パリ同時テロ129人の1千倍以上(イラクだけで14万人)の罪なき子どもら殺戮してきた欧米諸国、シリアとイラクを空爆するフランス、大国の無差別大量殺人は許され見捨てられる命、暴力の応酬と不平等がテロをうむ

(※上のグラフは、イラクボディーカウントのサイトに掲載されているイラク戦争等によるイラク民間市民の犠牲者数です。少なく見積もったとしても14万6062人もの罪のない子どもや女性などを含むイラクの一般市民がアメリカなどの武力行使によって命を奪われたのです。米兵など戦闘員を含むイラク戦争全体の犠牲者の8割が罪のないイラク市民と言われています)

自分でレポートした「テロ生み出す安倍政権の戦争法案を廃案に – 後藤健二さんらのシリア人質事件を受けて私たちに何ができるのか?」でのジャーナリストの指摘が、今とても大事に思えたのでパリ同時多発テロを受けて部分的に補足し紹介しておきます。

「テロには屈しない」などとしてアメリカによるイラク戦争や、フランスも行っているイラクやシリアへの空爆などの犠牲になっているのは圧倒的に罪のない子どもら一般市民です。この事実に対して、日本に住んでいる多くの人々が無関心であったり、対テロ戦争やテロに対する空爆などの報復はテロをなくすためにはしょうがないのではないかという現状追認に流されてしまっていることがそもそもの大きな問題です。

テロの見方についても、突如うまれた残虐な極悪非道のモンスターとだけとらえ、アメリカによるイラク戦争をはじめとする武力行使や残虐な行為こそが翻って残虐な「イスラム国」を育んで来たというテロを生み出す構造上の問題として把握できないことに根本的な問題があります。そして、報復の武力行使でそのテロリストというモンスターを殺しさえすればテロが根絶されるかのような単純な思考で空爆などへ流されてしまっていることが問題で、イスラム国の地域にも700万から800万人の一般市民が暮らしていることを見落とし、報復の空爆によって、罪のない多くの子どもら一般市民の命が奪われていることに思いを寄せることができないでいることが大きな問題です。

イラク戦争はじめ、中東諸国で奪われている罪のない一般市民数十万人の命は国際的にも見捨てられています。イラク戦争はじめフランスも行っている空爆は国際法から見ても明らかに違法であり犯罪であるにもかかわらずアメリカはじめ先進主要大国や関連国の罪は一切問われないという不平等な扱いが、中東諸国の一般市民の見捨てられた命として不平等感を日々増殖させ、それがテロをうむという悪循環になっています。日本も協力したイラク戦争をはじめ、アメリカなどによる中東諸国の罪なき一般市民の殺戮は許されて、それを背景とする中東諸国の側によるアメリカ人や日本人の殺戮は「テロ」と呼ばれ「極悪非道」「絶対悪」として「根絶」しなければいけないモンスターとされるこの不平等がテロをうむ大きなファクターになっているのです。

▼参照
志葉玲氏「戦争犯罪でも支援するのか!?―日本を「イスラム国」より酷い米軍の共犯者とする安倍政権の安保法制」
4歳の女の子、7歳の男の子、ロイター記者も「無差別殺人」が米兵のイラク戦争の日常=「戦争法案」がもたらす日本の若者の近未来

イスラム国が生まれる背景にあるイラクの一般市民十数万人の命を奪ったイラク戦争に協力した日本はこのイラク戦争を反省していません。もっと言えば、70年前の日本がイスラム国同様の残虐な侵略戦争を遂行したことについても反省するどころか肯定するかのような言動を繰り返している安倍政権を許してしまっている問題があります。これは日本の一般市民の中東諸国への無関心と現状追認にも連動して、問題を歴史的事実としてとらえ社会構造上の問題として把握できずにいるわけで、戦争する国づくりに前のめりになる安倍政権の暴走を許すことにつながっているのです。

