橋下徹氏の「米兵は風俗を活用せよ」発言は「風俗で活用する女性は性暴力を受け命奪われてもしょうがない」と言っているのと同じ――そもそも風俗で米兵の性暴力はなくせない
- 2016/5/24
- 女性差別
- 橋下徹氏の「米兵は風俗を活用せよ」発言は「風俗で活用する女性は性暴力を受け命奪われてもしょうがない」と言っているのと同じ――そもそも風俗で米兵の性暴力はなくせない はコメントを受け付けていません
橋下徹氏のツイートです。(↑画像キャプチャも貼っておきます)
米兵等の猛者に対して、バーベキューやビーチバレーでストレス発散などできるのか。建前ばかりの綺麗ごと。そこで風俗の活用でも検討したらどうだ、と言ってやった。まあこれは言い過ぎたとして発言撤回したけど、やっぱり撤回しない方lがよかったかも。きれいごとばかり言わず本気で解決策を考えろ!
— 橋下徹 (@t_ishin) May 21, 2016
これに対する、安田幸弘さんのフェイスブックでの指摘です。
橋下の言説は完全に妄想の領域なので、まじめに反論するのもバカバカしいぐらいなんだけど、世の中にはこういう言説に惑わされる人も少なくない。
なぜ米軍が「風俗の活用」なるものを頑強に拒否するのかといえば、韓国やフィリピンなどで基地周辺の売春婦に対する殺人や暴行などが多発して、そのたびに米軍が窮地に追い込まれたという事実があるからだ。
売春婦なら殺されてもいい、暴行されてもいいというわけにはいかない。
橋下が言ってることは、「殺すんだったら一般の市民ではなく、売春婦を殺せ」というようなものだ。それも本気で。
断言する。橋下が言うように米軍が「風俗の活用」などをすれば、風俗嬢が殺される。
風俗嬢のような弱い立場にある人たちが、世の中の矛盾の犠牲になるという構図は、沖縄という弱い立場にある「植民地」に日本や米国が抱える矛盾がすべて押し付けられる構図に似ているとも思う。
そして、風俗なんだからしょうがない、沖縄なんだからしょうがないと考える人がいるのは残念なことだ。
あわせて、以前紹介した「女性を風俗で「活用」、「産む機械」として「活用」する安倍政権 – 男性優位社会によって男性の性暴力が許される社会、橋下発言=「レイプ神話」を受容する日本社会の空気を変えたい」から再度いくつかの指摘をアップしておきます。
女性を風俗で「活用」し「産む機械」として「活用」し
女性を使い捨てる政治家・政党に要注意
上野千鶴子さん(東京大学名誉教授)
橋下徹氏のような「女性を活用したい」とする政治家や政党は、女性の権利を守る気はありません。女性を風俗で「活用」し、女性を企業で「活用」し、女を「産む機械」として「活用」する気はまんまんです。それが今の自民党や日本維新の会です。ただし、女性を「活用」したあとは、女性を使い捨てて、女性の権利を守る気は一切ないのです。「女性の活用」という言葉を使う政治家や政党には要注意です。
男性優位社会によって男性の性暴力が許される社会
「レイプ神話」を受容する日本社会の空気を変えたい
北原みのりさん(作家)
橋下徹氏は石原慎太郎氏には謝りましたが女性には謝っていません。女性蔑視だという声に対して、なぜこんなにも橋下氏は謝らないのか考えてみました。すると、そういう発言を受容する空気がこの日本社会の中にまだあるということを感じるようになりました。たとえば、「男とはセクハラする生き物である」「電車に乗れば女性は痴漢にあうリスクを考えるべきだ」「男性とはそういう生き物である」という声が少なからず男性から出ています。そしてそういう声を受容する声も出ています。「僕は歴史認識のことは分からないけれども、橋下さんの発言の一部は容認できる」という声もあります。私はこういう人たちがとても怖い。「風俗はなくならない」「レイプあるだろ」「痴漢あるだろ」…、たしかに男性が圧倒的に加害者になっている事実はあります。しかし、それを「男とはそういうものだ」と言って「レイプ神話」にあぐらをかくのか、それとも男性優位社会だからこそ男性が加害者となる性暴力が起こりがちになる、男性優位社会によって男性の性暴力が許される社会になってしまっている、そういうことが犯罪として認識されにくい男性優位社会になっていると考えると、いま見えている現実もまったく違うし、私たちが描く未来も違ってくると思うのです。男性の本能としての性欲を否定するわけではありません。男性の性欲の発露の仕方が文化であって習慣であるということを、橋下氏を受容する人たちに気づいて欲しいと思っています。