風俗で性暴力なくせない、性暴力被害者の7割が相談できず災害の10倍以上高い発症率でPTSDに長期間苦しむ、慰安婦問題は歴史認識だけでなく女性蔑視・性的支配・性暴力容認が哀れなほど根付く日本社会の現実問題

(※2013年5月19日に書いた記事です)

内閣府男女共同参画局の「男女間における暴力に関する調査報告書」(2012年4月)によると、「女性の8%は異性から無理やりに性交された経験がある」(上のグラフ)とのことです。


そして、上のグラフにあるように、「異性から無理やりに性交された被害による生活上の変化」の調査では、「被害を受けた女性の約7割に生活上の変化があった」ということで、上位から「心身に不調をきたした22.4%」、「異性と会うのが怖くなった20.1%」、「自分が価値のない存在になったと感じた15.7%」、「夜、眠れなくなった11.9%」、「外出するのが怖くなった10.4%」、「仕事をやめた・変えた8.2%」、「転居した6.7%」と続いています。

また、上のグラフにあるように、「異性から無理やりに性交された被害の相談の有無」では、「被害を受けた女性の約7割はどこにも相談していない」とのことです。驚くべきことに、どこにも相談していない女性は近年増え続けています。そして下のグラフにあるように、「警察に連絡・相談した」のは、わずか3.7%です。

それから、宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店、49~50ページ)によると、アメリカの大規模疫学調査で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症率は、自然災害4.5%、事故7.6%、身体的暴力11.5%などと比べて、レイプでは55.5%と高い発症率となり、さらに17年後でもレイプ被害者の16.5%がPTSDにあてはまり、長期間症状に苦しむ人が多いことや、PTSD症状のほか、うつ病や不安症状、自殺や自殺企図の率が高いことなども明らかになっているとのことです。( ※調査資料 Kessler RC,Sonnega A,Bromet E et al.:Post-traumatic stress disorder in the national comorbidity survey.Arch.Gen.Psychiat.52;1048-1060,1995. )

基本的人権が保障されていることになっている現在の社会においてさえ、性暴力にさらされた女性の7割もがどこにも相談できず、多くがPTSDなどを発症し苦しんでいるのです。

「セックス・スレイブ(性奴隷)」とされ、決して「慰安」などでなく日常的に性暴力を受け続けた「慰安婦」の女性たちが、どれだけ体と心に深い傷を刻み付けられたかに思いを寄せることがまったくできない橋下徹氏や西村真悟氏に政治を語る資格などないことが分かるでしょう。

さらに、以下は宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)の「第2章 国家と戦時性暴力と男性性――「慰安婦制度」を手がかりに(田中利幸氏執筆)」からの引用です。

 戦争期間中の兵士たちの性行動は、なにゆえに、常にと言っていいほど女性に対する激しい暴力行為という形をとるのであろうか。戦闘で兵士たちが生き残れるかどうかは、敵に対する自分たちの攻撃力と防御力が敵のそれらに勝っているかどうかにかかっている。したがって、自分の命を守るために、敵よりも暴力的にならなければならない。しかし、それは敵にとっても同じことである。そのため、暴力がさらに暴力を強めるという悪循環が起き、その結果、相互に急速に残虐性を強化させていく。一旦戦闘が開始されると、兵士たちはこうした心理的悪循環にまたたく間に落ち込んでいき、自分自身を残虐化することによって人間性を失い、そのため敵兵を非人間化する。自己自身の残虐化と敵兵の非人間化は第三者、例えば非戦闘員である民間人、とくに敵国市民の非人間化へと拡張されていく。このような精神的に極めて荒廃した状況の中で、兵士たちは死の恐怖からの逃避と自己生命の再確認のために性交渉を強く求める。兵士は女性を非人間化し暴力で犯してでもこうした欲望を満たそうとする。戦闘で自己を残虐化し他者を非人間化することに慣れた兵士にとって、女性、とりわけ敵国市民の女性を非人間化し強姦することは心理的にきわめて容易なことである。性交渉の相手と密接な肉体接触を通して喜びを分かち合い、人間性を相互に再確認しあうべき手段であるセックスが、ここでは暴力的な非人間化のための手段へと完全に逆転し堕落してしまっている。

(宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)の「第2章 国家と戦時性暴力と男性性――「慰安婦制度」を手がかりに(田中利幸氏執筆)」103~104ページより)

 

 戦時であろうと平時であろうと、強姦の主要な動機の一つに「他者の征服/支配」が挙げられるが、心理学者のニコラス・グロスはこれを「支配欲強姦 power rape 」と呼んでいる。この支配欲強姦の動機は、ある強姦者の下記のような告白で明らかになる。

「俺が犯した強姦では性的な側面は重要ではなかった。誰かを全く助けのない無力な状況に追い込むことが目的だった。相手を縛り上げ、サルぐつわをはめ、締め上げるというように、相手が嫌がることを俺がやる。それはまさに俺自身が、自分が嫌がることを社会でやらされてきたと感じたからだ。俺は、本当に、どうしようもなく無力だと感じたからだ」

戦闘に参加する兵士たちが特に強く感じるのは、数分先の自分の命がどうなるかわからない、自分で自分の命と運命をコントロールできないという非常に不安な「自己無力感」である。多くの兵士がそのため「支配力」を渇望し、そうした無力感を克服しようと攻撃的な行動に依拠するようになる。それゆえ性行動が彼らの武器となり、その結果として女性の性が破壊される。しかし、そうした形での女性の支配と性的搾取は、精神的に荒廃し衰弱しきった兵士には、ごく瞬間的な解放しかもたらさない。したがって、兵士は自己欺瞞的で一時的な「支配欲強姦」を繰り返し犯し続けなければならないという状況に陥る。日本軍兵士が、激しい戦闘から帰還した時、「慰安婦」や監禁強姦の対象となった女性たちにとりわけ暴力的であったという多くの証言は、まさにこうした兵士の精神状態を如実に表している。兵士たちは、自分が自分の運命の支配者であるということを感じるために、自由を束縛され奴隷化された女性をベッドの上で征服、支配したのであった。

(宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)の「第2章 国家と戦時性暴力と男性性――「慰安婦制度」105~106ページより)

 

――以上が、宮地尚子編著『性的支配と歴史』(大月書店)からの引用です。

それから、EXドロイドのニュース記事「橋下徹『米軍はフーゾクに行け』発言 現役デリヘル嬢が『風俗で性犯罪は減らない』と大反発」には次のような指摘があります。

 「性風俗がレイプを阻止している。と当然のように言うのも、いい加減にしてほしい。あたかも”一般の女”を守るために性風俗があるんだ、って正当化しているみたいで聞き苦しい」とツイートしたのは、セクシャリティーやジェンダーに関する著作が多い北原みのり氏(42)。治安を守るためには、男の性欲を解消する役割を一部の女性が担うのが当然といった橋下氏の態度を批判している。

また、デリヘルに勤務する現役風俗嬢の女性は、「わたしたちの仕事は性犯罪の代用品じゃありません」と発言。「わたしはデリヘルやそれに類する性風俗では性犯罪の代わりを果たせないと考えております」「『活用』されても暴力は減らないと思います。性犯罪をしたい人は、店で提供されるような性的サービスを受けたいわけではないからです」などと発言した。

性犯罪には暴力や支配欲が密接に関わっている。彼女はそれと風俗を結びつけられては困ると主張している。さらに、犯罪抑止効果という名目を押しつけた挙げ句に「だから風俗嬢は立派」などと言われるのは「日々まっとうな人たちの犠牲となってくれてありがとう」と言われるのと同じだと、不快感を表明している。

EXドロイドのニュース記事「橋下徹『米軍はフーゾクに行け』発言 現役デリヘル嬢が『風俗で性犯罪は減らない』と大反発」

 

そして最後に、北原みのりさんの一連のツイートを紹介します。

https://twitter.com/minorikitahara/status/334513973003177984

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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