2万5千人失踪、日本人の13倍の過労死、強制労働・人身売買の外国人技能実習生を介護等へ広げる安倍政権

  • 2015/8/24
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(※2015年3月9日に書いた記事です)

日本の外国人技能実習制度については、アメリカからも「2014年人身売買報告書」の中で、労働搾取を目的とする強制労働への人身売買の制度だと批判されていますが、「過酷労働、困窮訴え ヤギ盗んで食べたベトナム人技能実習生」など驚くべき報道が続いています。そして、2014年に失踪した外国人技能実習生は過去最多の4,851人となり、この10年間で約2万5千人が失踪し、「多くの実習生が最低賃金水準で稼働しているが、残業代の未払いなど労働関連法違反は後を絶たない。労働条件の厳しさが失踪増加の背景にあるとみられる」と報道されています。

こんな惨状になっているにもかかわらず、安倍政権は3月6日、外国人技能実習制度の受け入れ期間を最長3年から5年に延長するとともに、受け入れ職種に介護職なども追加する法案を閣議決定しました。この法案が今国会で通れば来年度から実施されることになりますが、そんなことになればさらに惨状が広がると思います。

▲上のグラフは、国際研修協力機構(JITCO)のサイトに掲載されている「技能実習生の死亡事故及び労働災害発生状況」の中の「死亡事故の内訳(2013年度)原因別」です。外国人技能実習生の9割は20~30代の若い世代なのに、「脳・心疾患」による死亡が8人もいます。自殺も2人となっています。国際研修協力機構(JITCO)のサイトには以下の過労死の事例がアップされています。

早朝、うめき声のような音を聞いた同室の実習生が本人のベッドを確認したところ、布団に血液が付着していたため、消防等に連絡したが、既に心肺停止の状態で死亡が確認(入国後約4カ月の30代の中国人女性)

土曜日早朝、宿舎の布団の中でくも膜下出血により意識を失っているのが発見され、死亡が確認(入国後約33カ月の20代の中国人男性)

本人からの申し出により仕事を休ませていたところ、宿舎のベッドに倒れていたため、病院に搬送したが3日後死亡(入国後約33カ月の20代のベトナム人女性)

国際研修協力機構(JITCO)の「外国人技能実習生の死亡事故発生状況」より)

 

上記の事例にもみられるように、20代、30代が過労死しているわけです。この過労死発生の割合について少し比較をしてみると、2013年の時点で実習生の人数は約15万人なので、過労死8人÷15万人=0.0000533になります。そして、厚労省「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」の2013年の20~30代の過労死は一番多い件数となるのが「請求件数」の43人より「決定件数」の50人なので、50人で計算するとして、20~30代の就業者数は約1,500万人なので、60÷1,500万=0.000004。(※総務省「労働力調査」の年齢階級別の区切りが、24歳、34歳、44歳なので、15~24歳と35~44歳の就業者数は単純に半分で計算しました) そうすると、日本の20~30代の13.3倍も外国人技能実習生の方が過労死する割合が高くなっているということです。上記で紹介した事例で、入国後約33カ月の20代の実習生2人が過労死していますが、33カ月は2年と9カ月ですから、もし実習生の期間が2年間ならばこの20代の二人の実習生は過労死しなくてすんだのではないでしょうか。過酷な強制労働が続けば続くほど、過労死の危険性は高まるわけで、3年間の強制労働で13倍の過労死が、5年間と長くすることによって、さらに過労死が多発する危険性があると思います。

それから▲上の表は、厚生労働省「外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成25年の監督指導、送検の状況」です。外国人技能実習生の労働現場の8割が何らかの労働基準関係法令違反が認められています。そんな違反だらけの職場環境に置かれていますから、▼下のグラフにあるように労働災害が外国人技能実習生を襲っているのです。

「毎日新聞」2月14日付「クローズアップ2015:外国人技能実習 期間、職種を拡充 制度のゆがみ放置」の中で、指宿昭一弁護士が次の指摘をしています。

外国人労働問題に取り組む指宿昭一弁護士は「罰則や監督態勢の強化など、これまでも制度の見直しが繰り返されてきたが、効果はなかった。真の目的は労働者の確保にあるのに、いつまでまやかしを続けるのか」と批判。「実習制度にこだわる限り問題は解決しない。外国人を雇用主と対等な労働者として受け入れる新たな制度を作る必要がある」と指摘した。

