ブラック企業の濃度を薄めるために労働組合がある – 若者の生活困窮問題含めトータルに解決していく|首都圏青年ユニオン・山田真吾事務局長

  • 2015/8/18
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いまの若者はどんな世界で働いているか – 「違法の3点セット」の横行、「有給休暇とりたい」と言ったら解雇、使い終われば何も残らない「燃料のように働かされた」|首都圏青年ユニオン・山田真吾事務局長」の続きです。

ブラック企業の濃度見極め働くほかない若者
――雇用劣化とたたかう首都圏青年ユニオン
首都圏青年ユニオン・山田真吾事務局長インタビュー
『国公労調査時報』2013年4月号所収)

若者の生活困窮問題を含めトータルに解決していく

――貧困が広がっているなか、労働相談だけで問題を解決していけるものでしょうか。

それはむずかしいですね。首都圏青年ユニオンには労働相談票があるのですが、そこでは「持ち家か借家か」「手持ちの現金や借金の有無はあるか」という項目があって相談の中で必ず聞いています。なぜ聞くかというと、労働問題を解決しても、その人の貧困状態が必ずしも解決されるわけではないからです。

たとえば、残業代の未払いがあってそれを会社にきちんと払ってもらいたいという相談があったとします。その人に20万円の残業代の未払いがあったとして、ユニオンで交渉して解決し会社から20万円が払われるまでたとえば2カ月ぐらい要するとします。そうしたときに、20万円を取り戻す間にアパートの家賃を滞納していて住む所を失ってしまっては大変なことになります。そうした状況にならないように労働問題だけでなく、その人のトータルな生活の困窮状態を解決していく必要があるのです。たとえば借金があれば顧問弁護団を通じて債務整理をするとか、住む所がない状態のときにはいっしょに生活保護の申請をするというように、労働問題だけでなく生活の困窮問題も含めてトータルに解決していくことが重要なのです。

そもそも働き方が崩れている中で、今の多くの若者は新卒で入社して定年まで1つの企業で安定的に働けるような状況にありません。仕事が変わることは当然になっていて、その上、先ほど話したように「違法の3点セット」などが横行しているため仕事が変わるたびに貧困な状態を引きずったまま働かなければいけない若者が多くいます。

青年ユニオンに来る相談者の多くは仕事を何回も変えた経験があるわけです。一般的な企業別労働組合は、そこの会社に所属している間は労働者を守りますが、その会社から出てしまって別の会社に転職したときに、新しく勤めたところに労働組合があればいいですけれど、大手ではない限り、転職先に労働組合がないことが今はほとんどなので、企業別労働組合の場合には自分の労働問題を相談する場所がなくなってしまうわけですね。青年ユニオンの場合は、たとえば先月まではガソリンスタンドで働いていたけど今月は仕事を変えてコンビニエンスストアで働いているという形の人でも継続して加入することができるので、その人のライフスタイル、人生設計を考える上で労働組合がいっしょに何かあったときにはサポートできる態勢として青年ユニオンは動くことができるので、1つの会社で働きづらくなったとしても、そこを辞めて別の職場へ移ってもユニオンで支援することができるという形で、生活問題、労働問題をいっしょになって考えています。

反貧困の運動と連携しながら

――生活保護申請などを首都圏青年ユニオンで行うという場合、ほかの反貧困運動との連携などはあるのでしょうか。

首都圏青年ユニオンは、反貧困ネットワークや反貧困たすけあいネットワークのとりくみなどと連携しています。生活保護の問題は労働問題と密接に結びついています。今、生活保護の改悪がねらわれていますが、きょうも生活保護改悪反対の国会議員要請などに青年ユニオンの組合員も参加しています。そうした形で青年ユニオンだけの運動で終わらせずに、さまざまな反貧困の運動や困窮している方といっしょになって貧困のない社会に変えていくための運動をユニオンとしてとりくんでいます。

