全国学力テスト導入の2007年から2014年にかけ小学生4.3倍、中学生1.5倍の自殺増加 – 競争で子どもの学力も命も奪う日本、テストやめ学力世界一のフィンランド

  • 2015/8/26
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きょうの「東京新聞」の記事の一節です。

検証 全国学力テスト
対策重視 授業に支障も

文部科学省は25日、現在の全国学力テストが始まってから第8回の結果を公表した。同省は「下位の自治体の底上げが進んだ」と強調するが、応用問題に弱い傾向や固定化する成績上位県など、結果から読み取れる課題に新味はない。テスト対策が高じて教育活動に影響が出ている学校もあり、約60億円もの巨費をかけて実施する意義を疑問視する声も根強い。
(「東京新聞」2015年8月26日付)

 

そして、「しんぶん赤旗」の記事です。

学力テスト結果 公表
文科省「理科嫌い」改善せず
平均点競争激化 弊害さらに明白

2007年の第1次安倍政権の時に開始された現行の全国学力テストは、学校別平均点を公表する自治体の広がりや大阪府での公立高校入試の内申点への反映など、点数競争を激化させる弊害が回を重ねるほど明らかになっています。この8月に仙台市で開かれた「教育のつどい2015」でも、「過去問や教育委員会作成の対策ドリルを迫られている」「『テスト対策』を繰り返し、4月はまともな授業が始まらない」「学力テストは日常の授業、学習内容までコントロールしていく段階になってきた」などの問題点が報告・指摘されました。県や市町村独自の学力テストが広がり、子どもの答案をコピーして独自の採点・集計をするなど“平均点競争”が強まっています。子どものなかに広がる学力格差や“勉強嫌い”をどうとらえ、どう対応するかの視点はありません。(中略)各地で平均点競争を激しくし、教育をゆがめている全国学力テストは直ちに廃止すべきです。毎年約60億円が使われている予算を少人数学級の実施に回すなど、一人ひとりの子どもに目が行き届く教育条件の整備にこそお金をかけるべきです。
「しんぶん赤旗」2015年8月26日付)

 

それから、胸が痛むこの記事。

子どもの自殺 9月1日が最多 夏休みの行動や体調見守って

18歳以下の子どもが自殺した日を1972~2013年の42年間で365日別に集計すると、夏休み明けの9月1日が131人と突出して多いことが、内閣府の分析で分かった。長期休暇明けに自殺が多い傾向が鮮明となっており、文部科学省は「先生の目が届きにくい休暇中は、家庭も子どもの行動や身なりの変化、体調などに気を付けて見守ってほしい」と呼び掛けている。(中略)不登校の子どもや親を支援するNPO法人も18日、「学校がつらければまずは休んで」とする緊急メッセージを出した。(中略)文科省は子どもや保護者の相談窓口として「24時間子供SOSダイヤル」=電0570(0)78310=を設置。NPO法人「チャイルドライン支援センター」も=電0120(99)7777=で子どもの電話相談を受け付けている。
(「東京新聞」2015年2015年8月19日付)

中学生 電車にはねられ死亡 自殺か」というテレビ報道もされています。

以下が内閣府の自殺対策白書のグラフです。

警察庁のサイトにある「自殺の状況」は、第1次安倍政権が始めた全国学力テストの最初の年である2007年から「自殺の原因・動機別」が詳細に分かるようになっています。そこで、全国学力テストの対象になる小学生と中学生の「学校問題による自殺」を見てみました。(残念ながら全国学力テスト実施前の2006年以前には詳細な「自殺の原因・動機別」のデータがありません)

2007年の「学校問題による自殺」は、小学生が0人で、中学生が24人。そして直近の2014年の「学校問題による自殺」は、小学生が4人で、中学生が36人になっています。加えて少子化で小学生も中学生も生徒数が減っています。2007年の小学生の生徒数は713万2千人、中学生は361万4千人。2014年は小学生が660万人で中学生は350万4千人。2007年は小学生が0人なので数字として比較しようがありませんので2008年の数字の1人で比較すると、それぞれの自殺率は2014年との比較で、小学生は4.3倍、中学生は1.5倍に増えていることになります。(※これは2014年の自殺だけが多かった結果ではありません。2013年も小学生4人、中学生39人になっているのです)

日本全体の自殺率は、2007年の25.1から2014年の20.0へと減っているのに、「学校問題による自殺」は小学生で4.3倍も増加し、中学生は1.5倍に増加しているのです。全国学力テストが実際にどれだけこの問題に影響したかは不明ですが、学校問題による「生きづらさ」の強まりが、全国学力テストの強化の時期と比例していることだけは確かのように思われます。それで、2010年9月に書いた記事ですが以下紹介しておきます。

