AKB48×安倍政権の「赤紙なき徴兵制」 – 目の前の食べ物を追いかけているうちに気がついたら戦場にいた

  • 2015/8/9
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(※1年前に書いたものです。上の画像は「AKB48島崎遥香出演 陸上自衛隊 平成26年度 自衛官募集」より)

「AKB48の出演する自衛隊のCMが登場、集団的自衛権行使容認の閣議決定と同日に公開」されたり、「高3生に自衛隊の募集案内が、個人宛に続々と届く」、「集団的自衛権が閣議決定された日に、中高生に自衛隊募集のはがき・封筒が届いた」ことが話題になっています。

『POSSE』編集長の坂倉昇平さんは、「AKB48こそが、ブラック企業」と指摘していますが、自衛隊も「ブラック企業」のような実態にあることは、私たち国公一般に寄せられる自衛隊員からの労働相談でもうかがい知ることができます。今回の自衛隊のCMの中で、「自衛官という仕事、そこには大地や海や空のように果てしない夢が広がっています」「さあ、あなたの可能性へ」をキャッチフレーズに、「国際貢献活動」「災害救助活動」など「ここでしかできない仕事があります。」と呼びかけていますが、自衛隊においてもAKB48と同じように、「やりがいの搾取」が組み込まれていると言えるのでしょう。

しかし、実際の自衛隊は「夢が広がる」ようなところではない実態が多く見られることをジャーナリストの三宅勝久さんが次のように指摘しています。(※2009年11月6日に「平和の棚の会」が主催したジャーナリストの三宅勝久さんと斎藤貴男さんのトークセッション「自衛隊という密室――自衛隊員の死因第1位は自殺、いま現場で何が」から三宅勝久さんのお話の一部要旨です。文責=井上伸)

自衛隊という密室
――自衛隊員の死因第1位は自殺、いま現場で何が
ジャーナリスト 三宅勝久さん

「平和を、仕事にする」――自衛隊員募集ポスターのキャッチフレーズです。私は自衛隊員の自殺問題を取材する中で、こうした理想とは裏腹に、自衛隊の現場では人権を無視した残酷ないじめや暴力事件が蔓延していることを知りました。

私が自衛隊の取材を始めたきっかけはサラ金の取材でした。みなさん、自衛隊とサラ金とはまったく関係ないと思われるでしょうが、今から5年前、私がサラ金問題を取材していたとき、サラ金の多重債務に苦しむ自衛隊員のあまりの多さに驚いたことが自衛隊員の問題を取材するきっかけになったのです。

国から衣食住が保障されている自衛隊員がなぜサラ金で借金を重ねるのか? 疑問に思った私が取材を進めると今度は自衛隊員の自殺が多いことに気づきました。

1994年から2008年までの15年間で、1,162人もの自衛隊員が自殺しています。2004年度が100人、05年度101人、06年度101人と3年続けて過去最悪を記録し、2006年度の10万人あたりの自殺率は38.6で、一般職国家公務員の自殺率17.1の2倍以上にあたります。

また、2007年度の数字を見ると、暴力事件での懲戒処分80人。わいせつ事件での懲戒処分60人。脱走による免職326人、そのうち半年以上も行方が分からず免職になった自衛隊員は7人。病気で休職している自衛隊員は500人にのぼっています。

私は『自衛隊という密室――いじめと暴力、腐敗の現場から』(高文研)という書籍の中で紹介しましたが、取材を進める中で自衛隊というのは「暴力の闇」の中にあると感じています。男性の自衛隊員から殴打も含む虐待を受け、声を出すこともできなくなり自殺に追い込まれた女性自衛隊員。異動のはなむけとして15人を相手に格闘訓練と称したリンチを受け亡くなった自衛隊員。先輩の暴行を受け左目を失明した自衛隊員。自衛隊員の自殺の原因に、日常的な上官らのいじめがあったとして遺族が提訴しているケース。守るべき一般市民を自衛隊員が襲った連続強姦事件。上司からセクハラされた上に退職強要を受けた女性自衛官の裁判闘争。自衛隊員へのアンケート結果によると、女性隊員のうち18.7%が性的関係の強要を受け、強姦・暴行および未遂は7.4%にものぼり、自衛隊全体で700人以上が強姦・暴行および未遂の被害を受けているのです。その上、“臭いものにフタ”をして隠蔽する組織の取材を続けているうちに私は「死は鴻毛よりも軽し」という言葉が浮かびました。

また、制服幹部一佐の年収は1,000万円以上、退職金は4,000万円。そして納入業者に役員待遇で再就職。防衛省との契約高15社に在籍しているOBは2006年4月に475人もいて、三菱電機98人、三菱重工62人、日立製作所59人、川崎重工49人などとなっています。2008年度の1年間で、防衛省と取引のある企業に再就職した制服幹部一佐以上は80人。三菱重工と防衛省との年間契約高は2,700億円にのぼっているのです。