改正労働契約法悪用の「パート4年使い捨て」

――この4月から改正労働契約法が施行されますが、その先取りで悪用する事例が首都圏青年ユニオンに寄せられているようですね。

いま青年ユニオンが交渉している相手に、カフェ・ベローチェを経営しているシャノアールという会社があります。ここで働いているパート・アルバイトは全国で5,000人ほどいるのですが、彼ら・彼女らが4年以上働けなくなるという制度を会社は導入しようとしています。どういう制度かというと、ベローチェでは労働契約は3カ月契約を繰り返して更新していく形になっているのですが、3カ月契約を15回更新したらそこで上限になって4年働いたら会社としてはもう雇わないということを3月から導入しようとしているわけです。今年の4月から施行される改正労働契約法では、5年以上働いた場合に労働者から申し出れば会社は無期雇用に転換しなければならないとしているところを、そもそも5年を迎えさせないということをカフェ・ベローチェではやってきています。

会社が言っているのは、ベローチェで働くパート・アルバイト労働者は学生が中心だから「大学は4年で卒業して4年経ったら違うところで働くわけだから4年有期でもかまわない」「4年と上限が決まっていることによって自分の人生設計を考えるいいきっかけになる」「4年以上は働けないことを前提として働いて欲しい」「人生設計の上で4年で区切りをつけて欲しい」などということです。

しかし、ベローチェで働いているのは学生だけではありませんし、いちばん大きな問題は、有期雇用というものを労働者自身が望んでいるわけではないということです。長く働きたかったら長く働きますし、そうじゃなかったら次の更新で辞めるということを労働者側から選択することができるわけです。それにもかかわらず会社は長く働きたい人を会社の都合で長く働かせないわけです。改正労働契約法の先取り・悪用のケースになりますが、長く働かせないことを前提として雇うということは、この会社で働くのは損だということになりますので、ユニオンとしてはベローチェに対して「15回更新限度は撤回しろ」と要求していきますし、それと同時に「長く働かせろ」ということも言っていきたいと思っています。

おかしいことをおかしいままにしない

――いま就職難が続いていますし、正社員で働けることになってもブラック企業に若者が使い捨てられる状況も広がっています。若者のこうした状況をどう改善していけばいいと考えていますか。

特効薬はすぐに見つからないかもしれませんが、若者の劣悪な労働を改善していく1つの大事な点は、どんな会社に入っても法律違反になったときにはそれを正すことができるということです。1人で悩んでいてもそれを解決することはできませんが、労働組合に加入して会社に団体交渉を申し入れる、声をあげるということを考えて欲しいと思います。

「声をあげる」とか「たたかう」ということは実際にはハードルが高いように感じるわけですが、でも言い方を変えると、「おかしいことをおかしいままにしない」ということです。本当に会社に対して言いたいことはありませんか? 「おかしいことはおかしい」と労働組合がいっしょになって言うことができますので、それをいっしょにやっていきませんか?と若者に呼びかけていくことが労働組合の1つの役割だと思います。

声をあげづらい人たちの声を代弁して会社や社会を変えていくというポジションで、若者に対して青年ユニオンは訴えていきたいですし、職場の悩みを「1人で悩まず労働組合に相談しませんか」ということはずっと言っていきたいと思っています。

就職説明会の前でも宣伝したい

今後の予定でいうと、リクナビやマイナビといった大規模な就職説明会の前で宣伝をしていきたいと思っています。青年ユニオンにも30人以上の大学生・院生の組合員がいるのですが、就職活動で悩む学生はものすごく多いわけです。働き方を考える上で、自分はブラック企業に就職をしちゃうんじゃないかという不安を抱えている学生がものすごく多くなっています。ブラック企業という言い方をすると何となくよくわからないモンスターみたいな感じにもなってしまうのですが、労働基準法違反の企業であればそれは労働組合が正すことができますし、パワーハラスメントをするようなことがあれば、労働組合として申し入れることや顧問弁護士を使って解決することができるということを就職する前に知っておくことはとても大事です。学生のうちから労働組合に加入して、労働法をいっしょに学んで何かあったときはいつでも声をあげることができるという準備ができます。保険的な役割になるかもしれませんが、そういったかたちでも青年ユニオンへどんどん学生にも入って欲しいですし、学生の声をもとに就職活動とはどうあるべきか、働き方とはどうあるべきかも考えていきたいと思っています。

