マクドナルドの「時給1,500円」で日本は滅ぶ? すでに30年間実施してるオーストラリアは滅んでませんが?

(※2015年4月に書いた記事です)

マクドナルドの「時給1500円」で日本は滅ぶ。(中嶋よしふみ SCOL編集長)――とのことですが本当でしょうか?

OECDのサイトで各国の最低賃金が分かるのですが、直近2013年の最低賃金の時給額ベスト3を見ると、1位がオーストラリアで時給15.6ドル(現在のレートの1ドル118円で計算すると時給1,840円)、2位がルクセンブルクで時給14.3ドル(時給1,687年)、3位がフランスで時給12.5ドル(時給1,475円)です。

1位のオーストラリアの最低賃金の時給額をさかのぼって見ていくと、いちばん昔のデータが1985年で時給14.4ドル(時給1,699円)となっていて、そこから直近の2013年までずっと上がってきているので、ようするにオーストラリアは、ちょうど30年前の1985年からずっと最低賃金は時給1,500円以上なわけです。はて? 「時給1,500円」以上をもう30年間も続けているオーストラリアという国は滅んでいませんが? ルクセンブルクもフランスも滅んでいませんが? 中嶋よしふみ氏は、「時給1,500円」にすると日本を滅ぼすことになるので「100%間違いだ」と断言しているのですが、オーストラリアもルクセンブルクもフランスも実際滅んでいないので、中嶋よしふみ氏の主張の方こそ客観的事実に基づいて「100%間違いだ」と断言しておきます。なので、中嶋よしふみ氏は事実とまったく違うことを書いてしまっているので「訂正記事」を書いた方がいいと私は思います。

それから、以下の記事にあるように、アメリカのカリフォルニア州オークランド市の最低賃金も3月2日から、時給12.25ドルになっています。オークランド市は、「滅ぶ」どころか「よりよい地域社会をつくれる」と展望を語っています。

最低賃金36%アップ ⇒ 1470円 米・オークランド 労働者と家族に喜び 住民投票で決定 “地域社会よくなる”

 

米カリフォルニア州オークランド市の最低賃金が2日から、州の定める時給9ドル(約1080円)から12・25ドル(約1470円)に36%引き上げられました。これは昨年11月の住民投票で約82%の賛成で決まっていたもの。およそ4万8000人の労働者が恩恵を受けることになります。(中略)住民投票実施に尽力した運動団体「リフト・アップ・オークランド」に加わる住民組織「持続可能な経済のためのイースト・ベイ同盟」のケイト・オハラ会長は、最低賃金引き上げで「より多くの家族が家に住み続けられ、より多くの労働者が職場の近くに住めるようになり、家族と過ごす時間が増えて、よりよい地域社会をつくれる」と意義を強調しています。米国では今年中に23州と首都ワシントンで法定最低賃金が引き上げられ、500万人が恩恵を受けます。オバマ政権は政府規定の最賃を10・10ドル(約1212円)に引き上げるよう提案しています。

「しんぶん赤旗」3月4日付 最低賃金36%アップ ⇒ 1470円 米・オークランド 労働者と家族に喜び 住民投票で決定 “地域社会よくなる”今月から実施

 

また、アメリカのワシントン州のシアトル市では、最低賃金の時給15ドルが決定されています。

シアトル市が下した最低時給15ドルの「英断」
大規模ストライキの圧力で全米でも最高水準の最低賃金を獲得。これで格差は縮まるか
(ニューズウィーク日本版 2014年6月18日より)

 米ワシントン州のシアトル市議会が、最低賃金を現行の時給9.32ドルから破格の15ドルに引き上げる法案を満場一致で可決した。アメリカ最高の水準であり、今後7年以内で段階的に導入する計画だ。15ドルの最低賃金は、昨年11月に同州シータック市の住民投票でも承認されている。

「1年前、15ドルはプラカードに載る『数字』にすぎなかった。それが今日、シアトルの10万人の労働者にとっての現実になった」と、ファストフード店の1年前の大規模ストライキを支援した団体「ワーキング・ワシントン」の広報担当は言う。

法案の支持者は、シアトルは物価が高いだけでなく、現在の最低賃金ではフルタイムで働いても年収約1万9300ドルにしかならないと指摘していた。「低賃金で生活が苦しいという不満と怒りが、ファストフード店のストライキを生んだのだろう」と、ニック・リカータ市議は言う。「少数の人々の手にどれほどのお金が集中しているか、われわれは分かっている」

マリー市長は最低賃金引き上げを支持し、法案の投票時には議場の後方で見守っていた。有権者も同様で、先月の調査では賛成が74%に達している。

(シアトル市が下した最低時給15ドルの「英断」 大規模ストライキの圧力で全米でも最高水準の最低賃金を獲得。これで格差は縮まるか 「ニューズウィーク日本版」2014年6月18日より)

 

このシアトル市に続いて、カリフォルニア州のサンフランシスコ市でも、現在の時給10.74ドルから15ドルへ、2018年までに段階的に引き上げることが決まっています。中嶋よしふみ氏は、今回の「ファストフード世界同時アクション」含め、最低賃金の引き上げを求める労働者の運動についてもバカげてると言わんばかりに批判していますが、新自由主義の元祖アメリカでおいてさえ着々と最低賃金を実際に引き上げていっているのです。中嶋よしふみ氏には、ぜひ本当の意味でのグローバルな視点をきちんと持って記事を書くようにお願いしたいと思います。

(国公一般執行委員 井上伸)

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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