こうしたいじめ、暴力、汚職などが蔓延する職場が自衛隊という密室なのです。そうした職場のストレスから酒やギャンブル、女遊びにはまって借金を作り、身動きがとれなくなる人は後を絶たず、自殺者も続出しているのです。

そうした職場の歪みから来るストレスに加えて、屈強、精強なはずの自衛隊員を自殺に追い込む大きな矛盾が背景にあるのではないかと私は思っています。それは、「旧日本軍」と「自衛隊」の矛盾、言い換えれば「軍国主義」と「民主主義」の間の迷走です。かつて他国の人々と日本の国民を脅かした「旧日本軍」のあとを今現在の「自衛隊」が追うという矛盾のなかに「兵士」の苦悩や多くの問題が隠れているのではないかということです。

2007年度の1年間で、海上幕僚長の行った20回の訓示の中には、「帝国海軍」「海軍兵学校」などという「旧海軍」を讃える発言が15回もあるなど、いま現在も自衛隊そのものの中に「旧日本軍」が脈々と生きているのです。「旧日本軍」のように、他民族の命を抹殺できるようになるには、他民族への蔑視、他民族への人権侵害などの点でも「旧日本軍」のあとを追うことにならざるを得ません。他民族に対する蔑視や人権侵害を行おうとする組織において、その組織内部においても人権侵害が横行するであろうことは容易に想像がつくでしょう。

「旧日本軍の伝統を、陸海空自衛隊はそのまま引き継いでいます」と言ってはばからない田母神俊雄・元航空幕僚長の姿に、「軍隊あって国家なし」のようだった「旧日本軍」への憧憬を見出すのです。国民の生命・財産を守るはずの自衛隊は、かつて国民を苦しめたこの「旧日本軍」の背中を追いかけようとしているのではないでしょうか。
【三宅勝久さん談、文責=井上伸】

それから昨日、「このまますすむと困っちゃう人びとの会」による「水曜夕暮れ官邸前アクション」の中で、稲葉剛さんが次のように指摘していました。

安倍政権が集団的自衛権行使容認の閣議決定を行いました。これは日本が直接攻撃されていなくても自衛隊が武力行使することが可能になることを意味するとともに、立憲主義に反する行為であり、民主主義の原則を踏みにじる暴挙です。

集団的自衛権の行使で、自衛隊が戦地に派兵されることになれば、志願者の減少や退職者の増加が起こり、その結果、将来的に徴兵制が導入されるのではないか、という意見も出てきています。

しかし、生活困窮者支援に関わる者として言いたいのは、貧困層の若者を「安定した仕事だから」と勧誘して、自衛隊に「自発的に」志願させる「経済的徴兵制」は以前から存在している、ということです。

路上生活者には自衛隊で働いた経験のある人が少なくありません。「農家の次男坊・三男坊が安定した仕事に就くには、自衛隊の仕事しかなかった」と言っていた方もいます。災害出動の際のトラウマで精神疾患になったことや、訓練の爆音で難聴になったことが原因となって仕事に就けず、ホームレスになった方もいました。

集団的自衛権を行使するようになれば、米兵と同じようにPTSDを発症し、ホームレス化する自衛隊員の方が増えることは必至です。

安倍政権は、生活保護などの社会保障制度を改悪し、労働法制のさらなる改悪をしようとしていますが、こうした政策は若年層のさらなる貧困化を招きます。

安倍政権は、貧困を拡大させ、貧困層を自衛隊に送り込もうとしているのではないでしょうか。戦争は最大の「貧困ビジネス」というような形によって、「赤紙なき徴兵制」「経済的徴兵制」をさらに強化しようとしているのではないでしょうか。憲法9条と25条の問題はつながっているのです。
【稲葉剛さん談、文責=井上伸】

この稲葉剛さんの指摘がすでにアメリカではリアルに行われていることを、堤未果さんは、『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書)などの中で次のように告発しています。

徴兵制など必要ない
政府は格差を拡大する政策を次々と打ち出すだけでいい

ブッシュ政権は2002年春、全国一斉学力テストを義務化。全米のすべての高校に、生徒の個人情報(親の職業と年収、市民権の有無、生徒の携帯番号等)を軍のリクルーターに提出することを義務づけ、もし拒否したら助成金をカットされ、その高校は成り立たない。

高 校生が入隊する2大理由は、大学の「学費免除」と、兵士用の「医療保険」だ(2007年1月時点で、アメリカ国内で医療保険に加入していない国民は 4,700万人いるが、特に貧困地域の高校生たちはほとんどが家族そろって無保険のため、入隊すれば本人も家族も兵士用の病院で治療が受けられるという条 件は非常に魅力的。イラク戦争が開始された2003年に米軍がリクルートした新兵21万2,000人、そのうち3分の1は高校を卒業したばかりの若者たち だ)

