子どもをつぶす日本社会の歪みと「月あかりの下で」希望を語り人間を再生する定時制高校

綿貫公平先生のフェイスブックからです。

9月24日(土)《「子どもの貧困」を考える映画祭》@YMCAアジア青少年センター(水道橋駅徒歩5分)を準備中/主催「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク、…といっても、何だかんだと準備も宣伝も遅れています。ここでミニ告知。

6月のロードショーが好評で、現在アンコール上映中の『さとにきたらええやん』(14:40~、17:20~、2回上映)、『月あかりの下で』(12:40~)、そして『キューポラのある街』(10:05~)。10:00~19:00出入り自由ですが、上映中はご遠慮願います。

『さとにきたらええやん』2回上映の間に、トークショー■監督:重江良樹さん×■栗林知絵子さん(NPO豊島子どもwakuwakuネットワーク理事長)もあります。

入場無料:ぜひお誘い合わせの上、ご参加ご予定下さい。

 

現在アンコール上映中の『さとにきたらええやん』はきょう夏休みを取ってかみさんと一緒にこれから観に行くのですが、『月あかりの下で』については2010年9月に感想等を書いていますので紹介しておきます。

ドキュメンタリー映画「月あかりの下で~ある定時制高校の記憶~」を先日の日曜日に観ました。一緒に観たうちのかみさんは、教員免許を持ってるけど教師にならなかった人なのですが、この映画を観終わった後すぐ「やっぱり、教師になれば良かった」と涙目でつぶやいていました。私の方は教師になろうと一度も思ったことがない人間ですが、映画の冒頭から終わりまで、ほぼ涙でウルウル状態でした。

煙草の火で腕に根性焼きの跡をたくさんつくり、派手なメイクで身を固め、机の上に寝そべり教師に暴言を吐く生徒、家庭内暴力が原因で登校できなくなった生徒、リストカットを繰り返してしまう生徒、お酒を飲んで酔って登校する生徒、教室で5分と座っていられない生徒…彼らのやわらかな心は、社会・家庭・学校の歪みによって傷つき、希望をつぶされてきたのですが、彼らが再びその希望を語ることができた場所は、人との絆を結びなおし人を育てる学校であることがドキュメントで迫ってくるすばらしい映画です。人間をつぶしてしまうのは社会・家庭・学校の歪みだけれど、希望をつぶされた人間を再生していく力も学校にあることを事実で示してくれる映画です。

ラッキーなことに、映画終了後、この映画の主人公である定時制高校に通った生徒さんと準主役である担任の平野和弘先生のトークショーがありました。

この映画が追った平野先生の定時制クラスの生徒たちは、ほとんどが不登校やひきこもりだった子どもたちです。その子どもたちに対して平野先生は、「純粋な彼らだからこそ、現在の競争社会を移し替えた学校に対応できず、自らをこもらせてしまっている」と言います。

この大切なベースとなる平野先生の考え方と同時に、平野先生の子どもと青年のとらえかたは、教師でなくても興味深かったので以下紹介しておきます。

実際の少年事件に直面したり、不登校の生徒たちと接するなかで、現在の子どもたちは「格差社会」「競争原理」「自己責任社会」などによって未来が描けない閉塞的な状況に置かれていると思っています。とりわけ、子どもと青年たちは現在の「消費文化」という激流の渦に巻き込まれているのではないでしょうか。

かつての子どもと青年たちは、学校や家庭から多くを学んでいました。この学校と家庭という2つを射程におけば、子どもと青年の把握はできているはずでした。しかし現在、子どもと青年たちの視線は、この2つの世界以外に向かっているのではないでしょうか。子どもと青年たちは彼ら自身がターゲットとされてもいる「消費文化」に巻き込まれていることが大きいのではないでしょうか。

「消費文化」に巻き込まれているというのは、子どもと青年たちが、文化や知識を持った大人から何かを学ぼうという姿勢はなく、消費と受容のみで成り立ち、「消費文化」の中である程度のことを「わかった」気にさせてくれる世界になっているということです。

「小生意気な子どもたち」とか「横柄な青年たち」は、彼ら自身の問題ではありません。謙虚さが無くなったのではなく、彼らが、「大人から学ぶものがない」、「他の世界で生きている」と思い込まされている現状が問題だと思うのです。加えて、「できないのも個性」と、できないことも「できる」未来につなげて考えられないよう仕組まれた彼らにとって、地道な「学び」は「うざったくて」「やっかい」なものなのです。

「消費文化」に巻き込まれている子どもと青年たちは、一部でのみ通じる言語を使用し、他者を否定的にとらえ、小さな世界で自我を肥大化させていくようです。彼らの肥大化した自我に切り込み、彼らの未来を提示できる「学校文化」ともいうべきものが必要となっていると思うのです。(※この「学校文化」の有り様については、映画の中で描かれているのでぜひ観てください)

不登校になるのは、現在の競争社会を移し替えた学校の姿が、ひとつの原因でもあります。人との関係性に傷つき、不信感を持った彼らにこそ、人との関係性の中でその傷を癒し、かさぶたから強固な意志を作り出す必要があると思うのです。その場所こそ学校で、最初は、不登校やひきこもり、暴力でしか人との関係が結べなくなってしまった子どもたちの「居場所」から「自治空間」、「学びの公共空間」へと進み、彼らにつけてもらいたい「8つの力」――①自分を表現する力、②他者認識と自己認識ができる力、③主権者として活動できる力、④労働をするための主体者像を確立できる力、⑤生活主体者としての力、⑥文化を享受できる力、⑦「世界」を読み取る力、⑧真理を探究する力――を構想しながら模索し続けています。

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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