安倍政権の戦争法案(集団的自衛権行使)がもたらす惨禍 -「対テロ戦争」で若い命失い一般市民の犠牲を世界に拡散する|高遠菜穂子さん

  • 2015/8/6
  • 安倍政権の戦争法案(集団的自衛権行使)がもたらす惨禍 -「対テロ戦争」で若い命失い一般市民の犠牲を世界に拡散する|高遠菜穂子さん はコメントを受け付けていません。
フリージャーナリスト志葉玲さんのヤフー個人ニュースサイトから

高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)からの2つのメッセージを紹介します。(※高遠さんご本人に了解を得た上での紹介です。2014年6月30日にアップした記事です)

集団的自衛権行使がもたらす惨禍
――「対テロ戦争」で若い命失い一般市民の犠牲を世界に拡散
高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)

現代の戦争は「対テロ戦争」。もしそこに同盟国アメリカと行くなら、相手(敵)は正規軍ではなく「武装勢力」になりますよね。たとえば、イラク。(アメリカでは最近、イラクとシリアで勢力を拡大しているグループが第2の9.11をやるかもしれないという懸念の声もあるそうですし)

「武装勢力」と呼ばれる彼らのほとんどが肉親などを残虐に殺された遺族であり、武器を持つ動機は深い絶望の中で抱え続けた憎悪であることが大きいと言えます。正規軍のように「命令に従っただけです」とは言わないでしょう。残虐な行為に壊されたその心は想像を超える激しさがあります。戦闘でも米軍を追いつめるほどでした。

私はそんな「武装勢力」に拘束されました。彼らはまず私たちの国籍を確認しました。日本人であることを確認してから拉致したのです。「人道復興支援」として武装した自衛隊を送ったことに怒り狂っていたのです。

「なぜだ!? なぜ日本軍(アラビア語で自衛隊にあたる言葉がない)をイラクに送った?」「なぜアメリカの味方をする?!」

何度も怒号を浴びました。

「対テロ戦争」を続けた結果、アメリカはどうなったでしょう?
イラクはどうなったでしょう?
こんな「テロの世界」で集団的自衛権行使する意味があるでしょうか?
若い命を失った分、世界は安全になったでしょうか?
「テロ」は減ったでしょうか?

「人道復興支援」で武装していっても標的になるのです。集団的自衛権を行使することになったら一体どんなことが起こりうるのでしょうか?

「平和の国ニッポン」というブランドイメージが私たちに安全をもたらしてくれていたのに、日本の「米国追随」のイメージは支援の現場でも深刻な問題をもたらしました。その後、何年もイラク支援のNGOは「日本からの支援」ということを表明できませんでした。表明すれば、現地スタッフが私たちの代わりに標的になってしまったからです。

あれから何年もかけて、必死に必死に働き、やっとやっとイラクの人々からの信頼を回復することができました。なのに、もう一度それを失うのでしょうか?
【2014年6月30日、高遠菜穂子さん執筆】

私の細胞は「平和憲法」でできている、
私は「憲法9条」に守られた
若者を戦地に行かせる政治でなく紛争を予防する外交・政治を
高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)

イラク戦争をずっと見てきましたが、今は特にアメリカの若い米兵たちの姿から考えることがたくさんあるように思います。あらためて彼らから聞いた話を思い出しています。

アメリカには徴兵制はありませんが、ほぼみんな借金とか学費を得るためとか経済的な理由で入隊します。厳しい訓練を受けた後、徹底的に「個」を滅して「国」のためにはたらく兵士となります。

しかし、戦地はやはり訓練でも演習でもない。特に「テロとの戦い」はどこから攻撃されるかわからない。上官には民間人と攻撃者の区別をつけろと言われますが、迷っていれば撃たれるかもしれない。

掃討作戦が始まると、今度は「動くものはすべて撃て」と命令されます。米兵たちはそれに従いました。そうして、たくさんのイラクの普通の人々や子どもたちが殺されました。

片っ端から連行してきた人たちに、自白を引き出すため拷問をしていたのが、内部告発により米軍の組織的な拷問・虐待が発覚したアブグレイブ尋問センターです。軍だけでなく、民間セキュリティ会社も独自の拷問マニュアルを作って実施していたというのには心底驚きました。そのうちに、自白を引き出すなんていう目的はどっかに行ってしまい、「拷問のための拷問センターになっていた」とある米兵は言っていました。