「女性がミニスカートをはいていたから思わず襲っちゃいました」とか、性欲をおさえきれなくて男性はレイプするのではありません。事実としてレイプは時間をかけ計画を練って実行しているのです。女性の挑発的な服装などに因果関係がないということはよく知られている事実です。「男とはそういうもの」「男の本能なのだ」という「レイプ神話」があり、一定数の男は女をレイプするものであって女を守るためにも国を守るためにも女が必要として、女を守るべき女と犯していい女に分けて利用してきたのが日本社会です。風俗と性犯罪を表裏一体ととらえて、男性の性欲をコントロールしてケアする役割が必要などとする社会の空気があります。不思議なのは、こういうふうに男性の性欲をコントロールしケアされることをどうして男性は余計なお世話だと声をあげないのかということです。橋下氏に男の性をコントロールしてあげると言われて声をあげないというのを見ると、男性の性はホントくだらないな、貧しいなと思います。よくよく考えるとそんな男と暮らしている私たちが可哀想なんですよ。男性も怒って欲しい。そして怒りを持続させて、橋下氏をやめさせて、こうした空気を変えたい。社会を変えていきたいと思っています。
共有すべき「性暴力を許さない文化」
周藤由美子(性暴力禁止法をつくろうネットワーク)
橋下徹氏は、人を利用したり搾取したりすることが当たり前と思っている人たちの有象無象の欲望を栄養分のようにして膨れあがる「カオナシ」のような存在じゃないかという分析をされている方もいます。そうであるならば、橋下氏の背後にある橋下氏に共感を示す人たちに対して届く言葉を私たちがあみだしていかなければいけないと思っています。私が大阪の主婦の方に意見をきいたところ、「橋下さんが言うように戦争中だったらそうでしょ」とか、「もし自分の娘がレイプされるぐらいだったらプロの女性にまかせてしまいたい」と言う方が現実にいました。私たちは残念ながらそういう日本社会にいるということだと思うのです。なぜそうなのか? 日本社会にはどんなことがあっても性暴力は許されないんだとちゃんと宣言した法律がありません。ですから私たちは性暴力禁止法が必要だと思っています。「慰安婦」の問題、沖縄の米兵の性暴力の問題を本当に解決するためには、日本社会全体が、どんなことがあっても誰に対しても性暴力をしてはいけない、私たちの文化は性暴力を許さないんだ、ということを共有すること、そこから始まると思っています。
物理的社会的に優位に立つ男性が
性的支配をするのが性暴力
加藤治子さん(SACHICO性暴力救援センター・大阪代表、産婦人科医)
大阪で24時間のホットラインを設置しています。この3年間で1万160件の相談があり、そのなかでレイプ・強制わいせつの被害者が340人です。このレイプ・強制わいせつの加害者の約70%は被害者の知人です。女性との関係性で物理的社会的に優位に立つ男性が性的支配をするというのが性暴力なのです。こうした男性優位を背景とした性暴力と、お金によって女性を意のままにするというのはイコールです。橋下氏は貧困のために風俗で働く女性はいないかのように言っていますが、これも間違いです。独身女性の32%が年間の可処分所得112万円以下という貧困状態にあります。これは20歳から64歳までの女性のデータですから、10代の働く女性はもっとひどい貧困状態にいて、まともな収入が得られないから風俗で働かなければいけないということが多いのです。私たちの相談者の中には貧困のため妊娠していても出産の直前まで風俗で働かざるをえないという女性などがいるのです。こういった現実を橋下氏は知らない。また、橋下氏は日本の風俗は規律があるようなことも言っていますが、レイプ・強制わいせつの被害者340人のうち20人が風俗で働いていてそこで被害を受けているのです。しかも風俗で働いていて被害にあったと言える女性はごく一部です。もともとなかなか声をあげられる状況にないわけです。風俗の決まり以上のことをされたといってもたいていの女性は我慢を強いられているのです。
橋下発言は男性問題
辛淑玉さん(人材育成コンサルタント)
(※辛淑玉さんの発言はレイバーネットのインタビューからです)
橋下発言は女性の問題だけでなく男性の問題でもあります。橋下氏は男性が自分の性をコントロールできない、つまりケダモノなんだと言ったわけですね。それに対して石原慎太郎氏もあっちでもこっちでもやっているのだからなにが文句があるのかという態度なわけです。これに対して男が怒らなければいけません。男は人間なんだと怒らなければいけない。女性手帳じゃなくて男性手帳をつくれと怒らなければいけないと思います。
