医学部の古賀良彦教授(64)=精神医学=は「日本ではあくまで職場単位の取り組み。周囲に別の時間の流れがあり、ダブルスタンダードを強いられた人が『かくれ不眠』になる恐れがある」と懸念する。かくれ不眠とは、睡眠改善委員会が名づけた寝不足と不眠症の中間の状態。専門的な治療こそ必要ないが、軽度で短期的な不眠症状を抱えており、自律神経の働きが乱れて不眠症へ発展する危険性がある。「日本は睡眠時間の少ないことを美徳とする慣習がある」と古賀教授。サマータイムによって睡眠時間が減ったり、休日に「寝だめ」したりすることで体内時計が狂い、かくれ不眠につながると説明する。
毎日新聞2011年9月5日付 サマータイム:不眠に注意 出勤早まり就寝変わらず…寝不足から自律神経失調へ

サマータイムは節電に逆効果

サマータイムを実施しても、都心での電力消費は減らないことが、産業技術総合研究所や明星大などのチームの分析で分かった。職場を早期退社しても、家庭でのエアコン利用が増えることなどが理由という。(中略)午後4時に終業するサマータイムでは、オフィスの電力需要は10%減るが、自宅でより多くのエアコンを使うため、集合住宅で27%、一戸建てで23%それぞれ増え、全体では4%増となった。東京の場合、1人暮らしが全世帯の約4割を占めるため、夕方以降にエアコンなどを使う世帯が増えるのが理由としている。
毎日新聞2011年7月13日付 節電:サマータイム逆効果!? 1人暮らし多く、帰宅後に電力消費--産総研分析

(サマータイムを)日本も1948年、連合国軍総司令部(GHQ)の指示で導入したことがある。だが、明るい時間が多くなり、労働時間が増えたという批判が出て、4年で廃止された。(中略)米国で、暑い時間帯に帰宅して家庭の冷房使用が増えて電気使用量が1~4%増えたという報告や、日本睡眠学会によるサマータイムが睡眠に悪影響を与えて医療費を増やすという指摘も制度導入を後押ししない一因となっている。 Q 今回、役所や企業がサマータイムを導入した効果は。 A 一部が時差出勤する形なので、電力使用のピーク時間帯を若干ずらせても、節電にはつながらないという見方が強い。父親は早起きしても、妻や子どもがいつも通りに生活し、家庭で電気を使う時間が増える「増エネ」を心配する声もある。
東京新聞2011年7月9日付 3分でわかるQ&A サマータイム 日照時間長く利用 「増エネ」懸念の声も

日本では現在4~5人に1人が不眠
サマータイムはさらに不眠を悪化させ、うつ病を増加させる

サマータイム制度が身体のリズムや睡眠に悪影響を及ぼすことは多くの論文が指摘している。ドイツの研究者が昨年、中央ヨーロッパの5万5000人を対象にした調査結果を発表した。サマータイム制度によって春に時計を1時間進めた時には、睡眠時間が短くなり、睡眠効率も低下する傾向がみられた。このうち50人の睡眠と行動を携帯型活動測定計で調べたところ、夏時間がスタートした後の3週間は平均睡眠時間が25分も縮まって、夜型人間は4週間後でも身体のリズムを合わせることができなかった。この調査結果がそのまま日本に当てはまるかどうかは不明だが、睡眠をめぐる状況を考えれば、より深刻な事態も憂慮される。日本人の睡眠時間はこの50年間に1時間短くなっている。欧米諸国の平均より約1時間も少ない。しかも80%以上の人が夜10時を過ぎても起きている夜型社会だ。サマータイム制度を導入すれば多くの人が睡眠不足になると予想される。極端な宵っ張り朝寝坊の生活を自分で治すことができない「睡眠リズム障害」という病気をご存じだろうか? 国内の患者数は30万人近い。夏時間への適応は相当に困難だろう。新たに発症する人が出る可能性も高い。中高生では今でも夏休みをきっかけに就寝が遅れて新学期が始まっても起きられず、不登校の末に医療機関を訪れるケースが増えている。夏時間で、まだ明るいからと眠りにつく時間が遅れれば、同じことが誰にでも起きるだろう。不眠症に悩む高齢者も多い。床に入っても寝付けずに苦しんでいる人たちは、サマータイム制度導入で寝る時間を早くしたら、さらに眠りにくくなるばかりだ。(中略)日本では現在、4~5人に1人が不眠などの問題を抱えている。うつ病やストレスに伴う不眠も多く、睡眠不足を放置すると、さまざまな身体的な不調とともに、うつ症状をもたらす。うつ病の増加が社会問題化しているのに、睡眠に影響するサマータイム制度の導入には慎重でありたい。
読売新聞2008年7月2日付 [論点]サマータイム制度 健康への影響、調査必要 大川匡子滋賀医科大学特任教授(睡眠学)・世界睡眠学会連合副会長

サマータイムが睡眠障害への「最後の一押し」になる危険

サマータイムが体内時計や睡眠に一定の影響を及ぼすことは、70年代から知られていた。さらに最近のドイツやフィンランドでの研究により、春にサマータイムが始まる際、1時間のずれに体のリズムが同調するには約3週間かかることや、移行当初は睡眠時間が1時間ほど短くなることなど、より具体的な影響が明らかにされつつある。一方、05年のNHK調査などによると、日本人の平均睡眠時間は45年前と比べて1時間近く減っている。平日の平均は7時間22分であり、欧米に比べると1時間前後短い。多くの日本人はすでにギリギリの睡眠時間に耐えている。サマータイム開始で睡眠がさらに1時間減ると、睡眠障害への「最後の一押し」になってしまうかもしれない。体力的に弱い高齢者や子どもへの影響も心配だ。サマータイムが実施されると、特に西日本では、夏場は昼間の暑さが抜けきらないうちに眠りにつかなければならない。彼らが時刻のずれに加え、寝苦しさにまで耐えられるのか。睡眠障害の子を持つ親を対象にした米国のアンケートで、6割以上がサマータイム開始時に子どもの睡眠に影響が出たという結果もある。十分な検証が必要だ。
朝日新聞2008年6月26日付 (私の視点ワイド)サマータイム 睡眠・省エネに悪影響も 本間研一北海道大教授〈時間生理学〉・日本睡眠学会副理事長

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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