腐敗する経営者=日本IBMロックアウト解雇、入社後すぐ自宅待機、社長は自家用ヘリと高級外車乗り回し正社員には3年間ボーナス支給ストップ

  • 2015/10/26
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私が企画・編集した座談会「ブラック企業と『ブラック公務』が日本を食いつぶす」から、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)三木陵一書記長の指摘を紹介します。(※2013年1月収録)

日本IBMの「ロックアウト解雇」の実態
JMIU(全日本金属情報機器労働組合)三木陵一書記長

マスコミでも「ロックアウト解雇」が注目されていますが、実は日本IBMという会社は今に始まったわけではなくて、もう10年以上前からある意味ではブラック企業化していると言ってもいいと思うのですね。

10年くらい前から「ボトムテン」という言葉があって、これはどういうことかというと、IBMではいわゆる「成果主義人事制度」「成果主義賃金」が導入されていて、PBC評価というものが毎年やられるわけですね。このPBC評価(相対評価)で全労働者の10%から15%にあたる「低評価」とされる3ないし4がついた労働者が退職強要の対象にされてしまうわけです。

このPBC評価で3ないし4がつくと、PIPと呼ばれる「業務改善プログラム」が指示をされて、さらにPIPでも成績が低いと、「もうあなたにはやれる仕事がない」と退職が迫られます。

これは相対評価でそれぞれの管理職に対して、いわばノルマとして人減らしが義務づけられるわけですから、当然その退職強要のやり方はひどいものになります。会社側は裁判の中では本人の自由な意思を阻害するものではないなどと言いますが、退職強要の実態はかなりひどいもので、繰り返し繰り返し呼び出しては、「お前にできる仕事はない」「お前には能力がない」などと言って自ら辞めざるを得ない状況に追い込んでいきます。

とりわけひどかったのがやはりリーマンショック後の08年から09年で、この時にはIBMは公にはしていなかったのですが、RAプログラムというリストラ計画が裏で走っていて、全従業員の約15%の人員削減をめざして大量の退職強要が公然とやられたのです。

退職強要とたたかい組合員増やす

この退職強要に対して、私たちJMIUはたたかって、数十人規模で組合員を増やしました。すると、会社側は2012年になって、形式的には自ら辞めさせるというこれまでの手法から、いきなり解雇通告をするというやり方に変えてきたのです。

実際に何人くらい2012年に解雇したのか、会社は一切明らかにしないわけですけれども、IBMの社員は約1万4000人いて、そのうちJMIUの組合員が140人いるのですが、その140人のうち解雇通告を受けた者が1割弱の11人もいるわけです。これを単純な比例で考えると相当数の解雇通告者が出ていることになります。

「ロックアウト解雇」というやり方は非常に陰湿でパターンは決まっています。夕方5時頃に突然上司から「ちょっと会議室に来い」と呼び出されて、会議室へ行くと、さらに上の上司と人事担当者がいて、いきなり解雇通告書を読み上げられるのです。解雇通告書に書いてあるのは、経営が大変だから辞めてくれといういわゆる経営上の都合ではなくて、あくまでもあなたの業務が劣っていることが解雇の理由ということです。就業規則に、成績が悪いものについては解雇ができるという普通解雇という条項があって、それに該当するという内容の主旨が、淡々と読み上げられて質問もできない状況なのです。

午後5時頃に呼び出されて午後5時36分の終業時間までに一切の私物をまとめて会社から出て行きなさいと一方的に言われるわけです。その後は、会社のIDカードも使えないし、社内のイントラネットなども使えなくなって、名簿からも消されてしまう。まさに突然ロックアウトされてしまうのです。

外資系IT企業に広がるロックアウト

実は、こう言ったPIPを使った退職強要やロックアウト解雇は、外資系のIT企業には相当広範囲に広がってきていると考えています。

私たちが関わっているところでも、たとえば、日本マイクロソフトもこのPIPを活用していますし、パソコンを作っているDELLからも退職強要の労働相談からJMIUの組合員になられた方もいらっしゃいます。それ以外のIT企業にも相当広がってきていて、従来の人減らしリストラとは、明らかに質が異なってきていると強く感じます。

