イラク派遣中の陸上自衛隊員の自殺率は公務員の2倍、「非戦闘地域」が建前の派遣で56人の若者の命が奪われた

  • 2015/9/4
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「戦争法案」の国会審議で「軍部の独走」が次々と明らかになっています。

陸海空自衛隊のトップである河野(かわの)克俊統合幕僚長が昨年12月、米軍首脳との会談で、戦争法案の成立時期について「来年夏まで」と伝えていたことが、統合幕僚監部作成の内部文書(会談録)で明らかになりました。法案の作成はもちろん、そのための与党協議さえ始まっていない段階で成立の見通しを米側に伝達していたもので、国民や国会を無視した自衛隊の許し難い暴走です。こうした暴走を野放しにする安倍晋三政権の下で、自衛隊を「海外で戦争する軍隊」へと変貌させる戦争法案の危険性はいよいよ明らかです。

「しんぶん赤旗」2015年9月4日付 統合幕僚長会談録 自衛隊の暴走許す危険明らか

 

以前紹介した「自衛隊が「日本軍」として戦争法案前提に「軍部独走」、官僚頼みの文民統制、国会に自分たちが統制するという感覚が希薄、すでに文民統制が効かない自衛隊「別班」の諜報活動|青井未帆学習院大学教授」でも指摘しているように、「戦争法案」が強行されるようなことがあると、「人の支配ではなく法の支配を」という「法治国家」が崩れ、「法の支配ではなく人の支配」=「法の支配ではなく安倍首相の支配」が強行されることになってしまいます。そして、文民統制=シビリアンコントロールが効かないとすれば、「法の支配ではなく軍部の支配」、まさに先の戦争時と同様の「軍部の独走」が再現される危険性さえあり、その「軍部の独走」でさえ秘密保護法で国民は知ることすらできない可能性もあります。

こうした「軍部の独走」で実際に犠牲になるのは、戦場に送り込まれる自衛隊員です。「戦争法案」が強行され発動されてしまうようなことがあれば、戦場で自衛隊員が「殺し」「殺される」ことが現実のものとなってしまいますが、もうすでに自衛隊員はアフガン・イラク戦争によって命を奪われています。

アフガン・イラク帰還自衛官のうち54人が自ら命を絶っている

志位 これまで、自衛隊員の戦死者は出ていないものの、犠牲者が出ていないわけではありません。アフガニスタン戦争に際してのテロ特措法、イラク戦争に際してのイラク特措法に基づいて派遣された自衛官のうち、これまでに自ら命を絶った自殺者はそれぞれ何人か、防衛省、報告されたい。

真部朗・防衛省人事教育局長 いまお答え申し上げます、平成26年(2014年)度末の現在、その時点でございますが、イラク特措法に基づきまして派遣された経歴のある自衛官のうちですね、陸上自衛官が21名、航空自衛官が8名、計29名。それからテロ特措法に基づいて派遣された経歴のある自衛官のうち、海上自衛官が25名、これは、統計の関係で平成16年(2004年)度以降でございますが、以上ですね、29名と25名で、足し合わせますと54名が帰国後の自殺によって、亡くなられております。一般に申し上げますと、自殺の原因はさまざまな要因が複合的に影響しあって発生するものでございます。従いまして、個々の原因について特定することは困難な場合がおおございます。自殺した自衛官についても、海外派兵との因果関係、こういったものを特定するのは困難な場合が多いということを、付言させていただきたいと思います。

志位 54人の自殺ということが報告されました。これは深刻な数字であります。

NHK「クローズアップ現代」――心の不調を訴えた隊員が1割から3割も

志位 さきに紹介した昨年4月放映されたNHK「クローズアップ現代」の「イラク派遣 10年の真実」では、イラク派遣が「隊員の精神面にも大きな影響を与えていた」として、派遣自衛官のなかでの自殺者の問題を、生々しくとりあげました。