2004年1月のひと月だけで、米国内の37万5,000人が失業手当を打ち切られ、過去30年間で最多人数を記録。一方で、同時期、 週に平均200人から300人の社員をイラクやアフガニスタンに派遣する派遣会社(KBR社※この会社の親会社ハリバートン社はチェイニー現副大統領が 1995年から2000年までCEOを務めた石油サービス・建設企業)の社員数は6万人を超えた。2005年までに4万8,000人がイラクに派遣されて いる。派遣社員の労働条件には、「もし現地での勤務中に事故で亡くなった場合や、化学兵器や放射性物質などによって死亡した場合には、本国への遺体送還は あきらめていただく。現地で会社が責任を持って火葬する」とある。

2004年8月、アメリカの派遣会社の社員12人がイラクの武装勢力に処刑される事件が起きた。しかし「派遣社員は民間人の扱いだから戦死者に入らない、つまり政府には発表する義務がない」

も はや徴兵制など必要ない。政府は格差を拡大する政策を次々と打ち出すだけでいい。経済的に追いつめられた国民は、黙っていてもイデオロギーのためではなく 生活苦から戦争に行ってくれる。ある者は兵士として、またある者は戦争請負会社の派遣社員として、巨大な利益を生み出す戦争ビジネスを支えてくれる。大企 業は潤い、政府の中枢にいる人間たちをその資金力でバックアップする。これは国境を越えた巨大なゲームだ。
【堤未果著『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書)より】

目の前の食べ物を追いかけているうちに気がついたら戦場にいた

アメリカはなぜベトナムから学ばなかったのだろうという人もいますが、ベトナム戦争とイラク戦争をつなげて考える人はあまりいません。貧困層の人たちが生 活の手段のためにイラク戦争に行っていると思っています。だから戦争に行くのは自己責任だということになってしまい、ベトナム戦争のときと意識が全然違う んです。そうすると周りに対して、ベトナム戦争みたいに戦争は間違いだという声は上げにくい。戦争に行く過程を振り返ってみると、目的意識がはっきりした ものではなくて、ホームレスになるとかいくつかの選択肢がある中で、たまたま生存権と引き替えに戦争に行ったということになってしまうわけです。生活のた めに余裕がなくて、お腹がすいていて目の前の食べ物を追いかけているうちに気がついたら戦場にいたということなのです。
【堤未果著「貧困・戦争、そして希望の語り方」(『現代と教育76号 特集 貧困・格差問題と教育』、桐書房所収)より】

そして、「死の商人」というと、武器をつくる軍需企業をすぐ思い浮かべますが、堤未果さんも指摘しているように、戦地に民間兵士を供給する派遣会社も「死の商人」です。

私、ケン・ローチ監督の映画『ルート・アイリッシュ』を観たとき(2012年3月)、ジャーナリストの安田純平さんのお話を聴きましたので、最後にそのとき印象深かった部分だけですが要旨を紹介します。(「防衛省とも密接…「集団的自衛権」でもソロバンを弾くパソナ」というような状況と集団的自衛権がリンクするならば、日本においても『ルート・アイリッシュ』のようなことがリアルに展開される事態になると思います)

「自己責任だから戦場に行く」「仕事がないなら戦場へ行け」
ジャーナリスト 安田純平さん

ケン・ローチ監督が『ルート・アイリッシュ』で描いたように、イラク戦争の特徴は「戦争の民営化」でした。戦争に関わるあらゆる業務が民間軍事会社に委託され、米議会予算局の報告書によると、イラク戦争に投入された米兵20万人に対し、民間軍事会社に関連する民間労働者は19万人。米兵と民間労働者の比率は、第2次世界大戦で「7対1」、ベトナム戦争で「5対1」でしたので、米兵とほぼ同数の民間労働者が戦場に投入されたイラク戦争はアメリカ史上初めての民営化による戦争だったのです。

そして、アメリカの労働省によると、アフガンとイラクでの米兵死者数は2011年末で6,397人。これに対して民間労働者の死者数は2,958人にのぼっています。ところが、この民間労働者の死者数は、戦死者としてカウントしないことで表向きの被害を小さく見せることが可能となります。また、戦場で米兵が死傷すると多額な保険などが必要になりますが、そうした必要もない民間労働者は、アメリカ政府にとって、使えなくなれば取り替えるだけでいい「安い命」「安い部品」でしかないのです。

アメリカ政府はイラク戦争に対する批判を避けるためにコスト削減と被害の削減が必要で、最低ランクの米兵よりもさらに半値に近い報酬で民間労働者を集め、たとえ戦場で命を落としても戦死者とせず被害の削減ができるという一石二鳥の「戦争の民営化」が進んだのです。

貧困と格差が広がり、自らの生活は自らで守るしかないという「自己責任国家」では、目の前の一時的な危険をおかすことをいとわない人々がいてもおかしくはないのです。「戦場に行くなら自己責任」ではなく、「自己責任だから戦場に行く」ということなのです。日本政府がアメリカのような「自己責任国家」をめざしていくと、日本においても「仕事がないなら戦場へ行け」となる危険性があると思います。
【ジャーナリスト安田純平さん談、文責=井上伸】

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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