「スウェーデンでは待機児童ゼロが当たり前」だが「日本では待機児童になってしまうのが当たり前」という安倍政権のマタハラ政策=公立保育解体と保育料激増

  • 2016/3/17
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スウェーデンの3分の1しかない日本の保育への公的支出については以前、グラフを紹介しましたが、その「スウェーデンでは待機児童0があたりまえ」との報道がありますのでクリッピングしておきます。

今の日本は40年遅れている?福祉国家スウェーデンの保育園事情
Suzie 2015.12.15

■スウェーデンでは待機児童0があたりまえ

高見さんがスウェーデンで初めてお子さんを生んだのは1979年。すでに認定保育園は誕生していたものの、先生がコロコロ変わるなど、保育の質は今より悪かったといいます。保育園の絶対数が少なかったため、それこそ今の日本のように、待機児童が大勢いたそうです。

では今は、本当に待機児童はないのでしょうか。

「ないです。自治体は子どもを持つ親が保育園に申請したら、3ヶ月以内に提供しないといけないという法律があるんです」

日本の保育園にあるような、保育の質の格差についてもお聞きしたところ、

「スウェーデンの保育園は公立でも私立でも、すべて認可の保育園なんですよ。認可の保育園にはガイドラインがあるので、それをまず満たさないといけません。ですので、公立と私立とで差はあるとしても、日本の無認可と認可ほどの差はないですね」

■スウェーデンでは看病で休んでも給料発生

高見さんによると、スウェーデンでは、女性の社会進出が進んだ1980年代には、すでに幼稚園のニーズはなくなってきていたそうです。さらに、1998年にスウェーデンでは、幼稚園と保育園が統合されることになり、名称も、「就学前学校」という名称に変わり、管轄も社会福祉庁から、教育庁(日本でいう文部科学省)に移りました。

「それまでとの一番の違いは、1歳未満の子どもは預けられなくなったことです。70年代は育児休暇は6ヶ月しかありませんでしたが、今は16ヶ月、しかも、そのうちの60日間は父親のみ取ることができるものです」

スウェーデンでは父親がひとりでベビーカーを押す風景が珍しくないのだとか。

「また、それまであった病後児保育もなくなりました」

これには一瞬、意外と思いましたが、高見さんの次の言葉にはっとしました。「だって、それは子ども中心の考えではないですよね。子どもにとっては病気の時ほど、親が必要なのですから」

たしかにその通りです。けれど……、休んだ分の給料はどうなるのでしょうか。

「スウェーデンでは病気の子どもの世話をするために休んだ場合、法律で給与の80%は保証されます。1年間で120日は休める権利があるのです」日本の法律で定められている子どもの看護休暇は子どもひとりにつき5日です。しかも、有給か無給かは企業の判断に委ねられています。

「それでも休めない場合は、祖父母に頼ることもあります。祖父母がまだ現役で働いている場合、祖父母の給与も80%保証されるのです」

これには本当に驚きました。スウェーデンは、ベビーシッターなどに頼ることなく、家族で病気の子どもを世話できるよう、国が法律で支えているということですね。

■スウェーデンがママに優しい国になるまで

実は、スウェーデンでも1950年代までは、主婦であることが理想とされた時代だったといいます。その後、高度成長で労働力が足りず、女性の社会進出が進みます。どこかで聞いたような話ですね。

高見さんが強調されていたのは、スウェーデンが今のようになるまでには、1968年に始まった大学教授や研究者の女性たちによる女性解放運動の功績があるということでした。彼女たちが社会に要求した改革のうちのひとつが、「保育園を皆に」だったのです。

活動の中心が女性だったからこそ、本当に子どもを大切にする保育園が生まれた、ということでしょうか、とお聞きすると、

「そうですね。法律など、重要なことを決定する場所に女性がいたからだと思います。初めはクオータ制で行政での女性の数を増やしていって、今では国会の議員の半分近くが女性です。地方自治体だともっとその数は多いですね」

日本人は、とかく表面的に北欧諸国の福祉の厚さを羨ましがる傾向が強いですが、その背景には多くの女性たちの努力があったということが、高見さんにお話を伺って、よくわかりました。