いったん戦地に行けば「殺したくない」「拷問したくない」はありえません。軍の規律に従わない者は、軍法会議にかけられてしまいます。軍の中では、人間の良心に従うことは罪になってしまう可能性大です。恐怖のために任務遂行できなかった場合には「臆病罪」という罪状もあり、最高刑は死刑だそうです。

イラクでヒャッホー!と言いながら無差別殺戮をしたり、拷問や虐待をしたり、笑顔でピースサインしながら遺体と記念写真を撮る米兵たちは、最初からモンスターだったんでしょうか。

おぞましい、信じられない、残酷、狂気…そう思いました。でも、その後にこんな風にも思いました。きっと米兵たちも、アメリカではいい息子だったり、やさしいお父さんだったりするんだろうな。もし私が若い時に軍隊に入っていたら、自分が絶対にこうならないという保証はないなと…。

軍隊という装置の中で、反射的に攻撃できるよう訓練され、軍の規律に従うよう教育され、戦地の究極の緊張状態の中で「敵を殲滅せよ」という命令を受けたら、全力をつくしてしまうかもしれないと考えたのです…。軍の中で自分がいじめられていたなら、捕虜たちにもっと酷いことをするかもしれないと…。

でも、ある瞬間に、子どものちぎれた身体や、頭が吹っ飛んだ遺体を見て、自分が犯した「罪」を意識してしまうかもしれない。「もう人を殺したくない」と思うかもしれない。じゃあ、「やめます!」って言えるだろうか。逃げられるだろうか。いや、きっとできない。軍の中にいればそうしたことは“反逆”になるし、“臆病”になる。軍法会議で「反逆罪」や「臆病罪」で死刑や終身刑を宣告されるなら、殺しまくって「名誉」を得たいと思うだろうと…。

イラク戦争は終わってなんかいない。それは、アメリカにおいても同じです。イラクから生還したのに、祖国で命を絶ってしまった若い兵士たち。イラクでの戦死者よりもアメリカに帰還してからの自殺者の方が多いことは、以前にここにもポストしました。激しいPTSD、離婚、ホームレスとなる人たちも多いそうです。

無邪気な子ども時代、楽しい学生時代の最中には想像もつかなかった顛末です。本気で平和のために働いたはずなのに…。

以前、ニューヨークにある「帰還兵病院」に行ったことがあります。手や足を失った人たちのリハビリ、PTSDのカウンセリング。アメリカがやってきたあらゆる戦争の帰還兵たちがそこにはいました。イラクやアフガニスタン帰還兵だけでなく、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争などあらゆる世代の帰還兵たちが今も治療を必要としていました。

女性兵士向けのカウンセリングもありました。現代の戦争は女性兵士が多いのです。特にイスラム圏での任務には女性兵士がより必要とされます。前線に行かせてくれと志願する女性も増えていると聞きます。この時、取材をOKしてくれる女性は見つかりませんでしたが、あるドキュメンタリーで、女性兵士の3分の1が母親であること、イラク人の子どもを殺してしまったことで、子育てが苦しみになってしまったという女性が紹介されていました。

そこまでの犠牲を払ったのに、アメリカは今もテロに怯えています。若い世代がこれだけ全力を尽くしたのに、その結果、アメリカは世界中から恨みを買い、嫌われてしまいました。

「テロとの戦い」はテロを世界中に拡散しました。アメリカの戦争に巻き込まれた国々では、大規模なテロで一般市民が何度も犠牲になっています。

こんなアメリカにこそ日本の平和憲法を押し付けたいです。

イラクのどこに行っても言われた言葉があります。

「日本はあの戦争以降、世界のどの国とも戦争をしていない平和の国」

親日家の多い国はたくさんあるけど、日本が積極的に“参戦表明”したイラク戦争の地で言われたこの言葉は、沁みました。しかし、現状がどんどんかけ離れていくことに焦りも感じました。

それでも、「平和な国ジャパン」というブランドイメージだけで、安全が確保されることは何度もありました。日本人であることに誇りを持てました。

イラクのファルージャで武装グループに拘束された時、私は自分自身の人道支援活動を必死に訴えました。目隠しをされたまま訴え続けました。

解放後しばらくして私は気づきました。私は自分自身が「憲法9条」であることを伝えようとしていたということを…。

私の細胞は「平和憲法」でできているということを…。

私は「憲法9条」に守られたということを…。

自国の「安全」のために若者たちを戦地に行かせる政治ではなくて、紛争を予防する外交・政治を本気でしてくれる政治家がほしい。そう切に願っています。
【2013年8月、高遠菜穂子さん執筆】

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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