ピンハネ率93%、重層的下請構造で使い捨てられる福島原発労働者、原子炉・使用済み核燃料プールで潜水作業させられる外国人労働者

  • 2015/8/9
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ハッピーさんの昨日のツイートです。

このハッピーさんのツイートを読んで昔書いたものを思い出したので紹介しておきます。

(※2011年8月に書いたものです)

日弁連主催の「原発労働問題シンポジウム」(2011年8月4日)、に参加しました。とても内容の濃いシンポジウムでしたが、なかでも福島原発労働者からの相談活動を事故前から日常的に取り組まれている福島県いわき市の渡辺博之市議による「原発労働問題~現場からの報告」は、驚きの連続でしたのでその発言要旨を紹介します。(文責=井上伸)

原発労働問題~現場からの報告
福島県いわき市の渡辺博之市議

福島第1原発の労働者の多くが宿泊する福島県いわき市で市議会議員をやっています渡辺博之です。

上の図は私が作成した「原発の重層的下請構造の構図」です。

東京電力から日立や東芝などプラントメーカーなどへの発注のほか、「東電御三家」と呼ばれている「東電工業」「東京エネシス」「東電環境」という2次下請の企業に発注されます。この「東電御三家」の下に、3次下請となる「常駐下請」の企業がそれぞれ20社ぐらいずつぶら下がっています。

場合によっては20次下請ぐらいまでの重層的な人夫出し業者(派遣会社)がからんでくることも

さらに、その下請として、地元の専門業者が4次下請となります。4次下請は、パイプやバルブ、電気など、それぞれ固有の技術力を持っている業者で、ある程度地元では知名度がある企業です。

この4次下請の専門業者が、5次下請となる「派遣会社」――「派遣会社」と一応呼んではいますが実態はまともな派遣会社からすれば一緒にしてくれるなと怒り出すような違法な「人夫出し業者」と言うべきものです――この人夫出し業者(派遣会社)を経由して、必要なだけの作業員をかき集めているのです。

さらに、人を集めることができなければ、その下に、6次、7次の下請となる人夫出し業者(派遣会社)から作業員を集めることになり、場合によっては20次下請ぐらいまでの重層的な人夫出し業者(派遣会社)がからんでくることもあります。

5次下請以下の人夫出し業者(派遣会社)になると、下請の順位はその都度入れ替わったりしますし、派遣会社から派遣会社への多重派遣というのも日常的に行われてます。

実際の労働者は、5次以下の下請となる人夫出し業者(派遣会社)に雇われていたとしても、書類上は「常駐下請(3次か4次下請)」の社員ということにされています。しかし、給料は実際に雇われている4次下請以下の人夫出し業者(派遣会社)から受け取ります。

東電からは労働者の日当が多い場合1人10万円ぐらい出ていますが、この重層的下請構造の中で中間搾取され、4次、5次下請労働者で日当8千円ほどにされ、さらに末端の原発労働者では私が知っている中で最も低い日当は6千500円程度でした。底辺の原発労働者の実態は、日当10万円から9万3,500円も中間搾取され、ピンハネ率は93%で9割を軽く超えているのです。

原発労働者には、大きく分けて技術者とそれを支える簡易作業労働者がいます。技術者は継続して雇用されるわけですが、簡易作業労働者は必要なときだけ雇用されるという不安定な状態に置かれます。

とりわけ簡易作業労働者が大量に必要とされるのは、原発の定期検査のときです。原発1基の定期検査で、4千~5千人が必要とされるわけですが、たとえば福島原発の立地町の一つである双葉町のすべての労働人口でも4千人程度ですからとても足りませんので、いわき市など周辺地域からも多くの労働者が駆り出されることになるのです。そして、必要なときだけ多数の原発労働者を集めるために重層的下請構造が利用されているのです。

原発下請労働者の社会保険未加入問題

こうした重層的下請構造の中で、福島原発事故が起こる前から、私のところには多くの原発労働者から様々な相談が持ち込まれてきました。一番多い相談は、健康保険や雇用保険などの社会保険未加入問題です。一例を紹介すると、失業して生活ができないと相談に来た30歳代の方ですが、原発下請労働者として1年間働いていたにもかかわらず、雇用保険未加入で失業給付を受給していませんでした。失業後も雇用保険に加入できるので失業給付の受給手続きをすすめたのですが、その方は「これから先も原発で働くかもしれない。手続きをすれば、会社から悪く思われ再び原発で働くことができなくなる」と拒否されました。その方は健康保険証も持っていませんでした。