高見さんは「法律が決まれば後は早かった」とおっしゃっていました。けれど、ただ40年待っていても、状況は変わらないかもしれません。日本でも、少しずつ女性が声を上げていくことが大切なのではないでしょうか。

 

 

待機児童はほぼゼロ、スウェーデンの保育園の秘密
スウェーデンから見る日本 高見幸子
日経電子版 2013/11/22

~スウェーデンでは、保育園が入園希望者に席を用意するのが義務~
● 自治体は、親が保育園の入園を申し込んでから3~4カ月以内に席を提供することが法律で義務付けられている。私立も公立と同等の補助金が出て、保護者は同じ保育料金ですむ。
● 家庭で1歳未満の子どもは育てられるように、親に育児休暇中の経済的な支援体制が確立されている。スウェーデンでは給与の80%が支給されている。元の職場に復帰できる権利の保障がある。
● 幼児を持つ親は、6時間勤務にしても良いことが法律で保証されているため、子どもは、12時間も保育園にいる必要がない。
● 1人の先生が30人も40人も見なければならないという体制は、子どもにも先生にとっても大変な負担。子ども1人1人の成長を支える理想的な体制は、1クラス18人くらいで先生が3人。
● 50人くらいの小規模の保育園でも採算がとれるようにし、子どもに目が行き届くような保育と教育ができる。

さて、日本はどうかというと、スウェーデンが公立保育を拡充していったのとは真逆の方向にむかっていて、「スウェーデンでは待機児童0があたりまえ」ですが、「日本では待機児童になってしまうのがあたりまえ」という現状になってしまっています。

深刻 保育所の待機児童
公立保育所の大幅増を
保育士の待遇改善が急務
しんぶん赤旗 2016年3月13日

「地方行革」を看板に歴代政権のもとで公立保育所の廃止や民営化が進められ、1999年の1万2875カ所から2014年には9791カ所へと4分の1も減らされました。背景には公立保育所の運営費の一般財源化(04年)や整備費の一般財源化(06年)を進め、国の責任を地方に転嫁してきたことがあります。

しかも、政府は自治体に対して14年から、「公共施設等総合管理計画」策定を求め、廃止・民営化に拍車をかけようとしています。(中略)

安倍内閣はこれまで40万人分の「受け皿」確保を掲げ、15年から始まった新制度では、保育士のいない施設も認可。株式会社による補助金の使途制限も緩和するなど、保育水準を引き下げ、営利企業の参入拡大で「解消」を図ろうとしてきました。しかし、15年度の待機児は前年より増えて2万3167人となり、民間任せの行き詰まりを示しています。

 

OECDの『ジェンダー白書』も次のように指摘しています。

スウェーデンではすべての成人に対し労働市場での機会の追求を支援している

戦後の好況期、労働市場でスウェーデンの女性に新たな機会が生まれた。公共政策は公共部門と社会的保護制度の拡大に向かい、育児休暇と質の高い公的保育への投資も組み込まれた。1960年代、1970年代に発展した他の多くの福祉国家とは対照的に、スウェーデンの社会モデルは、扶養児童のいる親を含むすべての成人が、自分で生計を立てる機会を与えられなければならない、という考え方のうえに成り立っている。このモデルの主な柱は次の通りである。

● 1971年に夫婦単位から個人単位への課税方式に移行
● 1974年から育児休暇を導入(出産休暇の導入は1938年)
● 1970年代、1980年代に公的保育施設を大幅に拡充

スウェーデンの公的保育政策を後押ししているのは、男女平等や女性労働力の供給をめぐる懸念だけではない。子どもの福祉と発育に関する懸念も重視されている。そうしたことが原因で、1995年以降、女性の就業率は80%前後で変化していないものの、公的保育の利用率は上昇し続けている。

 

安倍政権は公立保育所を減らした上に、2015年度から年間3万6千~17万5千円も保育料を激増させていますから、上記で紹介したスウェーデンとは真逆の公的保育解体政策を取り続けているわけです。こうした安倍政権などの「マタハラ政策」によって、先進主要国では考えられない下のグラフに見られる「M字型雇用」がいまだに日本は続いてるのです。(グラフの数字は内閣府「男女共同参画白書」2015年版より)

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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