私の学生時代の恩師のひとりに教育学者の田中孝彦先生がいます。田中孝彦先生は、東京大学や北海道大学などの教授をつとめられ、現在は武庫川女子大学の教授をされています。私は教職課程は取っていなかったので田中先生の授業を直接は受けていないのですが、サークル(新聞研究会)の顧問や学生自治会などでお世話になりました。大学卒業後も田中先生の講演を何度か聴いています。以下、田中先生がフィンランドの教育について話されていたことをまとめてみました。(文責=井上伸)

田中孝彦先生は、実際にフィンランドに何度も行ってフィンランドの教育について研究した結果、「日本は『競争の教育』をやめて、『共同の教育』に転換する必要がある」との結論に達し以下のように指摘しています。

自己責任と競争原理に基づく日本の教育は
教育の質の低下と貧困の世代間連鎖で
子どもたちを「傷つけ」、「不安」に陥れる

自己責任社会での競争原理に基づく日本の教育は、何よりも競争を優先することによる「教育の質の低下」とともに、貧困の世代間連鎖をもたらす「子どもの貧困」もプラスされ、子どもたちを「傷つけ」て「不安」に陥れ、子どもたちから「確かな学力」も「生きる力」も奪い去ってしまいます。自己責任と競争原理に基づく日本の教育が、子どもや若者の「荒れ」「非行」「暴力」、そして、「いじめ」「不登校」「高校中退」「社会的ひきこもり」「自殺」など様々な問題を引き起こしているのです。

また、「確かな学力」の問題についても、フィンランドが「学力世界一」となるなか、日本の「学力低下」が顕著となってきています。

こうした子どもたちをめぐる現実が、自己責任社会における競争原理に基づく教育ではなく、無償の教育・福祉・医療をベースにした、人々の暮らしと子どもの生存・成長を支え合う福祉社会の原理に基づく「共同の教育」こそが、子どもたちの豊かな成長と「確かな学力」を育てることを示しているのです。

フィンランドの教育の大事なポイントは、(1)すべての子どもに対して平等に高い質の教育を保障する、(2)競争ではなく共同の教育を保障する、(3)国家による上からの統制ではなく、子ども・教師・親・地域住民の参加によって学校をつくる、ことが貫かれていることです。

以下、フィンランドの教育の主な特徴をあげると――

◆子どもが生まれると、国から母親全員にベビー服や布団、哺乳びんや絵本などのセットが届き、17歳までの子ども全員に月1万3千円が支給される。

◆高校や大学はもちろん大学院や専門学校を含めすべての教育段階が無償である。

◆授業料が無料というだけでなく、子どもたちには通学手段、食事(給食)、教科書や学用品が無償で提供される。さらに、校医・学校看護婦・学校ソーシャルワーカー・学校心理士・生徒カウンセラー等のサービスを無償で必要に応じて受けることができる。フィンランドの基本は「生徒の必要に応じて無償サービスを受けることができる」ということ。

◆大学生などには月数万円の返済不要の奨学金が支給され、貧富の差なく教育が受けられる。

◆労働者に残業はほとんどなく、夕方5時には家族そろって親と子どもがゆっくりすごせる。

◆夏休みは2カ月あり、宿題もない。

◆授業時間数はOECD加盟34カ国の中で最も少ない。

◆ひとつの学級は24人以下の少人数で、実際には20人以下の学級が多い。

◆「全国いっせい学力テスト」のような国レベルのテストはもとより、地域レベルでのテストも無い。フィンランド教育省は、「テストと序列付けを無くし、発達の視点に立った生徒評価」が重要と述べており、とりわけ「子ども期」における「競争による序列」を問題視し、小学6年生までは通知表も無い。

◆すべての子どもがわかるまでを基本に、結果平等の教育が徹底され、学習に困難が生じている子どもに対しては、即座に特別支援教育によるケアが実施される。とりわけ、低学年時を重視し、学習のつまずきの早期発見によって、学習困難の子どもの問題発生を最小限に抑えている。

◆イギリスやドイツなどがフィンランドの「学力世界一」に衝撃を受けたのは、エリート教育に力を注ぐイギリスやドイツよりもフィンランドの「学力上位層」の学力が上だったこと。

◆学校や家庭での体罰は厳しく禁止されている。

◆学校の運営機関に生徒代表が参加する。

――以上のように、フィンランドの教育の特徴を見ていくと、日本の現状がほとんどの場合、フィンランドとはまったく逆の教育になっていることがわかります。

フィンランドの憲法には第16条に、「すべてのもの――フィンランド国籍であるかどうかにかかわらず――は無償の教育を受ける権利を持つ。国および地方教育当局は法律に則って、すべてのものが義務教育だけでなく能力と必要に応じた教育を平等に受けられる機会を保障し、経済的状況を問わず自己を発達させる機会を保障しなければならない。科学、芸術、高等教育の自由は保障されなければならない」と明記されていて、まさに憲法どおりの教育実践がめざされているのです。

フィンランドの大人は――子どもの親でさえも――子どもに対して「一番になれ」とか「他者より少しでも抜きん出よ」といった類の発言はしませんし、そうした思いも持っていません。

