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橋下維新と安倍政権が狙うカジノでギャンブル依存症被害は住民の8人に1人へ及び当事者自殺5倍超増、子ども蝕み家族の自殺3倍増、税収も雇用も増えずカニバリゼーション(共食い)でカジノは地域経済を破壊する
▲鳥畑与一静岡大学教授が作成したカジノの社会的コスト推計
(※2014年11月14日にYahoo!ニュースにアップしたものです)
私が企画した鳥畑与一静岡大学教授へのカジノ問題インタビューの最後となる結論的な部分を紹介します。
とりわけ、「国・自治体が略奪的ギャンブルの共犯者になる」という鳥畑教授の指摘と、ニューハンプシャー州の報告書にある「カジノは既存のビジネスを共食い(カニバライズ)する。地元のレストラン、ホテル、会議場、娯楽施設、小売業に対する支出を減少させ、カジノ客増大の波及効果はない」「カジノの経済的費用は税収を上回る」「強姦、強盗、暴力的犯罪がカジノ開設後5年で10%増大する」「ニューハンプシャー州住民の8人に1人が被害を被る。1人の問題ギャンブラーは周囲10人に影響を及ぼす」「ギャンブルの拡大は子どもを傷つける。親がギャンブラーだと子どもがギャンブラーになる確率は2倍。デルウェアでは、ギャンブル経験の青年は2~3倍、喫煙・飲酒・盗み・薬物使用に走る」「病的ギャンブラーの17~24%が自殺未遂の経験があり、自殺率は5~10倍高い。家族の自殺率も3倍高い」の紹介は衝撃的です。
カジノは経済・財政・人間性を略奪する
――国・自治体が略奪的ギャンブルの共犯者に
鳥畑与一静岡大学教授インタビュー
カジノ推進派の方は、カジノのギャンブルはコンサートや野球と同じような娯楽だと言います。確かにルーレットやトランプ、それ自体はゲームです。しかし純粋にゲームとして楽しむのであれば、何もお金を賭けなくていいですよね。ディズニーランドと同じように入場券を買って、中でお金を賭けずにトランプ大会やルーレット大会をやって、自由に遊んでもらえばいい。でもそうではなくて、ゲームを媒介にしてお金を賭け、一攫千金を狙うのがギャンブルです。だから娯楽とギャンブルは違うのです。
経済波及効果は「ムダな公共事業」と同じ
実際、シンガポール市民がカジノをどう認識しているか、というアンケート調査では、カジノは娯楽ではなく、基本的にギャンブルだと認識していました。またオーストラリア政府の2010年の調査報告書を読んでも、ギャンブラーはギャンブルを楽しいなどとは思っていません。ギャンブラーはギャンブルをやった後に後悔し、自分を責めて、「これで自分の生活がボロボロになった」と思っています。そんなカジノをなぜ娯楽と言えるのですか? という問題なのですね。
ようするにカジノという産業は娯楽ではなく、ギャンブルです。そしてそのギャンブルというサービスは、非常に有害性が高い。そうした有害な商品をつくるために、たくさんお金を使うことが生産的といえるでしょうか? たとえばラスベガス・サンズが日本に100億ドルの投資を打ち上げていますが、その100億ドルを環境問題や貧困問題、農業など、もっと社会的に必要とされている分野に投資すれば、もっと有益な商品や技術開発が可能です。
しかし、その100億ドルはカジノに投資され、そこで生産されるのはギャンブルという有害なサービス商品で、そのサービスを利用するとかなりの確率でギャンブル依存症になって、生活や身体を壊す人が増加して、という話になるわけですね。
カジノ推進派は、それでも100億ドルは投資であって、そこから儲けが生まれ、雇用が生まれ、税金が生まれて、ゲームも含めた関連産業に仕事が回って経済的波及効果が高いといいます。しかしそういう波及効果だけいえば、まさにムダな公共投資と同じです。それこそ、囚人を集めて穴掘って、埋めて、穴掘って、埋めて、これを繰り返したら有効需要が生まれて仕事が生まれるという話と同じレベルです。
カジノの儲けは「ゼロサム」
さらにいえば、カジノの儲けはギャンブルの儲けだから、お客さんの負けです。ゼロサムなんですよね。儲けの部分が何か有益なものを生み出しているかといったら、極めて非生産的だということです。しかもカジノの儲けはほとんど負ける製品をお客さんに売りつけているわけですから、いわばぼったくりによる儲けです。負けた側はだまされてお金を失っています。
