少年サンデーが「あおざくら 防衛大学校物語」の連載開始 – 「経済的徴兵制」を「熱き青春物語」に流し込み防衛大学校の凄惨ないじめ・集団暴力・性的暴行は不問?

  • 2016/5/2
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『少年サンデー』(小学館)が「あおざくら 防衛大学校物語」(二階堂ヒカル)なる新連載を開始しました。

主人公は成績トップの高校生。貧困家庭であるため大学進学をあきらめ、両親が営む大衆食堂を継ぐしかないと思っていたところ、その大衆食堂も店じまいせざるをえない事態となり、高校の先生から学費は無料の上に給料ももらえる防衛大学校を紹介され受験し合格。まさに導入部は「経済的徴兵制」の典型。加えて、なぜか大衆食堂に屈強で爽やかな自衛隊員が食事に訪れて、主人公の両親の車が側溝に脱輪した苦境を救い出す市民に頼りになる颯爽とした自衛隊員の姿も描写。そして、合格した主人公が「お国のために」と友人に告げ防衛大学校に向かうところで第1回目は終了。最後のところで防衛大学校の先輩らが新入生を手ぐすね引いて待ち構えてる姿が描かれているので、先輩から新入生に対するなんらかの“洗礼”らしきものが次回描かれるであろうことが示唆されています。

防衛大学校の2015年度卒業生のうち、任官辞退(拒否)者数が前年度の2倍の47人(卒業生419人の1割)にのぼったことや、自衛隊員の2015年度の応募者数が前年から6千人も激減したことに対する危機感から少年マンガを利用して防衛大学校と自衛隊のイメージアップをはかろうというのが、このマンガのねらいだろうと思います。

なので、おそらく次回の先輩から新入生に対するなんらかの“洗礼”らしきものも以下の防衛大学校の直近の実態を踏まえた凄惨なものにはならないだろうと予想します。

防衛大学生、いじめで同級生を刑事告訴 「いじめは修行」体毛に火、集団暴力、性的暴行…
Business Journal 2014.08.12

幹部自衛官を養成する防衛大学校(以下、防大と略)で、2学年の男子学生が校内でいじめを受けストレス障害になったとして、上級生や同級生8人を横浜地方検察庁横須賀支部に傷害と強要容疑で7日、刑事告訴した。

昨年6月、当時1学年だった男子学生が、上級生に服を脱がされて体毛に火をつけられ、腹部に全治3週間のやけどを負ったほか、今年5月、地元に帰省した際に休暇届を出すのが遅れたことを理由に、上級生や同級生から殴られるなどした。さらに6月には、同級生から男子学生本人の顔写真を黒縁で囲み遺影のようにして、無料通話アプリLINE上にアップされた。男子学生は、これらが原因で重度ストレス障害になったといい、現在は地元の福岡県に帰省し休養している。

いじめは防大や自衛隊の悪弊

防大OBで現役幹部陸上自衛官は、こうしたいじめは、防大はもとより自衛隊全体にはびこる悪弊であるといい、その内情を次のように明かす。

「寝ている学生を靴やスリッパで叩いて起こす。服を脱がせ体毛を焼く。先輩の男性器をくわえさせ、それを写真に撮るなどのいじめは、数年前でも校内では行われていた。自衛隊の中でも、そうした事案は多々耳にする。今回、こうして公になったことで、自衛隊の悪弊を絶つための、いいきっかけになると思う」

その一方で、同じく防大OBで現役幹部海上自衛官は、「こうしたいじめに耐える、いじめられないように立ち振る舞うことも自衛官としての修行になる」と話す。

「そもそも、いじめに遭うのは動作が緩慢な者か、やたらと正論を吐く理屈っぽい者が多い。自衛隊のような戦闘組織は命令一下、たとえ理不尽な命令でも率先して動かなければならない。動作が緩慢な者はいざというときに組織の足を引っ張る。海外からの侵略や震災などの有事の際は、『何が正しいか』を議論している間に、事態が深刻化することもある。本人の考え方を自衛官らしく矯正し、もし向いていないと判断するならば、別の進路を考えさせることも防大同窓の役目だ」

異なる見解を示すOBだが、「この告訴した男子学生が、これから防大に復帰して生きていくことは極めて難しい」との点では一致している。

ITの発達で、密室の出来事を告発しやすい環境に

昨年は保険金詐欺事件が発覚したが、防大ではほかにも、ここ数年の間に不祥事が頻発している。

これについて前出の防大OB2人は、「ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が発達するなど、インターネットの利用が増えたことで、防大外部へのアクセスが容易になったからではないか」という。つまり、不祥事が増えたというよりも、不祥事を告発しやすい環境になってきたということか。

それでも公になっているのは、氷山の一角にすぎないようだ。防大OB、現役防大生をはじめとした関係者たちは、上級生による下級生への暴力を伴う指導、男子学生による女子学生への性的暴行など、表に出てこない不祥事は数多くあるといい、今回発覚したいじめ事案は、あくまでそのうちのひとつでしかない。

長年、防大という密室の中での出来事は、外からはうかがい知ることができなかった。しかし、IT環境が発達したことで、内部からおかしいと思うことを告発し、事を公に解決しようとする動きが出てきた。防大内の膿を出し切ることはできるだろうか。

 