子どもたちは、一人ひとり違う個性を持っています。ですから、子どもたち一人ひとりの夢や希望も違いますし、将来やりたいことも違います。フィンランドの子どもたちも大人たちも、他者とテストの点数をくらべることなどには意味が無いことを知っていて、自分のやりたいことへ向かって努力することが大事だと思っています。

フィンランドの子どもたちは、今の自分を過去の自分とくらべて評価します。フィンランドの子どもたちは、まったく異なった人間である他者と自分をくらべることは愚かなことだと思っているのです。

――ここまでが、田中孝彦先生が指摘されている要旨です。ほかにも、フィンランドの子どもたちが「地域に根ざし、世界と向き合う学び」や「学力の質」を深めていることや、フィンランドの教師が「国民のロウソク」と呼ばれ、子どもたちからだけでなく父母や市民から敬愛されている話などの指摘もあります。

「全国いっせい学力テスト」の存在が象徴するように、日本の教育は「競争原理」がいまだに支配的です。日本経団連は教育提言(2005年1月発表)で、「学校間はもとより教員間の競争原理を働かせれば、21世紀に必要とされる人材育成が可能となろう」と明記し、基本的に文科省も同じ路線にあります。

国連の「子どもの権利委員会」は、日本政府に対して、「日本の子どもは極度に競争的な教育制度によるストレスのため発達上の障害にさらされている」として是正を求める勧告を、1998年と2004年、2010年6月の3回にわたって行っています。

最後に、3回目の勧告となった国連の「子どもの権利委員会」(2010年6月)による日本の教育に対する総括所見を紹介しておきます。(※以下は「ARC平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト」からの抜粋です)

◆高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性があることも、懸念する。

◆委員会は、締約国の社会支出がOECD平均よりも低いこと、最近の経済危機以前から貧困がすでに増加しており、いまや人口の約15%に達していること、および、子どものウェルビーイングおよび発達のための補助金および諸手当がこれまで一貫したやり方で整備されてこなかったことに、深い懸念を表明する。委員会は、新しい子ども手当制度および高校無償化法を歓迎するものの、国および自治体の予算における子どものための予算配分額が明確でなく、子どもの生活への影響という観点から投資を追跡しかつ評価できなくなっていることを依然として懸念する。

◆委員会は、子どものケアまたは保護に責任を負う相当数の機関が、とくに職員の数および適格性ならびに監督およびサービスの質に関して適切な基準に合致していないという報告があることに、懸念とともに留意する。

◆「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」などを通じ、子ども、とくに思春期の青少年の間で発生している自殺の問題に対応しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもおよび思春期の青少年が自殺していること、および、自殺および自殺未遂に関連したリスク要因に関する調査研究が行なわれていないことを依然として懸念する。委員会はまた、子どもの施設で起きている事故が、そのような施設で安全に関する最低基準が遵守されていないことと関連している可能性があるという情報にも懸念する。

◆委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。

◆日本社会で家族の価値が普及の重要性を獲得していることは承知しつつ、委員会は、親子関係の悪化にともなって子どもの情緒的および心理的ウェルビーイングに否定的影響が生じており、子どもの施設措置という結果さえ生じていることを示す報告があることを懸念する。委員会は、これらの問題が、高齢者と乳幼児のケアとの間で生じる緊張、ならびに、貧困がとくにひとり親世帯に及ぼす影響に加え、学校における競争、仕事と家庭生活の両立不可能性等の要因から生じている可能性があることに留意する。

◆委員会は、著しい数の子どもが情緒的ウェルビーイングの水準の低さを報告していること、および、親および教職員との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する

◆対話の際、委員会は、すべての子どもを対象とする改善された子ども手当制度が2010年4月から施行された旨の情報を提供されたが、この新たな措置が、貧困下で暮らしている人口の割合(15%)を、生活保護法およびひとり親家庭(とくに女性が世帯主である世帯)を援助するためのその他の措置のような現在適用されている措置よりも効果的に低下させることにつながるかどうか評価するためのデータは、利用可能とされていない。委員会は、財政政策および経済政策(労働規制緩和および民営化戦略等)が、賃金削減、女性と男性の賃金格差ならびに子どものケアおよび教育のための支出の増加により、親およびとくにシングルマザーに影響を与えている可能性があることを懸念する。

◆委員会は、締約国が子どもの貧困を根絶するために適切な資源を配分するよう勧告する。そのための手段には、貧困の複雑な決定要因、発達に対する子どもの権利およびすべての家族(ひとり親家族を含む)に対して確保されるべき生活水準を考慮に入れながら、貧困削減戦略を策定することも含まれる。委員会はまた、締約国に対し、親は子育ての責任を負っているために労働の規制緩和および流動化のような経済戦略に対処する能力が制約されていることを考慮に入れるとともに、金銭的その他の支援の提供によって、子どものウェルビーイングおよび発達にとって必要な家族生活を保障することができているかどうか、注意深く監視するよう促す。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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