自己責任だけ強調するのはおかしい

若者に自己責任を迫る人がいますが、多くの若者が労働法も教えられない中で自己責任だけ強調されていくのは問題です。いまでも長時間残業でからだを壊したのは自分が会社にとっての必要なスキルを身につけられなかったせいじゃないかと思わされている若者はものすごく多いのです。残業代を請求したら、会社から「スキルがないせいで仕事が終わらなくて残って働いているあなたに対し、なぜ残業代を払わなければいけないのか」などという言い方を若者はされているわけです。

そもそも守られなければいけない法律が100%守られた上で働いて、それで若者が失敗をしてしまったのならまだしも、守られなければいけない法律すら守られていない中で苦しみながら働いている若者に対して、さらに追い打ちをかけるように自己責任だと言われるわけですね。

ひとりで悩まずいっしょに声をあげよう

そうした若者の状況をふまえた労働組合の対応がとても大事になっていると思います。首都圏青年ユニオンでは、若者から労働相談があると、若者が苦しんだことについて相談者が追い打ちをかけるようなことのないように、まずは「あなたが働いて苦しんだことについては労働組合がいっしょになって解決できるし、あなたが持っている労働者の権利はこういうものがあるので、これでいっしょに解決していきましょう」と話しています。

ユニオンの団体交渉は組合員参加型にしていて、たとえ会社の中に組合員が1人しかいなくても、ユニオンの組合員が何人でも何回でも参加することができます。団体交渉に参加すると自分が知らなかった人がユニオンの組合員というだけで団体交渉に参加してくれるんですね。
団体交渉を行った組合員は、「1人で入れる労働組合だから会社と交渉するときも1人かと思っていたけれど、団体交渉には何人も組合員が来てくれた。自分は1人だと思ったけど1人じゃなかった」「会社の中ではひとりぼっちだったけど、いっしょにがんばろうと言ってくれる仲間が労働組合にはいる」「またつらいことがあるかもしれないけれど、労働組合でもらった元気をもとに働いていきたい」という感想が寄せられています。

「ブラック企業の濃度」を見極めながら働かざるを得ない若者

いまブラック企業と呼ばれるような労働基準法違反の会社が広がっています。

いまの若者たちは、言ってしまえば「ブラック企業の濃度」を見極めながら働かざるを得ないのです。自分が我慢できる濃度のブラックなのか、それともすぐに辞めたほうがいいようなブラックなのか、その濃度を見極めながら働かざるを得ないというのが現実なのです。

労働法が100%守られている会社というのがほとんどないような状況にあるわけですから、若者は「ブラック企業の濃度」を見極めながら働かざるを得ません。その濃度を薄める役割として労働組合があるわけですし、もし自分の会社のブラックが濃くなってきたと思ったら、労働組合にいっしょに加入して団体交渉していきながらブラックの濃度を薄める必要があります。

また、ブラックの濃度を薄める作業が1人ではむずかしかったら、会社の中で仲間を増やしていって会社に「これ以上は僕らは働けません。長く働ける環境を労働組合といっしょにつくっていってください」と要求していく。ユニオンで団体交渉するとき必ず会社に言うのは、ユニオンは会社に対して何か恨みつらみがあって交渉しているわけではなくて、人間らしい労働条件をいっしょに考えていきたいし、労働基準法の第1条には「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と書いてあるわけですから、「私たちは人間らしく働ける環境をともに提案していきたい立場で今日は交渉に来ているので、社長も経営者の方もいっしょに長く働ける環境をつくっていきませんか」と言っています。

会社にしてみても、人がどんどん辞めていくことはそれだけで大変なことです。事業を継続する上でも、新たに人を雇うために面接をして見極めなければいけないわけで、そういうコストをかけるよりは長く働ける環境をつくることが組合員にとっても会社にとってもいいことなので「それをいっしょに考える立場で団体交渉をしませんか」と言うのです。