番組では、イラク派遣から1カ月後に自殺した20代の隊員の母親のインタビューを次のように放映しました。

「派遣中の任務は宿営地の警備でした。20代の隊員を亡くした母『(息子が)「ジープの上で銃をかまえて、どこから何が飛んでくるかおっかなかった、怖かった、神経をつかった」って。夜は交代で警備をしていたようで、「交代しても寝れない状態だ」と言っていた』。息子は帰国後自衛隊でカウンセリングを受けましたが、精神状態は安定しませんでした。母親は、息子の言動の異変を心配していました。20代の隊員を亡くした母『(息子は)「おかしいんじゃ、カウンセリング」って。「命を大事にしろというよりも逆に聞こえる、自死しろ」と、「(自死)しろと言われているのと同じだ、そういうふうに聞こえてきた」と言ってた』。この数日後、息子は死を選びました」。こういう内容が放映されました。

番組では、現地に派遣された医師が、隊員の精神状態を分析した内部資料を紹介しました。内部資料には、派遣されたおよそ4000人を対象に行った心理調査の記録もありました。睡眠障害や不安など心の不調を訴えた隊員は、どの部隊も1割以上。中には3割を超える部隊もあったことが分かりました。

これは、深刻な問題だと思うんですよ。総理、「非戦闘地域」が建前の活動でも、これだけの若者が犠牲になり、また心に傷を負っております。これまで政府が「戦闘地域」としてきた地域まで活動地域を広げるとなれば、これをはるかに超える甚大な負担と犠牲を強いることになることは、私は避けがたいと考えますが、総理いかがでしょうか。

安倍首相 私がかつて官房長官のときに、自衛隊において、他の公務員と比べても自殺率が高いという話を聞きまして、そのカウンセリング等、対応とるように指示したわけでございますが。いずれにいたしましても、そうした形で死を選んだ方々がおられる、大変胸の痛む話であります。しかしそこでですね、こうした活動をおこなっていく。たしかに緊張感をともない、ともなう、わけでございます。そのなかで常に自衛隊の諸君は、さまざまな現場でリスクを負いながら、国民の命と幸せな暮らしを守るために、任務をまっとうすべく、全力をつくしているわけでございます。

「しんぶん赤旗」2015年5月30日付 「後方支援」=兵たんは武力行使と一体 戦争法案の違憲性浮き彫りに 衆院特別委 志位委員長の質問〈上〉

 

安倍首相が国会答弁の中で、「自衛隊において、他の公務員と比べても自殺率が高い」と言っています。この点については、「衆議院議員阿部知子君提出自衛隊員の自殺、殉職等に関する質問に対する答弁書」で明らかになっています。この政府答弁書から陸上自衛隊員の自殺率を分かりやすくグラフにしてみたものが以下です。

上のグラフで一目瞭然ですが、イラク派遣の時期だけ陸上自衛隊員の自殺率は40を超え、2005年度の42.9は一般職国家公務員の自殺率17.7の2.4倍も高くなっています。

この政府答弁書について、「時事通信」は次の報道をしています。

05、06年度は100人超=自衛隊の自殺者数-政府答弁書

政府は5日の閣議で、2003~14年度の自衛隊員の自殺者数に関する答弁書を決定した。それによると、05、06両年度の自殺者はそれぞれ101人、04年度は100人だった。13年度は82人、14年度は69人となって低下傾向にあるものの、平均的な日本人に比べ自衛隊員の自殺が多い実態が明らかになった。阿部知子氏(民主)の質問主意書に答えた。

自殺者が100人以上の04~06年度は、イラク復興支援特措法に基づき陸上自衛隊がイラク南部に、テロ対策特措法に基づき海上自衛隊がインド洋に派遣されていた時期と重なる。

答弁書が同時に明らかにした10万人当たりの自衛官の自殺者数は、04年度が39.3人、05、06両年度が38.6人。最も低かった14年度の29.1人を除き30人超となり、日本人の成人の平均23.7人(14年)を上回った。

また、答弁書ではイラクなど海外に派遣された自衛隊員のうち、帰国後に自殺した人は56人と明らかにした。これまで政府は、54人がイラク特措法とテロ対策特措法に基づく派遣後に自殺したと説明していたが、補給支援特措法でインド洋に派遣された海上自衛隊員2人を追加した。

自衛隊員の自殺に関して答弁書は、「さまざまな要因が複合的に影響し発生する。個々の原因について特定することが困難な場合が多い」などと説明している。

「時事通信」2015年6月5日付 05、06年度は100人超=自衛隊の自殺者数-政府答弁書

 

これまでの「非戦闘地域」が建前の活動でも、若者の命は奪われているのです。若者の命を確実に奪う「戦争法案」を廃案にする必要があります。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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