戦場を取材するジャーナリストの結論は、「暴力は暴力で止められない」「戦争は戦争で止められない」「テロは対テロ戦争や空爆では止めれない」ということです。そしてこのことを、後藤健二さんはじめ戦場ジャーナリストはできるだけ多くの人に伝えたいがために自分の命をもかけて戦場で取材活動をしているのです。後藤健二さんがとりわけ戦火の中の子どもらに心を寄せていたのは偶然ではなく、戦争で最も犠牲になるのが罪のない子どもたちであることが戦争のリアルな実態だからなのです。

今回の事態を受けて私たち日本人にできることは、どこの国の誰であっても人を殺すことは犯罪であり許してはいけないという点を貫くことです。中東諸国の政治や社会を私たちは直接変えることはできませんが、中東諸国への本当の人道支援とともに、日本という国が中東諸国はじめ世界のどの国に対しても空爆する側に回らない、報復する側に回らない、戦争する側に回らない日本政府を私たちの手でつくることです。無関心で安倍政権の暴走を許すことになれば、日本が世界中で人を殺していくことになります。一方で殺しておいて一方で人道支援ということにはなりません。安倍政権の「戦争法」によって日本が世界中で人を殺していくことになれば無関心は罪になります。(※以上は緊急集会「後藤健二さんらのシリア人質事件を受けて今考える~私たちは中東の平和にどう貢献できるのか~」についての私の受け止めです。以下は緊急集会での発言要旨。文責=井上伸)

▼安田純平氏フリージャーナリスト
シリアを世界が放置し20万人が殺されていった
「イスラム国」が広がった背景には、
私も含め世界中が殺されていった人たちを見捨ててきたことがある

この間のマスコミ報道を見ていると、後藤健二さんが戦火の中の子どもたちや女性たちに寄り添っていたという映像を流すのだけど、後藤さんが最も訴えたかったアサド政権の空爆によって子どもらが殺されているという部分を全部切ってしまっていた。ただの一般論にしてしまっている。これは後藤さんに対する大変な侮辱だと私は思った。

アサド政権も酷いが反政府勢力にも酷いのがいる。それぞれに対し武器を提供する国々の代理戦争という側面もある。泥沼状態でどうやって平和を取り戻せばいいのかそう簡単ではないのでみんなフリーズして思考停止になり、空爆で子どもらを殺すアサド政権のような存在もしょうがないよねとなる。しかし、現場を取材すれば目の前で子どもらが殺され続けている。シリアを世界が放置し20万人が殺されていった。「イスラム国」が広がっていった背景には、私も含めて世界中があれほど殺されていった人たちを見捨ててきたことがあると思っている。多くの見捨てられた人たちがいる中で残虐なことをする「イスラム国」がつけいるすきができたといったことなどが背景にあると思う。泥沼状態のなかで生活ができないから「イスラム国」でも行くしかないという人たちも見てきた。積極的にあんな酷いことをやろうと思っているわけじゃないけど、どうしようもないじゃないかと。「イスラム国」が残虐だからつぶせばいいという話ではない。日本は、そもそも戦争をスタートさせないためにいまある憲法で止めることが何より大事だ。

▼志葉玲氏ジャーナリスト、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」事務局長
ISISは米軍の刑務所が育んだ
「不平等がテロをうむ」
どこかの国は人を殺してもいいのに、
どこかの国が人を殺すとテロと言われる。
この不平等がテロをうむ大きなファクターになっている。
どの国だろうと国際法違反の犯罪を許さないということが必要だ。

ISISのそもそもの起源はイラク戦争だ。リーダーのバグダディはイラク南部バスラにある米軍の刑務所で逮捕拘束されている間に暴行虐待を受け過激思想を育んでいった。私は同じ刑務所にいた人に取材した。その人も何も悪いことはしていないのに米軍に逮捕拘束されその刑務所に入れられた。そこで酷い扱いを受けた。そうすると刑務所の中では米軍への怒りが充満していく。その中で米軍に対する武装勢力からリクルートされるということがあった。このことはイギリスのガーディアン紙も米軍の刑務所なしにはイスラム国はありえなかったと報道している。