労働組合というのを見たことも聞いたこともない経営者が、個人加盟の労働組合が乗り込んできたというだけで、それを商売にする社会保険労務士や弁護士などブラック士業を使ってくる中で、そうではなくて、労働組合というものは会社に必ずしも敵対するものではないという立場で交渉するわけです。その中で組合員も会社に対して恨みつらみがあったけど、それが改善することができて少しは会社に対する見方も変わっていったし、労働組合に入って良かったということで自分の交渉が終わっても組合にずっと入っていろんな活動をする人もいるし、組合に自分の交渉で得た経験をほかの組合員に伝えるために団体交渉に積極的に参加している組合員もいるわけです。

「助けられた輪」と「助けていく輪」と「改善していく輪」を広げる

そういった形で「助けられた輪」と「助けていく輪」と「改善していく輪」を広げていくことが労働組合の役割の1つだと思っています。

今年の10月20日には、全国青年大集会を明治公園で開催する予定です。それに向けて若者の実態調査をやっていこうと考えていて、「ネットカフェ難民調査」を2007年に実施したのですが、いままた「マック難民」という言葉が出てきたので、深夜帯にマックなどにいる人たちの実態調査も考えていきたいと思っています。

それから、私自身が思うのは、労働組合の活動はとかく夜お酒を飲んで本音トークみたいなことが多いのですが、お酒を飲む前から本音トークはできるし、役員や組合経験が長いと言いたいことを言えるけれど、初心者は言いづらい環境が労働組合にはありますね。そこを解きほぐす作業は役員の方から考えていかないと、とりわけ組合経験の浅い若者にとって話しづらい会議で2時間も拘束されるだけ、などというのは改善が必要ですね。

「すき家の割引券?」「僕らの残業代が割り引かれてる」

労働組合の運動でも、楽しさやおもしろさを追求することが必要だと思います。首都圏青年ユニオンで言うと、牛丼チェーンのすき家と交渉しているときに、すき家の丼を使ったかぶり物(写真参照)を使ってすき家の店舗だとか本社の前でビラを配りました。すき家の前でビラをまいていると、何も知らない人が「すき家の割引券?」とか言いながら近寄ってきて、そういう時にはすかさず「僕らの残業代が割り引かれてるんですよ」と言いながら説明をすると、「そうなんだ。大変だね。がんばってね」と受け取ってくれるわけです。労働組合の宣伝というのはとにかく堅いですよね。もちろんたたかうことは当然なんだけど、楽しさやおもしろさも追求しながらとりくんでいかないと共感が広がらないと思います。

楽しさやおもしろさの追及、ネット活用が労働組合に必要

すき家の丼のかぶり物は、くす玉を作る発泡スチロールが東急ハンズにあって、大きいのと小さいのを2つ組み合わせて作りました。最初に5月1日のメーデーのときにかぶったんですが、蒸れたんですね。それで外から見えないんですけど穴を空けて改良したり、雨の日は濡れちゃうので“つゆだく”にならないように(笑い)みんなでうまく雨を避けるようにしたりしています。宣伝行動でかぶってると、「何だ、あれは!」となって、首都圏青年ユニオンのすき家とのたたかいのシンボルのようになってくるわけです。それで、宣伝しながら「この様子を写真に撮ってフェイスブックやツイッターに上げてください」という具合にみんなに知って欲しいので目を引く活動をしています。労働組合のおもしろさや楽しさ、大切さを広げるためには、ツイッターやフェイスブックなどで日常的に発信する必要があるし、ユーストリームやニコニコ生放送なども活用すべきですね。

国公労連や国公一般は、インターネットでいろいろ発信されていますが、そういう外への理解を広げる使い方を、ほかの労働組合ももっとやる必要があると思います。労働組合は組織の中に通達を下ろすのは得意だけど外に向けての発信は苦手という傾向を改善する必要がありますね。

イメージ先行の公務員バッシングをはねかえすために一人ひとりが自分の言葉で公務の役割を発信すべき

公務員が恵まれているという言い方でバッシングが激しくなっている問題は、裏を返せば、「民間労働者がひどい状態に置かれているんだから公務員もいっしょに泥沼の中におりてこい」というような意味合いのバッシングが増えているということだと思います。