それから、「風俗で性暴力なくせない、性暴力被害者の7割が相談できず災害の10倍以上高い発症率でPTSDに長期間苦しむ、慰安婦問題は歴史認識だけでなく女性蔑視・性的支配・性暴力容認が哀れなほど根付く日本社会の現実問題」からも再度紹介しておきます。
宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店、49~50ページ)によると、アメリカの大規模疫学調査で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症率は、自然災害4.5%、事故7.6%、身体的暴力11.5%などと比べて、レイプでは55.5%と高い発症率となり、さらに17年後でもレイプ被害者の16.5%がPTSDにあてはまり、長期間症状に苦しむ人が多いことや、PTSD症状のほか、うつ病や不安症状、自殺や自殺企図の率が高いことなども明らかになっているとのことです。( ※調査資料 Kessler RC,Sonnega A,Bromet E et al.:Post-traumatic stress disorder in the national comorbidity survey.Arch.Gen.Psychiat.52;1048-1060,1995. )
基本的人権が保障されていることになっている現在の社会においてさえ、性暴力にさらされた女性の7割もがどこにも相談できず、多くがPTSDなどを発症し苦しんでいるのです。
「セックス・スレイブ(性奴隷)」とされ、決して「慰安」などでなく日常的に性暴力を受け続けた「慰安婦」の女性たちが、どれだけ体と心に深い傷を刻み付けられたかに思いを寄せることがまったくできない橋下徹氏や西村真悟氏に政治を語る資格などないことが分かるでしょう。
さらに、以下は宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)の「第2章 国家と戦時性暴力と男性性――「慰安婦制度」を手がかりに(田中利幸氏執筆)」からの引用です。
戦争期間中の兵士たちの性行動は、なにゆえに、常にと言っていいほど女性に対する激しい暴力行為という形をとるのであろうか。戦闘で兵士たちが生き残れるかどうかは、敵に対する自分たちの攻撃力と防御力が敵のそれらに勝っているかどうかにかかっている。したがって、自分の命を守るために、敵よりも暴力的にならなければならない。しかし、それは敵にとっても同じことである。そのため、暴力がさらに暴力を強めるという悪循環が起き、その結果、相互に急速に残虐性を強化させていく。一旦戦闘が開始されると、兵士たちはこうした心理的悪循環にまたたく間に落ち込んでいき、自分自身を残虐化することによって人間性を失い、そのため敵兵を非人間化する。自己自身の残虐化と敵兵の非人間化は第三者、例えば非戦闘員である民間人、とくに敵国市民の非人間化へと拡張されていく。このような精神的に極めて荒廃した状況の中で、兵士たちは死の恐怖からの逃避と自己生命の再確認のために性交渉を強く求める。兵士は女性を非人間化し暴力で犯してでもこうした欲望を満たそうとする。戦闘で自己を残虐化し他者を非人間化することに慣れた兵士にとって、女性、とりわけ敵国市民の女性を非人間化し強姦することは心理的にきわめて容易なことである。性交渉の相手と密接な肉体接触を通して喜びを分かち合い、人間性を相互に再確認しあうべき手段であるセックスが、ここでは暴力的な非人間化のための手段へと完全に逆転し堕落してしまっている。
(宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)の「第2章 国家と戦時性暴力と男性性――「慰安婦制度」を手がかりに(田中利幸氏執筆)」103~104ページより)
戦時であろうと平時であろうと、強姦の主要な動機の一つに「他者の征服/支配」が挙げられるが、心理学者のニコラス・グロスはこれを「支配欲強姦 power rape 」と呼んでいる。この支配欲強姦の動機は、ある強姦者の下記のような告白で明らかになる。
「俺が犯した強姦では性的な側面は重要ではなかった。誰かを全く助けのない無力な状況に追い込むことが目的だった。相手を縛り上げ、サルぐつわをはめ、締め上げるというように、相手が嫌がることを俺がやる。それはまさに俺自身が、自分が嫌がることを社会でやらされてきたと感じたからだ。俺は、本当に、どうしようもなく無力だと感じたからだ」
