電通過労自死事件、母親の願い「社員の命を犠牲にして優良企業と言えるのか」「過労死は起きるべくして起きている」「パワハラ許さず残業隠しが再び起こらないようインターバル制度の導入を」

  • 2016/11/10
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昨日(11月9日)、厚生労働省主催の「過労死等防止対策シンポジウム」が東京都内で開かれ、過労自死した電通社員、高橋まつりさんの母、幸美さんが発言されました。発言の全文を紹介します。(※私たち国公の仲間の飯塚盛康さんが起こしたものをご本人の了解を得て転載させていただきます)

【※「過労死等防止対策推進シンポジウム」中央開催での、第二の電通事件の高橋まつりさんのお母さん幸美さんの発言を起こしました。途中からは泣きながら起こしていました。(飯塚盛康)】

娘の名前は高橋まつりと言います。

娘は昨年12月25日、会社の借上げ社宅から投身し、自らの命を絶ちました。

3月に大学を卒業し、4月に新社会人として希望を持って入社してから、わずか9カ月のことでした。

娘は高校卒業後、現役で大学に入学しました。大学3年生の時は文部科学省の試験に合格して、1年間北京の大学に国費留学しました。

帰国後も学問に励み、その後人一倍のコミュニケーションの能力を活かして、就職活動に臨みました。そして、早い時期に内定をもらい大手広告代理店に就職しました。

娘は、日本のトップの企業で国を動かすような様々なコンテンツの作成に関わっていきたい。自分の能力を発揮して社会に貢献したいと夢を語っていました。

入社してからの新人研修でも積極的にリーダーシップをとり、班をまとめた様子を話してくれました。

「私の班が優勝したんだよ。」と研修終了後にはうれしそうに話してくれました。

「憧れのクリエイターさんに何回も褒められたのを励みに頑張るよ」と希望に満ちていました。

5月になり、インターネット広告の部署へ配属されました。「夜中や休日も仕事のメールが来るので、対応しなければならない」と言っていました。締め切りの前日は、終電近くまで頑張っていましたが、夏頃からたびたび深夜まで残って仕事をするようになりました。

週明けに上がってきたデータを分析して報告書を作成し、毎週クライアントに提出する仕事に加え、自宅に持ち帰って論文を徹夜で仕上げたり、企画書を作成していました。

10月に本採用になると、土日出勤、朝5時帰宅という日もあり、「こんなにつらいと思わなかった。今週10時間しか寝てない。会社辞めたい。休職するか退職するか自分で決めるので、お母さんは口出ししないでね。」と言っていました。

11月になって、25年前の過労自殺の記事を持ってきて、「こうなりそう」と言いました。私は「死んじゃだめ。会社辞めて」と何度も言いました。

その頃、先輩に送ったメールに「死ぬのにちょうどいい歩道橋を探している自分に気が付きます」とあります。

SNSにはパワハラやセクハラに個人の尊厳を傷つけられていた様子も書かれていました。

私には、「上司に異動できるか交渉してみる。出来なかったら辞めるね」と言っていましたが、仕事を減らすのでもう少し頑張れということになったようです。

しかし、12月には娘を含め、部署全員に36協定の特別条項が出され、深夜労働が続きました。その上、数回の忘年会の準備にも土日や深夜までかかりきりになりました。

「年末には実家へ帰るからね、お母さん。一緒に過ごそうね」と言ったのに、クリスマスの朝、「大好きで大切なお母さん、さようなら。ありがとう。人生も仕事も全てがつらいです。お母さん、自分を責めないでね。最高のお母さんだから」とメールを残して亡くなりました。

社員の命を犠牲にして業績を上げる企業が、日本の発展をリードする優良企業だと言えるでしょうか。

有名な社訓には取り組んだら放すな。死んでも放すな。目的を完遂するまではとあります。

命より大切な仕事はありません。娘の死は、パフォーマンスではありません。フィクションではありません。現実に起こったことです。

娘が描いていたたくさんの夢も、娘の弾けるような笑顔も、永久に奪われてしまいました。

結婚して子どもが産まれるはずだった未来は、失われてしまいました。

私がどんなに訴えかけようとしても、大切な娘は二度と戻ってくることはありません。手遅れなのです。自分の命よりも大切な娘を突然なくしてしまった悲しみと絶望は、失った者にしかわかりません。

だから、同じことが繰り返されるのです。

今、この瞬間にも同じことが起きているかもしれません。

娘のように苦しんでいる人がいるかもしれません。

過労死過労自殺は、偶然起きるのではありません。

いつ起きてもおかしくない状況で、起きるべくして起きているのです。

経営者は社員の命を授かっているのです。

大切な人の命を預かっているという責任感を持って、本気で改革に取り組んでもらいたいです。

伝統ある企業の体質や方針は一朝一夕に変えられるものではありません。

しかし、残業時間の削減を発令するだけでなく、根本からパワハラを許さない企業風土と業務の改善をしてもらいたいと思います。

残業隠しが、再び起こらないように、ワークシェアや36協定の改革、インターバル制度の導入がなされることを希望します。

そして、政府には国民の命を犠牲にした経済成長第一主義ではなく、国民の大切な命を守る日本に変えてくれることを強く望みます。

ご清聴ありがとうございます。

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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