それから、地方に「IR」型カジノをつくれば、「IR」型カジノの中では収益が上がるけれど、その収益は結局周辺の住民からブラックホールのように吸い込んだ収益ですので、「IR」型カジノで生まれた雇用や税収はゼロサムとなります。たとえば「IR」型カジノの周辺では、いろいろなお店がつぶれ、失業者が生まれ、税収が減るという形で、トータルでは効果がなくなってしまうのです。
税収はマイナス、雇用も増えなかった
ウォーカーというアメリカのカジノ推進派の研究者は、カジノができた小さい地域では税収が増えたと論文に書きました。そして、それを証明したモデルを州レベルに拡大して書いてしまった。その税収を州レベルで計算したら、彼は自分でも驚いたと何度も書いていますが、州レベルで見たらカジノができて商業売上が落ちて消費税が減ったために税収はマイナスになったのです。オーストラリア政府報告書でも、雇用に純増はなかったと書いてあります。だから結局、国レベルで見ればゼロサムなんです。
カジノのカニバリゼーション(共食い)で
地域間格差が拡大し、一極集中が進む
アメリカではカニバリゼーション(共食い)という言い方をするのですが、日本の国内利益だけでカジノが経営されれば、国民同士が共食いをすることになります。カジノができた狭いエリアは儲かるかもしれないけれど、その周辺の自治体や地域はお金を吸い取られて衰退していく。大都市部でも、全国のギャンブラーが足を運べば、そこにお金が吸い取られる。そうすると、地域間格差が拡大し一極集中が進むだけになります。
狭いエリアでは収益が上がって雇用が増えて税収が増えると話しましたが、それもそんなに単純な話ではありません。問題は「IR」だということです。つまり全部を「IR」で囲い込んでしまう。カジノの儲けでお客さんを割引サービスして「IR」に集めるわけですね。そうすると何が起きるか。もともと地元にあった宿泊業や商店街など、既存の産業がつぶされていくわけです。
アトランティックシティにも9月末に行ってきましたが、カジノにつぶされたホテルやレストランの空地ばかりの街でした。レストランは200件つぶされたと言われています。
この点についてカジノ推進派は、もともとあったビジネスが淘汰されても競争の結果だから仕方がないと言います。カジノが繁栄すればそこから飲食も含めていろいろな需要が発生し、地元の企業に注文が行くのだからいいじゃないかと言うわけです。しかし、ニュージャージー州のアトランティックシティのカジノの例を見ると、州内の企業に発注をかけているのは半分くらいです。アトランティックシティの地元企業に注文をかけているのはさらに半分くらい。結局、州の外の企業に注文が行って、さらにそれはどんどん拍車をかけていっています。
カジノは地域経済を破壊する
アメリカでカジノ依存の経済が破綻して、どんな問題が明らかになってきたかというと、もともとあった既存の地域経済がカジノによって壊されたという問題です。カジノだけに頼ってしまうと企業城下町みたいなものができてしまうわけですね。カジノというのはある意味焼き畑農業みたいなもので、そのうち枯れていきます。寿命があって、長持ちしない。ようするに、カジノが来た後には地域経済が壊され、地域循環型の経済もつぶされて、カジノだけに頼るような歪んだ構造ができてしまう。その上、カジノは持続性がないので10~20年後に儲からなくなったら出て行ってしまう。その時に残るのは、破壊された地域社会だけです。それは現実にアメリカで起きていることです。
「地元で雇用が増える」は本当か
また、これはもう少し調べないといけないのですが、コネティカット州の報告書を見ると、地元で雇用が増えるといっても地元の人が雇われるわけではないのですね。
コネティカット州でギャンブルが合法化された後に何が起きたかというと、英語が話せない低賃金の外国人労働者を大量に連れてきたというのです。マサチューセッツ州やニューハンプシャー州では、ほんの一部の職種を除けばディーラーの平均賃金が3万ドル、それもチップ込みで3万ドルです。まさにワーキングプアです。
そうすると、カジノの売り上げによる税収は州政府や他が持って行って、地元の自治体に入ってくるお金は少ないばかりか、英語を話せない外国人の子どものために学校など社会的インフラの整備を新たにする必要などもあり、その経費の方が多くて、結局、カジノを受け入れた地元は負担だけを押しつけられてメリットはないと、報告書に書いてあるわけです。
