財政赤字の原因は社会保障費でなく法人税減税と消費税増税、フランスやドイツの35年前の水準にやっと追いついた日本の社会保障費はもっと増額する必要がある

  • 2015/12/11
  • 財政赤字の原因は社会保障費でなく法人税減税と消費税増税、フランスやドイツの35年前の水準にやっと追いついた日本の社会保障費はもっと増額する必要がある はコメントを受け付けていません。

日本経済新聞の記事です。

日本経済再生に宿題残す税制大綱
「日本経済新聞」2015年12月11日付

自民、公明両党による2016年度税制改正大綱の内容がまとまった。法人税の減税などで経済成長を後押ししようとした点は評価できるが、来年の参院選を意識して素通りした課題も多い。抜本改正にはほど遠い中身だ。

柱のひとつは法人減税を中心とする経済活性化策だ。

成長をけん引し、雇用や賃金、配当を通じて家計にも恩恵を与えるのは企業だ。与党が一段の法人減税を決めたのは正しい。(中略)

もうひとつの柱は、消費税への軽減税率の導入だ。消費税率は17年4月に8%から10%に上がるものの、生鮮食品や加工食品などは8%に据え置かれる。

対象品目を生鮮食品から広げたのは、わかりやすさを優先し、増税の負担感を減らすという狙いがあるだろう。半面、膨らむ社会保障費を賄うべき歳入が見込みより減ることになる。この問題にどう対応するかが今後問われよう。(中略)

日本経済の最大の課題は経済成長と財政健全化の両立だ。法人減税と消費増税はそのための手段だが、それだけでは不十分だ。

社会保障の給付と負担の見直しと一体で、所得税を含む税制の抜本改革に取り組むという宿題を忘れてはならない。

 

要するに、法人税減税の方向は正しいけれど、「膨らむ社会保障費」の抜本的な対策は、消費税増税と社会保障削減だと、日経は言っているわけです。

日経だけ読んでいると、法人税負担は世界一高くて、社会保障費は世界一近くに膨らみ続けていて、社会保障費が財政赤字を拡大させているかのようですが本当でしょうか?

下の表は、一昨日紹介した財務省のデータです。日本の法人税は課税ベースでイギリスの半分しかありません。日本の法人税が高いなどという日経の主張は大ウソです。

日経が「日本経済の最大の課題」の一つと言う「財政健全化」ですが、下のグラフにあるように、日本の巨額の財政赤字となる税収と歳出が拡大してしまういわゆる「ワニの口」(財務省データ)は、消費税増税とともに拡大し続けているのが事実です。

そして、上のグラフ(財務省データ)にあるように、法人税収と所得税収は減り、消費税収だけ1990年の4.6兆円から2015年の17.1兆円へと3.7倍にも増えています。そして、下のグラフ(OECDデータ)にあるように消費税増税に比例して日本の財政赤字は、1998年の120.7%から239.3%へとほぼ2倍に膨らんでいるのです。

さらに、上のグラフは、各国の社会保障費を見たものです。日本の最新データはなぜか2010年から更新されていないのですが、グラフを見て分かるように、1980年の日本の社会保障費は10.3%とフランスやドイツの半分以下でした。直近の2010年でやっと22%と、35年前のフランスやドイツの社会保障水準に追いついただけです。この一体どこが、「膨らむ社会保障費」が財政赤字を拡大していると言うのでしょうか? デンマークの社会保障費は1980年のときから日本よりも2倍以上も高く、その後も増えていますが、財政赤字は逆に減っています。「膨らむ社会保障費」が財政赤字の原因であるかのような日経の主張は大ウソであることが分かります。

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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