また別の原発派遣労働者の方は、社会保険未加入問題について話をすると、「最初から社会保険に加入しないという条件で原発で働かせてもらっているのに、文句を言う奴はとんでもない」と語るなど、仕事がなかなか見つからない人にとって、社会保険に加入させてもらえなくても仕方がない、原発労働の多重派遣の中で賃金が中間搾取されても仕方がない、働けるだけまだましということにされてしまっていて、貧困問題は原発労働においても劣悪な労働者状態を蔓延させる要因になっています。

こうした相談を受けて、東京電力に対し、原発下請労働者の社会保険未加入問題の実態調査と改善を求める申し入れなどを昨年2月にも実施しましたが、東電側は「下請・孫請会社の調査は難しい」、「プライバシーの問題もあり実態把握が困難である」などと繰り返すばかりで問題解決をはかろうとする姿勢は一切見られません。

危険手当までもピンハネされているのでは

福島原発事故が発生してからは、事故収束のために賃金のほかに危険手当が支給されるようになりましたが、3~4月は1日の危険手当が10万円弱でしたが、5月以降は危険手当が1万円程度の人と、5百円~千円程度の人、まったくもらえない人もいるなど、「危険手当までもピンハネされているのではないか」と語る労働者もいるほどで、原発ジプシーと呼ばれる他県の原発から来た労働者なども危険手当が出ないので帰ってしまう人も出ています。事故発生で放射線量が高く危険が多いのに危険手当も満足に出ないのでは福島原発で働こうという労働者が不足するのは当然ではないでしょうか。この労働者不足にもつけこんで暴力団など反社会的団体の跋扈を許すことにもなっています。そして技術者も不足し、素人が作業をせざるをえない状況も生まれているのです。

東電による徹底した労働者の口封じ
「マスコミに話したら仕事やめてもらう」

現場の仕事によって被曝線量が多い所と少ない所があるので、それを考慮して仕事を変更しながら進めたりする必要があるのに、仕事が固定化されています。そうした問題があるのに、原発下請労働者は「何があっても訴えません」という念書を書かされた上で働かされています。また、徹底した箝口令が布かれています。東電は原発下請労働者に対して、「マスコミに匿名で話をしたら、誰が話したか分かり、仕事をやめてもらうことになるぞ」という脅しをかけることで徹底した労働者の口封じをはかっているのです。

複雑な重層的下請構造は
暴力団など反社会的団体の介入許す温床

また、複雑な重層的下請構造は、暴力団など反社会的団体の介入を許す温床にもなっています。福島原発事故前にも、ヤミ金で返済不能になった人や多重債務者などを原発労働者として無理矢理に働かせることなどがありましたが、事故後はさらに暴力団の介入が激しくなっています。作業現場では私物が盗まれるなどの問題が多くなり、まじめな労働者が安心して働けない状況にもなっています。「働く人数が少なくなってもいいから暴力団関係者がいない方が作業が進む」と私に訴える労働者もいるほどです。

原子炉・使用済み核燃料プールで
潜水作業させられる外国人労働者

それから、原発における労働者使い捨ての象徴とも言える外国人労働者の問題があります。外国人労働者は、原発の定期検査のとき、水が入った原子炉や使用済み核燃料プールに潜水して修繕箇所の事前チェックをさせられているのです。私は実際に福島原発で働かされていた外国人労働者のプール潜水作業を手伝っていたという日本人原発労働者から直接話を聞きました。プールの中は水が青く光っているなどして外からだけではなかなか修繕箇所などが見づらく、人間が実際にプールにもぐって事前チェックをする必要があるそうです。この危険な潜水作業を外国人労働者にやらせていて、潜水作業後は、放射性物質を体外に出すという目的で利尿作用のあるビールを飲ませるそうです。外部の人間が原発構内を視察する場合などには、外国人労働者は目につかないようにしているそうです。あくまで噂話ですが、原発労働者の間では、そうした外国人労働者は囚人が連れてこられているのではないかとまことしやかにささやかれているそうです。外国人労働者が原発でこうした使われ方をしていることは、私自身、多くの原発労働者から実際に聞いていますので、日本の多くの原発で現在も日常的におこなわれていることだと推測しています。

国際的にも最悪で深刻な福島原発事故のもとで原発労働者のこうした重層的下請構造と無権利状態、使い捨て労働に拍車がかかっています。過酷な状況のなかで被曝しながら働いても、原発下請労働者には何の補償もない現状を即刻あらため、中間搾取をやめさせ、相応の手当を払うなど労働条件の向上が必要です。

福島第1原発を廃炉にする作業は今後数十年かかると言われています。技術者を全国から集めるためにも、東電は相応の緊急災害手当を支給するとともに、末端の労働者にも届いていることをすぐに確認すべきです。

(福島県いわき市・日本共産党市議会議員・渡辺博之氏による「原発労働問題~現場からの報告」。文責=井上伸)

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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