日本は具体的にどういう形で導入するかまだ分かりませんが、とにかく「IR」型カジノが来れば地元が活性化して地域興しになるなんて、そんな単純でおめでたい話ではないということだけは確かだと思います。
国・自治体が略奪的ギャンブルの共犯者になる
――「カジノ推進法案」では、内閣府の外局として「カジノ管理委員会」が設置され、カジノを国家事業として推進するとされているわけですが、国民にも地域経済にも有害なカジノを国家事業として推進するというのはさまざまな問題がありますね。
実際、アメリカでは、70年代・80年代の経済危機のときに州財政が不足して、税収確保のためにギャンブルに頼りました。最初は、ロッタリーと呼ばれる宝くじで、そして宝くじでは足りずに、カジノという形になっていったわけです。
アメリカのグッドマンという方が著書の中で、カジノによって「州政府が本来は州民を守り、市民の幸せを実現する公共的な役割を担っているのに、逆に略奪者になっている」と書いています。
税収をロッタリーやカジノなどのギャンブルに依存してしまうと、その売り上げが落ちた時にどんどん規制緩和をして、もっと射幸性の高い宝くじを売りに出したり、その宣伝を自治体が率先してやったりする。
アメリカで酷いのは、ある州がカジノをつくるときに、州境につくる。隣の州の州民からもお金をカジノで吸い上げようとつくってしまう。そうすると隣の州は自分の州民のお金を取られるので、自分の州の税収は減ってしまい、それを奪い返すために自分のところでもカジノを合法化してしまう。そういう奪い合い、略奪合戦が一度カジノを認めてしまうといろいろな地域で起こることになるのです。
そして、先に紹介したようにカジノは略奪し、カニバリゼーションを起こし、地域経済を破壊していき、そこが衰退して税収が落ちたらまた別の空白地域にライセンスを出す、ということが繰り返されます。
カジノは、車で90分で通えるところの客が大半です。ですので、その地域が枯れてしまったら、別の空白地域に焼き畑農業みたいな形でカジノをつくる。そうすると州政府は、既存のカジノからの税収が伸び悩んで低下すると、また次のカジノにライセンスを出してしまう。
つまり、いったんカジノというギャンブルに税収を頼ってしまうと、次から次へと略奪的ギャンブルを拡大しなければ税収を確保できないような悪循環に陥ってしまうわけです。
そうすると、国・地方自治体そのものが、いわば略奪的ギャンブルの共犯者になっていくのです。それで税収などが増えていい結果を生むのかというとそうではなくて、結局は、ギャンブル依存者が増えて、家庭が壊れて失業者が生まれて、地域に社会的コストとして重くのしかかる。のしかかったときにカジノが「はい、さよなら」って出て行ったら、社会的コストだけ押しつけられたまま残ってしまう。
だから、「カジノは時限爆弾」という言い方をアメリカの経済学者はしています。ある意味、原発にも似ていて、原発依存でリスクを押しつけられて、原発事故となれば後始末まで押しつけられるという形になってしまう。カジノを「プレダトリー(略奪的)ギャンブリング」と言いますが、「プレダトリー(略奪的)ステイト」という言い方をする場合もある。それは州が略奪者になってしまうという意味です。本来の公共機関の役割から逸脱した方向に行ってしまうということです。
これも詳しく調べないといけないのですが、ギャンブルに依存すると、そのギャンブルからの税収が逆にどんどん小さくなっていくのですね。なぜなのかまだよく解明できていないのですが、ギャンブルを認めてしまうと他の経済活動が停滞してしまうことがあるのかもしれません。
結局、カジノに頼ってしまった州政府は財政が悪化しているケースが多いのです。その因果関係はまだ解明できていないので分からないのですが。
いずれにせよ、税収をギャンブルに頼っても結果的にメリットはなくて、自分たちの首を絞めるだけで本来の国・地方自治体の公共体としての役割を失ってしまうということです。貧困と格差を拡大していくということですね。
お年寄りが狙い撃ちされる
アメリカの場合はスロットマシーンが中心で、8~9割がスロットマシーンの儲けです。そしてそれはお年寄りがターゲットなんです。お年寄りは孤独で居場所がない場合が多い。そこにカジノがつけ込んで、お年寄りの無料送迎バスや1週間に1回か2回は無料朝食デーがありますよなどと宣伝して、カジノでお年寄りが老後のお金をどんどん奪われていくわけです。