私たち国公一般には、自衛隊員や防衛省職員、防衛省で働く非正規職員から労働相談が寄せられています。多いのはパワハラ、セクハラ、いじめ、不当解雇、ただ働き残業の問題です。以前にも「防衛省職員から労働相談「理不尽でも上司は絶対」「上司のご機嫌取りに奔走」「残業代出て3割」「戦争法案強行されれば非人間的な労働環境に拍車」」という記事でその一端を紹介していますし、「自衛隊という密室 – いじめ・暴力・腐敗が蔓延、自衛隊員の死因トップは自殺」や「イラク派遣中の陸上自衛隊員の自殺率は公務員の2倍、「非戦闘地域」が建前の派遣で56人の若者の命が奪われた」などで自衛隊のリアルを指摘しています。

「戦争法」がまだ現実の戦場において発動されていなくてもこの惨状ですから、「戦争法」が発動されるようなことがあると、「4歳の女の子、7歳の男の子、ロイター記者も「無差別殺人」が米兵のイラク戦争の日常=「戦争法案」がもたらす日本の若者の近未来」という恐るべき現実と、それに比例するように自衛隊内、防衛大学校内における人間性の破壊がより一層深刻になるであろうことは容易に想像できるのではないでしょうか。

▼関連報道記事

 

防衛大学校:任官拒否、昨年比倍増 47人、卒業生の1割
毎日新聞 2016.03.22

防衛大学校の卒業式が21日、神奈川県横須賀市の防衛大であった。卒業後に自衛官への任官を辞退する「任官拒否者」は卒業生419人中、11%にあたる47人に上り、昨年に比べ2倍近くに達した。40人を超えるのはバブル景気で就職戦線が学生の売り手市場だった1991年の94人以来25年ぶりで、89年の51人に次ぐ過去4番目の多さ。

防大が任官拒否者から理由を聴き取ったところ、内訳は、民間企業などへの就職26人▽身体的な理由11人▽大学院など進学6人▽その他4人――。今月29日の安全保障関連法施行で、自衛隊は他国軍の後方支援など任務の幅が広がり、リスクも高まるが、安保関連法を理由にした任官拒否者はいなかったという。防大は「景気動向などさまざまな要因がある」としている。

任官拒否は73年以降、毎年出ている。91年に最多を記録し、その後10~30人台で推移。2012年は73年以降最少の4人で、13年7人▽14年10人▽15年25人――だった。

最多だった91年は、進路判断の材料となる90年度の有効求人倍率(1人あたりの求人数)が1・43倍。14年度の有効求人倍率は1・11倍で7年ぶりに1倍を超え、15年度は毎月上昇し昨年12月は1・27倍だった。

◇「民間挑戦」の男子学生 安保法論じぬ硬直性、違和感

防衛大の卒業式で卒業生の帽子が一斉に宙を舞ったその時、任官拒否した男子学生の1人は式場ではなく、校内の別の場にいた。任官拒否者は式に出席できない。男子学生は安全保障関連法が理由で任官拒否したわけではないが、その国会審議を機に組織への違和感が募ったという。

「同じ釜の飯を食った仲間と帽子を投げたかったが、仕方ない」。男子学生は肩を落とした。学校側は任官拒否者の卒業式出席を防大の設置目的と照らして「適当ではない」と2014年春から認めていない。

入校したのは「流れ」だった。安全保障に関心はあったが、防大が第1志望ではなかった。本命の大学より前に防大から合格通知が届き「学費不要」「幹部自衛官」という響きにひかれ入学した。規律正しい生活に、厳格な上級生との関係。それでも、同期で国防の任に燃えているのは「10人のうち2人ぐらいの少数派」だった。

入校した年に陸海空の部隊を訪れて気づいた。表舞台に立たない任務でも誇りを持つ現場の自衛官に頭が下がる思いがしたが「自己裁量の幅が狭く、自分が考えている仕事と違う」。任官拒否の思いが芽生えた。

昨年の安保関連法を巡る国会審議。「自衛隊の任務拡大は賛成だけど、その前に憲法改正して自衛隊の位置付けを明確にすべきだ。順番が違う」と思った。だが、校内で議論はほとんどなく、学校側から法の説明はなかった。「自分たちの将来に関係することなのに議論する雰囲気がない。まるで思考停止のようだ」。安保関連法を機に改めてみえた組織の硬直性。違和感が増した。

任官の意思を尋ねる調査は1年目から年数回ある。今年1月、任官のための宣誓に署名する紙が配られた。自衛隊は嫌いではない。だが、民間企業で自分の力を試す決意が固まり、拒否を伝えた。

担当教官ら延べ10人ほどと面談した。「就活で絶対に失敗する」「任官して2、3年した後でも民間に行ける」。そう説得された。同じく任官拒否した先輩から、面談は5人ぐらいと聞いていた。「安保関連法で任官拒否が増えたと批判を浴びたくないのか、学校側は昨年より必死に食い止めようとしている」と感じた。

◇防衛大学校
陸海空自衛隊の幹部自衛官を養成する教育機関で戦前の士官学校にあたる。文系3学科と理系11学科があり講義や訓練を実施。学生は卒業までの4年間、約8人ずつの部屋で寮生活を送る。特別職の国家公務員として手当(2015年4月時点で毎月10万9400円)や年2回期末手当がある。

 

防衛大生12人を処分
朝日新聞 2016.02.27

防衛大学校(横須賀市)は26日、学生間の不適切な指導などが確認されたとして、3~4年生の学生12人を停学や戒告の懲戒処分や訓戒処分にしたと発表した。

防衛大によると、学校の寮で陰毛に火をつけられたり、遺影のように黒縁で囲った学生の写真を無料通信アプリ「LINE(ライン)」に流されたりされたなどとして、2014年8月に男子学生が上級生ら8人を刑事告訴していた。学校は調査委員会を設置。暴行などの事実関係を確認し、新たに関与が判明した学生を含めた処分を決めた。当時の指導教官ら10人も訓戒や注意処分とする予定。

 

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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