電機産業が13万人とも言われる大リストラをやったということが、テレビで報道されていて、ある大手家電メーカーでリストラの希望退職に応募した労働者が職場から去って行くシーンが映っていたのを見たのですが、皆さん花束を持っていました。ようするに日本の電機企業では、大規模なリストラをやったと言っても惜しまれながら、花束の一つぐらいはもらって、引き続き頑張ってくださいというふうに激励をされながら、職場を去っていくということなんでしょう。しかし、先程言いましたように、ブラック企業の典型と言われるような日本IBMなどのIT企業のロックアウト解雇では、そもそも辞めるときに会社が勝手な都合で辞めさせるにも関わらず、あなたが悪いと労働者の責任にされて、しかも職場の同僚にも一切知らせないまま、30分以内に私物をまとめて職場から出て行けとまさにモノ扱いというひどい状況が横行しているわけです。

若者を使い捨てる企業の増加

私たちJMIUに寄せられる労働相談の新しい特徴として、4つほどあげられると考えています。

1つは、ボロ雑巾のように若者が使い捨てられているということです。たとえば今、日産自動車を相手に裁判でたたかっているJMIUの組合員にOさんという若者がいます。彼は日産自動車で派遣労働者として働いていました。重労働のために足腰をやられて立ち上がれないような状況にまでなってしまって、もう我慢しきれなくなって病院に行くと、お医者さんからどうしてこんなにひどくなるまでほったらかしにしていたんだと言われました。会社に連絡をして、彼が労災だと主張した途端に、その日の夜、派遣会社がやってきて、「もう明日から仕事に行かなくていい、日産はもう辞めさせられた」と言うわけです。ただし、労災ではないかと抵抗したこともあって、日産車体という新しい職場を紹介してもらうことができました。

ところが、日産車体の職場で働き始めた途端に、リーマンショック後の派遣切りにあって、彼は一文なしの状態で寮も追い出されてしまいます。彼は神奈川県から実家のある群馬県の伊勢崎まで歩いて帰ったのですが、実家とは音信不通だったこともあって親とも会えなくて、高校時代の友達にお金を借りて神奈川に戻ってきて、私たちJMIUに出会って、今、仲間に支えられながら頑張っているのです。このように、若者を使い捨てにするひどい実態が横行しています。

入社した途端、自宅待機

それからJMIUに寄せられた最近の労働相談で、ある企業に入社した途端、1カ月余りで自宅待機を命ぜられたという事例があります。このケースでは相当数の新入社員が自宅待機になったということで、労働相談から組合をつくるに至っています。

単に低賃金や低処遇というだけではなくて、若者をモノのように扱い、使い捨てにするというのが最近の労働相談の大きな特徴の1つになっています。

乱暴な労基法違反の横行

それから、2つめの特徴は、労働条件の不利益変更や労働基準法違反も極めて乱暴化してきているという点です。

私が実際に受けたIT企業の労働者からの相談のケースでは、年俸制で残業代が出ないと言う相談だったのですが、よくよく聞いてみると、有期雇用の社員なんですね。雇用は1年契約で、成果主義で年俸制だと言われて、残業代は一切出ない。また別の労働相談のケースは、今野さんからも指摘 があったように、入社の時に基本給は20万円払いますと言っていたのに残業代がまったく出ない。よくよく話を聞いてみると月60時間分の残業代込みで20万円だったという。こうした問題も増えています。

これは、千葉県にあるIT企業で働く労働者からの相談だったのですが、ここでも基本給に残業代込みというケースの上にさらに15%の賃金カットが強制されて、もう我慢できないという相談がJMIUにあって労働組合をつくりました。労働組合をつくった途端に、ひとつの部署に配転と称して組合員だけが集められて、仕事がないことを理由に全員解雇されました。これに対してJMIUはたたかって1年頑張って職場復帰を勝ち取ることができました。

企業の統治機構の崩壊、腐敗する経営者

3つめの特徴は、企業の統治機構の崩壊にともなって、経営者のモラルが腐敗しているという問題があるのではないでしょうか。

たとえば、千葉県にあるIT企業のケースです。私も労働組合の結成通告の時にその会社に実際に行って大変驚いたのですが、社長は自前のヘリコプターを持っていて、会社の駐車場には数台の高級外車がずらっと並んでいたのです。ところが社員にはボーナスの支給が3年間もストップしたままだという労働相談がJMIUに寄せられて、労働組合をつくってたたかっているのです。

なぜボーナスを支給しないのかと追及すると、株の配当を20%出していて、その税金を払わなければいけないからボーナスが出せないなどという滅茶苦茶なことを言うわけです。経営者のモラルが崩壊してきているのです。

