映画「父と暮せば」監督・黒木和雄さんインタビュー – 「戦争か平和かの正念場に立つ日本」「戦争は庶民にとってプラスになることは何もない」

  • 2015/8/6
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きょうは、広島に原爆が投下されてから70年となる「原爆の日」。私、広島の原爆を題材にした映画「父と暮せば」を監督された黒木和雄さんのインタビューを、2005年12月に企画したことがありますので紹介します。(※「国公労新聞」2006年1月10日付に掲載した私が企画・編集したインタビューで、インタビュアーは当時国公女性協事務局長だった北畠弥生さんです。黒木和雄さんは、2006年4月12日、脳梗塞のため75歳で死去されました)

戦争告発し9条改憲ストップさせたい
映画監督 黒木和雄さん インタビュー

今年の新春インタビューは、ヒロシマの被爆体験を描いた映画「父と暮せば」を監督された黒木和雄さんです。黒木さんは、9条改憲に反対する「映画人九条の会」でも積極的に活動されています。国公労連中央執行委員・国公女性協事務局長の北畠弥生さんがインタビューしました。(※以下敬称略)

北畠: 私は、娘といっしょに「父と暮せば」を観ました。ヒロシマの爆心地に住む親子の姿を通して、平和の大切さが心にしみこむすばらしい映画で、親子で涙しました。戦争に関わる映画を作るきっかけは何だったのですか。

無自覚な戦争への流れと対峙したい

黒木: 少年時代の私は、無自覚に右へならえで軍国少年として生きてきたものですから、それを洗い直したいという思いが一つです。それが、また同じような流れとなってきている現在と対峙することになると感じています。

戦争がプラスになることは何もない

黒木: それに加えて、15歳のとき、学徒動員先の工場が米軍に急襲され、友人11人が即死し、偶然私は助かったのですが、そのとき、これが戦争だ、戦争は庶民にとってプラスになることは何もないと実感したことです。

北畠: 自伝的な映画「美しい夏キリシマ」にその思いが色濃く表現されているのでしょうか。

黒木: そうですね。そして、「父と暮せば」を作る直接のきっかけは、「美しい夏キリシマ」がクランクアップした頃、広島の被爆者救援に生涯を捧げた私の友人が亡くなったことにあります。その私の友人は生前いつもヒロシマの映画を撮ってくれと言っていて、もう手後れなんだけど、約束を果たそうとの思いからでした。

ヒロシマの魂を指さす映画「父と暮せば」

北畠: 娘役の宮沢りえさんの演技がすばらしくて、ものすごく訴えかけてくるものがありました。

黒木: 井上ひさしさんの原作の力と、すぐれた俳優陣の卓越した演技力でヒロシマの魂を指さすような作品となりました。

井上ひさしさんは、2万人ぐらいの被爆者の手記を2年間に渡って読まれて、「自分でつくったセリフは全然ない」と言っています。それもあって、訴えかける力があるのだと思います。

北畠: 05年に広島で被爆者の方からお話をうかがう機会があったのですが、みなさん、被爆60年目で、被爆体験を語れる方が少なくなっていることを危惧していました。「父と暮せば」は、DVDにもなっていますから、多くの方に観てもらえるすぐれた“語り部”です。

黒木: 演劇は、多くの人、ましてや世界の人々に観てもらうのに手間がかかってたいへんだけど、映画は簡単に観てもらえるので映画化してもらってよかったと、井上ひさしさんも言われていました。

戦争か平和かの正念場に立つ日本

北畠: 一方で、自衛隊が協力して大がかりに戦争を美化する映画が増えていて心配です。

黒木: 映画を利用したそうした動きは根強くありますが、それに対抗する映画を作っていかなければまずいと思います。

北畠: 黒木さんは、「映画人九条の会」でも集会で講演されるなど、積極的に行動されていますね。

黒木: 自民党は、本気で憲法9条を改悪しようとしています。時代の流れも戦前と同じように感じます。再び“戦争をする国”にしてしまうのかどうか、ここは日本人の正念場だと思います。

私は戦争を体験していますが、戦争を体験したかどうかは問題じゃないと思っています。戦争がいかに人間を歪めるか、庶民の生活を脅かすか、戦争の歴史をきちんと知ることが大切ですね。

北畠: 私たちも学びながら、職場・地域で戦争への道を許さないとりくみを進めたいと思います。

黒木: 非常に主観的ですが、戦後60年で女性には、平和を希求することが身に付いた気がしています。戦争への道をストップするのは女性ではないかと、上映会で全国をまわって実感しています。

北畠: 最後に私たちへのメッセージをお願いします。

黒木: 戦争も国家が起こすわけで、国家をになって仕事をされているみなさんは、激しい矛盾にさらされていると思いますが、それに立ち向かって憲法改悪ストップへ大きな力を発揮されることを期待しています。

黒木 和雄(くろき かずお)
1930年、宮崎県生まれ。1954年、岩波映画製作所に助監督として入社、ドキュメンタリー映画の演出を務める。1962年フリーとなり、孤独なマラソンランナー君原健二を描いた長編ドキュメンタリー「あるマラソンランナーの記録」で高い評価を得る。1966年、「とべない沈黙」で劇映画デビュー。その後、「キューバの恋人」「日本の悪霊」「竜馬暗殺」「祭りの準備」などを発表。「TOMORROW/明日」(長崎の原爆を描き、キネマ旬報監督賞を受賞)、「美しい夏キリシマ」(キネマ旬報03年ベストテンで日本映画第1位)、これに続く、「父と暮せば」は、“戦争レクイエム3部作”と呼ばれ高い評価を得る。2006年4月12日、脳梗塞のため死去。享年75歳。2006年に公開された「紙屋悦子の青春」が遺作となった。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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