浜矩子さん「消費税増税を甘んじて受けろと国民を国家に尽くす存在へ逆転させる安倍政権」

  • 2015/8/25
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先に紹介した「浜矩子さん「人間不在で貧困放置するアベノミクス=ドーピング経済学が日本を壊す」」の続編となります。

国家は国民のために存在し
国家装置=行財政は国民に尽くす義務がある
浜矩子 同志社大学大学院教授

「国民国家とは何者か?」

人間不在で貧困を放置するアベノミクスによって、グローバル時代と相性の悪い政治経済政策の環境が着々とできあがってしまっている中で、「国民本位の行財政のあり方」をどう考えたらいいでしょうか?

この「国民本位の」というフレーズはとても大切だと思います。先ほどお話ししたように、経済活動は人間の営みですから、経済活動はあくまで「人間本位」でなければならない。この出発点と、「国民本位の行財政のあり方」という問題意識は親和性が100%です。この観点から行財政のあり方を考えることは、結局のところ、「国民国家とは何者か?」ということを考えることにつながっていくのだろうと思います。

国家は国民のために存在している
国家装置は国民に尽くす義務がある

日本で国民国家というと、両方に「国」という単語が出てきてしまうので、なんとなく国民と国家の関係が分かりにくく、ぼやけてしまうところがあると思いますが、国民国家は英語で言うとネイションステイトとなります。ネイションが国民、ステイトが国家ですね。このネイションステイトという言い方をすると、非常に両者の相互関係がはっきりしてきます。ネイションはすなわち人々で、人間です。この人間の集団であるネイションに対して、ステイトという国家装置は尽くす義務があるという言葉なのです。ステイトはネイションのためにあるということが、ネイションステイトという言い方をしてみるとはっきり見えてくるわけです。

国民国家において、国家は国民のために存在しているのであって、その逆であると考えてしまってはいけないというところが重要です。そうすると、行財政は国民本位で当たり前なわけです。行財政は、まさに国家という装置が国民に対してサービスを提供するための手段、ツールであるということですから、行政と財政であるということは自ずと国民本位であるということが言葉の中にすでに内包されているのです。

国家とは、つまりサービス事業者、サービスプロバイダーなのであって、国家という名のサービスプロバイダーの唯一にして最大の顧客、カスタマーが国民なのです。この大切な関係を私たちは片時も忘れてはいけないのです。

国境なきグローバル時代の国家
安倍政権では「国民は国家のために存在する」と逆転した関係に

ところが、現在はこうした関係が歪められ、安倍政権の発想の中では、国家は国民のために存在するという関係が逆転しているような事態となっています。

国家というのは国境があるから国家であって、国境があることを前提にアイデンティティを定義しているわけですが、グローバルジャングルの中では人とお金があまりに容易に国境を越えていってしまうが故に、国家というものがなかなか難しい立場に追いやられています。

しかし、だからこそ、国境なきグローバル時代を国家というものはいかにして生き抜くことができるかという根源的な問題を今の国々は突きつけられているのだと思います。人とお金は国境を越える、されど国は国境を越えられない。この現実の中で、国の政策がやりにくくなっている、効力を低下させている面があります。自国の中で経済活動を盛り立てようとして金融を緩和すると、その出てきたお金は皆出稼ぎに出て行ってしまって、海外の他のところで経済を活性化させてしまっていたり、必要のないお金がいきなり外からどんどん入ってきてしまったり、金融政策の制御能力というものが非常に低下しているということも目に付く状況になっています。

国家は国民が窮地に陥っているときの「レスキュー隊」なのに
国の財政のために国民が新たな負担を強いられる本末転倒な姿に

そして、国の財政に至っては、財政の崩壊を阻止するためとして、国民が新たな負担を強いられるという状況になっています。これほど本末転倒な姿というのはありません。

国の政策というのは、国民が窮地に陥っているときにこそ、効果的かつ効率的かつスピーディにやってきて救いの手を差し伸べる、レスキュー隊としての能力を持っていなければなりません。このレスキュー隊の能力に期待をかけていればこそ、国民は血税を払って公務員の皆さんを養っているわけで、それが国民と国家の間の契約関係です。