出典:「毎日新聞」2月14日付「クローズアップ2015:外国人技能実習 期間、職種を拡充 制度のゆがみ放置」

結局、「技能実習」などと言いながら、実際は、違法で劣悪な職場環境で低賃金・長時間の強制労働を外国人にしいているだけです。その根源には、指宿昭一弁護士が指摘しているように、外国人労働者に労使対等の原則をはじめ基本的な労働基準法さえ守られない「技能実習制度」というシステムがあります。このシステムから外国人労働者の人身売買の強制労働という人権侵害が横行する現代の奴隷労働が生まれているわけですから、小手先の罰則や監督態勢の強化などでは実効性が伴うわけがありません。逆に5年延長や介護職など受け入れ枠の拡大などが、介護職における低賃金化に一層の拍車をかけるなど矛盾の拡大と、現代の奴隷労働のあらたな激しい惨状がもたらされてしまうことになると思います。

それから以前ブログで紹介した、ジャーナリストの安田浩一氏による実態告発の一部を紹介しておきます。

私が取材した外国人研修生・技能実習生の実態の一部を紹介します。

時給は1年目が200円、2年目が300円で、勤務時間は午前7時から午後10時までが定時。しかし実際は深夜12時過ぎまで続き、なんと深夜12時以降は時給でなくボタン1個をつくるごとに5円などという完全ノルマ制になっているところがありました。休日は月に1度のみで、彼女たちはパスポートを取り上げられ、自由な外出も許されず、真冬に取材したのですが、住まいはあばら家ですきま風が吹き放題なのに、ストーブもエアコンもなく、お湯もでないので、彼女たちはダウンジャケットを着て部屋の中にいて、私が帰ろうとしたら、お湯を沸かし出して、どうするのか見ていたら、沸かしたお湯を2リットルのペットボトルに詰めて、それを抱えて湯たんぽ替わりにして布団の中にもぐりました。どうりで部屋の中に空のペットボトルが置いてあったなと思っていたのですが、そういう尋常でない状況があったわけです。

外国人研修生・技能実習生の雇用契約書の中に、とんでもないことが書かれているところもありました。その雇用契約書には、「会社の言うことは絶対に守らなくてはいけない」「定められた休日以外は休んではいけない」、そして、「男女交際をしてはいけない」「妊娠してはいけない」という文言までありました。ここで働いているのは、20代、30代の大人です。恋愛も妊娠もなぜ会社に否定されなければならないのでしょうか。

工場の壁に表が貼ってあって、外国人研修生・技能実習生の名前が一人ひとり書いてありました。その表には、1日に何回トイレに行ったかを書き込んでいるのです。1回トイレに行ったら1分間で70円の罰金と書いてある。後で調べてみたら実際には罰金は徴収されていなかったのですが、現場の外国人研修生・技能実習生に対して脅しとしてトイレの回数と時間まで拘束することで、1分でも長く働かせようとしていたわけです。

深刻なのがパワハラ、セクハラです。工場の敷地に外国人研修生・技能実習生がズラリと並べられていて、この工場の専務が右から順番にビンタしていくのです。パンパンッとかなり大きなビンタの音が工場に響いていて、私が駆けつけたので途中でやめましたけど、なぜビンタをしているのか?と聞くと、「こいつらが生意気なんだよ。日本人と同じ給料にしろと迫ってきたんだ」と言うのです。

そして、セクハラはより一層深刻なものがあります。20代の女性のケースを取材したことがあります。そこの経営者が「君は工場で働かなくていいから、うちの手伝いをしろ」と言って、経営者の家の掃除や犬の散歩などをその女性に押しつけました。そして、夜になるとその経営者がやってきて、彼女は抵抗したのですが無理やりレイプされてしまったわけです。それから彼女はお金を稼いで帰国しなければならないために経営者にさからえず、そうした行為が続いたわけです。経営者は行為を終えると枕元に1万円を置いたそうです。彼女はその1万円を受け取るかどうか迷ったそうです。迷った末に受け取る道を選びました。彼女はお金を稼いで帰国する必要があったからです。
安田浩一氏談、文責=井上伸

それから、永山利和元日本大学教授(行財政総合研究所理事長)に行った私のインタビューから関連するところを最後に紹介しておきます。

安倍政権による「外国人材活用」の問題点

――安倍政権は、労働法制の全面改悪とともに、外国人材の活用を「成長戦略」として位置づけています。この問題をどう見ればいいでしょうか?