戦闘に参加する兵士たちが特に強く感じるのは、数分先の自分の命がどうなるかわからない、自分で自分の命と運命をコントロールできないという非常に不安な「自己無力感」である。多くの兵士がそのため「支配力」を渇望し、そうした無力感を克服しようと攻撃的な行動に依拠するようになる。それゆえ性行動が彼らの武器となり、その結果として女性の性が破壊される。しかし、そうした形での女性の支配と性的搾取は、精神的に荒廃し衰弱しきった兵士には、ごく瞬間的な解放しかもたらさない。したがって、兵士は自己欺瞞的で一時的な「支配欲強姦」を繰り返し犯し続けなければならないという状況に陥る。日本軍兵士が、激しい戦闘から帰還した時、「慰安婦」や監禁強姦の対象となった女性たちにとりわけ暴力的であったという多くの証言は、まさにこうした兵士の精神状態を如実に表している。兵士たちは、自分が自分の運命の支配者であるということを感じるために、自由を束縛され奴隷化された女性をベッドの上で征服、支配したのであった。
(宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)の「第2章 国家と戦時性暴力と男性性――「慰安婦制度」105~106ページより)
――以上が、宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)からの引用です。
それから、EXドロイドのニュース記事「橋下徹『米軍はフーゾクに行け』発言 現役デリヘル嬢が『風俗で性犯罪は減らない』と大反発」には次のような指摘があります。
「性風俗がレイプを阻止している。と当然のように言うのも、いい加減にしてほしい。あたかも”一般の女”を守るために性風俗があるんだ、って正当化しているみたいで聞き苦しい」とツイートしたのは、セクシャリティーやジェンダーに関する著作が多い北原みのり氏(42)。治安を守るためには、男の性欲を解消する役割を一部の女性が担うのが当然といった橋下氏の態度を批判している。
また、デリヘルに勤務する現役風俗嬢の女性は、「わたしたちの仕事は性犯罪の代用品じゃありません」と発言。「わたしはデリヘルやそれに類する性風俗では性犯罪の代わりを果たせないと考えております」「『活用』されても暴力は減らないと思います。性犯罪をしたい人は、店で提供されるような性的サービスを受けたいわけではないからです」などと発言した。
性犯罪には暴力や支配欲が密接に関わっている。彼女はそれと風俗を結びつけられては困ると主張している。さらに、犯罪抑止効果という名目を押しつけた挙げ句に「だから風俗嬢は立派」などと言われるのは「日々まっとうな人たちの犠牲となってくれてありがとう」と言われるのと同じだと、不快感を表明している。
※追記 古堅宗嘉さんのフェイスブックから以下転載させていただきます。
アレン・ネルソンの言葉
元海兵隊員で金武町のキャンプハンセンで訓練を受けベトナム戦争に出兵し多くの殺戮の現場に身を置き帰還後PTSDと闘いながら反戦活動を続け2009年に白血病で逝去した。
ネルソンさんの著書「戦場で心が壊れて」の中から、海兵隊に関する箇所を紹介する。
・まず入隊すると俗世間から切り離すことから始まる。着ているものは全部ぬがされ、下着から制服まで支給品で統一される。全員にあだ名がつけられ訓練中はあだ名で呼ばれる。まず、訓練中は沈黙が強制される。銃や手りゅう弾の使い方ナイフや素手でいかに相手を倒すかすべて人を殺す訓練でした。
・教官は昼でも夜でも、ことあるごとに新兵を整列させ次のように声をはりあげた。「お前たちのしたいことは何だ!?」私たちは「KILL(殺す)」と答えます。教官が「声が小さい!」というので、さらに「KILL」「KILL」と唱和します。「スペルを言え!」「K,I,L,L」「K,I,L,L」ーまるでけだものの叫びのようだった。
・こうして、私たちは洗脳され、殺すこと、そのための暴力を、何とも思わない「機械」になっていきました。
・そんな私たちが、厳しい訓練を終えて、沖縄の町に酒や女を求めて遊びにでるとき、自分の暴力性だけを基地の中において出かけるというようなことはしません。タクシーに乗ったり女性と遊んだりしたとき、料金を請求されても払わず相手を殴りつけることもしばしばでした。街でどんな悪行を働いても基地のゲートをくぐってしまえば、私たちは逮捕されることはなかったのです。
・普通の若者を洗脳し、暴力の機械に改造するのが軍隊なのです。