「消費税増税を甘んじて受ける」「行財政サービスの質的量的な劣化を我慢する」という倒錯した事態

いざという時に頼りになるレスキュー隊であってくれると思うからこそ、国民は国家というものの存在を支えているという関係なのですが、ところが今や、この財政に関しては逆に国民の方がレスキュー隊となって、瀕死の状態に陥った財政を救わんがために、消費税増税を甘んじて受けるとか、いろいろな行財政サービスの質的量的な劣化を我慢するという倒錯した格好になってしまっているわけです。

国ではなく市の例ではありますが、アメリカのデトロイト市では、公的にゴミも集めてくれない状況になり、仕方がないから市民が自分達でゴミをなんとかするという事態になっています。デトロイト市は完全にサービス事業者としての公的部門の役割が果たされていない姿ということになります。

生きる権利をはき違える安倍政権

こうした状況にも見られるように、現在のグローバルジャングルの中では、国家や公的部門の役割を果たすことが難しくなっているわけですが、だからといって、レスキュー隊が逆にレスキュー隊を必要とする立場に転落してしまっていいというわけではありません。グローバルジャングルの中で、いろいろな意味で国家や政策の位置づけ、存在意義、重みが低下する方向になっていると思いますが、その中でも国家や政策というものに最終的に残っていく間違いなき責任事項は、弱者救済です。いかに国境なき時代、グローバルジャングルの中といえども弱者救済に国家は責任を持つ必要があります。

つまり市場のメカニズムの中では決して自己展開することができない人達にも、生きる権利をきちんと保障する。それがまさに公助というものの役割なのだと思います。安倍政権の公約の中でも公助という言葉は出てきますが、「新たな公助のあり方」という言い方でそれが語られていて、読んでいくと、あの中における公助のニュアンスというのは、頑張れる人あるいは頑張っている人を支えるのが公助だとなっている。いわば自助努力できる人を助けるのが公助であるという認識がそこで示されているわけです。これは根源的におかしいのです。自助できる人は自助すればいいのであって、いかに、自助したくてもできない状況や環境に置かれている人達に手を差し伸べるのかが公助なのであって、そこをはき違えられていきつつあると思います。

アベノミクス転じてドアホノミクスなどというものによって人権の礎の保障=国民本位の行財政が危機にさらされている

国民本位の行財政というのは、言葉の正しい意味での公助が完結されることです。人間の営みとしての経済活動が人間のためのものとなり、人権の礎としてのものであり続けられるように保障する、手助けする、支える、それが国民本位の行財政の根源的なあり方です。しかしそれが危機にさらされているというのが現実だと思いますので、ぜひ国公労連の皆さんの力で、そういう本来あるべき公助の姿をしっかり守り、燦然と輝かせていただきたいと思います。

アベノミクス転じてドアホノミクスなどというものによって、国民本位の行財政が崩されていってしまうのは本質的に許されないことですので、これを許さず、国民本位の行財政を確立していくことは、まさに国公労連の皆さんに託された社会的責任です。人間不在で地域という視点もないアベノミクスに対して、全国津々浦々から国民本位の行財政をめざすとりくみを進めてください。

2013年11月15日、浜矩子さん談

▼講演の全体を動画で視聴できます。
アベノミクスの真相と国民本位の行財政のあり方:浜矩子教授講演
・アベノミクスには人間の姿がみえない 6:28~
・「成長戦略スピーチ」で欠落している言葉 13:44~
・アベノミクスは「富国強兵」を目指す 20:05~
・グローバル・ジャングル 共生の生態系 29:40~
・「ふんどし」を借りるか「土俵」を借りるか 40:40~
・国家は国民のために存在する 50:43~
・最後まで残る国家の役割は弱者救済 59:45~
・質疑応答:地方の中小零細経営者たちへの言葉 1:02:54~

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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