安倍首相「社会保障は高齢者偏重」のウソ→公的年金の低さが高齢世帯4分の1の貧困、独居女性2人に1人の貧困をもたらしている
きょうは「敬老の日」ですが、安倍首相がまたマスコミを使ってウソとデタラメを吹聴していますので指摘しておきます。
安倍首相は9月12日付の日本経済新聞「首相『社会保障、高齢者中心を是正』本紙インタビュー」の中で、「高齢者向け給付が中心となっている社会保障制度」を是正する必要があると明言しています。
ようするに安倍首相は、日本の社会保障は高齢者偏重だから、高齢者向けの社会保障を削る必要があると言っているわけです。
この議論の前提になる「日本の社会保障は高齢者偏重」というのは、本当でしょうか? 検証してみましょう。
まず、日本の社会保障全体の現状です。下のグラフは、OECDのサイトで簡単に見ることができる社会保障への公的支出の国際比較で、各国直近となる2013年のデータです。
上のグラフにあるように、日本の社会保障は23.1%でOECD34カ国中14位に位置し、フランス31.5%の73%という低い水準です。
この社会保障の中から、年金への公的支出を見たものが下のグラフになります。
上のグラフにあるように、日本の年金への公的支出は10.2%でデータのあるOECD32カ国中9位に位置し、イタリア16.3%の62%という低い水準です。
年金への公的支出は少ない日本なのに、下のグラフ群にあるように、65歳以上の高齢化率は突出して高くなっているのです。(下のグラフの1つめは高齢化率(65歳以上人口の割合)の推移、2つめは高齢化率の各国2013年データ、3つめは労働年齢人口(15歳から64歳の人口)の割合の推移)
年金への公的支出は全体として少ない上に、65歳以上の高齢化率は突出して高いので必然的に以下のグラフになります。
上のグラフにあるように、年金受給者一人当たりの公的支出が日本は低く、フランスの68%しかありません。
日本の社会保障は高齢者偏重だから、高齢者向けの社会保障を削る必要がある、とする安倍首相の言説がデタラメであることは、こうした国際比較をすれば一目瞭然です。
事実は、「日本の社会保障は高齢者向けも貧困だから拡充する必要がある」ということです。
実際、唐鎌直義立命館大学教授が「高齢世帯の4分の1が貧困 独居女性では2人に1人『生活保護未満』」(西日本新聞9月15日付)と下表を示し、「1人世帯の貧困率が特に高く、女性56・2%、男性36・3%。2人世帯でも2割を超え、高齢者と未婚の子の世帯は26・3%、夫婦世帯は21・2%だった。高齢者世帯全体の貧困率は27・0%で、以前まとめた09年調査の分析結果と比較すると2・3ポイント増加。この間、貧困世帯は156万世帯以上増えて約653万世帯に、人数で見れば1・3倍の約833万6千人になった」と分析しています。
唐鎌教授はこの背景について、「公的年金の給付額が低下したため」と指摘し、高齢者1人当たりの年金受給額は「(直近の調査結果である)14年度は年間約161万8千円で、09年度に比べ14万円減っていた」「子どもだけでなく高齢者の貧困も深刻。生活保護受給者は今後さらに増えるだろう。これ以上の年金引き下げはやめるべきだ」と強調しているのです。