#100時間残業OKは5年で500人の命奪う #経団連は命奪うな ●青天井より規制ありがよりまし→○時短の流れを逆流させる ●繁忙期は長時間労働やむなし→○繁忙期の100時間は死に至る(川人博弁護士)

政府が導入を検討する残業時間の上限規制をめぐる経団連と連合の交渉が、週明け(3月13日)にも合意する見通しとなっています。その予想される内容は、100時間残業OKにして上限規制の導入から5年後に見直す規定を盛り込むというもの。ようは100時間残業OKが最低でも5年続くということです。

下のグラフは、厚生労働省「過労死等の労災補償状況」から月100時間残業未満の過労死・過労自殺の支給決定件数(死亡件数のみ)です。(※厚労省サイトで残業時間ごとの死亡件数は2006年度以前は公表されていません)

上のグラフを見てわかる通り、直近の5年間(2011~2015年度)で、過労死310人、過労自殺166人、合計476人の命が奪われています。過労死・過労自殺が2014年度のように1年で100人を超えていることや、今回の100時間残業OKが「時間短縮の流れを逆行させる」(川人博弁護士の指摘※後述)ことなどから考えると、もし100時間残業OKが今後も5年続くようなことがあると500人近くの労働者の命が奪われてしまうことは確実でしょう。経団連が500人もの労働者の命を奪うことになる流れをつくろうとしているのです。

国会では、3月8日に衆議院厚生労働委員会で参考人質疑が行われました。過労自殺した電通の高橋まつりさんの遺族の代理人も務める川人博弁護士の意見陳述から上限規制の問題にかかわる部分を紹介します。(以下、文責=井上伸)

長時間労働をなくすためには、労働時間の絶対的な規制が不可欠です。時間外労働の上限規制の法制化の議論の中で、特別条項で1カ月100時間という案を聞いたときに、私はわが耳を疑いました。全く信じられない数字が出てきたということです。なぜなら、そもそも、もう今から15年以上前の2001年に、厚生労働省は1カ月間に100時間の時間外労働があれば過労死ラインとして労災の適用になることを明確に医学的な根拠を含めて出したわけです。

さらに、今議論されている中には、2カ月間の平均で80時間が上限ということも出されていますが、平均80時間というのも、厚生労働省が過労死のラインとして設定している数字であるわけです。

繁忙期には長時間労働もやむを得ない会社や業界もあるじゃないかという意見があります。しかし、繁忙期にある程度やむを得ないからといって、なぜ100時間や80時間というレベルになるのか、そのような具体的な説明は全くなされていません。そのような立法事実は提起されていません。月に100間もの残業をしなければ会社が倒産してしまうということなんでしょうか。そのような会社が本当にあるのか。さらに、仮にあったとしても、人命よりも会社の存続を優先させていいのか。私は、繁忙期の問題がテーマになる企業においては、経営者の方々に、ぜひ年間を通じた経営努力で改善を図っていただきたいと考えます。

また、今は青天井だから、全く規制がないよりも100時間や80時間という規制でもあった方がよいではないか、つまり、よりましの議論が出ています。

高橋まつりさんの死亡の労災認定が明らかになって以降、昨年の秋以降、多くの企業で現行の36協定を各社が見直し、特別条項を使っても月80時間を超えないようにという流れが生まれてきています。電通では、遺族との合意文書の中で、特別条項を適用しても月の法定外労働時間は75時間以内にする、そのような業務命令をするということをはっきりと約束しています。

このように、現に今職場では、100時間や80時間よりも少ない数字の特別条項で動いているわけです。ところが、100時間でもいいということが通れば、それによって状況がもとどおりに戻ってしまう。よりましな基準ではなく、むしろ、今の時間短縮の流れが発生しているにもかかわらず、その時間短縮の流れを逆流させる、それが100時間、80時間をいいとするものであることを強調したいと思います。

100時間で1カ月ぐらい働いても健康は大丈夫じゃないかという意見もあります。しかし繁忙期に100時間というのは、いわゆるだらだら残業などではありません。会議中に眠ったり、あるいはぶらぶらしたり、そんなようなことを行っている労働者はいないわけです。労働密度も当然濃い。さらに、IT化によって労働密度はますます濃くなっている。そういう中での80時間、100時間ですから、当然のことながら、人体に対する極めて深刻な影響も出るわけです。

1カ月間辛抱したらいいじゃないかという意見がありますが、うつ病は短期間に発生します。厚生労働省の委託研究でも、月100時間の残業があれば、うつ病が急速に発症し、それが死に至る危険がある、と具体的に提起されているわけです。

これらの点を考え、上限規制は、過労死ラインと言われる80時間や100時間というものでない、もっと低いラインの上限規制を実現するようにしていただきたい、そのことを強く訴えたいと思います。(川人博弁護士談)

す。

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井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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