片山さつき議員 @katayama_s の貧困高校生バッシングは全労働者の貧困化もたらす=子育ては自己責任で「失業の権利」「失業者の生活保障」ない日本は貧困に沈む、貧困率は労働者の暮らしのバロメーター

  • 2016/8/29
  • 片山さつき議員 @katayama_s の貧困高校生バッシングは全労働者の貧困化もたらす=子育ては自己責任で「失業の権利」「失業者の生活保障」ない日本は貧困に沈む、貧困率は労働者の暮らしのバロメーター はコメントを受け付けていません。

2010年5月に書いたものです。

「第18回パート・派遣など非正規ではたらくなかまの全国交流集会」(2010年5月22日)で、都留民子広島県立大学教授による講演「格差と貧困から平等な生活へ~ヨーロッパの福祉国家に見る打開の道」が行われました。その一部要旨を紹介します。(※文責=井上伸)

日本で貧困問題を取り上げるとき、貧困といったらホームレスだと、そういう極限的な状況で貧困をとらえる傾向があります。また、貧困というのは、労働者の問題ではなく、生活保護を受けたりする弱者の問題だとする傾向もあります。

貧困とはそうではありません。イギリスのタウンゼントは、労働者が生み出した社会的な富が不平等に分配された結果が貧困だと指摘しました。貧困問題は労働者の生活を考える際のバロメーターになるものなのです。

労働者が生み出した社会的富が分配される際の第1次分配は賃金です。資本主義における賃金は第1次分配のときに大きな不平等が出ます。労働力の再生産のためには最低賃金が必要になり、どんな不熟練な労働者、どんなに職能がなく、訓練もされていない、教育もない、そういう労働者であっても、労働力が再生産されて、家族が持てるような最低賃金で、第1次分配のときに著しい不平等をなくすようにするわけです。

第2次分配は社会保障です。第1次分配の不平等に対して、第2次分配の社会保障で再分配をする。ですから、貧困率というのは、ホームレスが増えとか、生活保護受給者が増えたという問題でなはくて、第1次分配の賃金と、第2次分配の社会保障がどうなっているのか、というまさに労働者の生活のバロメーターになるものなのです。

たとえばイギリスやフランスも第1次分配の賃金ではかなり格差があります。第1次分配の段階での貧困率は高いのです(▼グラフの「市場所得での貧困率})。

ところが、ヨーロッパでは、第2次分配の社会保障によって、再分配をして、貧困率を大幅に下げ、日本より貧困率を低くしているのです(▲グラフの「可処分所得での貧困率」)。

医療は無料ですし、教育は幼稚園から大学まで無料です。加えて、児童手当があります。日本で高校の無償化といっても、制服代や体操着代、学用品代や毎日の昼食など、子育てに大きな負担がかかるわけですが、私が研究しているフランスでは、そうした負担に対しても児童手当等が18種あり、子育てにはほとんどお金がかかりません。私のフランス人の友人も子どもの食費や交通費もほとんど負担がないと言っています。つまり、子育てが社会化されているのです。

自殺の多い日本において、親が子どもを道連れにする。これは日本の特殊性です。子どもは親が育てるものだと思い込んでいるのです。親がいなくなったら、この子どもはどうなるのだろうと思ってしまう。子育てを親の責任、子育てを自己責任にしている日本では子どもの命をも奪ってしまう。子育てを社会の責任としているヨーロッパでは親がなくても子は育つ。子どもは社会のものなのです。

日本はOECDの中で、ダントツで失業率の低い国です。ところが、フランスの失業率は日本の2倍以上でいま10%を超えています。ところが、フランスの貧困率は日本の半分なのです。

日本の失業率はフランスの半分なのに、日本の貧困率はフランスの2倍以上、これは何を示しているでしょうか。

フランスはじめヨーロッパでは失業しても貧困にならないのです。これは第2次分配の社会保障がしっかりしているからです。

フランスなどの失業保険は、1日働いたら1日の給付、つまり、1年間働いたら1年間失業保険をもらえる。こういう原則があるのです。だんだん改悪されてはいるのですが、今でも50歳未満だったら最大3年、50歳以上だったら5年の失業保険をもらえます。ですから、失業しても貧困にならないのです。

ところが、若い人たちはそれだけの職業歴がありませんから、イギリスでもフランスでもドイツでもそうですけども、若い失業者はみんな生活保護を受給しています。フランスの生活保護受給者は6割が20代、30代で、高齢者は1人もいません。高齢者には年金があるからです。年金は3カ月拠出すれば受給できます。わずか3カ月です。

失業者の生活をいかに保障するかというのが、労働者にとってはものすごく大事なことです。失業中の労働者が生活に困窮して、どんなブラックな労働に就くようになって、どんなに低賃金で劣悪な労働条件でも仕事に就くようになる窮迫販売を行ってしまうと、すべての労働者の労働条件を急速に下げるからです。

日本の低失業率でワーキングプアが多く、すべての労働者の賃金が低くなるのは、同一労働同一賃金が確立されていない上に非正規雇用を増加させていることもそうですが、第2次分配の社会保障が脆弱なため、労働者が窮迫販売を行ってしまうことも大きな原因なのです。

逆にヨーロッパにはワーキングプアが広がりません。失業してるときにしっかりと生活の保障をする。そして、失業保険のなかに労働組合がかなり関与していますから、労働組合が失業者の権利を守るのです。日本のように、失業者に「とにかく何でもいいから働け」ということになると、労働条件が全体的に下げられるのです。

ほかのヨーロッパに比べれば自由主義的な傾向が非常に強いイギリスでも4世帯に1世帯が生活保護を受給しています。生活保護を受給するのが当たり前になっているのです。『ハリー・ポッター』の作者のJ.K.ローリングさんはシングルマザーで生活保護を受給しながら、毎日喫茶店に通い詰めて小説を書いたのです。失業する権利、失業者の生活を保障することがなければ、すべての労働者の生活も引き下げられてしまう。資本主義では失業は避けることのできない事態です。マルクスが指摘しているように、相対的過剰人口で、労働力の産業予備軍をどんどん作っていくのが資本主義で、その産業予備軍を窮迫販売をしないように社会保障をつくることはすべての労働者の生活を守るために不可欠になります。

ですから、私たちの運動というのは何なのかというと、自分たちが生み出した富を取り返す運動だということです。企業から自立して、貧困のない平等な社会を実現するということは、賃金依存の生活を見直して、社会保障による生活の社会化を実現することなのです。

▼関連
◆日本の労働者の賃金依存度を下げ脱貧困の社会保障をつくらなければブラック企業はなくせない
◆ハリー・ポッターは日本では生まれない – 能力つぶし社会的損失ひろげ機会の平等を保障しない日本社会
◆国家による殺人をさらに強める生活保護バッシング|都留民子県立広島大学教授
◆「本当に困っている人」だけを選別する福祉は「本当に困っている人」も救えない ? すべての人に「生きづらさ」強いる福祉のパラドクスと生活保護バッシング
◆片山さつき議員 @katayama_s の「子どもの貧困」報道批判や生活保護バッシングは日本経済に大きな損失をもたらしている=「経済損失50兆円、財政負担20兆円」

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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