安倍政権の雇用問題へのスタンスは、日本の労働法制や労働市場をいかに企業向けに活用しやすくして必要な人材を確保するかという労使対等ではなく、企業優先の政策観点だけが前面に出ています。国民経済的な労働市場の役割や労働条件、賃金水準を良くするというのではなく、企業活動本来の改善対策ではなく、企業の費用から見て都合のいい労働市場構造、労働条件の決定方式をつくり、外国から流入・流動している労働者も、企業活動の都合を優先する観点で国内外を一緒にした活用体制にしたいという強い願望があるのだと思います。

ところで、逆に日本人で今外国に出て行っている人たちは、増加しています。昔のいわば国内で雇用先がないなどの理由からアメリカ等に出て行った移民時代とは違うものがあります。多少世界を見てやろうと学生時代の海外渡航の経験から、海外に定着する日本労働者の数が約120万人と推定されます。外国人材を呼び入れる必要が仮にあったとしても、日本では国内の労働者も雇用先に見切りをつけ、海外で活躍する日本人が増えています。日本人労働者から日本の労働市場に見切りをつけられ、外国に出て、外国で働き、生きようとしている人が相当数います。そうした問題にも目を向けなければなりません。安倍政権の政策認識が不見識だと思います。

アジアの労働者、たとえばミャンマーやベトナム、フィリピン、インドネシアなどの労働者が「どこで働こうか」と考えると、たとえばシンガポールや台湾、韓国、日本が射程に入ってきます。日本にはJITCO(国際研修協力機構)の外国人研修・実習制度しかない。この体制で、パスポートも取り上げられ、携帯電話も使えないという不便で非人道的状況の中で労働する。そこで獲得する賃金はあまりに少ない。そこで日本への志向がどんどん弱まっています。

ベトナム人労働者も、日本に一度来た人でさえも、条件をみて「台湾の方がまだいい」となったりしています。台湾は日本よりは遥かに受け入れ体制が弾力化しています。韓国も外国人居住基本法をつくり、居住から労働まで一貫した法制度を整えています。どこまで実践しているかは別としても、法制度的には日本より遥かに前進しています。労働者を出す国の側、働く側から見ても、日本の地位はどんどん下がっています。

そうした現状に改善の目を向けないまま、質の高い外国人をIT、医療関連分野、あるいは今後の新しい日本の経済成長戦略に役立つ成長産業に呼び込もうとしています。そこで街をきれいにし、公設民営の英語で話せる学校もつくりましょうと言って支援サービスをする体制を整備しようとしています。質の高い外国人労働者に対してこれまでと異なる特区に目を向けようとしています。

しかし、それでは外国人労働者と同じ仕事をする日本人にはどう対応しようとするのか、という疑問が当然出てきます。労働条件は、本質的に内外均等待遇であるべきなのですが、外国人労働者で敢えて低くしたり、他方では職種、産業によっては特別に優遇する労働者に分化し、その中間に日本人の労働者がいるというのは、やはり筋が通らないと思います。

その上、安倍政権がねらっているホワイトカラーエグゼンプションは、残業代も払いません、過労死しても個人の自己責任ですという雇用形態にする。そうすると労働法制そのものが、労働の種類や雇用形態、事業の運営形態に即し、バラバラにされる。これまでも労働条件を集団的労使関係で決める仕組みを根底から壊し、「ブラック企業」が社会問題になるような劣悪な雇用形態が広がっています。雇用の劣悪化がもっと強まれば、労働者にはますます「働きにくい国」に日本がなり、むしろ労働者は外国に逃げていくことになるのではないでしょうか。

企業にとってのみ住み心地の良い国が、労働者にとって働きづらく、住みづらくなる国では、外国企業の進出も期待できないでしょう。特に言葉の習得は良質なプログラムなどができていますから、学生は5年くらい頑張れば語学を習得できるでしょう。そうすれば日本よりも環境がよく、地震も少ない、台風も来ない、ただし、互いに個人の権利がぶつかり合う厳しい社会ではあるけれども、日本よりはいいと思う国は結構見いだせると思います。世界に通ずる労働法制、雇用形態をどうつくるか。これらを体系的に政策的に実施する対応をしないと、外国人労働者問題に対応できません。

特に、労働者は10年も日本にいれば家族が作られ、コミュニティに住むことになります。そこで英語で教える学校をつくりますと言っても、日本語で通じる世界の方が広いわけだから、その子ども達は日本に馴染むでしょう。そうであれば日本に住む外国人と日本人との均等待遇を、教育や社会保障や生活保護はもちろんのこと年金制度についても標準化・平準化していかないといけません。日本では大企業と中小企業の間、日本人の間の不均衡さえ通算制できないバラバラな年金制度になっています。これでは世界には通用しません。他国はILO基準に即して標準化・スタンダード化し、世界標準で質の高い労働者を外国から確保しようとしています。企業の都合のいい話で「日本を世界一ビジネスのしやすい国に」するなど狭い了見は辻褄が合わないと思います。

外国人実習生問題は、以上の意味で日本の暗部というか、了見の狭さ、国際性のなさ等を集約的に表しています。この問題でのJITCO(国際研修協力機構)というのは、行政の直接責任はどこにもない組織です。これらを改めない限りは、単純労働者も確保できないと思います。だから外国人材の活用などを安倍政権が言うのはおこがましいと思います。

永山利和元日本大学教授(行財政総合研究所理事長)談

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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