よく「貧困がテロをうむ」という見方がある。もちろん貧困問題を解決する必要もあるが、正確に言うと「不平等がテロをうむ」ということだ。どこかの国は人を殺してもいいのに、どこかの国が人を殺すとテロと言われる。この不平等がテロをうむ大きなファクターになっている。どの国だろうと国際法違反の犯罪を許さないということが必要だ。ガザの命より日本人の命が大事という風潮ではダメだ。戦争だからといって何をやってもいいというわけではない。暴力をいつまで見逃すのかという問題を私たちは考える必要がある。

▼豊田直巳氏ジャーナリスト、日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)会員
「イスラム国」が残虐だと言うが70年前の日本兵は同様のことをいくらでもやっていた。
私たちは何者なのだろうかと振り返る必要がある

後藤さんと湯川さんだけではなく毎日何十人も殺されているということを私たちがしっかり認識することが大事だ。戦場を取材すると暴力では戦争は止まらないということを実感する。非暴力でしか解決できないのだから知恵を出さなければいけない。この会場に来ない人に知ってもらわなければテロや戦争は止まらない。「イスラム国」の地域には700万人から800万人の庶民が住んでいる。私たちにはその地域を直接変えることはできないが、しかしそこに自衛隊を送り込むと言っている安倍政権を私たちは変えることができる。

私たちは何者なのだろうかと振り返る必要がある。「イスラム国」が残虐だと言うが、70年前の日本兵は同様のことをいくらでもやっていた上にそれを安倍政権は反省しないとも言っているような日本の状況を放置しておいて戦争は止められない。「イスラム国」を特殊だと言っているだけではご都合主義だ。人道支援は難民支援と難民が出ないようにすることが基本であって、安倍政権がやろうとしていることは逆だ。

テロは不平等の蔓延がつくっていく。まず知ることがスタートで知らなければ考えようがない。今の安倍政権に対してどこかで歯止めをかけなければいけない。本当のことを知るためにはプロパガンダとは違うジャーナリズムが必要だ。そのために戦場ジャーナリストは取材に行く責任がある。事実を知らせること、事実を知ることが大事で、つらいことは忘れたい、と思うだろうが、ときどき思い出す必要がある。

▼伊藤和子氏弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
アメリカやフランスの残虐さを棚に上げて「イスラム国」を邪悪だと言う。
どれだけイラク戦争や空爆で市民が殺されたか。
イラク政府による人権侵害について誰も何も言わない。
国際社会を構成している大国は見て見ぬふりだ。
人権侵害が追及されない。
イスラエルの責任は追及されない。
「イスラム国」だけが邪悪なのか。

アメリカの残虐さを棚に上げて「イスラム国」を邪悪だと言う。どれだけイラク戦争で市民が殺されたか。イラク政府による人権侵害について誰も何も言わない。国際社会を構成している大国は見て見ぬふりだ。人権侵害が追及されない。イスラエルの責任は追及されない。「イスラム国」だけが邪悪なのか。構造的な暴力で弱者を殺してきた。弱者への人権侵害が追及されない。そして、報復にとらわれて日本も戦争への道を行くことに危惧している。

どれだけ虐殺されても誰も責任を取らない。そして憎悪が広がる。ここで「イスラム国」をつぶして本当に平和が訪れるのか。無関心ではすまされない。日本は空爆する側に向かっている。一方で殺しておいて一方で人道支援ということにはならない。日本が世界中で人を殺していくことになれば無関心は罪になる。

――以上が「テロ生み出す安倍政権の戦争法案を廃案に – 後藤健二さんらのシリア人質事件を受けて私たちに何ができるのか?」からです。最後に、内藤正典同志社大学大学院教授のツイートを紹介しておきます。

 

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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