対テロ戦争がテロ増殖させ犠牲者過去最多、罪なき子どもらの命奪うことになる安倍政権の戦争法案

  • 2015/8/28
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(※2015年2月5日に書いた記事です)

安倍首相が「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせる」と2月1日に声明を出しました。ニューヨーク・タイムズ紙は「安倍首相は日本の平和主義から逸脱し、復讐を誓う」「安倍首相は、戦後の平和主義を捨てて、世界でより積極的な役割を日本に担わせようとしている」、ワシントン・ポスト紙は「日本の国家主義者らは人質事件を軍事力強化の口実に使うかもしれない」米オンライン誌スレートは、「平和主義の外交方針を放棄しようとする安倍氏の取り組みの一環だ」と報道しています。

2月3日には、イスラム国による人質事件を受けて、「日本は変わった。日本人にはこれから先、指一本触れさせない」と安倍首相は述べています。いま行われている国会論戦の中で、安倍首相は自らの不用意な外交の失態については一切かえりみず、逆にショックドクトリンのような形で人質事件を利用して、集団的自衛権の行使とともに自衛隊による在外邦人救出を可能とする法整備や、果ては憲法9条の明文改悪の発議を来年の参院選後とする意向まで示し、「テロの脅かしに屈すれば、さらなるテロを招きかねない。テロと戦う国際社会で、日本としての責任を毅然(きぜん)と果たしていく」とも述べています。

こうした安倍首相の言説だけを見ていると、集団的自衛権を行使し自衛隊を世界中どこにでも派兵し、テロに対して武力行使さえすれば「日本人にはこれから先、指一本触れさせない」ことになり、テロもなくなっていくかのような感じですが、本当でしょうか?

▲上のグラフは、CNNのサイトに掲載されている「テロの犠牲者数の推移」に2013年の数字などを私が書き加えてものです。CNNは「昨年のテロ件数、犠牲者数と共に過去最多 米報告書」と題して次の報道をしています。

世界各地で昨年(2012年)発生したテロ事件は8500件以上で、死亡者は約1万5500人。件数、犠牲者とも過去最高で、2011年と比べそれぞれ69%、89%の増加。件数のこれまでの最高は2011年の5000件以上、犠牲者数は07年の1万2800人以上だった。

出典:CNN「昨年のテロ件数、犠牲者数と共に過去最多 米報告書」

 

2013年の数字は、アメリカのテロ報告書の中に「2013年の1年間で、テロによって17,800人が死亡」とありますので、それを上のグラフに書き加えました。(※米兵等の死者数はこちらのサイトからです。→アフガニスタン戦争における犠牲者数イラク戦争における米軍および有志連合軍の死傷者

▲上のグラフを見てわかるのは、「テロには屈しない」とか「テロ掃討」などと言ってアメリカが始めたテロへの報復戦争=アフガン戦争とイラク戦争によって「テロが掃討」されるどころか、逆にテロは増殖し犠牲者は増え続けているということです。「テロには屈しない」というテロへの武力行使は、さらにテロを増やしているのが現実なのです。安倍首相の「日本は変わった。日本人にはこれから先、指一本触れさせない」という言葉の現実は、「日本も変わってアメリカと一緒に対テロ戦争、武力行使をするならば、日本人には指一本触れさせないどころか国内外で日本人へのテロが頻発することになる」ということを上のグラフは示しているのではないでしょうか。

そして、▲上のグラフは、イラクボディーカウントのサイトに掲載されているイラク戦争によるイラク民間市民の犠牲者数です。少なく見積もったとしても13万4984人もの罪のない子どもらや女性などを含むイラクの一般市民がアメリカなどの武力行使によって命を奪われたのです。米兵など戦闘員を含むイラク戦争全体の犠牲者の8割が罪のないイラク市民と言われています。

一方、日本は当時の小泉政権によってアフガン戦争に協力し、2001年11月にインド洋へ海上自衛隊を派兵して、米軍など12カ国の艦船に洋上での給油を2010年1月まで行いました。2003年12月にはイラク戦争にかかわって自衛隊のイラク派兵を開始し、陸上自衛隊はイラクのサマワで給水などを2006年7月まで行い、航空自衛隊はイラクの首都バグダッドなどで米兵の空輸を2008年12月まで行っています。日本の自衛隊は、罪のない子どもなどを含む13万4984人のイラク市民の命を直接奪ったわけではありませんが、こうしたイラク戦争に日本の自衛隊が協力した事実は消えません。そして、その傷がイラク帰還の陸上自衛隊員の自殺率は一般国民の18倍にのぼっている深刻な実態がすでにあらわれています。また、安倍政権が今国会で法制化を狙っている集団的自衛権の行使が、もしもこのアフガン戦争やイラク戦争の段階で可能であったなら、日本の自衛隊員の手で罪のないアフガンやイラクの子どもらの命を奪うことにもなったでしょうし、自衛隊員も自殺だけでなく戦場で命を落とすことにもなっていたでしょう。

以上、見てきたように、「テロには屈しない」「その罪を償わせる」とする武力行使はテロを増殖し問題を一層深刻化させてきました。

安倍首相は、「テロの脅かしに屈すれば、さらなるテロを招きかねない。テロと戦う国際社会で、日本としての責任を毅然(きぜん)と果たしていく」と語っていますが、本当にテロを招かないようにしたいと思っているのなら次のように訂正すべきだと思います。

「集団的自衛権の行使などによるテロへの報復戦争や武力行使をアメリカと一緒に日本も行えば、さらに国際的にテロを拡散・増殖させ、罪のない子どもら一般市民の多くの命を奪うだけなく、自衛隊員も戦闘で命を落としPTSDや自殺も招きかねない。自国の「安全」のために若者たちを戦地に行かせる政治ではなくて、テロ、紛争を予防する外交・政治を本気で行うことが、憲法9条を持つ日本の責任を果たすことになる」

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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