民間労働者にとっては、ブラック企業が広がるし過労死や過労自死(自殺)が増えて大変な状況なのに、どうも公務員というのはお役所仕事で楽をしているというような、マスコミなどが流すイメージだけが先行しているバッシングのように思います。

そもそも国家公務員の実態を多くの若者は知りません。ほとんど実態を知らない国家公務員に対して、バッシングをやめて欲しいと言われても実態を知らないのですから、マスコミなどの公務員バッシングに多くの若者は流されてしまうでしょう。ですから、国家公務員のみなさんは、自分の仕事の役割や、公務労働の実態などをソーシャルメディアなども活用しながら国民に共感を得られるような「自分の言葉」で日頃から発信するべきだと思います。

実際の公務職場には官製ワーキングプアが増えているし、正規の公務員にも過労死や過労自死(自殺)など民間と同様のひどい状態が広がっています。実際は民間も公務も働き方はひどい状態で、本当なら共に手を携えてそれを変えることができるのに、そこの連携がうまく進んでいないから公務員バッシングが起こるのではないかと思います。公務員の労働組合も民間の労働組合もいっしょになって、ひどい職場の実態を改善していくんだということを見せていく必要があると思います。

労働組合がより困難な人の労働条件引き上げの先頭に立ち誰にでも通じる言葉で誰もが共感できる発信を

同時に、春闘の賃上げということが言われても、そもそも最低賃金すれすれで働く若者にとってはあまり関係がないという話になってしまいます。大企業労組の一時金の要求額が若者の賃金の何カ月分にもなるという状況の中では、一部の恵まれた民間や公務員の労働組合の年中行事を若者は指をくわえて外から見ているだけという捉え方にもなってしまいかねません。

ですから、より困難な人たちの労働条件、生活条件をどう上げていくかという春闘のとりくみや労働組合の運動にしていかない限り、公務員バッシングや労働組合バッシングを止めてくれと言っても、言ってることとやってることが違うじゃないかということになります。

最低賃金すれすれの若者たちのことを見ないで自分たちのバッシングだけを止めろというのは、それは止まらないだろうと思います。いま自分たちの置かれている状況を常に意識することと同時に、より困難な人は正規の公務員の外側に大きく広がっているわけですから、そこに共感を呼ぶような訴え方をしない限り、恵まれた人がさらに労働条件を上げるということになるのでバッシングが止まらないと思います。

若者が橋下徹大阪市長を支持するというのは、そういう声を利用しながらマスメディアを使ってうまく発信しているからだと思います。それに対抗していくには、労働組合がより困難な人たちの労働条件を引き上げていく先頭に立つことと同時に、持っている情報をいかに速く周りに広げていくかを、もっと工夫する必要があると思っています。

若者に共感よぶ労働運動を

労働組合の持っている団結力は強いですが、それを外に向けて発信していく力というものが労働組合はまだまだ弱いと感じています。労働組合の組織率が下がっている中で考えると、組合の中だけで通じる言葉や専門用語ばかり使っていては共感は広がっていきませんし、とりわけ若者が入りづらい組織になってしまいます。誰にでも通じる言葉で、誰もが共感できる言葉を持って労働組合が発信していかないと、より強力な権力を持っているところに対抗する力になりません。労働組合が発信力を高めていって、権力者の暴走に対して歯止めをかける力を持っていかないと暴走を止められないと思います。

しかも、権力者の暴走はいつの間にかそれが本流になってしまうことも危惧されます。たとえば若者にとっては、そもそも「悪政」が何なのかもよく分からないのに労働組合が「悪政を止めろ」と言っても、「いまやっているのが普通の政治でしょ。悪政って何?」というかみ合わない話になってしまいます。スローガン倒れになるような運動を変えていかない限り、若者の共感は得られないと思います。組織の中だけではなく、組織の外に「このビラはいいビラだね。この労働組合が言ってることはいいことだね」という共感を広げていく運動を常に追求することが重要だと思います。

――本日はお忙しいなか、ありがとうございました。(2013年2月13日インタビュー収録)

▼インタビューの一部を視聴できます。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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