体力ある若者の命を奪う80~100時間残業 #100時間残業OKは過労死合法化 若者を使い潰し日本の未来なくす|全国過労死を考える家族の会・寺西笑子さん

  • 2017/3/13
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3月8日の衆議院厚生労働委員会での「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子さんの意見陳述の一部を紹介します。(文責=井上伸)

過労死をなくすには、その温床になっている長時間労働を法的に規制することが急務です。ところが、政府事務局案に年720時間、さらに繁忙期は単月で100間、複数月で月80時間という過労死ラインが書き込まれるのではないかと予想され、私たちは危機感を募らせています。万が一、予想される政府の事務局案が法律になると、1日の規制も1週間の規制もないために、毎日5時間残業や10時間残業が続いても違法ではないという恐ろしいことになります。

その上、政府は、長時間労働を助長する高度プロフェッショナル制度の創設と企画業務型裁量労働制の拡大をセットにして、働き方改革を押し通そうとしています。

私たちは、過労死防止を願う立場から、単月100時間、年720時間及び高度プロフェッショナル制度の創設と企画業務型裁量労働制の拡大は過労死を生み出す長時間労働を許容することになりますので反対するものです。特例を認めない残業の、まともな法的上限規制に踏み出すことを強く求めます。

具体的な事例に即して意見を述べさせていただきます。

家族の会の会員Aさんの夫は、40歳で過労死されました。仕事は外回りの営業職でした。早朝勤務と、お客に合わせて夜の商談や休日出勤をされていました。亡くなる前の6カ月間は月平均80時間以上でしたが、会社が労働時間管理をしていなかったこと、就業規則に休憩2時間と明記されていたことで、実際に働いた時間が認められず、業務外判断になりました。奥さんは、育ち盛りのお子さんを3人抱え、夫にかわって大黒柱になり、生計を立てながら、諦めることなく、夫の手帳を頼りに取引先や会社関係者など十数人の人と会って労働時間の事実を積み上げ、苦労して月平均80時間の残業を立証し、何年もかかって労災認定されました。

2人目、Bさんの夫は、37歳でお子さん2人を残し、過労死されました。仕事は組み立て工場の変則勤務をされていたため、生活のリズムが大きく崩れたのが原因です。実際の労働時間が認められず、行政裁判をされ、高等裁判所にて月平均85時間の残業がやっと認められ、労災認定されました。インターバルの制度を導入する必要があることがわかります。

3人目、Cさんの息子さんは、27歳の若さで過労死されました。入社2年目から専門業務型裁量労働制の適用対象者になりました。規定で22時以降の残業は許可が要ることで、息子さんが自主申告すると上司に殴られたそうです。その後、帰ったことにして仕事をしていたとおっしゃっています。サービス残業をしないと仕事が回らない、毎日深夜の帰宅とのメールがありました。亡くなる前、繁忙期100時間超え、複数月80時間超えの勤務があり、御両親が原告として今係争中です。

このように、使用者が正しい労働時間を適正に把握していないため、過労死なのになかなか認定されない実態があります。また、これはあくまで認定された労働時間であります。実際には、これをはるかに超える実質的な拘束時間があったものと推察されます。

体力のある20代、30代、40代の男性が単月100時間あるいは月平均80時間の残業をすると過労死するという現実を認識していただきたいのです。

月80時間の残業は、週20時間、1日4時間の残業になり、それプラス所定労働時間と休息時間を入れると、少なくとも1日13時間以上拘束されます。月100時間なら、週25時間、1日5時間の残業、1日14時間以上も拘束され、通勤時間と生活時間を入れると睡眠時間はごくわずかになり、いつ倒れても不思議ではありません。月80時間、100時間という過労死ラインで働くと命が奪われかねないということも御理解ください。

私ごとですが、夫は21年前に過労自死しました。飲食店の店長だった夫は、サポート体制がない中、達成困難なノルマを課せられ、月100時間超えの残業を強いられました。必死の努力で一定の成果を上げましたが、会社が命令した成果に届かなかったため、過度の叱責を受け、人格否定され、身も心も疲労こんぱいになり、うつ病を発症して飛びおり自殺を図りました。

裁判でわかったことは、会社に義務づけられている健康診断は一度も実施せず、36協定を結ばず長時間労働させ、夫は、仕事の裁量もなく、固定残業代で長時間働かせ放題の名ばかり管理職だったということが明らかになりました。会社は、目先の利益を追求し、守らなければならない法律を全く守らない会社でした。

夫は、会社利益のために、睡眠時間と家族と過ごす時間、自分の自由な時間を犠牲にして会社に尽くしました。その見返りが過労自死だったのです。夫の無念を思うと悔しくてなりません。

何とか過労死を減らしたいのですが、しかしながら、過労死は今もなおふえ続けており、相談者が絶えることはありません。

昨年11月、全国過労死を考える家族の会の労災認定を求める要請行動は、18名が個別要請しました。その中で、20代、30代、40代前半の被災者が18人中16名おられました。特に深刻なのは若者の自死が多いことです。

20代の男性は、入社して数カ月で自死されました。30代の男性は、企業の合併などの転籍後、数カ月で自死されました。その原因と背景に長時間労働と上司のパワハラがありました。日本の未来を担う若者を使い潰すようでは、日本の未来をなくします。

労災申請しても遺族が立証するには限界があるため、こうした高い壁が立ちはだかり、泣き寝入りする遺族がほとんどで、労災申請される御遺族は過労死全体の氷山の一角です。

私たちは、これ以上過労死を生み出さないでほしいと願い、2014年に私はこの衆議院厚生労働委員会で意見陳述し、過労死防止法を成立させていただきました。まさか3年後に、過労死ゼロどころか、過労死を助長する月100間残業合法化の法改正や、労働時間規制を緩和する高度プロフェッショナル制度や、裁量労働制拡大の法改正が国会に提出されているのは理解に苦しみます。向かう方向が逆です。何のための過労死防止法だったのでしょうか。過労死ラインの残業時間の上限が法制化されたら一歩前進なんて、私は全く思っていません。いま一度、全会一致で成立させていただいた過労死防止法の原点に戻っていただきたい。過労死防止法を踏まえれば、月100時間の過労死ラインまで残業を合法化するのは到底あり得ません。上限はできるだけ低くしていただきたいです。

命より大切な仕事はありません。過労死防止法は、全国の過労死遺族の涙と汗の結晶です。私たちは、これからも過労死ゼロを目指して努力していきます。

 

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井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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