最近寄せられるこうした労働相談から強く感じるのは、このブラック企業というのは、たんに労働者をいじめるというだけでなく、そのことで企業の統治機構が崩壊してきているのではないかと思うのです。

日本IBMのロックアウト解雇をブラック企業の典型としてお話ししましたが、日本IBMは同時に「不祥事量産企業」とも呼ばれています。昔から日本IBMは、私たちの組合もあって、ずっと労働委員会での紛争や労働裁判が絶えない企業なのですが、実は職場の労働者からだけではなくて、ユーザーからの苦情も大変多いのです。常にユーザーからも訴えられて裁判を行っているのが日本IBMです。企業の統治機構が崩壊しているというのもブラック企業のひとつの特徴だと思います。

最近ではとうとう大歳という日本IBMの元社長でその後、会長をやっていた人物が、昼間に四ツ谷の駅で女子大生を盗撮したということで“ピンク企業”とまで言われるようになっています。ある意味でブラック企業のなれの果てですね。

まともな労働組合への極端な嫌悪

4つめの特徴は、労働組合への極端な嫌悪です。この点も最近の労働相談から労働組合をつくってたたかっていくときに大変強く感じる特徴の1つです。今野さんからもお話 がありましたけれども、労働組合ができたときには必ずといっていいほど、弁護士が入ってきて労働組合対策を指南するということも最近の特徴になっているわけです。

本当に10年前、20年前とは労働相談の質がかなり変化をしてきていることを実感します。

【JMIU(全日本金属情報機器労働組合)三木陵一書記長談】

以上が三木さんのお話です。あわせて、ちっくまんさんが「マンガで見るIBMのロックアウト解雇」を描いてくださいましたので、マンガの画像とネームをテキストで紹介します。

▼これがIBMの「ロックアウト解雇」(作者:ちっくまん)

▼これがIBMの「ロックアウト解雇」(作者:ちっくまん)※マンガのネーム

日本IBMは、大歳元社長が、2003年に「リストラの毒味役になる」と公言し、それまで過酷なリストラの舞台となってきました。しかし、いまIBMで起きている解雇というのは―― Mさん「(5時か――。まださっきのメールのレスがこないな…。)」

「M君、ちょっとミーティングルームへ。」

Mさん「はい。」

(ミーティングルームで)Mさん「(人事の人? なんでいるんだ?)」

(人事担当者が「解雇予告通知および解雇理由証明書」を読み上げる。)

人事担当者「会社は、貴殿を2012年9月26日付けで解雇します。」
「なお、会社は、同日までに解雇予告手当として、36万…」
「貴殿は、成績が低い状態が続いており…これは、就業規則53条の解雇要件に該当します。」

Mさん「ちょっと待ってください!! なんなんですか、これは!!」

人事担当者「いま言った通りです。あなたは、もうIBMの人間ではありませんので、17時36分の退社時間までに私物をまとめ出て行ってください。」
「会社があなたに貸与したIDや携帯電話なども返却するように。その物品については、こちらに記載されています。」
「本日以降、会社はあなたに労務の提供を求めませんので、明日からは出社を禁じます。」
「但し、会社は9月20日の17時36分(必達)までに、郵送もしくは持参にて貴殿が…自ら退職する意思を示した場合は解雇を撤回したうえで…この場合、退職加算金や、会社の費用負担で再就職支援のサポートを…」

Mさん「どうして私が解雇なんですか!?」

人事担当者「解雇規則の解雇事由にあたるからです。それ以上は答えられません。」
「早く私物をまとめて出ていきなさい。」

日本IBMは、この20年間、セカンドキャリアプログラム(早期退職制度)の導入、会社分割法などを利用した企業再編リストラ、PIP(業務改善プログラム)を使った退職強要など、他社に先んじたさまざまなリストラを実行してきました。

いっぽう、「リストラの毒味役」と豪語し、指揮してきた大歳最高顧問(元社長)は、今年8月、都内で女性のスカートのなかを盗撮して警察につかまりました。

ところが、日本IBMは、大歳最高顧問(元社長)を解任せずに、退職扱いとしています。いっぽうで大量の労働者を、理由もなく解雇しながら…。

「成績不良」という恣意的な理由による解雇。このIBMの手法が許されれば、労働者はいつでも自由に解雇されてしまいます。

「解雇自由の社会」――あなたは、そのような社会になっても、今まで通りに、がんばって働けますか?

【ちっくまんさん作】

▼座談会の一部を視聴できます。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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