それで結局、生活保護を受けないといけない人が増えてしまう。そんなことにアメリカも実際になっているわけですから、国・地方自治体としても問題だらけですね。
国民の暮らしと健康を守るのが国の役割なのに、こうした略奪的なやり方で地域を破壊し、一部の人だけが儲かって、その他大勢の人は不幸に陥ってしまうような産業を国が応援していいのかということですね。
ただでさえ日本ではパチンコというギャンブルで依存症に苦しんでいる方がたくさんいる中で、そうした人たちに対する救済や対策を何もしないままに、とにかくカジノの合法化を認めてくださいという法律の出し方はひどすぎると思います。
1%の富裕層のため多くの日本人が犠牲に
――日本でも富裕層はどんどん増えているのだから富裕層の遊び場としてカジノでお金を落としてもらえば問題はないと主張する人もいますね。
今、ものすごく富の偏在が進んでいます。特に東京と大阪の大都市圏に、1億円以上の過処分所得を持つ富裕層が大勢います。そうした富裕層が自分たちのお小遣いの中で使う、きちんと財産管理をした上で会員制に限定してカジノをやるというのなら、私は別にありかなとも思います。
ただ、それでも問題があるのは、大王製紙前会長の井川意高氏のように、カジノに106億8,000万円も注ぎ込んでしまうケースを見れば分かるように、お金がいくらあってもギャンブル依存症という病気は発症するということです。いくら自分にお金があっても、なくなるまで使ってしまう。もし本当にオンタイムで貯金や財産管理ができて、貯金がなくなり借金せざるを得なくなる瞬間に「はい、停止!」とできればいいけれど、そんなことできないわけです。
だから、ヨーロッパのような厳格な会員制度で、本当に富裕層が有り余ったお金のほんの一部を、少し使う程度のカジノだったらまだいいのですが、そんなことのために日本の法制度を全部変えてしまえというのは横暴です。
オキュパイ・ウォールストリートではないけれど、1%の1%による1%のために国や政治があるわけではありませんから、そういう富裕層はどうぞ外国に行ってお金を使ってくださいと私は思いますね。そうした1%の富裕層だけのために日本の国の形を変えて、99%の多くの日本人が犠牲になるようなカジノ合法化をしろというのは理不尽ではないでしょうか。
カジノは経済も財政も人間も破壊する
最後に、今年4月末、アメリカのニューハンプシャー州の議会下院がカジノ合法化法案を否決したことを紹介しておきます。3月の段階で上院では可決したのですが、下院では1票差で否決されました。否決するにあたっては、2009年に州レベルで調査班、研究会を立ち上げ、2010年に報告書を出しています。こうしたしっかりした報告書に基づいて州レベルで議論を積み重ね、最終的に否決という形になっているわけです。
その反対運動の中心団体が、カジノ合法化に反対する31の理由を上げています。その中からいくつか紹介すると、「カジノは既存のビジネスを共食い(カニバライズ)する。地元のレストラン、ホテル、会議場、娯楽施設、小売業に対する支出を減少させ、カジノ客増大の波及効果はない」「カジノに税収依存度の高い州は、深刻な財政危機に見舞われる」「カジノの経済的費用は税収を上回る」「カジノの賃金は低く、地域社会の負担となる」「強姦、強盗、暴力的犯罪がカジノ開設後5年で10%増大する」「ギャンブル中毒者が倍増する。50マイル以内の中毒者が倍増する」「ニューハンプシャー州住民の8人に1人が被害を被る。1人の問題ギャンブラーは周囲10人に影響を及ぼす」「ギャンブルの拡大は子どもを傷つける。親がギャンブラーだと子どもがギャンブラーになる確率は2倍。デルウェアでは、ギャンブル経験の青年は2~3倍、喫煙・飲酒・盗み・薬物使用に走る」「スロット・カジノは自殺を増大させる。ノバ・スコティア・ゲーミング基金の調査では、病的ギャンブラーの17~24%が自殺未遂の経験があり、自殺率は5~10倍高い。家族の自殺率も3倍高い」などがあげられています。
これは、アメリカで90年代にカジノが急増した中での豊富な経験、調査に基づく、いわば根拠のある反対理由という形で提示されているわけです。このすべてに日本がそのまま当てはまるわけではありませんが、私たちにとっても示唆に富むカジノ反対の理由ではないでしょうか。
【鳥畑与一静岡大学教授談】